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比較レビュー:暑くてもベタつき知らずで過ごしたい。化繊100%のベースレイヤー総まとめ 2019

動けば汗をかく。体の温度が高くなると、その温度を下げるために汗をかいて体を冷やします。しかしこの汗、かきっぱなしで放っておけば体が冷えてしまいます。いくら夏といえど、この汗冷え侮ってはいけません。夏でも低体温症につながることもあるからです。そこで、それに対処するため世の中にはベースレイヤーが存在します。

今ではひとえにベースレイヤーと言っても、様々な種類、素材、アクティビティに対応したものがあり、各メーカーそれぞれの素材をミックスさせたり、生地の編み方を工夫したりと、様々な目的に応じたものが発売され、もう何が何だかわかんなくなってきています…

そこで今回は、トレッキング・登山・ランニングなど使用できる春〜秋物で、かつ化繊100%のベースレイヤーを選んで比較してみました。その比較のみではなく、その中でもどのような使い方が向いているのか選別もしてみました。使い方によってはアクティビティが非常に快適になるベースレイヤー。その選択の手助けになれば幸いです。

目次

今回比較したベースレイヤーについて

以下は今回比較した8モデル。全て化繊100%のものを選びました。

テスト環境

評価項目については、以下の5点を指標を設定し、同じベースレイヤーを1日中着続け、アップダウンのある山道や舗装路で歩く・走るなど、様々な強度の運動をして評価しました。

  1. 快適性・・・汗をかいたあとのベトベト感や、動きへのストレスの低さなど、快適に着続けられるか。
  2. 通気性・・・単純な風通しの良さだけでなく、水分を含んでいる状態も空気がしっかり循環してくれるかどうか。
  3. 吸水性・・・汗をかいた時の汗を吸い上げる機能性を比べました。
  4. 速乾性・・・汗を吸ったあと、洗濯後の乾きの早さを比べました。
  5. 耐久性・・・性能が高くても、すぐへたってしまえば元も子もありません。生地の丈夫さの指標です。

テスト結果&スペック比較表

スマホ向けの軽量表示で表が見づらいという方はこちら

総合評価 AAA AAA AA AA AA AA A A
アイテム

Patagonia キャプリーン・クール・ライトウェイト・シャツ

MILLET ジャマン デルタ ジップ ロングスリーブ

Arc’teryx モータス LS クルーネック シャツ

The North Face ロングスリーブGTDメランジクルー

Mammut performance dry zip

Mountain Hardwear エステロロングスリーブジップT

finetrack ドラウトタフアルパインロング

mont-bell ジオライン L.W ラウンドネックシャツ

参考価格(税抜) ¥6,800 ¥9,900 ¥9,000 ¥6,300 ¥9,200 ¥7,900 ¥6,800 ¥3,239
ここが◎
  • 軽くて軽快
  • 吸水・蒸発のバランスがよい
  • パフォーマンスが低下しない
  • 着心地がとてもよい
  • 通気がよく涼しいい
  • 汎用性が高い
  • とにかく丈夫
  • コストパフォーマンス
ここが△
  • 保温力はない
  • 真夏の低山は暑い
  • 大量に汗をかくと肌に付く
  • 重量感を感じる
  • 防臭が欲しい
  • 保温力
  • 多く汗をかくと重量増
  • 長い保水時間
快適性 ★★★★★ ★★★★★ ★★★★★ ★★★★☆ ★★★★☆ ★★★★☆ ★★★☆☆ ★★★☆☆
通気性 ★★★★☆ ★★★★☆ ★★★☆☆ ★★★☆☆ ★★★★☆ ★★★★☆ ★★★☆☆ ★★★★★
速乾性 ★★★★★ ★★★★☆ ★★★★☆ ★★★☆☆ ★★★☆☆ ★★★☆☆ ★★★☆☆ ★★★☆☆
吸水性 ★★★★☆ ★★★★☆ ★★★★★ ★★★★☆ ★★★★☆ ★★★☆☆ ★★★★☆ ★★★☆☆
耐久性 ★★★☆☆ ★★★☆☆ ★★★★☆ ★★★★☆ ★★★☆☆ ★★★☆☆ ★★★★★ ★★★☆☆
スペック
公式重量 74g 120g 180g 118g 140g 125g
実測重量 89g(S) 186g(S) 120g(S) 147g(M) 127g(M) 117g(M) 147g(M) 105g(M)
生地 ポリエステル100% Polartec® Delta™ Phasic™ FL with DAO™ FLASHDRY™ Melange Knit PRIMALOFT(R) Performance Fabric Gold DRY デルタクラッシュワッフル ナイロン100% ジオライン®
UVカット
防臭

各モデルのインプレッション

真夏や運動強度の高いアクティビティ向け(トレイルランなど)

Patagonia メンズ・キャプリーン・クール・ライトウェイト・シャツ

ここが◎

ここが△

薄手ながらわずかに凹凸のメリハリを作り吸水性・通気性を確保しています。

Patagoniaの超定番シリーズ、キャプリーン。その中でも春夏用キャプリーン・クールでも最軽量のライトウェイトです。重量は非常に軽く、なんと80g代!着衣感もとても軽く、肌触りもとてもよいので着ていることを忘れてしまうくらい。肌側はわずかですが凹凸があり、水分を素早く吸い上げてくれます。通気性も良いのもあいまり、速乾性が非常に早い。トレッキングくらいの運動量ではほぼ常にドライな状態を保ってくれます。走っていても少し休めばその間に乾いてしまうくらい。洗濯しても脱水をかければそのまま着れてしまうくらいの勢いです。

フィット感はスリムフィットなのでタイト気味。ストレッチ性はそこまでないが、動きを考慮した作りなので、動きに関しては気になりません。夏はこれ一枚で様々なアクティビティに、春・秋はベースレイヤーとしてヘビーに活躍してくれます。非常に軽量なので、長期間のトレッキングでは2枚持っていけば毎日快適に過ごせそうです。

Arc’teryx モータス LS クルーネック シャツ

ここが◎

ここが△

水が滴ると、横方向に編まれた生地に沿ってすぐに拡散されます。

モータスシャツには、アークテリクス独自のPhasic™ FL with DAO™が使用されていますが、この素材は疎水性を持ち、吸水しません。そのため汗を吸い取っても服自体の重量が重くなることはなく、重量がパフォーマンスに影響するトレイルランにはもってこいです。生地が吸水しないため、速乾性も高く維持しています。汗をかくとすぐに吸い上げ拡散し、素早く蒸発させてくれるので、大量に汗をかいても不快感を低く維持してくれます。

フィットはタイトではなくゆとりがある作りで、動きやすさを意識した形状で、機動性は高くストレスはありません。生地はしっかり編み込まれているので、ハニカム構造のようなメッシュがある生地よりは耐久性は高そうです。通気性の面ではやや劣ってしまいますが、生地が薄く乾燥が早いので暑い時も涼しさをもたらしてくれ、常に快適に走り続けられるでしょう。

The North Face ロングスリーブGTDメランジクルー

ここが◎

ここが△

裏地は、はっきりとわかる凹凸が肌との接点を減らし快適に保ちます。

The North Faceからは、FLASHDRY™を採用した杢調のシャツです。FLASHDRY™は多孔質物質を使用することで表面積をおきくし、透湿性・蒸発能力を高めています。肌触りはとてもソフトで、着心地は快適。フィットもタイトでもなくルーズでもなく動いてもストレスはありません。汗の吸水もよく、肌面のドライ感をキープしてくれます。速乾性はやや劣りますが、通気性は良いのでランニングでは気持ちよく走れました。

袖がやや短めなのと、フィットにゆとりがあるので登山やトレッキングでのベースレイヤーとしてではなく、トレランなどで1枚で使うのが良さそう。暑い日から涼しい時まで、持っているといつも着てしまう一枚になりそうです。

 

春~秋トレッキング・登山向け

Millet ジャマン デルタ ジップ ロングスリーブ

MILLET(ミレー) MIV01695 LD JAMAN DELTA ZIP LS ウィメンズ LD ジャマン デルタ ジップ ロングスリーブ/SILVER (XS)
MILLET(ミレー)

ここが◎

ここが△

疎水性・親水性の素材を使い分け格子状の生地を編み込み、高い吸水性・速乾性を両立し快適さを維持してくれます。

POLARTEC社の比較的新しいベースレイヤー用素材である、POLARTEC DELTAを使ったベースレイヤー。POLARTECと聞くと、なんだか暖かくなってくるような感じがしますが、このDELTAは夏用の冷却素材です。生地は凹凸のある格子状になっており、肌に触れる凸部分は親水性を持ち、肌の水分を吸収・蒸散させてくれます。汗を大量にかいても肌に触れない凹部分は疎水性のメッシュとなっており、通気性も確保してくれます。実際着てみると、肌に触れる面積が少ないので、汗を大量にかいてもべとつきは少なく不快感はほとんどなく、通気性もあるので暑い日でも非常に快適に着ていられます。

生地が保水しても、肌に接する面が少ないので汗による冷えも抑えられ、ストップアンドゴーが多いトレッキング、登山と非常に相性が良く春〜秋まで長く快適に使えるでしょう。夏用素材とはいえ、生地自体に少し厚みがあり、結構保水してしまうことからランニングには不向き。しかし涼しい季節のランニングでは快適に使用できるかもしれません。

Mammut performance dry zip

ここが◎

ここが△

縫い目の処理は一番。非常にフラットで全く気にならない。

PRIMALOFT社の夏用素材、PRIMALOFT Performance Fabric Gold DRYを使用したベースレイヤー。生地は薄く軽量で、着た感じは軽快なですが、肌に接する面は立体構造になっているので、汗によるベタつきを抑えてくれます。吸水はとても早くすぐにかいた汗を吸い上げてくれます。しかし発汗量が多くなると、吸水に対し蒸散が追いつかないので、かなり汗が溜まってしまうので、汗びえが気になるところです。適度な発汗であればドライな環境を維持してくれるのでトレッキングや登山では快適に使用できるでしょう。

フィット感はかなりタイトですが、適度なストレッチがあるので、動きづらさやキツさは感じません。薄手で通気性も良いので、真夏では非常に快適に過ごせるでしょう。しかし真夏に一日中着ていると、夕方にはちょっとニオイが気になりました…

Mountain Hardwear エステロロングスリーブジップT

ここが◎

ここが△

側面から脇〜袖口まで同一の生地を使い、機動性を向上させています。クライミングでも使いやすい。

エステロシリーズは、若干の変更を加えつつアップデートし続けているMountain Hardwearの速乾シャツです。肌面は凹凸のある格子状の生地で、汗の吸収・発散してくれるので肌感触はよく清涼感が続き、ドライに着続けられます。通気性も良く乾きも早いのでフィット感はタイトですが、完全にピッタリしたフィットではなくやや余裕があるので、動作はしやすいです。

裁断パターンが独特で、トレッキング・登山だけでなく、ダイナミックな動きをするクライミングでもストレスなく使えます。薄手なので、夏であればこれ一枚で問題なく使用できますが、春・秋は保温性が足りず肌寒く感じるので、レイヤリングとしてのベースレイヤーとして活躍できます。

finetrack ドラウトタフアルパインロング

ここが◎

ここが△

ナイロン製の糸をやや厚手に編み込んだ生地で耐久性をアップ。しかし生地に厚薄もつけ通気性も確保しています。

finetrackのドラウトタフは、必要な基本的な性能だけでなく、擦れや引っ掛けなどのストレスに強さを実現させたベースレイヤーです。タフさを実現するため、繊維を特殊な編み方で加工し引っ掛かりを低減させたり、ポリエステル製が多い中ナイロンを採用し摩擦に対する耐久性も上げています。今回比較したベースレイヤーでは唯一のナイロン製です。藪漕ぎや岩場が多くウェアに耐久性が求められる環境では非常に重宝しそうです。耐久性に特化したような印象を受けますが、吸水性・速乾性も問題ないように、積極的に汗を吸い上げ拡散し、蒸発させてくれるので、トレッキングや登山での使用は問題ありません。

しかし生地が厚いので保水量も多く、大量に汗をかくと乾くのにやや時間がかかります。真夏の気温が高い場所では使いずらいかもしれませんが、春・秋の岩場、藪漕ぎが多い低山などでは活躍しそうです。内側に縫い代があり処理していないので、他のベースレイヤーと比べると肌に当たってやや気になります。

mont-bell ジオライン L.W ラウンドネックシャツ

ここが◎

ここが△

軽量なゆえ生地は薄め。光に透かすと向こうが透けて見えるほど。しかし十分な吸水性は確保されています。

国内メーカーmont-bellのベースレイヤーシリーズ・ジオラインの中でも最も薄手タイプ。L.W.はライトウェイト(Light Weight)の略です。ライトなだけあり、重量は100gほどと今回のベースレイヤー内でも軽量です。着心地はポリエステル100%ではありますが、綿のような肌触りで安心感があります。トレッキング程度でかく汗はすぐに吸い上げてくれるので、ベトベトするような不快感はないのですが、水分を蒸発させるのがゆっくりなので、運動量の多いアクティビティにはあまり向かないさそうです。保温性も高く、発熱素材ほどではないですが、着て少しするとややポカポカしてくるのを感じます。

しかし目玉はコストパフォーマンスの高さでしょうか。他のベースレイヤーの半額以下の値段でありながら、見劣りしないスペックなので、山ではもちろんのこと、普段着としてもガシガシ気軽に使えます。軽量なので着替えとして何着か持って行くこともできます。そういった意味では非常に優秀な1枚でしょう。

 

まとめ

様々なベースレイヤーがあると言えど、基本的に求められる機能は、汗を吸い取り蒸発させて、肌を快適にさせ体温を維持させること。その中で、アクティビティによって、運動強度が高ければ大量に汗をかくのでその処理が高いもの、トレッキングや登山では汗を処理しつつもしっかり体温を維持してくれることなど、優先される機能は異なってきます。これまでベースレイヤーを意識してこなかった人には、ぜひ今回の記事を参考にアクティビティに合った機能を持ったベイスレイヤーを使ってみてください。これまでとは全く快適性が違うはずです。ベースレイヤーを意識して着てきた人は、重要性は理解していると思いますが、人によっても発汗量や快適と感じる機能も異なるはずなので、もっと突っ込んで自分にぴったりの一着を見つけられれば、もっと快適に楽しめるようになるでしょう!

 

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