今回取り上げるのは「シェルター」ですが、さて皆さんに質問です。
「シェルター」で寝泊まりしたことはありますか?
「テント」と「シェルター」の違いは?
「ツェルト」とは何が違うの?
テント、シェルター、ツェルト。野外で泊まるという行為において「雨、風、寒さから身を守って身体を休める場所」という意味ではこれらはすべて同じ目的で使用するための道具です。ただその違いはというと大雑把に言えば、それによって得られるプロテクションの高さであるとひとまずは言えます。
「軽くて設営簡単なのに、居住性・プロテクションもそこそこある」がシェルターの魅力
3つのカテゴリーの中で一番高いプロテクション機能と居住性を備えているのはもちろんテント。一方急な悪天候時など最悪の状況を回避するために、快適さは二の次で最も手早く最低限の安全を確保するための緊急避難用簡易テントという位置づけなのがツェルト。「シェルター」はそれらのちょうど中間に位置する、テントよりも軽さと設営の容易さを重視し、ツェルトよりも居住性を重視した種類の製品といえます。ただ実際のところこれらを区切る境界線はそれほど単純なものではなく、テントのようなシェルターもあればツェルトのようなシェルターもあり、正直なところ「これがシェルターです!」と一言ではまとめられないカテゴリーでもあります。
最低限の居住性とプロテクションがありながら、軽さと設営の簡便さを兼ね備えたシェルターの魅力は、ここ数年でUL(ウルトラライト)やファストパッキングという言葉と共に広まっていった結果、ありがたいことに現在では多くの魅力的なシェルターが選べるようになりました。
多種多様な製品の中から自分にとって「ちょうどいいシェルター」を選びたい
ただそれらは居住性の高さを売りにしたモデルもあれば、設営の容易さに振ったツェルト寄りのモデルもあったりと多種多様で、それなりに高価であるにも関わらず使ってみなければ分からないのが実情。そんな中から一発で正解を選ぶなんて、シェルターを一度も使ったことがないフツウのハイカーではハッキリ言って不可能なのではないかと自分の経験からも思います。
そこで、今回はそんな多様なシェルターという製品の中から、人気・実力・定番・新しさなどの観点から「今、ファストパッキングやスピードハイキングに使うならコレだ」と思えそうな5モデルをピックアップして、さまざまな角度から比較してみました。「ちょうど装備の軽量化を考えていて、シェルターに興味があるんだよね!」というみなさんが、実際に選ぶときの手がかりを提示できればよいのではないかと思います。
ちなみに、ULの流れだと「タープ」や「ハンモック」という野営スタイルもあってそちらも機会があればぜひ比べてみたいなと思っていますが、風、低温、虫などの観点から今回は選考外としています。
目次
- シェルター比較レビューについて
- さっそく結果発表(各モデルのインプレッション)
- Six Moon Designs ルナーソロ 2020:総合1位。やっぱりあらためてベンチマークのシェルターでした!
- Gossamer Gear THE ONE:軽さ × 快適さ1位。こんなの待ってました!素敵なULシェルター
- HERITAGE クロスオーバードーム2G:建てやすくてコンパクト。日本を代表する自立型シェルター。真面目に頑張ってます
- Black Diamond ディスタンスシェルター:シェルターなのに抜群の安心感。アメリカの山屋が作るシェルターは色々と頼もしい奴
- ZEROGRAM Thru Hiker 1p:テントの快適さとシェルターの使いやすさが融合。色々と攻めてるコリアンブランドの超軽量テント
- テスト結果&スペック比較表
- まとめ
シェルター比較レビューについて
比較候補を選ぶ
読者の皆さんはさまざまな経験・実力・志向の方々がいると思いますが、基本的にこのレビューは「初めてシェルター購入を検討している人=テント泊登山をある程度経験してシェルターで軽快な登山をはじめようと考えている人」を想定して書いています。このため製品を選ぶにあたっては比較的入手しやすいモデルやテント泊から移行するにあたってあまり無理のない特徴のモデルからピックアップしています。
- Six Moon Designs/ルナーソロ 2020
- Gossamer Gear/THE ONE
- HERITAGE /クロスオーバードーム2G
- Black Diamond/ディスタンスシェルター
- ZEROGRAM/Thru Hiker 1p
前室付きのモデル、ツェルト寄り、インナーメッシュ+フライなど多彩な5モデルとなります。
念のため、シェルターを使って登山をするという方に前提としてお伝えしておいた方がいいと思うことを書きます。プロテクションのレベルはテントに比べれば確実に下がるので、使用する際の状況判断が大切です。悪天候が予想される際はテントを使うか、小屋に泊まるなど無理はしないで安全第一で行きましょう(逆にその状況判断にまだ自信の無い方はテントを選択するのが絶対におすすめです!)。
また、結露の問題も避けて通れません。もちろんテントでも起こることなのですが、シェルターの場合は朝起きたらまず内側の結露の拭き取りから始めるくらい。ダブルウォールテントならフライシートに溜まる結露がシングルウォールのシェルターの場合は居住空間にそのまま溜まります。濡れて困るモノは必ずスタッフバックなどに入れましょう。隅の方には水たまりが出来ていることは当たり前になります。天候に左右される部分ですが、それが当たり前、結露対策は必須ですよ!
テスト環境
2021年7月~9月にかけて、奥秩父でファストパッキング、北アルプスで縦走時に使用しました。それぞれのモデルに1泊。使用時に極端な悪天候は無く、雨に降られても3時間以上降り続くことはありませんでした。気温も就寝時は最低でも10℃前後。風に関しても3m以上の風は観測されませんでした。
(かなりの好条件! 山の神様に感謝です!レビュー的には悪い方が良いのですが…)
評価のポイント
- 居住快適性・・・居住空間の快適さ。空間的な広さ。心理的な圧迫感の少なさなど。
- 設営・撤収のしやすさ・・・簡単に、素早く、直感的に設営できるか。
- 耐候性・・・雨、風、気温などの環境に対して室内を安全に守ってくれるか。
- 耐久性・・・素材、部材の種類の強度や長もち度合い
- 重量・・・実際に使用する時の必要重量
- 収納性・・・パッキングしやすさ
さっそく結果発表(各モデルのインプレッション)
Six Moon Designs ルナーソロ 2020:総合1位。やっぱりあらためてベンチマークのシェルターでした!
ここが〇
- 広いフロア、大きな前室、風にも強い耐風性。
- テントからの移行なら違和感なく出来そう。
ここが△
- ワンポールの限界、頭上のクリアランスがね…。
- 意外とデカいパッキング時、でもそのおかげで耐久性は増してますよ。
19年前にテントの販売からスタートしたアメリカUL界では有名なブランドのひとつ。創設者がスルーハイカーなので、UL系のシェルターやパックが得意です。
バックパックを背負って長い距離を歩く文化の中で生まれていて、岩稜帯を進むような山行は想定していません。
2019年にアメリカで権威のあるアワードを受賞。それから毎年マイナーチェンジを繰り返してどんどん完成度が上がっているシェルターです。最近では結構テント場でも見かけるようになりました。
居住快適性
何と言ってもフロアー面積の大きさ。メーカーはギリギリ2人までといってますが、ほんとに寝るだけなら2人分の大きさです。
一人だと寝袋の横にバッグやらなんやら何にも考えずに散らかし放題です。
また、シェルターの課題の結露ですが、底面360°がメッシュです。
天井部分にももちろん通気孔があり集まった温かく湿った空気はそこから排出されます。
ここはワンポールの利点で、今回のテストアイテムの中で一番結露が少なかった。
もちろん天候など単純に比較は出来ないのですが、実際に使ってみて改めて実感した部分です。
また、雨の時にありがたさをしみじみ感じる前室ですが、このアイテムは割としっかり使えます。
写真は前室側にポールを出してフロアーを広くとってますが、前室側のスペースを広く取ることも可能です。
設営・撤収のしやすさ
シェルターの利点の一つが設営の容易さ。このモデルも順番さえ慣れれば簡単です。
ポールを支点に左右のペグから、次に前後のペグ。その時は後側のペグを入れてから、ポールを立てて前側のペグ。最後に斜め後ろの2つのペグで終了。
問題はペグが入らないとどうにもならない点。ここは育った環境の違いでペグが使えないことを想定していません。もちろん色々回避方法はありますが、きちんとテンションをかけるならペグダウンが必要です。
あと、意外と設置面積が大きいので混んでいるテント場だと白い目で見られるかも。
耐候性、耐久性
このモデル2020年版から素材がシルナイロンからポリエステル(シリコンコーティング)に変更になりました。理由はポリエステルの方が水を含んでも伸びづらいから。シルナイロンはどうしても素材自体が水を含むと伸びてしまいます。立てた時はバッチリきれいに建てられても、朝起きてみるとちょっとだらしない感じに……雨の時なども内側にたわんで来ないのはありがたいですよね。
厚みも全体は20D フロアーは40Dと比較的厚め。フロアー40Dはグランドシート要らないかもと思うくらいの厚みで安心感が違います。ナイロンに比べて紫外線に強いのもポリエステルの利点でナイロン製よりも長持ちしますよ。
重量・収納性
740g(収納袋含むでもポールもペグも付属しません)はシェルターとしては重い部類です。現在はダブルウォールテントでも1000gを切る(ポールもペグも含みます)モデルが普通に売られていることを考えるとそこと変わらない。収納性もシェルターと思って見てみると大きい。テントと比べれば十分小さいですが……
その代わり、大きな居住空間と設営の速さはテントにはないこのモデルの魅力です。そういった意味でこのモデルを選択する意味は十分あるし、テントにはない解放感からこちらを選ぶ人もきっと多いはずです。
まとめ
結論としてはテントから移行したい、シェルターを使ってみたいという方には一番無難なおすすめのシェルターになります。
Gossamer Gear THE ONE:軽さ × 快適さ1位。こんなの待ってました!素敵なULシェルター
ここが〇
- なんと素敵な頭上空間。広々です。前室も十分なサイズ。
- これくらい軽いとシェルター使ってる感じがします。
ここが△
- 強風下では不安が、稜線では使えない。まぁそうゆうものです。
- 耐久性。しょうがないですよね、だから軽いんだもん。
20年前ガレージでバックパックを作っていたメーカーはアメリカUL界でも注目されるギアメーカーになりました。
2021年に出てきたこのモデル、Lunasoloの後発モデルだけあってそこのネガを潰してきてます。個人的には一番気になっていたモデルなので早速レビューを。
居住快適性
このモデルのトピックは何と言っても頭上空間の広さです。170㎝の自分なら十分な高さと幅があります。
フロアー面積は一人用としては必要十分。長さは200㎝以上あるので寝袋がシェルターにくっついて濡れる心配もありません。
その結露ですが、このモデルの場合短辺側は足元にメッシュ(下写真左)が、長辺の背面側は上部に(下写真中)、正面側は全面が(下写真右)メッシュとなります。風の流れ方にもよりますが、短辺側からの流れだけだとどうしてもパネルに結露が溜まります。ここはそうゆうモノとして、黙って拭き取りましょう!
前室は必要十分、頭上空間の広さと合わせて雨の日でも結構快適に過ごせそうです。
設営・撤収のしやすさ
まずは四隅をペグダウン。トレッキングポールを背面側、そして正面と入れて立てていきます。慣れるまではここが少し面倒かもしれませんが、慣れてしまえば簡単。一旦立てた後で前後のバランスを取って終了です。
撤収もそこはシェルターなんで、あっという間。結露で濡れていても素材の薄さで2泊目でも比較的早く乾くでしょう。晴れていればですが…。
耐候性、耐久性
このモデルは背面側のパネルがメッシュ部分を隠すくらいしか付いていなくて、風をもろに受ける形となっています。セオリー通りに入口を風下に持っていくとかなりあおられるので、出来るだけ風の影響の少ない場所を選ぶか、風上に短辺側を持っていくなど工夫が必要です。
素材は10Dのシルナイロン。シーム処理済み。軽量テントのフライシート並みの素材のシングルウォールで、フロアーさえも10D。これがこの小ささ、軽さにつながるのですが、同時に耐久性の低さにもつながっています。この部分は両立するのが難しい部分なので割り切りが必要です。グランドシートは必須。
また、ナイロンなので朝起きた時にはテンションが緩んでいます。バッチリ結露もありますので結露対策はしっかりと。
重量、収納性
本体は503g 付属のペグはごく普通のペグで112g 最低必要数は6本なのでこの数字はもっと削れます。収納サイズも前室付きのシェルターとしては十分小さく納得できます。
まとめ
前室付きのシェルターでバグネット付きの中では最軽量の部類。待ってた人も多いのではないでしょうか?テントのような使い勝手とシェルターとしての軽さと設置、収納の速さも納得のレベル。山の初心者にはお勧めできませんが、ある程度の経験がある人であればシェルターのデメリットを考えても装備に加えて損はしないのではないかと思います。
HERITAGE クロスオーバードーム2G:建てやすくてコンパクト。日本を代表する自立型シェルター。真面目に頑張ってます
ここが〇
- この小ささ、軽さは感動的。
- 自立するって素晴らしい。
ここが△
- 結露の多さは仕方ない。暖かいし。
- 雨の日は色々と面倒です。でも前室のオプションあります!
山岳会の世代だとエスパースの方が通りが良い、日本を代表するテントブランドです。シェルターも意欲的に展開していて個人的にも保有してます。
居住快適性
まず最初にお断りしておくと、このヘリテイジと次のブラックダイヤモンドはツェルト寄りの前室の無いシェルターです。この2つ以外はすべて一人用サイズなのですが、この2つは2人用をピックアップしています。前室が無い分、どうしても室内で色々な作業をすることを考えると2人用の方が都合が良いので。
二人用ということで、横幅は100㎝。50㎝のマットは2つ並んで置けるサイズ。
長さは210cm。寝袋はシェルター本体に触れてしまうくらいなので、結露対策のシュラフカバーの使用をお勧めします。高さは105cmあるので身長170cmの自分には余裕の高さ。一人での使用なら本当に広々使えます。
ツェルト寄りのモデルの場合は前室が無いので、一番困るのが雨の場合。基本的に火器の使用は厳禁なのですが、実際は背に腹は代えられない。ただし、通気性の悪いモデルが多いので、換気には本当に気を付けて、使用時間も最小限にしてください。あくまでも自己判断ということになります、誰も保証してくれませんので細心の注意を!
ちなみにこのモデルにはオプションで前室が取り付けられます。要望が多かったのでしょう!お値段と重量がプラスされますが、このモデルじゃなきゃダメな人にはとっても嬉しいオプション! 雨の時には本当に活躍してくれると思います。
気になる結露ですが、多分一番多いと思います。通気孔は正面側上一つ。長辺背面側下にもう一つ。入口のファスナーがダブルになっているので、雨の心配がなければ上部を開けて通気孔を増やすことが出来ます。
それでも、他モデルに比べるとその面積は小さく、最低限。素材自体に通気性を持たせていますが、朝になればしっかり結露がお出迎え。結露の拭き取りから一日が始まります。逆に一番暖かいのがこのモデル。入口を閉めれば自分の体温だけで暖かくなります。
寒い時期のシェルター泊にはありがたい気密性の高さです。こちらもしっかりシーム処理済み。
設営・撤収のしやすさ
2本のポールを差し込んで立ち上げるだけなので、全く迷いません。ポールのサイズも同じだし、差込口の一方は縫い留めてあるので一人で簡単に設営できます。
また、設置面積は今回比較した中では一番小さい点もポイントが高い。狭い稜線での使用でも場所を選ばずにサクッと建てられます。この辺はさすがに日本のメーカーで、良くわかってらっしゃいます。撤収自体もポールを抜くだけ。自立式なのでペグダウンさえ必要なくペグの使えない岩稜帯でも問題なし。張綱(別売)も取付けられるのである程度の強風下でも使用できますよ。
トランスアルプスを目指している、もしくはあこがれているような方にはこの辺のポイントは刺さるのではないでしょうか?
耐候性・耐久性
第二世代になって使用素材のスペックが大幅に改善されています。耐水圧1,230mm、透湿性367g/平方m/h。自分の持っている第1世代よりも1,5倍、2倍にアップ。通気性まで持たせている10Dの日本製ナイロンリップ素材。それでも、10Dの薄さなのでグランドシートは必須。耐久性という意味では大きな期待は出来ません。その代わりの軽さ、コンパクトさですので!
重量・収納性
シェルター本体は2人用でも333g、2本のポールと合わせても630g!ペグや張綱は別売りですが630gで使用が可能です。小さな収納袋ですが、決して入れにくい訳ではないところがビックリです。ちなみにオプションの前室は140g。
まとめ
今回唯一の日本ブランド、ヘリテイジ。森林限界を超えた山域でも使用可能なスペックを持っている数少ないモデルの一つです。他にはない自立型のモデルなので、山域を選ばずにどこにでも持ち出せる安心感があります。手がかかる点も慣れてしまえばそれほど気にならないし、これからも頑張ってほしいブランドの一つです。
Black Diamond ディスタンスシェルター:シェルターなのに抜群の安心感。アメリカの山屋が作るシェルターは色々と頼もしい奴
ここが〇
- 絶対的な安心感。
ここが△
- シェルターとは言えないほどの収納サイズ。
山をやってる人なら必ず見たことのあるブランドのBD。ギアの総合ブランド。シェルターも意欲的なモノを出しているんです。
居住快適性
こちらも上のヘリテイジと同様にツェルト寄りのモデルで前室はなし。もちろんオプションもありません。ポールにはストックを2本使用することで重さと、パッキングサイズを軽減しています。サイズは2人用のみ。
横幅は50㎝のマットを横に並べた上でその横に小物が置けるくらいのスペースが出来る6角形のフロア。
長さも240㎝あるので、シュラフがシェルターに触れることもない余裕のサイズです。これを一人で使用すると、ほんとに広々。何でもできます!高さも104㎝あるので、170㎝の自分は余裕がります。
ただし、天井部分の幅は2本のポールを使っている割に狭いのでワンポールよりはましというレベル。それでも、一人なら全く問題ないです!
気になる結露ですが、もちろんあります。それでもルナーソロと同じで天頂部に通気孔を設けてあるので、ツェルト型と思って覚悟していたのですが、それほど酷くない印象。足元の短辺全体にメッシュパネル、入口上部もメッシュに出来るので意外とうまく換気してくれるようです。
設営・撤収のしやすさ
設営自体に難しさは無いのですが、ストックの設置方法が少し面倒。BDの純正ストックなら圧倒的に早く設営できますが、それ以外のストックの場合はアタッチメントの取付に少し時間がかかります。それでもテントに比べれば全然早いけど。
まずは4隅をペグダウン。足元側の細引きは長めに伸ばしてからの方が後々調整しやすいです。ストックを2本用意して小さなポールを連結し、フックをかければ完成。難しいところは無くて、初めてでもすぐに建てられます。
撤収時は付属のバッグに本体を入れるのが少々大変でした。自分なら大き目のスタッフバッグに替えて使います。
耐候性・耐久性
ここは本体フロア共にポリエステルの30Dを使用。この素材がホントに30D?と思うくらい、コシがあって頼もしい。シームもバッチリ。グランドシートはいらないかも。
狭いといった天頂部もワンポール並みのサイズは風に対しての耐性が高まります。風圧を逃がすようなデザインは稜線下では頼もしく映りますよ。濡れてもテンションの変わりづらいポリエステルの採用など、さすがは山屋のシェルターです。素晴らしい。
重量・収納性
シェルター本体が実測670g、ペグ6本と張綱、アタッチメントで240g、合計で900gオーバーとなるとシェルターとしたらどうなのよ?と思いますよね。シェルター本体もあまり小さくまとまらないので、下手なダブルウォールテントよりも大きいくらいです。
でも実際に泊まってみると、何とも言えない安心感がこのシェルターにはあるんですよね。
まとめ
シェルターとしてのコンパクトさや軽さはこのモデルにはハッキリ言ってありません。それでも、シェルターとしての設営、撤収の速さは間違いなくあります。そしてプロテクションという意味では5つのモデルの中では最高の部類です。
ULハイクという面からはあまり選択されることはないかと思いますが、求めるところが違う、このモデルが活きる山のスタイルが存在するんだと思います。
ZEROGRAM Thru Hiker 1p:テントの快適さとシェルターの使いやすさが融合。色々と攻めてるコリアンブランドの超軽量テント
ここが〇
- ダブルウォールテントとしては早い設置スピード。
ここが△
- その分後始末は色々と面倒です。
今年10年目を迎えた韓国のギアメーカー、リブランドしてロゴも変更、アパレルなども展開してます。アウターポールのテントということでデビュー時は注目を集め、現在も軽量で使い勝手の良いテントを複数展開していますよ。
今回シェルターの企画に参加させているので、スペック的には目立った点は少ないですが、テントとしてみればとっても魅力的なモデルです。
居住快適性
ソロテントとしてみると居住空間は十分。横幅、長さ共に十分なスペースが確保されています。
他のソロテントと違う点は頭の部分に設置されている前室の部分。フロアーに入れたくない濡れたモノや、汚れているものを前室とは違う2つ目の収納スペースとして使用できます。
頭上空間も優秀で、アウターポールが頭上のスペースをしっかり確保してくれるので非常に快適、雨の時でも調理まで含めて十分ストレスなく過ごせます。
前面メッシュのフロアー空間ですが、特殊なモノフィラメントを使用しています。この撥水能力が素晴らしい。結露はしっかりするんですが、溜まった水滴が落ちてきても、メッシュがしっかり弾くので、フロアーが水浸しになりません。
フライは地面ギリギリまでフルにカバーしていて雨が吹き込むこともなく、天頂部に通気孔を配置しているのでしっかり換気もしてくれます。
ダブルウォールテントとして必要十分以上のプラスアルファを備えたモデルです。
設営・撤収のしやすさ
Zerogramといえばこのアウターポールの形です。
設置の際はまず4隅をペグダウン。その後にアウターポールを差し込んで、クリップでドンドン吊り上げます。最後に短い2本のポールの両端を固定すると、アッという間にテントが立ち上がって、残りの支点をペグダウンして完成。シェルター並みの速さで出来上がります。
このダブルウォールテントにもかかわらず素早い設営が可能な理由は、フライシートにインナーテントが連結されているから。
多くのテントはインナーテントをポールで立上げ、その上からフライシートをかぶせますが、ゼログラムのようなアウターポールを採用する場合はフライシートとインナーテントを連結させて一緒に立ち上げます。そのため圧倒的に設営が早まります。
一方でテントでも結露はもちろん起こりますし、メッシュ部分の大きいインナーテントの場合はフライシートの内側にその水滴が溜まってしまいます。普通のテントの場合はフライシートに溜まった水滴をある程度飛ばしてから収納することが出来ますが、ゼログラムの場合はインナーテントが連結されてしまっているので、撤収時に水滴を処理しづらくなってしまいます。この点はどこにポイントを置くかで評価が分かれるところです。
耐候性・耐久性
フライとフロアは15Dのシルナイロン。メッシュは20Dのモノフィラメントメッシュ。グランドシートは使った方が長持ちします。もちろんシーム処理済み。フライは地面に近いところまで十分カバしているし、それなりに風にも強いと思います。ただし、ペグダウンが前提なので、ペグが刺さらないような地面での設営は大変でしょう。
重量・収納性
設営に必要なポールやペグまで含めてトータルで1000g強。ソロテントとしては最軽量とはいきませんが、十分軽い部類です。収納サイズも含めて小さい方。居住空間の快適性から考えたら十分納得できるモデルです。
まとめ
設営の速さから今回シェルターの中での比較対象として選んだダブルウォールテント。さすがの快適性はテントならではです。トータルの使い勝手という意味では家に帰ってからの乾燥、収納が面倒ということはありますが、フィールドでの使い勝手は非常に優秀です。ダブルウォールテントの中では圧倒的に設置スピードは速いし、雨の時の使い勝手や、撤収も(フライシートを残したままインナーテントまで仕舞えます)優秀。使っている人も少ないし、面白いテントだと思います。
テスト結果&スペック比較表
総合評価 | AAA | AAA | AAA | AAA | AA |
---|---|---|---|---|---|
アイテム | |||||
ここが◎ |
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|
|
ここが△ |
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居住性 | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★☆☆(ソロ使用なら) ★★☆☆☆(2人使用なら) |
★★★★★ | ★★★★☆(ソロ使用なら) ★★★☆☆(2人使用なら) |
設営のし易さ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
耐候性 | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
耐久性 | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ | ★★☆☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★★★ |
重量 | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ | ★★★☆☆ |
収納性 | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★☆☆☆ | ★★★☆☆ |
スペック | |||||
アイテム | Six Moon Designs ルナーソロ 2020 | Gossamer Gear THE ONE | Heritage クロスオーバードーム2G | ZEROGRAM Thru Hiker 1p | Black Diamond ディスタンスシェルター |
本体素材 | 20D シリコンコーティングポリエステル | 1800mmの防水性を備えたカスタム10DナイロンリップストップSIL / PU生地 | 10dnナイロン高強度ミニリップストップ・透湿防水PUコーティング(日本製) | 20D monofila | 30dポリエステルファブリック |
フロア素材 | 40D シリコンコーティングポリエステル | 1800mmの防水性を備えたカスタム10DナイロンリップストップSIL / PU生地 | 10dnナイロン高強度ミニリップストップ・透湿防水PUコーティング(日本製) | 15D N/R silicone/PU coated | 30dポリエステルファブリック |
フライ素材 | N/A | N/A | N/A | 15D N/R silicone/PU coated | N/A |
対水圧(mm) | 3,000 | 1,800 | 1,230 | N/A | N/A |
ポール | トレッキングポール(1本) | トレッキングポール(2本) | アルミ合金中空ポール(7001-T6)7.5mm径ショックコード内蔵 | DAC NSL 8.5mm | トレッキングポール(2本) |
実測重量(g) | 696(本体+スタッフサック) | 521(本体+テントスタッフサック) | 622(本体+ポール+スタッフサック) | 1,006(本体+フライ+ポール+スタッフサック) | 843(本体+アタッチメント) |
フロア面積(m2) | 2.4 | 3 | 2.1 | 1.7(概算) | 2.4 |
前室面積(m2) | 0.8 | 0.9 | N/A※別売りフロントフライ接続可能 | 0.4(概算) | N/A |
必要設営スペース(cm) | 267 × 199 | 297 × 261 | 210 × 100 | 280 × 140 | 241 × 147 |
フロア最長(cm) | 229 | 213 | 210 | 210 | 241 |
高さ(cm) | 122 | 114 | 105 | 93 | 104 |
まとめ
今回はシェルター5型(厳密にはダブルウォールテントが一つ含まれます)をレビューしてきました。
装備の軽量化は登山にとっては切っても切れない重要なポイントです。
- 装備を軽くしてもっと遠くに、もっと高い場所へ
- 装備を軽くして少しでも体の負担を軽減
大きく2つの点から軽量化を追求しますが、1.はスピードを2.は安全性を高めてくれます。
でもそこには必ずリスクが存在し、その点を軽視すると命にまでかかわってくるのが登山というアクティビティです。
今回は私個人の視点から、各モデルの利点やリスクに関してレビューしてきましたが、皆さんも各自の求める点を明確にして、自分にふさわしいと思うようなモデルを見つけることが出来たなら、ご自身で良く調べて実際にチェックしてみてください。
- 比較的テントからの移行がしやすいのがSix Moon Designs ルナーソロ。
- ULシェルターという意味ではGossamer Gear THE ONE。
- 日本の山ならほぼどこでも持ち出せるHeritage クロスオーバードーム2G。
- プロテクション重視で設置スピードを求めるならBlack Diamond ディスタンスシェルター。
- テントの快適性と設置スピードの速さでZEROGRAM Thru Hiker 1p。
どのモデルも、シェルターという設置の容易さは担保されています。
軽さとプロテクションは中々両立しづらいので、その点は各自がどこまで求めるのかを良く考えてください。
結露に関しては普通のテントでも起こることなので、上手に付き合ってみましょう。スタッフバッグやシュラフカバーなど防水対策はシェルターでなくても意識していると失敗することが少なくなるはずです。
新しい装備を手に入れた後のワクワク感がたまらなく好きなのですが、その前の試行錯誤がそれ以上に楽しいんですよね。自分の知識と経験を踏まえた上で、ステップアップするために何を装備に加えるべきか。シェルターはある意味ハードル高いですが、きっと面白いチャレンジになると思いますよ!
それでは、新しい道具と楽しい山旅を!