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ビヨンビヨンに伸びてサラッサラに乾く、だけじゃダメだ
かつてはとにかくタフなマテリアルであればよかった、ハイキングのためのパンツ。自分が山をやりはじめた90年代にはさすがにそこから進化して、動きやすくて速乾性に優れた製品がたくさん出ていました。
そして2018年、お店にずらりと並んだハイキングパンツは速乾・ストレッチなんて当たり前。より心地よい着心地、洗練されたデザイン、ハイテク機能など、さまざまに個性豊かなモデルがより取り見どりです。何を穿いてもダメということはありませんが、行動中ずっと動いている下半身は地味に快・不快に大きく影響しているともいえ、実のところ、自分にしっくりくるパンツは山歩きの楽しさを一段と広げてくれる名脇役なんじゃないかと思っています。
そこで今回は、今年爆買いしたトレッキングパンツの中から、汗ばむ夏をものともしない最高の快適さと、穿いている自分の気持ちを上げてくれるシャレオツさを兼ね備えた、おすすめモデルをピックアップしました。いずれも、とにかく機能性に優れたモデルから、日常使いでも使えそうなスタイル抜群のモデルまで、いろんな個性をもっていてどうしても捨てがたかったモデルですので、好みに合わせて選んでもらえれば、きっと活躍してくるはずです。
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トレッキングパンツに求めること
春夏シーズン向けのハイキングやトレッキングパンツでは、何よりまず暑さによる発汗を効率的に外に発散するための通気性や速乾性が求められます。その意味で、夏はショーツ(ショートパンツ)派だという人もたくさんいるでしょう。その方が確実に通気性はいいし、開放的ですし、北米やニュージーランドのトレイルでは鬱蒼とした樹林帯を歩くことも少ないため、そうした傾向が強いと聞きます。ただ日本での登山が多い自分の経験上では、雑草や泥、砂利、そして虫などから保護するためにはロングパンツの方が何かと便利な気がしています。最近ではロングパンツでも素材の進化によって不快感が少なくなってきているわけですし、普段からショーツを穿く習慣がない自分は当面このままロングパンツでいこうと思っています。
次に重要なのは動きやすさ。普通に歩くだけならば多少の窮屈さは我慢できたとしても、不整地を歩く登山では足を大きく振り上げることは日常茶飯事ですから、足上げによる突っ張りなどは極力少なく、とにかく動きやすい方がいいわけです。クライミングや沢登りにも使いたいとなればさらにその重要性は高まります。重量も軽ければ軽いほどいい。
ジッパーでしっかりと閉められるポケットなどはあれば便利だし、ウェストを調整しやすく、さらにバックパックと干渉しないビルトインのベルトなど、登山での使用を考えた機能性もありがたい。そして最後、やっぱり気持ちよく登りたいし、帰りもあわよくば着替えたりしないでもいけると便利なので、脚をすっきり見せるスタイリッシュなフォルムや、街でも違和感のない洗練されたカラーリングといった、いわゆるデザイン面についても欲張りたいものです。
テスト結果&スペック比較表
買って良かったおすすめトレッキングパンツ
Mountain Hardwear ダイヘドラルプリカーブパンツV.7
快適性・動きやすさ 5 通気・速乾性 5 汎用性 4 重量 4 機能性 4
さらに今回最も驚かされたのは、さわやかな肌触りと抜群の通気性でベタつきゼロという、湿気がちな日本の夏に負けない快適さです。その秘密は生地が伸びた時に通気ホールがさらに広がる設計のエアークーリング素材「ドットエア」にあります。おかげでタイトな着心地にもかかわらず、真夏でも下半身が蒸れてくることはほとんどなく、常にドライな状態を保ってくれました。ただ逆に保温性は期待してはいけません。
素材の薄さと多少の引っ掻きに対する弱さという点を除けば、暑い季節のハイキングやクライミングには最適。スッキリ細身の洗練されたデザインは普段の使用でも十分いけると思います。
Westcomb RECON CARGO
快適性・動きやすさ 5 通気・速乾性 4 汎用性 4 重量 4 機能性 3
ヒップから太ももにかけては締めつけ感がなく、腿から足首にかけてはスリムですっきりとして邪魔にならず、運動性と上品さを両立させたシルエットは様々な体型に合いやすく、着る人を選びません。穿いた瞬間に分かる軽さと抜群のストレッチで動きやすさは文句なし。生地は厚すぎず薄すぎず、さらにWestcombの誇る丁寧な縫製によって、ハードな使用にも耐えて長く安心して使い続けられます。無雪期の登山からクライミング、沢登りなど幅広いアウトドアに活用できるでしょう。
Arc’teryx Gamma LT Pant
快適性・動きやすさ 4 通気・速乾性 5 汎用性 4 重量 3 機能性 3
それでいてしっかりマチつきの股と立体裁断、それにストレッチ性は万全で、大きな足上げに対してもまったく違和感なし。薄くて軽量なナイロン素材フォーティアス™DW 2.0は、動きやすさに加えて速乾性と耐久性も持ち合わせていますので、真夏のトレッキングでもかなり快適でした。ハイキング、クライミング、旅行にと幅広く対応してくれるでしょう。
MILLET トリロジー コーデュラ パンツ
快適性・動きやすさ 5 通気・速乾性 3 汎用性 4 重量 3 機能性 3
ボディの生地にはCORDURA®ナイロンを含んだX.C.S.ソフトシェル素材を採用し、プロも安心の優れた耐久性と運動性を備えているところがまず安心。ヒップから太ももにかけてはヨーロッパスタイルの締まったシェイプにもかかわらず、股にはガゼットがついて膝部分も立体裁断が施され、さらに今回比較した中でも随一のストレッチ性によって、どんな動き対してにもまるで地肌のように追従してくれます。しっかり密に織られているため通気性は抜群とは言わないまでも、薄手なのですぐ乾き、夏でも実用性は十分です。
ウェストにはビルトインのベルトではなく、平ゴムで締める構造。ベルトループもついているので調整には不便しません。幅広めの裾が邪魔になる場合には絞るためのドローコードがついています。シルエットが素晴らしく履き心地も抜群なので、あとは色味さえ落ち着けば日常穿きにも十分いけるとひそかに思っています。
Salomon WAYFARER UTILITY PANT
快適性・動きやすさ 5 通気・速乾性 3 汎用性 4 重量 2 機能性 5
ポケットは前後左右に4つ、太ももに1つ、さらに右前ポケットにはコインポケットらしき意味深なポケットもついていたりと機能性は豊富。ウェスト調節がベルトループのみというのが唯一の難点か。
Patagonia コージー・パイク・パンツ
快適性・動きやすさ 3 通気・速乾性3 汎用性 5 重量 2 機能性 5
左右2つ、後ろに1つ、右腿に1つのポケットにはジッパーがついていて安全。調節ベルト付きウェストやローカット・ハイカット両方にフィットするマチ付きのジッパー式裾など、機能的にもハイキングに優しい作りになっています。
一方やや残念なのは、他と比べるとストレッチ性がやや弱いため、大きな足上げでは細身な自分でも若干の動きにくさを感じてしまいました。このためハイキングにはよいとしても、クライミングなど大きな動きを前提としたアクティビティには向いていないかもしれません。ちなみに生地厚は極端な薄手ではないため、これからの季節でも十分対応できます。
MAMMUT AEGILITY Slim Pants
快適性・動きやすさ 3 通気・速乾性 3 汎用性 5 重量 5 機能性 3
とにかく軽い、薄い、そして垢ぬけたデザイン。コットンライクでしなやかな東レのストレッチポリエステル素材は、耐久性やストレッチ性などこれまでの比較モデルからはちょっと見劣りするため、はっきりいってハードな使い方には向いていないかもしれません。ただスッキリとした細身のテーパードシルエットや、縫い目を不要にした最新の圧着技術によるクリーンな表面は、ハイキングパンツとは思えない洗練さを備え、山歩きにも街にも使いやすい仕様です。それでもガゼット入りの立体裁断と適度なストレッチによって、街履きパンツに比べれば動きやすさは明らかですので、マイルドなアウトドアから軽いハイキングに使いたいという用途には十分こたえてくれるでしょう。