快適な山歩きのための第一歩、お店で登山靴を選ぶ前に知っておくべき6つのポイント

登山靴は快適な山歩きのための第一歩にして、道具選びの最難関種目

「ところで、その靴でどの辺の山を歩こうとしてるんだい?──」

登山靴をお店で選んだことのある人ならば、誰もが聞いたことのあるこのセリフ。それくらい山のお店ではよくなされる問いかけですが、返答に困る人も多いのではないでしょうか。

確かに登山靴(トレッキングシューズ)には実は多くの種類があり、それぞれにふさわしいエリアやルートが存在するのも事実なので、店員としてはそれを知るために当然のように発しているのだということは理解できます。ところがお客さんである自分は、突然の質問に返答に困ることが多々ありました。それは質問自体が悪いということではなく、質問のされ方として、どう答えていいのか分からないからです。

お客側は皆が皆もう登る山も日程も決まっているという人ばかりではない(実際自分も買うときにいつも「この山」と決めている分けではない)し、たとえ目当ての山があったとしても、その山(コース)のためだけの靴が欲しいわけでもないのが現実なわけで(みんなできるならいろいろな山に使える靴が欲しいに決まっているし、そういうものがあると思うのが自然)。

しかも万が一ズレた返答でもしようものなら、その店員は待ってましたとばかりに「やれやれこれだから素人は……」と首を横に振りながら、その靴にふさわしい山やコースはこうだとマウンティングしてきがちなときがママあって、そのたびになんだか悪いことをしているみたいで何とも切ない気持ちになります。こんな経験、ぼくだけでしょうか。

いずれにせよ、山の靴選びは数多ある一見似たようなモデルのなかから自分に合った1足を絞り込まなければならないのに、それぞれは外側からは分かりにくい微妙な違いしかなく、にもかかわらずなぜか万人とって分かりやすいカテゴリやランク分けなどが存在しないため、結果ついつい言われるがままに望んでいたものとは別ものを選んでしまう。山登りを20年以上やってきて、相変わらず登山靴選びにはこの不幸な現実があると感じています。

基本的に舗装されていない凸凹道を重荷で長い距離歩かなければならない登山靴は、わずかな違和感やズレが徐々に蓄積し、結果として疲れや怪我に繋がりかねません。それだけに、もちろんできる限り価格が安いに越したことはありませんが、だからといって登山靴だけは妥協してはいけない最も重要なアウトドア・ギアでもあります。また一方でいくら高性能で高品質な登山靴であったとしても、自分の足に合っていなければその性能も意味がないということもまた事実。その人にとって最も適した靴はその人の足しか分からない、ここがアウトドア・シューズ選びをさらに難しくしています。

今回はそんな山を安全・快適に過ごすための第一歩である登山靴、あるいはトレッキングシューズについて、お店で切ない経験をしてしまう人を少しでも減らせるようお店やオンラインショップで自分にとって最高の一足を選ぶために知っておくべきポイントについてまとめました。

選び方:トレッキングブーツを賢く選ぶ6つのポイント

ポイント1:登山靴のタイプ ~それぞれの得意・不得意な山や登山スタイルを知る~

昨今のアウトドア・アクティビティの多様化にともない、最近では登山靴も目的や歩く場所(地形)、歩行スタイルなどに合わせてどんどんジャンルが増えてきているのは、想像に難くないことだと思います。いざ自分のシューズを買おうとしたときに、何の予備知識もなく店頭に並んだ靴を見ただけでどのタイプが一番自分のスタイルに合っているのか、すぐに分かる人は世界中探してもいないはずです。

そこでまずは下の表で登山靴の一般的な分類と特徴をまとめてみましたので、ひとまずは自分が選ぶべき登山靴の大まかなタイプを検討するのをおすすめします。これを念頭に入れてお店の人に声をかければ、間違った方向には誘導されないはず。もちろんこの分類はどこでも通用するような統一的・客観的な線引きではなく、このためモデルによっては境界のあいまいなもの、幅広い範囲をカバーしているものなどもありますのでそこは注意が必要です。

登山靴(アウトドア向けシューズ)のタイプと特徴比較

タイプトレイルランニングシューズアプローチシューズハイキングシューズ(ブーツ)トレッキングブーツアルパインブーツウィンターブーツ
イメージ
最適なシーン
  • トレイルランニング
  • 軽装備での日帰りハイキング
  • 外岩クライミングでのアプローチ
  • 岩場含めた多様な地形を含んだコースでの軽装ハイキング
  • 無雪期の日帰り~小屋泊まりハイキング
  • 無雪期の日帰り~小屋泊まり~テント泊トレッキング・縦走
  • 条件の良い残雪期のトレッキング
  • 無雪期~残雪期での岩稜帯を含む日帰り~テント泊トレッキング・縦走
  • 冬山登山
  • アイスクライミング
長所
  • 軽くて柔らかい
  • 衝撃吸収性に優れ疲れにくい
  • 通気性が高い(非防水モデルの場合)
  • 比較的軽くて柔らかく履きやすい
  • オフロードや岩で滑りにくく、つま先で細かいホールドを掴みやすいため岩場で歩きやすい
  • トレッキングシューズとしても十分使える
  • 軽量で柔らかく歩きやすい
  • クッションも厚めで疲れにくい
  • そこそこ丈夫
  • グリップにも優れ悪路に強い
  • ソールが硬いため重荷や凸凹の岩場の歩行で足どりが安定する
  • 急斜面や岩場でつま先立ちすることも容易
  • 堅牢で耐久性が高い
  • ソールの溝が深いためぬかるみでもグリップ力を発揮
  • さまざまな過酷な地形で安定した歩行が可能
  • 堅牢性と耐久性、安定性、プロテクションに優れる
  • クランポン(アイゼン)が装着でき、岩と雪のミックスなどでも歩ける
  • アルパインブーツのライナーに保温材が入っているモデルで、雪山で足が冷たくなりにくい
  • 最高レベルのプロテクションと耐久性
デメリット
  • 相対的に堅牢性やサポート力、耐久性が低い
  • ソールの溝は浅めで柔らかいため深いぬかるみなどでは滑りやすい
  • 小石や木くずなどが靴に入りやすい
  • (強いて言えば)トレランシューズほど走りやすくなく、ハイキングシューズほど歩きやすくもなくという中途半端さ
  • ソールが柔らかいため登攀には向かない
  • 荷物が重いと安定性に欠け、足裏も疲れやすくなる
  • 重い
  • ソールが硬く舗装道路や平坦な道ではやや歩きにくく、疲れやすい
  • やや蒸れやすい
  • 非常に硬く、重たいので軽装備の場合疲れやすい
  • 平らな道や舗装道路は歩きにくい
  • 蒸れやすい
  • 非常に硬く、重たいので軽装備の場合疲れやすい
  • 平らな道や舗装道路は歩きにくい
  • 蒸れやすい

舗装されていない道を歩くことがほぼ初めてで慣れていない人は(おそらくいきなり難しい山に行くことはないだろうから)スニーカーの延長感覚で履けるハイキングシューズをはじめとした柔らかめの登山靴がおすすめ。一方トレッキングブーツはアウトドア・シューズのなかでも軽い山歩きから本格的な岩稜帯まで、最も幅広いアクティビティをカバーできる汎用性の高いシューズ。靴の柔らかさや足首の高さなどバリエーションも豊富で、本格的に登山を始めようという人が1足目に選ぶにも、ハイキングシューズから徐々にステップアップする1足としても適しています。

そして北アルプスや八ヶ岳などの森林限界を超えた場所が多い高山で急な岩場を登ったり、横移動(トラバース)したりということが増えてくる場合には岩場の登りを考慮したアルパインブーツの出番です。こちらも軽いモデルから重くて硬い種類まで、バリエーションも増えてきていますので、どのくらいの荷物を背負って歩くのかによってグレードを考えると良いでしょう。

足首まわりの高さ

トレッキングシューズには、足首回りをカバーする範囲の違いで「ローカット・ミッドカット・ハイカット」の3パターンが存在しています。軽い荷物で軽快に歩きたい場合にはローカットの方が断然歩きやすいですが、より重荷での行動が多い場合や、急峻な地形やラフな地形が多かったり、脚力の弱い人、ねん挫しやすい人などは足首の高さがより高いサポート性の高い靴の方が安心です。

カットローカットミッドカットハイカット
イメージ[サロモン] salomon X ULTRA 2 GTXR L37156000 L37156000 (BLACK/AUTOBAHN/ALUMINIUM/26)[サロモン] salomon ハイキングシューズ X ULTRA MID 2 GTX L37077000 L37103200 (BETTLE GREEN/BLACK/SPRING GREEN/29)[サロモン] salomon QUEST 4D 2 GTXR L37073100 L37073100 (DETROIT/BLACK/NAVAJO/27)
軽さ
足首の可動性
足首のサポート力
異物の侵入しにくさ
蒸れにくさ
適したスタイル
  • トレイルランニング
  • ハイキング
  • ハイキング・トレッキング
  • トレッキング
  • バリエーションルート
  • 積雪期登山

ポイント2:アッパーの素材 ~登山スタイルによって合成繊維か、レザーか、コンビネーションかを決める~

登山ブーツのつま先から甲・かかと・足首全体を覆う上部分の全体はアッパーと呼ばれ、この部分の素材や作りによって、シューズの重さはもちろん、履き心地やフィット感、耐久性、防水性、通気性など多くの重要な要素に影響を与えてきます。

一昔前までは硬く、重たい天然の皮(レザー)で覆われたモデル一択でしたが、現在では防水透湿膜であるゴアテックスの登場などによって軽くて柔らかいナイロンなどの合成繊維や合成樹脂によるアッパーでデザインされたモデルが次々と開発されています。それらは軽量性・スピードが求められる昨今の流行スタイルの影響が大きく、スピードと動きやすさ、そして軽さが優先的に求められるシーンで実力を発揮してくれます。一方、現在でもレザーは耐久性が求められるヘビーなトレッキング・アルパインブーツではまだまだ健在です。防水性もしっかりあり、きちんと手入れをすれば合成繊維よりも素材自体は長持ちするので愛着も湧くといった魅力も失われていません。さらには擦れや衝撃の受けやすい部分にはレザーを当て、その他の部分には合成繊維を配置するなどして軽さと強さをバランスよく両立したようなコンビネーションタイプも存在しています。

このようにアッパーの材質と組み合わせによってそのブーツの強さや軽さ、フィット、動きやすさといった特性の一長一短が生まれますが、どれが最も優れているということではありません。自分の優先したい性能やスタイルを考えたうえで、レザーモデルなのか、合成繊維なのか、あるいはコンビネーションタイプなのかを検討するとよいでしょう。

さまざまなアッパー素材。ファスト&ライトな登山にはナイロン製の柔らかいアッパー(左側)が、本格的なトレッキングになるほど(右側)革などの堅牢なアッパーが使われていく。

ポイント3:ミッドソール ~ルートや背負う荷物の重さによって硬さ具合を決める~

足にかかる負荷の強さとソールの剛性

一般的に登山靴の靴底部分は通常、ミッドソールとアウトソール、それからその間に挟まれたシャンクと呼ばれる硬いプラスチックパーツによって構成されています(シャンクについては軽ハイキングブーツなどの柔らかいシューズには含まれていないことが多い)。同じように見える登山靴でも実際に手にとって折り曲げてみようとすると、曲がりやすいものからまったくビクともしない硬いモデルまでさまざまあることが分かります。

なぜこんなに硬い必要があるのかというと、ブーツが硬ければ硬いほど、重い荷物で不安定な足場に着地しても足裏がねじれにくい(地面が安定する)、登り坂や足がかりの細かい場所でつま先立ちしてもかかとが下がりにくいため、立ちこみやすく疲れにくいというメリットがあるからです。つまり登山靴のソールの剛性は、想定するコースの難易度(より急峻でよりテクニカルな地形が多いかどうか)に応じて高くなり、重荷での長いルートに耐えられるような頑丈な作りになってきます。

端的に例えるなら「高尾山よりも谷川岳→谷川岳よりも槍ヶ岳」あるいは「日帰りよりも小屋泊まり→小屋泊まりよりもテント泊」といった具合に、よりテクニカルで重い荷物になるにしたがって、ソールの剛性はより高く、より足首まで固定力のあるブーツが有利になってきます。一方軽量なモデルにはシャンクが入っておらず柔軟なソールで、軽い荷物での横方向への歩きやすさが優先された作りになっていますので、傾斜のマイルドな地形や、長距離をスピーディに移動することを目指している場合にはソールの剛性の少ない、柔軟なハイキングブーツ(またはシューズ)がおすすめです(とはいえ、これらはあくまでも「理想を言えば」という話であることも留意が必要で、決してそれを履かなくては歩けないという話でもありません。実際に脚の筋力が強い経験豊富な登山者ならば、トレランシューズで槍ヶ岳にも行けてしまう訳ですし)。

ソールの硬さは手で曲げる程度では比較できないケースも多く、実際に履いてつま先に体重をかけてみるくらいするとより分かりやすい。

またミッドソールは足裏のクッションと衝撃吸収というもうひとつの重要な役割も果たしています。外側からは見えにくいこのパーツの多くはEVA フォームやポリウレタン、または両方の組み合わせによる素材でできており、モデルによって非常に薄いものから硬くてしっかりしたものまでさまざまです。一般的に硬く重いブーツには高く強い負荷にも耐えられるような厚くて硬めの素材が搭載されていることが多く(ほとんどの場合、慣らし履き期間が必要です)、一方ハイキング シューズのような柔らかくて柔軟なミッドソールには、より薄くて柔軟な素材で作られています。

タイプ柔らかいミッドソール硬いミッドソール
適したスタイル
  • 軽装備のハイキング・トレッキング
  • テント泊など重荷でのトレッキング
  • 急斜面や岩場の多いトレッキング
特徴
  • 普段歩くような場所、起伏の少ない道を軽快に歩き(走り)やすい
  • かかとから地面についてつま先で地面を蹴り出すという一連の足運びがスムーズ
  • 地面の凹凸の感覚を足裏で捉えやすい
  • 軽い
  • 耐久性は低い
  • 急斜面、岩場、泥、ぬかるみ等で滑りにくい
  • 重荷で歩くときに足どりが安定する
  • 尖った岩から足裏を守る
  • 耐久性が高い
  • つま先が曲げにくいため舗装道路などの平坦な道を歩きにくい
  • ソールが交換可能なモデルが多いので長く使える

ポイント4:アウトソール ~滑りにくく(グリップ)踏み込みやすい(トラクション)を選ぶ~

優れた登山靴は不整地や斜面でしっかりとした踏み込み(トラクション)を可能にし、泥やぬかるみ、木の根、岩場、凍った地面など危険な地形でも滑りにくさを提供します。その役割を担っている部分がアウトソールと呼ばれる靴底のパーツです。

そのモデルのトラクションやブレーキが確かかどうかをチェックするには、アウトソールの素材と溝の形状(ラグパターン)を見ます。その点、何といってもビブラム社製のアウトソールはゴアテックスなどと同じように、今や登山業界で知らない人はいないほど確固たる信頼を勝ち得た安心のブランドです。もちろんだからといってビブラム製ならどれでも良いということではありませんので(同じブランドのソールでもモデル毎、特定の用途に合わせて細かな調整しています)、個々の製品ごとにソールの品質や特徴をチェックする必要があります。

例えば泥の中でしっかりとグリップできるようにラグ(溝)を深く、また間隔を広くして泥を排出しやすくしているものもあれば、濡れた岩場を安全に歩くためにゴムの粘着性を高めているものなど。また特に岩稜帯登攀(歩行)を想定して作られたアプローチシューズやアルパインブーツでは、必ずと言っていいほどつま先部分をフラットにすることで岩の細かな突起をホールドしやすくなっています。

こうして登山靴はすべてターゲットとしている地形やスタイルに合わせてアウトソールの素材を選定し、ラグパターンをデザインしています。選ぶ際にはこのソール部分に着目することで、ある程度どのような山(地形)をターゲットとしているのかが分かりますので参考にしましょう。

ソールのパターン(溝)は形や向き・深さ・間隔の広さ・つま先の形状・柔らかさなど、その靴が目指すスタイルに最適化されている。

ポイント5:重量 ~軽さは正義だけど、”軽さ”と引きかえに失うものも知っておこう~

重いシューズを履いている場合、気がつくと結構な疲労がたまっているものです。誰の言葉か定かではありませんが「靴の1ポンド減は背中の5ポンド減に匹敵する」なんて言葉もあるくらいで、やはりシューズは軽いに越したことはありません。

ただ、だからといって軽い靴を無条件に選ぶのがよいとも言えないことを覚えておくといいでしょう。軽い代わりに足首まわりが不安定になっていたり、重荷では滑りやすくソールが貧弱になっていたり、耐久性が落ちていたりと、何かしらがその軽さの代償として削られている可能性があります。大切なのはバランスです。軽さと安全性、耐久性とのバランスが、自分の求める基準に適うかどうか、一度検討してみてください。

ポイント6:その他チェックしておくとよい項目

防水透湿性

足元は濡れやすく、濡れることで体温を奪われたり、ふやけた皮膚が擦れて皮がむけてしまうなど、シューズの中が濡れることによるリスクは計り知れません。さらに足は思った以上に汗っかきですので、外側をいくら防水しても無駄です。常に足は濡れの危険にさらされています。日本のように高温多湿で雨の多い地域では、靴の防水透湿加工は必須の機能と考えるべきです。

メジャーなメーカーのトレッキングシューズならば、ほとんどのメーカーがシューズの生地に ゴアテックスなどの防水透湿性素材を取り入れているとは思いますが、数千円で売られているような安価な製品には単なる撥水か、透湿性のない防水機能しかない場合が多いので注意しましょう。

ちなみに「防水透湿」といえば化学繊維の防水透湿メンブレンを封入したシューズが前提なのかと思いがちですが、実は昔ながらのレザーにも天然の防水性と通気性が備わっています。最近ではさらに防水透湿素材を合わせることで化学繊維に引けをとらない機能性を実現しているものが登場していますので、最新のレザー製品も捨てたものではありません。

サードパーティ製インソール(フットベッド)の活用

取り外し可能なインソール(フットベッド)はほとんどのトレッキングシューズで標準で搭載されています。これらは足を靴に立体的にフィットさせ、汗による湿気を効率的に外へ排出し、衝撃を和らげるクッションとして機能しています。

この標準のものでも不満がなければ特にそのままでもよいのですが、経験上、実際には標準のインソールで自分にピッタリの適切なフィット感が得られることはほぼ不可能といっていいでしょう。

より疲れにくく快適な歩行を目指したいのなら是非サードパーティ製のインソール・フットベッドを検討してみることをおすすめしますそれらは靴と自分の足との隙間を埋めてくれ、土踏まずやかかとのフィット感を改善して歩きやすく疲れにくく、歩く時の衝撃もより和らげてくれます。

インソールフットベッドの選び方についてはこちらも話せば非常に長くなりそうなので、別の機会に記事を書きたいと思います。以下は少し前に主要製品を比較してみましたので、興味のある方は参考までに。

シューレースシステム

トレッキングシューズではいわゆる締め具まわりも多様な進化を遂げています。シューレース(靴ひも)は細く、軽く丈夫になり、シューレースを通す穴(アイレット)や最上部のフックはアルミや布地、プラスチックなどで耐久性を保ちながらもより軽量なつくりになってきています。もちろん、軽量だから無条件でよいというわけではなく、その分緩みにくさや耐久性が犠牲になっていることも考慮する必要があります。いずれにしても、試着の際には実際に自分で締めてみて、以下の5点をチェックしておくことをおすすめします。

  • 締めやすさ
  • 締めたときのフィット感
  • (ミッドカット・ハイカットモデルの場合)足首の固定感
  • できる限り激しく歩いてみて緩みにくいか
  • 歩いていて引っ掛かりなどの違和感がないか

さまざまなシューレースまわり。軽さも重要だが、実際に締めてみるとモデル毎にその締めやすさ、緩みにくさなどが大きく異なることが分かる。

クランポン対応

冬山や残雪の春山など、雪や氷の混じったコースを計画している場合は、クランポンが取り付けられるブーツが不可欠です。

クランポンを取り付けるためには大前提として一定以上の硬いソールのブーツである必要があります。さらに、クランポンがワンタッチ式かセミワンタッチ式を使用したい場合、このブーツの後ろか前後両方にクランポンをひっかけるためのコバがついているモデルを選ぶ必要がありますので、その点は忘れずに確認しておきましょう。

クランポン用のコバが前後についていると(右)ワンタッチアイゼンが、後ろだけについていると(左)セミワンタッチアイゼンが、まったくついていない場合はテープ締めのアイゼンが取り付けられる。※アイゼンとブーツは相性があるので必ず使用前に実際に取り付けて確認すること。

男/女サイズ対応・ナロー/ワイドサイズ対応

長らく足の長さでしかバリエーションがなかった登山靴でしたが、最近になって各メーカーは一部のモデル(特に人気モデル)についてはより多くの人々の足にフィットするよう「男女別サイズ展開」や、日本人に多いといわれいてる足幅の広い(狭い)人向けの「ワイド(ナロー)サイズ展開」のある製品が増えてきました。従来のシューズがどうしても合いにくいと思っていた人はもちろんですが、自分の足のサイズや形状をぼんやりとしか把握したことがない人は、まれにこれらのバリエーションが思いのほかフィットする場合がありますので、お店の試着で一度は試してみるのも無駄ではないのでおすすめです。

まとめ:靴選びの最適解を教えてくれるのは、自分の足だけ

冒頭でも述べましたが、その靴がどれだけ最高の性能であったとしても、結局のところそのトレッキングシューズが自分にとって最高かどうかは、自分の足しかわからないのが現実です。それぐらい、アウトドアの靴選びは複雑で繊細で、正直厄介なものです。1足のトレッキングシューズを買うために、何日お店周りに費やしたことか。買うかどうか分からないシューズを何足も店員に出してもらうのは気が引けますが、それでもぴったりのトレッキングシューズを選ぶためにはそうするしか無いので、ここは気兼ねなくお願いしましょう。この記事が少しでもそうした苦労を軽減してくれるものとなってくれると幸いです。

さて次回後編では、数百ある登山靴の中からこのサイト独自に調査してピックアップした新作・人気モデルを実際に履いてみて、目的やタイプ別に厳選したモデルを「目的・用途別今履くべき一足」としてまとめてみましたのでお楽しみに。

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