購入する前に知っておきたい!最適な登山用レインウェアの選び方

いのちをまもるギアとしてのレインウェア

はじめて山をはじめる人が道具を揃えようとすると「なんでこんなに高いのか!」と結構な確率で驚かれる、それが3大アウトドア・ウェアのひとつ、レインウェア(残りはベースレイヤーとトレッキングシューズ)。そうした人々はおそらくアウトドアにおける「濡れること」の深刻さを知らないので無理もありません。サバイバルの世界でいわれいてる「3の法則」によると、人は適切な体温を保持できなければ3時間程度しか生きられないとあり、荒天時いかに雨風を防いで体温を保つことが大切かということが分かります。

つまり日常で考える「雨具というイメージ」と、実際にアウトドアで必要なレインウェアの内容には天と地ほどのギャップがあり、その意味でレインウェアをはじめて購入するにあたっては、多くの気をつけるべきポイントがあります。それに輪をかけて最近ではレインウェア市場がさらに複雑化し、機能やデザインが細分化され、今では誰も、どれが自分にとって最適なのか自信を持って選べないといっても言い過ぎではない状況。そこで今回は、レインウェアを選んだことがない人でも分かりやすいように、必要なエッセンスだけを厳選して、レインウェアを選ぶ時に気をつけるべきポイントを3つにまとめてみました。

レインウェアについてはこちらの記事もおすすめ

目次

ポイント1:どんな種類を選べばいいの?

一言でレインウェアといっても「雨を防ぐ機能を持ったアウター(シェルレイヤー)」と言う意味においては、実際にはさまざまな種類が存在しています。しかもそれぞれは明確な区切りがなく販売されていたりするのが現状です。その場合、まずはそれぞれがどんなアクティビティ・役割のために作られているのか、得意・不得意が何なのかを知っておくことで、購入したあとで性能が足りていなかったり、逆にオーバースペックであったりなどの失敗を防ぐことができます。

防水・撥水機能を持った代表的なアウター(シェルレイヤー)比較表

種類 レインジャケット 超軽量レインジャケット プルオーバー レインポンチョ ハードシェル 撥水性ソフトシェル
イメージ (モンベル)mont-bell ストームクルーザージャケット Men\'s 1128531 SIRD シグナルレッド L アウトドアリサーチ Ms ヘリウム HD ジャケット ハイドロ/レモングラス Mサイズ (日本S) 19841215002005 MONTANE(モンテイン) MINIMUS SMOCK (ミニマススモック) (Blue spark) メンズ (S) イスカ(ISUKA) ウルトラライト シリコンケープ グリーン 275202 (アークテリクス)ARC\'TERYX ALPHA SV JACKET【並行輸入品】 12700 / SPRING2014 BLACK L ARC\'TERYX GAMMA LT HOODY Men\'s Poseidon-L アークテリクス ガンマLT フーディー メンズ [並行輸入品]
特徴 フロントファスナーが全開するジャケットタイプで、基本的にパンツとセットで着る。 形はレインジャケットと同様だが、より軽量・パッカブルな素材を使用したモデル。 プルオーバータイプのレインウェア。 1枚の生地を頭からバックパックごと被るように着ることができるモデル。 冬などの過酷な環境で常時着用することを想定し、より耐久性のある生地や機能を取り入れたジャケット。 ソフトシェルに撥水機能が付いているケース。
メリット
  • バリエーションが豊富
  • 着脱が簡単で臨機応変に調節可能
  • 軽量・極薄で持ち運びが楽
  • 晴天時でも着たまま快適に行動できるため、不意の風雨で慌てないですむ
  • 構造的に高い防水性能
  • ジッパーがない分軽量
  • 動きやすい
  • バックパックを含めて防水できる
  • パンツ無しでも下半身が濡れにくい
  • 結果的に軽量
  • より過酷な状況に対応する高い防水・防風・耐久性能
  • 通気性・伸縮性抜群で、着たまま快適に行動できる
  • 小雨程度であれば雨具の必要がない
デメリット
  • 大きなデメリットはない
  • 一般的に防水・防風性能はレインジャケットに比べて低い
  • 耐久性が低い
  • 着脱の手間がかかる
  • 選択肢が少ない
  • 強風に弱い
  • 防水性・透湿性など基本的な防水性能は低いので、豪雨には耐えきれない
  • 選択肢が少ない
  • ハイキングにはオーバースペック(重い・かさばる)
  • 高価
  • 長時間の雨や集中豪雨などに見舞われたら機能しない。

選ぶときのポイント:

  • 1着目ならば迷わずレインジャケット(+パンツ)を選ぶ。
  • 低山のハイキングやファストトレッキングにしか使わない、とにかく軽量化したい場合にはプルオーバーやポンチョも
  • 超軽量レインウェアやハードシェルは特定の目的のための2着目として考える。
    超軽量レインウェアについての説明はこちらから
    ハードシェルについての説明はこちらから
  • 撥水機能(表面についた水滴を弾くワックスのような役割)をもったソフトシェルやウィンドシェルは防水機能(水分を通さない)はなく、本質的には雨具にはなり得ないので、その認識を持った上で活用すれば使い勝手の良いウェアになる。

ポイント2:どんな素材を選べばいいの?

どんな種類のウェアにするかが定まったら、次に選ぶのは素材・生地です。しかしこれが意外とややこしい。

本来、雨具とは外からの雨を防げれば濡れないのだから、レインウェアはとにかく水に対して堅牢な壁を作ればいいと思うのが一見正しいように思われますが、人間の身体の場合、実際にはそうはいかないのです。人間は絶えず発汗しており、特にアウトドアのような激しい活動では全身から汗をかきます。単なるビニールのような生地1枚の雨具を使ってみると、外からの雨を防いでいるはずなのに服の内側は汗で濡れまくり、これでは雨具として不十分であったということが分かります。それでも無いよりはマシ、これが大昔の状況でした。

そうした状況を変えたのが、70年代に発明されたGORE-TEXです。簡単に言うと「外からの水滴は通さず、内側からの水蒸気(汗でも空気でもない)は通す」という魔法のような生地(正確には膜)。これによってレインウェア業界に革命が起き、レインウェア市場は、ほぼGORE-TEXの天下となっていきます。こうしてレインウェアの生地・素材は「防水透湿素材」が当たり前の時代となり、レインウェアは文字通り”濡れない”ウェアになっていくのです。GORE-TEXについてのもう少し詳しい説明は検索するとたくさん出てくると思いますので、ここでは割愛します。

さて現在ですが、特許の影響で90年代からさまざまなメーカーによってGORE-TEXと同じような仕組みの独自コンセプトを打ち出した製品開発競争が始まり、それに負けじとGORE-TEX側も新機軸を打ち出しながら新製品で対抗し、お互い切磋琢磨している状況です。以下に主なメーカーの防水透湿素材を一覧にしています。残念ながらすべての製品を一律に比較していないため客観的な性能の優劣は一概につけられないのですが、ユーザーが購入するときの目安として、メーカー発表資料に基づいた大まかな特徴を比較してみたいと思います。

種類 特徴
GORE-TEX
  • 言わずと知れた防水透湿素材の王様、最高クラスの防水性能と耐久性を誇る。
  • 基本的にはあらゆるアクティビティに適しており、ウェアだけでなくあらゆるアウトドアギアにも応用されている
GORE-TEX Pro
  • 耐久力・透湿性を強化した、より過酷な環境で常時着用することを想定
  • 冬山での使用に最適
GORE-TEX Active
  • GORE-TEXのなかで最高の透湿性
  • ランニングなどの短時間で活動量の多いアクティビティに最適
GORE-TEX Paclite
  • GORE-TEX生地をより軽量・コンパクトに仕上げるPaclite技術を用いたモデル
  • ハイキングやサイクリングなどの重量・スペースを抑えたいアクティビティに最適
GORE-TEX C-KNIT
  • 軽量・コンパクトさに加えて着心地・快適さ・耐久性も強化
  • 製品次第で春夏ハイキングから残雪のハードシェルとしても、幅広いアクティビティに対応
Polartec NeoShell
  • ソフトシェルの優れた通気性、換気性、伸縮性と、ハードシェルの防水機能を兼ね備えた素材
  • スキー、クライミング、ハイキング、フィッシングなど幅広いアクティビティに対応
Pertex Shield+
  • 防水・透湿・防風性を兼ね備え、さらに羽根のような軽さと柔らかさ、高い収納性をもった素材
  • ランニング、ファストハイキングやサイクリングなど軽量コンパクトが求められるアクティビティに最適
eVent
  • GORE-TEXに似た構造で防水透湿性を備え、GORE-TEXより高い透湿性を実現しているとされる素材
  • GORE-TEX同様アクティビティに応じた複数のラインナップを揃え、幅広いアクティビティに対応
Patagonia H2No
  • パタゴニア独自の品質基準「キラーウォッシュ」をはじめとした厳しいテストよって保証された防水・透湿・耐久性を備えた素材
  • パタゴニアのさまざまな用途のウェアに採用され、幅広いアクティビティに対応
THE NORTH FACE HyVent
  • ノースフェイス独自の防水透湿素材で、防水性と透湿性のバランス、そして低く抑えられた価格が特徴
  • アクティビティに応じた複数のラインナップを揃え、幅広いアクティビティに対応
Mountain Hardwear Dry.Q
  • MHの独自開発素材で、(NeoShell同様)高い通気性・換気性を誇る
  • アクティビティに応じた複数のラインナップを揃え、幅広いアクティビティに対応

選ぶときのポイント:

  • はじめての1着を選ぶなら、信頼性で頭ひとつ抜けているGORE-TEXを。GORE-TEXとそれ以外では防水性能・耐久性が確実に違います(他のメーカーももちろんそれなりに十分な性能は備えているとは思いますが)。
  • ある機能や目的に特化した素材となっているGORE-TEXの各プロダクトは目的がハッキリしている場合に選ぶようにしましょう。
  • 透湿性で選ぶならNeoShell、eVent、Dry.Qも十分ありです。ただし長期山行や冬までを視野に入れるのであれば信頼性の高いものを。
  • 軽量さで選ぶならPertex Shield+やPaclite、C-KNITその他独自素材を。全天候カバーできるほどの防水・耐久性は望めないものの、低山・日帰りや真夏、ファストハイキングなど軽量でいきたい場合にはとても有効。
  • スペックでみればGORE-TEXに迫る性能を有しているメーカー独自の防水透湿素材はコストパフォーマンス的に優れた製品が多い

ポイント3:どんな機能に気をつければいいの?

軽さ・収納性は問題ないか

一般的にレインウェアはより過酷な状況(残雪やバックカントリーなど)を想定すればするほど重量が増していき、逆に上着としての利便性をそぎ落としていけばいくほど軽量・コンパクトになります(ポケットや脇下のピットジップ、フードのアジャスターなど)。8月の日帰りハイキングに残雪期にも使えるレインウェアをもっていくのは正解か?完璧な装備をとるか、軽さをとるかという問いに正解はありません。最終的にいえることは、自分の経験、装備全体と目的の双方を天秤にかけて判断していく必要があるということです。

シームテープ・ファスナー・カフ・チンガードなど浸水を防ぐ工夫がなされているか

レインウェアは生地がどれだけ完全防水だったとしても、実際には完全に水の進入を防ぐことは不可能。雨はあらゆる所から身体に流れ込んできます。そのなかで少しでも水の浸入を防げるかどうかはこれらのパーツの作りの善し悪しにかかっています。シームテープとは衣服の縫い目からの浸水を防ぐために、裏側に貼り付けられたテープで、きちんと作られていない雨具にはこれが無い場合があります。そして高品質なレインウェアではこのシームテープが必要最小限の幅に設置され、極限まで軽量化が図られていたりします。

DSC04831

裏地の縫い目部分に貼られたシームテープは幅や厚みだけでなくそれ自体に透湿性があるかなど、各社細かい改良が施されている。

次に浸水の危険があるファスナー部分のチェックポイントは、現在多くのレインウェアで採用されている「止水ファスナー」や、少し前まで主流だった「防水フラップ」などが採用されているか。軽量化のため防水フラップは少なくなってきているかもしれませんが、個人的には防水フラップの方がより防水性は高いと思われます。

止水ファスナー(左赤枠)はそれ自体に防水性があり軽量だが、若干感触が固い。一方フラップ付きファスナー(右赤枠)は感触が滑らかな代わりに、フラップ分だけ重量がかさむ。

 

最後に水の浸入箇所として気をつけたいのがカフとチンガード(襟)部分の作りです。きちんと作られたカフは袖口を調節できるフラップが付いています。細部まで行き届いた上質なチンガードはファスナーを最後まで閉めても口元を不快感なく覆ってくれ、水の浸入を妨げるような縫製になっているはずです。

DSC04836

最近のカフはマジックテープで調節できるタイプ(右)が主流。軽量タイプの一部はゴムでしめるだけのタイプ(左)もあるので注意。

chinguard

チンガードを締め切ったとき、折り返しがある(右)とそこから水が浸入しにくい。さらに口元にファスナーがあたる不快感も防げる。

フードは調整し易いか、フィットするか

登山向けレインウェアのフードはヘルメットの上から被れるように、頭の大きさよりもかなり大きめに作られていることが一般的です。そうしたフードは、キャップの上あるいは直接フードを被ったときのためにサイズ調節できるドローコードが付いているはずです。気をつけるポイントとしては、その調節がしやすいかどうか、調節の結果自分の頭にフィットするかどうかなどです。

ポケットの位置・数・大きさは満足か

レインウェアのポケットの多くは街で着るジャケットより少し高い位置に配置されています。これはバックパックのヒップベルトを締めたときでもアクセスしやすいようになっているためです。ポケットは大きくて多ければ良いにこしたことはないのですが、軽量化との兼ね合いで最小限に抑えられているものもあり、悩ましいところです。

DSC04843

写真のようにポケットが上についていれば、ヒップベルトがレインウェアの上から巻かれてもポケットにアクセスしやすい。

 

ベンチレーション(体温調節)機能はついているか

腕から脇下にかけて取り付けられたジッパーがベンチレーション(あるいはピットジップ)。いくら透湿性能が優れていても、高温多湿の環境下で激しく運動すればどうしても内側の湿気は排出しきれません。そうしたときにこのベンチレーションを開ければ通気性が格段に上がり、かなり快適な行動が可能となります。あるにこしたことはない機能ですが、こちらも同じく軽量化との兼ね合いです。

DSC04841

写真は脇下についたポピュラーなタイプ。他にも脇腹辺りにあったりもする。その他ポケットがメッシュ状になってベンチレーションの役割をするタイプもある。

 

着たときのフィット感・肌触り・動きやすさは大丈夫か

何だかんだいって長い時間着て動くわけですから、最終的に衣服としての着心地や手足の動かしやすさは重要です。特に内側に汗をかいても快適でいられるように、裏地の肌触り、立体裁断による動きやすい仕立てになっているか、腕を動かしたときシャカシャカと音が不快でないかなど、やはり実際に着て確認するのがベスト。またレインウェアは中に防寒着を着たりする場合もあるので、すこし余裕があるくらいのサイズを選ぶのがよいでしょう。

まとめ

レインウェアはアウトドアウェアのなかでも特に素材や機能の進化が激しく、また各メーカーとも色々な工夫や努力が投入された非常にアツいカテゴリです。素材についても実際にはもっと詳細な分類があるのですが、そのひとつひとつを説明していくと文字数がいくらあっても足りないくらいになってしまうので、ここでははじめて選ぶ人でもカオスにならないようある程度主要なもののみ説明し、最低限の基準とノウハウを紹介しました。編集部がレインウェアを自腹購入して横並び比較したレポートもありますので、そちらも合わせて読んでいただけるとさらに納得していただけると思います。

レインウェアについてはこちらの記事もおすすめ

山仲間にシェアしよう!

58 Shares

最新ギア情報をゲットしよう!