今週は、あいにくの悪天候で延期となった9月の登山イベント『Sea to Summitではじめるテント泊縦走』に行ってきました。
場所は参加者の皆さんと相談した結果、南アルプスの百名山「鳳凰三山」に。今回のテーマは「テント泊縦走」ということで、テントを含めた1泊2日分の荷物を担いで夜叉神峠からゴールの青木鉱泉までの約20キロの道のりを重荷で初縦走します。
参加者は僕を含めて3名。延期により2名が残念ながら都合が合わなくなってしまいました。うち1名とは先週日帰りで別の場所にハイキングできましたが、もう1名とは必ずやお誘いすることを約束して次回以降に。
1日目:夜叉神峠登山口~南御室小屋
先週とはうって変わって移動性高気圧に覆われた分かりやすい好天の天気予報。今回は韮崎に集合してタクシーでアプローチだったので、駐車場満車の恐怖に怯える心配はないし、朝も遅め(といっても5時始発)。かつて広河原行きバスの運転手であったという運ちゃんと思い出話に花を咲かせながら夜叉神峠登山口に9時到着。軽く身支度をすませていよいよ出発です。
ブナやミズナラの優しい森をしばらく抜けると間もなく夜叉神峠。ただ想像よりも天気の回復が遅く、下から上がってくる雲で目の前は真っ白。峠でまず参加者のみんなに白峰三山の大パノラマをドカンとお届けしようという主催者の目論見は初っ端から外される涙。
しかし、それにしてもなんという蒸し暑さ。2400メートルでの幕営のことばかり考えていたので、皆いろいろと防寒には気にしてきましたが、汗だく対策についてはまったくノーマーク。そんななか参加者の1人が話題のおたふく手袋を着ていて、なかなか良さげ。その話題でひと盛り上がりしたりしながら、基本誰かしらの話が途切れず長く緩やかな登りを歩いていきます。
途中には警戒心の薄いシカがのんびりと食事をとっていた。
先週と連続で南アルプスを歩きましたが、相変わらず素晴らしい。苔の絨毯と原始の雰囲気を漂わせるシダ類、そしてカラマツやコメツガ、シラビソ、ウラジロモミといった見事な針葉樹に抱かれていると、自分が大きな自然の連鎖の一部になれた気がする。やはり自分はこの森が好きなんだなんと思う。
今日は夜叉神峠からはひたすら森の中を歩くだけですが、1カ所だけ展望の開けたピークを踏むことができます。そうこうしているうちにその目当ての辻山に到着。ただしここでも一瞬青空がのぞいたのみで、展望はお預けでした。
気持ちを切り替えてテン場へ。14時過ぎに南御室小屋に着くと、うっすら心配はしていましたがやはりテント場は結構な賑わいで、テント3張りを並べて設営できるスペースがほとんどない。が、何とかぎりぎり空いているスペースを押さえることができました。土日はどこにいてもこの場所取り合戦の心配からは逃げられません。
さっそく今回の目玉の一つである、Sea to Summit(シートゥーサミット)のテント・マット・シュラフを使ってみる時間が来ました。
周りを見渡すとテントは基本モンベル、アライテント。そしてNEMOがやや多め。ヘリテイジ・ファイントラック・arata・ZEROGRAMが1~2張り。ある程度予想はしていましたがSea to Summitのテントを張っている人はゼロで、やはりほとんど国産テント。せっかく日本では世界中の優秀なテントがこんなにいろいろあるのに。Outdoor Gearzineももっと努力して発信していかないとなぁ(近くにどう考えても限界を超えていそうなシングルウォールのワンポールシェルターがありましたが、あの人は無事夜を明かせただろうか)。
立てやすさも考えられた丁寧な作りのSea to Summitテントは、参加者の皆さんがテント泊自体を未経験でないこともあって、ちょっとアドバイスしただけで実にスムーズに、それぞれの設営が進んでいきました。
ちなみに今回使ったテント「アルトTR1 /アルトTR1 プラス」テントは、今から4年も前に発売されていながら、広々とした天井付近のスペースに抜群の通気性、それにもかかわらず軽量という、ここ数年のトレンドをいち早く先取りしたテント。Outdoor Gearzineでもレビューしていますが、知らなかった人はぜひチェックしてみるといいかと。
またSea to Summitはマットレスやスリーピングバッグも非常に優秀。
マットは、これもOutdoor Gearzineでずっと推してきた「エアスプラングセル」を採用したエアマットの秋冬モデルをトライ。薄くても圧力が分散されて寝心地が最高なんです。今では(中国メーカーをはじめとして)多くのブランドが類似のエアマットを製造するほど一般的になりました。
今秋冬登場、最高の寝心地と最高の断熱性を両立した「イーサーライトXRプロインサレーテッドマット」も実践で試してみることができました。
テント・マット・ピロー・シュラフと、氷点下に迫るであろう今夜の就寝に備えて、考えられる理想の装備を(無料で)試せるなんて、なかなか良いイベントでしょ?
前回7月のイベントでは夕飯時に雨に降られて各自テント内で食事せざるを得なかったのですが、今回はずっと雨に降られることなく、思い思いの食材を持ちよって、シェアしながら歓談しながら平和な夕食を愉しむことができました。
2日目:南御室小屋~鳳凰三山~ドンドコ沢~青木鉱泉
4時半起床。天気は・・・
やばい、期待はしてたけど最高過ぎる。
出発して1時間ほどでついに森を抜け、岩場・ザレ場の混じった稜線に出ます。稜線には青空が広がり、昨日どうしても見たかった白峰三山の大パノラマがついにお目見です。
眼下にはダイナミックな陰影が映えまくりの雲海が広がっています。その上には富士山が浮かんでいます。何度見てもシャッターを切ってしまう景色。
これには思わずガッツポーズ
しばし足を止めて、オレンジ色に染まる朝焼けの白峰三山を鑑賞
一つ目のピーク、薬師岳でパチリ
甲斐駒も、遠く八ヶ岳もくっきり
紅葉も少しずつ始まってました。色づく木々と青空、花崗岩のコントラスト、これぞ鳳凰三山。
重厚で深い、壮大なランドスケープが広がる南アルプスらしい稜線を歩き、薬師岳、観音岳と歩みを進めていきます。
最後に地蔵岳のオベリスクを拝み、下山はドンドコ沢経由の青木鉱泉。
途中に多くの見事な滝が迎えてくれる好ルート、かと思いきや、急傾斜かつ荒れ気味の道、そしてここまで重荷で蓄積された疲労で足が進まず、最後の最後に苦労しました。それにしても滝は確かにすごかった。
とはいえ、森・稜線・滝と異なる趣の自然に出会えるこのコースは期待以上に満足で、今回も大いに充実した2日間のイベントになりました。
参加者の皆さん本当におつかれさまでした。また行きましょう!
それからSea to Summit製品を貸してくれたロストアローさん、ご協力ありがとうございました!