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【2025-2026】雪山用の登山靴選びでは何をどう気をつければいいのか?買って後悔しないための選び方のポイントと今シーズンのおすすめモデル

冬山登山に限らず、山道具のなかでも最重要ギアのひとつと昔から言い続けてきている登山靴についてのベストモデルを考えてみます。

Outdoor Gearzineで「初めての雪山」的なテーマのイベントを行うと、たいていの場合、参加者の皆さんはそこで初めて冬山用の登山靴をどうするかについて考えることになるのですが、何をどう気をつければよいかノーアイデアという人がほとんど。日常ではうかがい知れない雪山の世界ですから、想像がつかないのは当然と言えば当然です。

実際、雪山登山では無雪期の3シーズンとはまったく違う過酷さや困難があり、最適な靴選びでも「歩いてみなければ分からない」注意すべきポイントがたくさんあります。しかも昨今冬用の登山靴はさまざまな道具カテゴリの中でも特に値上がり額の激しい部分であり、履ける場面は少ないのに、とにかく値段も高い。そんなわけで失敗もしたくないし、なるべく価格も抑えたい、そんな悩ましい本音が冬山登山靴選びには横たわっています。

そこで今回はいつものように2025-26シーズンに販売されている冬山向け登山靴約40点(ギリギリ雪用といえるかどうかというモデルも含めると71)をくまなくチェックし、実際に履いたりお店で試し履きしたりして、今シーズンのベストモデルを厳選。また僕がこれまでに遭った体験をもとに、自分で候補を絞り込んでお店で試して最終的に決めるまでに気をつけるべきポイントをまとめましてみました。それではさっそくどうぞ。

なお、ここでのおすすめモデル紹介は各部門で1点ないし2点しか紹介していませんが、その他のおすすめを含めたさまざまなベスト候補全点の比較一覧表はメンバーシップになっていただくことで閲覧することができます。

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冬山用登山靴選びで失敗しないために押さえておくべき5ポイント

このページを読んでいる人の中には、もしかすると「冬山用登山靴って、夏山で履いている丈夫な登山靴でも別に大丈夫だよね?」とひそかに思っている人がいるかもしれません。気持ちは分かります。何せ年に数回しか履かないかもしれないにもかかわらず、結構なお値段してしまうのが冬靴です。

ただ、一応それに対する個人的な答えとしては「最高の気象条件で初心者向けの難易度であれば、無雪期用の登山靴でも雪山登山ができてしまうこともある」というのが実際です。

何が言いたいかというと、万が一行けたとしてもそれはたまたま運が良かった日、ということでしかなく、それで冬山はまぁ大丈夫と判断するのは非常に危険だということです。1日のうちに天候や地形の難易度がコロコロ変わる冬山で、そんなギャンブル的な判断をするのはまったくおすすめしません。もちろんだからと言って大金をはたいてでもオーバースペックでいいというわけでもありません。ただ大前提として最低限の冬山・雪山への備えができているブーツを選ぶのは、やはり命の値段と天秤にかけて考えると妥当なのだと考えましょう。

さてそんな冬山用マウンテンブーツの、通常の登山靴選びとは違う独特のチェックポイントについて、優先順位の高い順に書いていきます。

そのブーツは十分に暖かいか?

スキーをする人なら分かると思いますが、常に外気や雪に触れている冬靴は想像以上に冷たくなり、油断していると足先がすぐに冷たくなってきてしまいます。このため雪山用のブーツを選ぶ際には、必ず何らかの「断熱材」が挟まれているモデルを選びます。重要なのはここからで、たいていの冬靴には断熱材が入っているものですが、ただしモデルによって断熱材の種類や厚さは異なります。それによってブーツの保温性の高さは当然違ってきますので、断熱材の種類やボリュームの大小は冬靴の快適さを決める大きな要素として留意しておくのがいいでしょう。

ブーツの断熱性を決める要素は以下の三つ「アッパー断熱材の種類と厚み」「ダブルブーツ構造(後述)」「ゲイター構造(後述)」(あと細かい点では「インソールの保温性」)です。

シングルブーツか、ダブルブーツか?

シングルブーツとはいわゆるいつもと同じ構造の登山靴のことを指しますが、一方ダブルブーツはインナーブーツとアウターブーツが分離する構造です。これによって高い断熱性を実現し、シングルブーツとは比べものにならない暖かさを提供してくれます。とにかく暖かい冬用ブーツを選びたければ、まずこのダルブーツ構造であるものを探しましょう。ただその分、シングルブーツよりも少し高価ではあります。

また、ダブルブーツ構造のもう一つのメリットとしては、インナーブーツが取り外し可能なので、数日間の登山では夜間にライナーを取り外してシュラフの中に入れておき、確実に乾かすことができるという点です。これは冬山テント泊縦走にとってはかなりのメリット。夜明け前のテントの入り口で凍りついたブーツに足を突っ込むほど辛いことはありませんから。

ただし、ダブルブーツはその高い保温性と引き換えに重量とある程度のかさ張りは覚悟しなければなりません。快適性重視か、機動性重視か。購入前に自分の想定する季節や山域、スタイルなどの方針から、どちらを重視するかを決めておきましょう。

ちなみに僕が初めて購入した冬山用登山靴は、今では懐かしいコフラック社のプラスチックブーツというダブルブーツ構造の登山靴でした。とにかく寒さ知らずでしかもテント内もインナーブーツで動きやすく快適と、少し無理してでも買って本当によかったと満足した記憶は今でも忘れません。

スノーゲイターはアリか、無しか?

ここ数年、ゲイター付きのマウンテンブーツが流行している気がします。これは端的に言うとシングルブーツに固定式のゲイターが覆っている構造のブーツで、ダブルブーツほどではないですが多少の保温性と耐候性・耐久性を高めてくれます。シングルブーツからわずかな重量増で高い保護性能を発揮してくれるので、同じモデル同じ価格で「有り・無し」が選べるような「モンベル アルパインクルーザー 3000 ウィズ ゲーター」などでは選択肢としては大いに検討に値するでしょう。

縦走向きか、クライミング向きか?

断熱性の高い冬山用の登山靴には、さらに大きく2つの傾向というか、タイプに分けられます。ひとつは「縦走向け」モデルで、大きな特徴は快適さと安定性を重視している点。比較的、足首の高さはハイカットでアッパーも分厚く堅牢に作られているのが特徴です。もうひとつは「クライミング向け」というか、よりスピーディでテクニカルな冬山に向いているタイプ。これらは最低限の断熱性とプロテクションを保ちつつ重量を抑え、そのうえでより足首の自由度も高く、動きやすくしているのが特徴です。もちろんきっぱりと2つに分かれているわけではなく、各モデル比重の置き方が微妙に異なることで個性となっています。

無雪期であれば「軽いは正義」と言っていられましたが、こと冬山に関してはあまり軽さばかりを重視した結果、場合によっては不快さと命の危険に関わってきてしまいますので、ある程度の経験者でアイスクライミングやバリエーションルートをガシガシやっていきたいという人以外は、快適性と安全性を重視した「縦走向け」をおすすめします。

クランポンはワンタッチ対応か、セミワンタッチ対応か?

冬山用登山靴ではほとんどといっていいほど「クランポン」を装着することを前提につま先と踵、あるいは踵のみにコバがついています。両方についている場合はワンタッチアイゼンが、踵のみの場合はセミワンタッチアイゼンが取り付けられます(ちなみに前後にコバがついていなければバンド式のクランポンしか取り付けることはできません)。

ワンタッチアイゼンの主なメリットはより固定力が高く前爪だけで荷重をかけたとしてもクランポンがしっかりと踏ん張れるという点。せっかく冬靴を履くならばワンタッチアイゼンが付けられた方がいいのか、と考えがちですが、アイスクライミングで垂直の壁を登るのでなければ、経験上ワンタッチアイゼンでなくともまったく問題ありません。オーソドックスな雪山縦走や、急斜面を前爪で立ち込むということがほんの一部分である程度という場合、ワンタッチアイゼンでなければならないということはありません。またワンタッチ式とバンド式の違いとして、靴に固定するときにどうしてもバンドを締めつけ過ぎて足の血行が悪くなる(足が冷たくなる)ということがありますが、個人的な経験上セミワンタッチアイゼンでもこの点は十分に解消されますので、後ろのコバだけでセミワンタッチ式であったとしても気にする必要はないでしょう。

なお、その前提としての基本的な登山靴の選び方については、本サイトの「ジャンル別・買ってよかった神登山靴(トレッキングシューズ)とお店で登山靴を選ぶ前に知っておくべき6つのポイント」で詳しく書いておりますので、ぜひ読んでいただければと思います。

【用途・こだわり別】ベスト・冬山用登山靴

ベスト・冬山縦走向け登山靴(総合ベスト):LOWA アルパインエクスパート II GT/La Sportiva ネパール エボ GTX

ベストモデル選出、まずは僕が今シーズン最も完成度が高いと感動したモデルから。ドイツの老舗ブランド、LOWAの「アルパインエクスパート II GT」は、冬山縦走をはじめとして、テクニカルな登山までオールラウンドに幅広く対応する非常に汎用性の高いブーツ。その幅広さと信頼性の高さはまずどんなスタイルの登山者にもおすすめできるというところが高評価。

さらに比較的シンプル軽量な構造でありながら、頑丈なレザーアッパーと高断熱なPrimaloft®400インサレーションを封入した保温性の高さは他にはない魅力。そしてワンタッチアイゼン装着にも対応する機能性と剛性の高さ。方々に抜かりなく、暖かくて快適なシングルブーツです。

足入れした時のヒールカップ含めたフィット感の高さにも感心しました。オールラウンドであるということは、裏を返せば特徴が中途半端ということも場合によってはあり得ますが、冬山という過酷で複雑な状況下であらゆる状況に対応できるブーツとして、この完成度の高さは他にない魅力です。

おまけに価格もそこまでとびぬけて高いということもないのはありがたい。

安定の定番冬山登山靴、そして意外にもゆったりと快適なフットボックス「La Sportiva ネパール エボ GTX」

日本で「冬山用登山靴といえば」これと言ってもおかしくない、冬山用登山靴の代名詞的存在が、スポルティバ「ネパール」シリーズ。その中での代表モデル「ネパール EVO GTX」は、20年以上経た今でも冬用登山靴のスタンダードであり続けています。

堅牢性と柔軟性、断熱性にフィット感と、こちらも過酷な冬期登山シーンに必要とされる機能を高いレベルで兼ね備えた、冬の山岳におけるあらゆるアクティビティに対応するレザーブーツです。

今シーズン、履き比べてみてあらためて感じたのはスポルティバの冬用ブーツは同社の無雪期用ブーツと比べて非常にゆとりがあって自分のようなやや幅広甲高の足にも優しいということ。この余裕をもったラスト形状に、取り外し可能なリムーバルタングで足へのフィットを比較的自由に調節できることで、僕だけでなく多様な足の形の登山者に対して足当たりを最適化できるという点もポイントが高い。

ベスト・タフネス&高断熱マウンテンブーツ:SCARPA ファントム6000HD/BOREAL ジーワン ライト

かつての自分がコフラックのプラスチックブーツで味わったような「厳冬期のアルプス縦走でも寒さ知らずの快適な保温性」を手に入れたいのであれば、ヒマラヤのような高所登山も視野に入れた高い断熱構造の登山靴がベスト。

ただ実際のところ、この種の登山靴を探求しだすとスペックも製品価格も青天井となってしまうので、ここまひとまず定価20万円以下という縛りを設けました。

その中でも「スカルパ ファントム6000HD」最高レベルの断熱性とパフォーマンス、快適さを有している文句のつけようがないハイエンド・マウンテニアリング・ブーツです。

高断熱の理由はなんといってもその高品質なトリプル構造にあります。

まずインナーではPrimaloft® BlackとPrimaloft® Gold EcoとOrtholite®/Aerogel®フットベッドを組み合わせ、アウター(シェル)はマイクロファイバーの表面とWintherm®、アルミニウムフィルムなどによる8層断熱システム、そして最外層にはSchoellerによる柔軟性の高い表生地に、防水透湿メンブレンを組み合わせたゲイターと、幾重にも張り巡らされた断熱性と耐候性向上のための工夫によって、厳冬期での圧倒的な安心感をもたらしてくれます。おまけに重量はクラス最軽量レベル。極地での困難でテクニカルなルートを目指すアルピニストはもちろんのこと、厳冬期の悪天でも寒さや不自由さ、不快感を少しでも避けたいと思うすべての冬山愛好家におすすめできます。

価格が魅力のダブルブーツ構造「BOREAL ジーワン ライト」

ただ一方で、そんなに思い切った金額は出せないけど、少しでも保温性の高い本格冬山登山靴が欲しい、という人のためにおすすめなのが、「Boreal G1」。ベーシックで重厚なブーツですが、化繊中綿の取り外し可能なインナーブーツを備えたダブルブーツ構造では最も手頃な価格で入手できる本格冬山縦走靴。2010年代から細かなアップデートを重ねながらのロングセラーという点も信頼が置ける。

ベスト・軽量&テクニカル冬山用登山靴:SCARPA ファントムテックHD/La Sportiva ジーテック

これまでは主に冬期雪山縦走を想定した登山靴を選んできましたが、ここで紹介するモデルは強さ、快適さ、汎用性よりもスピードと反応性、器用さを最重視したいわば「レーシングカー」であり、テクニカルな氷壁やミックス帯の突破に重点を置いた登山靴でのベスト・モデル。その中でも最も登攀性能とフィット感、保温性、耐久性に優れた総合バランスの高いテクニカル・マウンテン・ブーツとして挙げたいのが「SCARPA ファントムテックHD」でした。

Primaloft® GoldとOrtholite® O-Thermを採用した高い断熱性とHDry防水メンブレンを搭載した耐久性・伸縮性に優れたSchoeller生地のゲイターは高いプロテクションと通気性を有しているので冬山登山にも十分応えられます。登攀性能についても、高く足首をカバーするゲイターがあるおかげでインナーのブーツは足首の屈曲を妨げず、大きな動きでも抵抗感なく動かすことができました。重さも縦走向けモデルに比べれば大分軽いです。

尖ったテクニカルブーツ中でも特に尖りまくった「La Sportiva ジーテック」

「ファントムテックHD」は冬山用の中でも比較的尖ったモデルではありますが、さらにもっとアイスクライミングなどの急峻な、スピーディかつ縦の移動に特化して優れたモデルという場合には「La Sportiva ジーテック」も侮れませんでした。

とにかくその軽さは冬靴とは思えないものがあり、600グラム台前半という重量はまるでハイキングブーツと変わりません。5mm厚カーボンプレートの内蔵されたソールユニットを含め、徹底的に無駄を省いた薄手軽量構造に加え、効率よく保温するためのダブルブーツ+ゲイター構造がここまで軽量ながら最低限の断熱力を実現。足首の可動性もいわゆる冬山靴の高い保護性ではなく、岩場を舞台とするアルパインブーツの自由さが明らかに感じられます。この絶妙なバランスをキープしたうえでの大胆な割り切りの見事さは、じっくり安全に深い雪を長く歩くというのではなく、アプローチから登攀、下降のすべてにおいて素早く繊細な動きが求められる、軽快なアルパインミッションにはこれ以上なく最適なモデルと言えるでしょう。

ベスト・低価格&エントリー向け冬山用登山靴:mont-bell アルパインクルーザー1000 ウィズ ゲーター

とにかく最小コストで冬山登山を始めたい、そんな人に現状ピッタリの選択肢がモンベルの「アルパインクルーザー1000 ウィズ ゲーター」。モンベルではこの上に2800、3000という本格雪山用ブーツがラインナップされているので、こちらは初めての雪山(低山)ハイキングで履くビギナーに向けて作られた登山靴という位置づけです。初の雪山でいきなり北アルプスや八ヶ岳に登る人はいないと思うので、その意味では価格を抑えるためにかなりカバー範囲を割り切った作りといえ、最小限の保温材に最低限の剛性、正直本格的な冬山用登山靴として考えるとやや物足りないスペックと作りではあるのですが、個人的には保温材の入っていないアルパインブーツで雪山に行くよりはマシだと思います。そして今シーズンからこのゲイター搭載モデルがラインナップされ、これまで以上に雪にも強くなりました。

ただ注意点としてはモンベルの登山靴は他のどのブランドと比較してもラスト形状がやや広めに作られており、人によっては靴の中で足がよく動き過ぎてしまうかもしれません。個人的にはフィット感をはじめとした履き心地の良さという点ではあまりいい印象がないモンベルですが、基本的な機能に関しては問題ないので、足型が合うことが前提で予算で選ぶならば有力な選択肢であることは間違いありません。

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