Discord始めました
新開発の延伸ポリエチレン(ePE)メンブレンを搭載した新しいGORE-TEXプロダクトについて、開発元である日本ゴア社とその誕生において重要な役割を担ったというPatagonia。その二大キープレイヤーによるスペシャル・トークイベント『patagonia×GORE-TEXテクニカル・シェルの未来について』が11月17日(金)パタゴニア 東京・神田で行われました。
この秋ごろから登山などに使える、いわゆる「GORE‑TEX PERFORMANCE プロダクト」系の製品も続々登場し、いよいよそのベールが明かされる今シーズン。その動きをじっと注目してきたOutdoor Gearzine でももちろん、以前からの予告通りこのイベントに参加してきました。
目次
10年の歳月をかけて達成した「PFCフリー」のGORE-TEX
前半は新しい『ePEメンブレン』の誕生にまつわる話から。
日本ゴア合同会社 GORE-TEX Fabrics セールス担当の大貫 英昭氏によると、ゴア社がPFC(いわゆる有機フッ素化合物)をまったく使用しないGORE-TEX メンブレンを開発をスタートする最後の一押しとなったのは、他ならぬPatagonia 社であったといいます。
実際のところゴア社ではPFCの有害性が疑われ始めた20年ほど前からすぐに有害性のないPFCに切り替えての運用を行っていました。それでも今から約10年前、世間ではまだPFCのPの字もなかったころ、ゴア社に「PFCを使わないメンブレンを作るべきなのではないか」と迫り、背中を押したのがPatagonia だったとか。そこから製品化に至る実に10年という長い年月を経て、時代は奇しくも「PFC全廃」という大きな流れに。それを考えると、当時開発に踏み切った決断がこれほど奇跡的なタイミングになるとは当時誰も予想しなかっただろうと思うと感慨深い。
ePEメンブレンのGORE-TEX、従来と比べて何が違う?
続いて従来のPTFEメンブレンのGORE-TEXと比べて、新しいePEメンブレンは何が違うのか?多くの人が興味あるであろうそのテーマについて語られました。
それによると、まず構造がほとんど同じ、ゆえに防水透湿性能はほぼ変わらず。そしてメンブレン自体だけでなく、生地やウェア(製品)としても、GORE-TEX独自の厳しい耐久テストを(長い試行錯誤の末)10年かけてクリアしたと。これによってメンブレンが新しくなったとしても、使い勝手や耐久性については従来のGORE-TEX製品とまったく違和感なく使用できるといいます。
そればかりか、新しいePEメンブレンは、従来のPTFEメンブレンよりも「軽く」「薄く」なっているとか。このため新GORE-TEXジャケットは、より柔らかくソフトな着心地が実現している可能性が高いとのことです。
これから順次 GORE-TEX Active や GORE-TEX Pro などのさらにハイエンドな製品も、順次ePEメンブレンを採用していき、最終的には2025年までに一般消費者向け製品のすべてをePEメンブレンに切り替えるといいます(楽しみ)。
そうした使い心地について、Patagoniaのスノーボード・アンバサダーであり国際山岳ガイドの加藤 直之氏も大いに賛同しています。Patagonia アントラックド・ジャケットを1年着用してきたという加藤氏によれば、新しいウェアはより軽く、しなやかに、動きやすくなり、特にスキーパンツでは腿上げの時に膝の曲げ伸ばしが非常にスムーズだったといいます。
新しいGORE-TEXは、よりこまめなメンテナンスが重要とも
製品そのもののパフォーマンスは同等もしくは優位な点すらあるePEメンブレンですが、ただ1点、ePEメンブレンは「撥油性」が従来に比べて低いという点には注意が必要とか。「撥油性」とは油を弾く性質で、これが弱いと生地周辺の油や汚れがつきやすくなり、より水分を引き寄せやすくなってしまう(撥水性が落ちているように見える)といいます。このため、新GORE-TEX製品では、従来よりもこまめに洗ってあげることでウェアに付着した油分や汚れをきれいにしておくことが重要です。
このことに限らず、GORE-TEX製品はこれまでも、そしてこれからも常に生地をクリーンに保つ(=マメな手入れ)ことが非常に重要だと、トークのなかで両氏から再三語られていました。
真摯に向き合っていくべき「ギア」としての、テクニカルシェルの未来
新しいGORE-TEXとの向き合い方について、さまざまな厳しい自然を相手にしてきた加藤氏はウェアも「道具(ギア)」として向き合ってきたという話から、参加者へ次のようなアドバイスが送られます。
廃棄と消費を繰り返すことから「長く使う」スタイルへと移り変わっていくこれからの時代、テクニカルシェルの考え方としては、「買って終わり」ではなく、適材適所に使い分けたり、自分の使いやすいように創意工夫したり、そしてもちろん常に最高のパフォーマンスを発揮できるように手入れを怠らず、大切に育んでいくことがこれまで以上に大切になってくるのではないかと。
他にも普段あまり知られることのないGORE-TEX についてのディープなお話が盛りだくさん。最後の質疑応答では手が延々と挙がり続け、時間がいくらあっても足りないほど。素朴な疑問からマニアックな質問まで、多彩な問いにたじたじになりながらも丁寧に答えてもらい、参加者の皆さんはそれぞれに満足そうな笑顔で幸せな夜を過ごしたのでした。
加藤直之氏トークイベント『突き動かされる衝動』が開催されます
この冬まもなく、今回ゲストで登壇したパタゴニア・スノーボード・アンバサダー 加藤直之氏によるスライド&トークイベントが、パタゴニア東京・神田を皮切りに仙台・札幌北・白馬パタゴニア直営店で開催されます。
スプリットボードでの山岳滑降の第一人者である加藤氏は、国際山岳ガイドとして活動する傍ら、「結果」よりもその「プロセス」に重きをおく個人山行に取り組み、年間を通じて多くの時間を山の中で過ごしています。氏が大切にしているスタイルや自然に対する倫理観、そして山へと突き動かされる「衝動」を、これまでの山行を振り返りながら紐解きます。
Photo by Hiroya Nakata
加藤直之氏トークイベント開催概要
イベントタイトル:突き動かされる衝動 加藤直之を山へと導く情熱とその本質とは
スピーカー:加藤 直之
国際山岳ガイド。都会のど真ん中で生まれ育った加藤直之は幼少のころはボーイスカウトで自然に親しみ、アラスカ大学フェアバンクス校在学時にのめり込んだスプリットボードで地球を駆け巡り、年に2 回ほどの海外遠征で世界を登る・滑るを実践している。同時にガイドとして四季を問わず国内外を飛び回っている。〈TENGU CAT-SKIGUIDES〉ディレクター・ヘッドガイド。
開催日時・会場:
パタゴニア東京・神田 12/8 (金) 19:30 開始 21:00 終了
パタゴニア仙台 12/9 (土) 18:30 開始 20:00 終了
パタゴニア札幌北 12/10(日) 18:30 開始 20:00 終了
パタゴニア白馬 12/13(水) 19:00 開始 20:30 終了
お問い合わせ:
パタゴニア日本支社
0800-8887-447 *フリーコール・通話料無料
10:00~16:00 (土日祝日・年末年始は休業)
Photo by Hiroya Nakata