比較レビュー:登山にランに大活躍の超軽量レインウェアを着比べてみた【2016春夏】
アウトドアにおいて必携装備のひとつといわれているレインウェア(雨具)は、現在では季節や目的に応じてさまざまな種類が存在しています。
そのことについてはこちらの「最適なレインウェアの選び方」で詳しく説明していますが、個人的な話、最近では昔ながらの重くてかさばる雨具を携行する機会はめっきり減ってきているのが現状。その代わり手放せなくなっているのは、年を追うごとにどんどん高性能・多機能・便利になりつつある、羽根のように軽くてコンパクトな超軽量レインウェアです。
ここではそんな進化の著しいおよそ300g以下の超軽量レインウェアについて、各メーカーの最新主要モデルを着比べ、さまざまな視点から評価した「ベスト軽量レインウェア」を昨年に引き続きご紹介します。
【2018春夏モデル】での最新比較レビューはこちら↓↓↓
比較レビュー:今、トレイルランで一番使えるレインウェアはどいつだ? ランナーが実際に使ってみた2018
目次
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今回比較したレインウェアについて(2016年の傾向)
超軽量レインウェアとは、その名の通り基本的にどれもとにかく軽くてコンパクトであることが第一の特徴。従来のレインウェアが上着だけで軽くても300~500g程度あるのに対し、今回ピックアップしたアイテムはどれもおよそ300~100gという具合です。これらは耐久性の面から終日にわたる豪雨や数泊の縦走で使うには分が悪い一方で、その優れた携帯性や透湿性から、穏やかな環境(気温の高い季節、日帰り、低山など)で発汗量の多い活動に使うには最適といえます。
今年は昨年(2015年)以上に多くのブランドから最新モデルがリリースされたため、前回から引き続きのモデルも含めてテストアイテムを大増量。合計14アイテムをピックアップしました(昨年からモデルチェンジがなかったアイテムに関しては、今年も昨年購入したモデルでテストしています)。
2016年の大きな傾向として、これまで基本的には登山向けレインウェアのコンセプトをベースに軽量化されていったモデルが主流だったところに、今期はよりトレイルランニングを主目的として設計されたモデルが多く登場してきたことがいえます。今回の比較ではそうした傾向を踏まえ、まずその違いによってランキングが偏らないように配慮しました。その上でハイキング、ファストパッキング、トレイルランニング、バイクなどさまざまな目的のユーザーが比較・参考しやすいようにあらためて評価軸と評価内容を見直しています。
テスト環境
超軽量レインウェアのテスト期間は2016年3~8月の約6ヵ月間。低山から2,000m級の高山において、全アイテム好天(最低1日使用)・雨天(最低1ピッチ)での歩き・走りを最低限行ない、それ以外にはできる限り多くのいくつかのシチュエーションでウェアを着回し比較するということを複数回繰り返しながら執筆者本人のみでテストを進めました。逆にいうと、秋冬や3,000m級の山岳でのテストは行えていません。山の中では常に雨に見舞われることはないものの、短時間でも着替えながらすべてのウェアで降雨時の行動を経験しています。その他シャワーでの豪雨テストや、街中でランニングに着用して汗抜け具合の比較など極限状況もできる限り実用に即した状態を再現しています。
テスト結果&スペック比較表
評価結果まとめ ~タイプ別おすすめレインウェア~
総合力No.1
今回設定した評価基準で最も高い総合点を獲得したのは以下の2モデル。片やランニング、片やアルパイン・クライミングと異なるアプローチではあるものの、各ニーズにマッチした高い性能を備えながら、同時にレインウェアに求められる基本的な守備力と使い心地を高いレベルで実現しているという点では共通しており、その抜け目なさが高評価の大きな理由と言えるでしょう。
1)MONTANE MINIMUS 777 JACKET
ひとつめのMONTANE MINIMUS 777 JACKETは、まず何といっても肌触りの良さと生地のしなやかさ、透湿性を備えた3レイヤー素材でありながら重量は従来モデルから大幅減の143gという驚異的な軽さを実現している点が見事。軽量化のためにフード・袖・裾の調節機能が省略されたとはいえ、優れた立体裁断と各所に配置された平ゴムで難なく身体にフィットし、おまけにズレやバタつきを抑えてくれます。さらに夜間にも安全なリフレクターや胸ポケットに収納可能な使いやすさなど細部にわたる工夫も効いています。3レイヤーで100g台前半というとスペック的にはTHE NORTH FACE Strike Jacketが競合としていますが、こうした着用感や使い勝手の良さにおいて若干こちらの方に分がありました。ランニングに最適化されたモデルとして考えるのが一般的ですが、基本的な品質の高さからトレッキング・クライミングなど短期の山行に使うのも十分ありです。
2)Rab Flashpoint Jacket
Rab Flashpoint Jacketは昨年の比較テストに続いて今年も総合1位を獲得。今年は昨年ほどの衝撃は薄れたとはいえ、相変わらず従来型のレインウェアとして考えても決して見劣りしない防水透湿性と快適性を実現した3レイヤーは、ヘルメット対応で完璧に調節可能なフードや、軽い操作感の最新型止水ファスナーなど含めて、厳しい環境に耐えうる先進的で徹底した作り込みで他を寄せつけない完成度を誇っています。今期モデルでは身頃のシルエットがよりスリムになり機動性が向上した一方、(あくまで体感ですが)若干表面生地の詰まり具合が低くなっていることから防水(撥水)力がキモチ低下している気がします。クライミングなどのテクニカルなシチュエーションを想定したジャケットですが、こちらもハイキングから場合によってはランニングまで、アウトドア全般に活躍するオールラウンドな軽量レインウェアです。
コストパフォーマンスNo.1
THE NORTH FACE Strike Jacket
100g台前半という軽さでしかも3レイヤーという快適な着心地のレインウェアが2万円を切る価格で手に入ることを誰が予想できたでしょうか。Strike Jacketは、快適なトレイルランニングに求められるスペックに関してはトップクラスを実現しながら、比較的安価に入手できるという意味で、このカテゴリにおける大本命モデルといえます(実際今年5月のトレラン大会ではかぶっている人を多数発見)。まず新登場の独自素材HYVENT?Flyweightは、高い透湿性と3レイヤーのしなやかな肌触り、期待通りの快適さ。スリムなシルエットとコンパクトなフード、シャリ感の少ない表地でランニング中のストレスは軽減され、平ゴム+ベルクロによる機密性の高い袖口は雨の侵入も防ぎやすく、機能面からいっても決して手を抜いている部分はありません。トレイルランニングに最適であることは確かですが、夏の日帰りハイキング・トレッキングにも特に問題なし。これで街にも溶け込むデザインなのだから、コレ一着の汎用性の高さはハンパありません。結果、間違いなく今年のコストパフォーマンスNo.1。なお、よりランニングに特化したモデルとしてStrike Trail Hoodieもリリースされています。
ハイキング・トレッキングにおすすめNo.1
THE NORTH FACE Climb Very Light Jacket
全体の評価基準の中から主に登山に必要と考えられる項目(防水性・透湿性・快適性・耐久性・使い勝手)を抽出して評価した場合に最も高いスコアであったのがTHE NORTH FACE Climb Very Light Jacket。信頼性抜群の防水透湿素材ゴアテックスの新しい技術であるC-Knit Backerは、数値こそ非公表なものの防水性に関してはやはりゴアテックスの名に恥じない高いパフォーマンスを発揮。特に撥水力の持続性と裏地のもつ自然な吸水性による、雨での不快感の少なさが印象的でした。また裏地の柔らかい丸編みのニットはどんなモデルよりもしなやかで気持ちのよい肌触り。ヘルメット対応の大きなフードは頭の大きさに合わせて細かい微調整も可能なため、厳しい天候にも耐えうる仕様となっています。シルエットは細身でありながらも今回の中ではややゆったりしており、インナーに中間着などを着込んでも窮屈さが生まれないようになっています。
多くの最新モデルがどちらかというとランニングやファストパッキング向けでどんどん軽量化される一方、このモデルのように軽量化はある程度まででいいから、登山に必要な快適性と耐候性・耐久性をしっかりと残して欲しいというニーズは確実にあるでしょうし、そうしたユーザーにとっては下手に軽いモデルを選ぶよりも、コイツがベストの選択であるといえるでしょう。
トレイルランニングにおすすめNo.1
Berghaus ヴェイパーライトハイパーシェルジャケット
全体の評価基準の中から主にランニングに必要と考えられる項目(防水性・透湿性・機動性・重量性・収納性)を抽出して評価した場合に最も高いスコアを獲得したアイテムはBerghaus ヴェイパーライトハイパーシェルジャケット。良くも悪くも「走り」に特化した、端的に言って最も過激なモデルです。86gという重量と拳よりも小さな収納性、機動性の高さはいずれも全アイテム中トップ。着ていることすら忘れるほどの軽さにもかかわらず、通常の雨程度であればしっかりと弾いてくれるのだからスゴイというほかありません。透湿性に関して公表されているスペックは低め(10,000g/m2/24h)ですが、生地の薄さによって感覚的にはスペック以上に高く感じられます。
最も気に入っているのはこの生地の質感で、防水ジャケット特有のシャリ感がほとんど感じられず、まるでウィンドシェルを着ているかのように静か。肩や腕まわり、身頃もすべてがスッキリと細身のシルエットは動きやすさ抜群、風でばたつくこともなく、全体としてこれ以上ない走りの快適さが実感できます。
ただし、それらずば抜けたランニング適正と引き換えに、防水性、快適性、耐久性、衣服としての使い勝手に関してはどれも最低レベル。おそらくメーカーも当然それらは計算のうえで、総合的な観点からの使いやすさではなく、レースなど「ここぞ」という時にパフォーマンスを最大化させられることがこのジャケットの強みであり、そのために使用する場合であれば、迷わずこちらを選ぶとよいでしょう。