結局みな、同じ山で遊ばせてもらってる者同士――。
メジャーブランドも新興メーカーも、作り手も受け手も、山好きもラン好きも、初級者も上級者も、山から恵みを享受し、山によって突き動かされているすべての人が楽しめるアウトドア・ギア・イベント『TRAIL OPEN AIR DEMO 3 / トレイルオープンエアデモ 3(TOAD3)』が今年も開催されました。冒頭の言葉は主催者の方に話しを聞いた際、自然とこぼれてきた台詞。このイベントの、細かいことを気にしないオープンで気持ちのよい空気感が表れています。
トレイルランニングをはじめとしたアウトドアに関連する様々な製品をその場で実際に試したり、メーカーの話を直接聞くことができるというこのイベントでは、何といってもシューズやバックパックなどパフォーマンスを左右するような大事なギアの、一見しただけでは分からない微妙なフィット感まで実際のフィールドで試せるということが魅力。3回目を数える今年は参加ブランドも最初の30程度から大小合わせて約70程にまで拡大したそうで、その有り難さは年々増すばかりです。
それでもこのまま単純に規模を追うつもりはない、そう主催者は釘を刺します。規模が拡大するとどうしても収拾がつかなくなって、いろいろと厳しく管理せざるを得なくなる部分も出てきてしまう。あくまでも良い意味でユルくオープンに、関わっている人すべてが楽しめるという今のこの感じを大切にしていきたいと。ああ、この人分かってる。日本でここまで居心地の良いイベントにはほとんど出会ったことがありませんでしたが、この垣根をなくして自然という同じフィールドを分かち合って楽しむ人々すべてに開かれた姿勢こそ、数ある試着・試走会と違うこのイベントの素晴らしさなんだとあらためて確信しました。
早速そんなイベントの雰囲気とともに、当日行けなかった人のために各ブランドのブースを回ってきた様子をレポートしたいと思います。ただ今回は紹介したいブランドが多くなりすぎてしまいました。大抵のお店で置いているようなメジャーなブランドについてはちょっと省かせてもらいましたので、結果的にラインナップはやや変化球よりになってます汗。
TRAIL OPEN AIR DEMO 3 で見つけた2017シーズン注目ブランド・アイテム
HERITAGE クロスオーバー ドーム f
パッと見、よくあるドーム型テントかなーと思いきや、これはいわゆるツェルト(シェルター)です。ウルトラライト的に軽量化を突き詰めたいけど、居住性や設営の簡単さもあるに越したことはない、そんな悩ましい希望を叶えてくれるのがこのHERITAGEの最新自立式ツェルト(もちろんシングルウォール)。570g(本体:304g、ポール:266g)はULテントと比較すればトップクラスの軽さ。それでもってどこでも簡単に設営が可能なポールをスリーブに通すドーム型の形状。入り口もL字型ジッパーできちんと密閉でき、かといってベンチレーションによる通気もまずます。お値段も良心的で、これはかなりの良バランス。いくつかある今年の新作テント(シェルター)のなかでも特に注目度が高かったのですが、実際に見てみて納得。後日迷わず予約してしまいました。(公式サイト)
NATHAN VaporKrar / VaporHowe
個人的にずっと気になっていたアメリカ西海岸のランニング・ギアブランド、ネイサンの新しいレースベストは二人のチャンピオン・ウルトラランナーとのコラボによるシグニチャーモデルで欧州のアワードも受賞(ISPO 2017/2018)している意欲作。まぁそんなことは後づけで知ったに過ぎず、とにかく身につけてみてください。瞬間で惚れます。肩から背中、脇にいたるまで吸いつくようにフィットする素晴らしい着心地は、もはや背負うという言葉は似つかわしくありません。極限まで軽く、そして通気性を確保しながら十分に配慮されたポケット類も納得。(公式サイト)
UltrAspire ZYGOS 2.5 JAPAN
現代のハイドレーション・パック(ベスト)の生みの親であり、Ultimate Direction設立→NATHAN移籍と渡り歩きながら自由に自分のものづくりを追求し続けるBryce Thatcherが現在の創作拠点として立ち上げたのがこのUltrAspire。日本が誇る世界的トレイルランナーの山本健一氏との共同開発で生まれたZYGOS2.0のアップデートバージョンであるこのモデルは、まさにその道の第一線同士がぶつかり合って結晶となったと言いたくなる完成度の高いモデルでした。前のネイサンに負けず劣らずのフィット感、そして軽量とはいえ10Lという容量やメイン収納やポケットなどのつくりはそこまで削ぎ落とされているわけではないので使い勝手もよく、絶妙にいいとこ突いてくるんです。そんなニヤリとせずにいられないパック。(公式サイト)
Mountain martial arts DUSTY
日常とアウトドア・アクティビティを「ON/OFF」のように分けることっておかしくないか?そんな問いかけが聞こえてきそうな新進気鋭の日本発ブランドMountain martial artsは、ランやハイキングのためのギアが普段と変わらない感性でデザインされています。多くのユーザーにとってはむしろ、極限までのパフォーマンスを追い求めるギアよりも日常を生きる人々がその延長として使いたくなるようなこうしたアプローチの方が魅力的だったりしますね。(公式サイト)
Toe-Bi ランニング足袋
衝撃を和らげるためとことんソールを分厚く、クッション性を高くしていくのが最近のランニングシューズのメインストリームだとしたら、保護材料を一切使用せず、あえて限りなく素足に近い状態におくことを目指すこのToe-Biの発想は、ともすると馬鹿げたアイデアです。ただ、人間はそもそも足の裏で地面からの衝撃を”正しく”捉えることができ、それに対応する力が備わっており、その力を十分に使うことによってより理想的な走りに近づけられるのだとしたら、こんなに興味深い話はありません。ぼくも未だ答えは出ていませんが、とにかく試してみたい!(公式サイト)
La Sportiva AKYRA
今回レポートのなかでは比較的メジャーなブランド、当サイトでも取り上げた人気トレイルランシューズAKASHAを擁するスポルティバが今年満を持してリリースした最新モデルがAKYRAです。実は昨年のドイツでの展示会から目を付けていたのですがようやく試着して軽く走ってみたところ、隙のなさに目を見張りました。基本的にはプロテクション性能を向上させ、より過酷で長距離のトレイルに適したマウンテンランニング用シューズという位置付けですが、折り紙の幾何学的形状からヒントを得たという独自ソールの柔軟で高いクッション性はAKASHAをよりオールラウンドで幅広い実力のランナーに対応させた感じで、ぼくのようなユルいランナーにはちょうどいい。(公式サイト)
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TECNICA SUPREME MAX 3.0
ウィンタースポーツからはじまり、現在ではトレイルランやファストパッキング向けのシューズも数多く手がけるテクニカの新作。これもここ最近の流行のひとつである、ロングトレイルなどの長距離を快適に走るための高クッションモデル。ついさっきランニング足袋を持ち上げといてどの口が言うかという感じもしますが、現時点での自分のお気に入りはHOKAなどの高クッションモデルなのだからしょうがない。このモデルはドロップ(シューズのかかとと拇指球部分の高低差)8mmと高めですが、少し履いた感じではブレなど気にならず、かなり万人に好まれそうなモデルと感じられました。
On クラウドベンチャー
先日ロードのおすすめ長距離向けシューズ記事でも登場したスイスの比較的新しいシューズブランド、オンのトレイルランニングシューズ。基本的な特徴は全シリーズ共通で、ゴムホースを輪切りにしたような空間の空いたアウトソールが強い衝撃、多方向からの衝撃を効果的に吸収してくれるというもの。踏み込みやブレーキの際にずれるんじゃないかと心配しましたが、さすがに平地で少し試したくらいではそんなことは決してありませんでした。やっぱり何よりデザインが良すぎ。(公式サイト)
エバニュー Ti570 Cup
今シーズン新発売された、ウルトラライト仕様のチタンマグカップ。この手のギアは本気で探していないと細かな違いになんて容易には気づけないもので、今回もお恥ずかしながらまったくのノーマークでした。ただ開発の方から直接熱く語りかけられてはじめて、このカップの優秀さにはたと気がつかされたというわけです。例えばまず目に入るのは160 / 330という、一見中途半端な目盛り。それぞれ尾西のアルファ米、カップヌードルリフィルの必要湯量となっていて、それらを主食としている人にとっては軽量がめちゃくちゃ楽であると。他にも取っ手のシリコンは火の届き具合を意識して下半分がなかったり、口当たりを考えられた滑らかな縁など細かい点で開発者の工夫が満載なのが痺れます。
KAENON 偏光サングラス
三重県四日市の粋なアウトドア・セレクトショップADAPTさんのブースにて見つけた、知れば知るほど確かな技術と、洗練されたデザインが融合した素敵なサングラス。2001年にカリフォルニアで誕生したばかりという新興ブランドではありますが、特許取得済のSR-91と呼ばれる偏光レンズを採用し、他には真似できないレベルで邪魔な反射光線をカットしたクリアな視界を提供してくれるといいます。
FINAL FLAME GEAR チタンポットスタンド
ADAPTさんのブースで出会った驚きのULギアをもうひとつ。このブランド自体の詳細は不明ですが、3Dプリンタでモデリングした非常にトリッキーな組み上がりのポットスタンド(五徳)。使用時は上の写真(右)のように回転する放射線のような形状ですが、収納時には独自のスライド変形機構によってあっと驚くフォルムになって収まります。残念ながら写真を撮るのを忘れてしまったのですが、詳細はこちらの公式サイトにて確認できます。これは世界に売れるよー。
NATURE THING 100%自然素材のエナジーバー
日本以外の世界、特にアメリカではエナジーバーというと鬼のようにたくさんの種類が売られているんですが、一方日本ではそうした需要がないからなのか、ぼくたちアウトドアな人間にとって魅力的なものがなかなか出てこないという状況が続いていました。そんななか出会ったこの100%自然素材のエナジーバー「NATURE THING」はアスリートに必要な栄養分を効果的に摂取できる栄養素をバランス良く備え、味も日本人的(アメリカの甘ったるさなし)、何より無添加、砂糖や甘味料も使用していないというではありませんか。おまけに極端に日持ちしないなんてこともなく、ナッツとジェルで空腹を満たしていたこれまでの行動食を変えてくれるかも。期待したいです。(公式サイト)