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Patagonia トリオレット・ジャケット & パンツ レビュー:PFCフリーの最新GORE-TEX採用の本格ハードシェルは、初めて雪山に足を踏み入れるためのベスト・チョイス

地球環境の不可逆的な壊滅という危機を前にして、歴史上の大きな転換期を迎えているといわれるアウトドア――。

製品開発から生産、販売に至るまでのあらゆるプロセスでこれまでの「大量生産・大量消費」的な在り方は見直しを迫られ、業界全体でサステナブルな仕組みの再構築への動きがここ数年で一気に加速しているのが現状です。

レインウェアや冬山向けハードシェルに使われる防水透湿生地で「PFCフリー」という新たなルールのもと幕を開けたサステナブルな防水透湿メンブレンの開発競争も、その大きな流れ象徴的な出来事のひとつ。この防水透湿素材のトップメーカーであるゴア社の「GORE-TEX」は昨シーズン、満を持して有機フッ素化合物を一切使用していない新開発「延伸ポリエチレン(ePE)メンブレン」によるGORE-TEXプロダクトを発表しました。この辺ついては以前こちらの記事に書きましたので、よかったら参照ください

ゴア社と二人三脚でこの開発をサポートしてきたPatagoniaではこの冬、ついに同社の定番ハードシェル「トリオレット・ジャケット&パンツ」でこのメンブレンを採用しました。これでようやく厳しい山岳環境での使用を想定した本格冬山登山向けハードシェルでも、PFCフリーの扉が開かれたという訳です。

そこで当サイトでは待ちに待ったこの新作を早速冬の雪山登山やスキーといった厳しいフィールドで実際に使ってみました。新しいGORE-TEXジャケットはこれまでと違ってどうなのか?現時点で果たして実用に足る品質になっているのか?従来の多様なGORE-TEXプロダクトをはじめさまざまな防水透湿ハードシェルを試してきたOutdoor Gearzineがレビューしてみたいと思います。

Patagonia トリオレット・ジャケット & パンツの主な特徴

本格的な冬山の過酷な環境で行なう多様なアクティビティで活躍するようにデザインされた万能ハードシェル。新しいPFCフリーの3レイヤーGORE-TEX防水メンブレンとDWR仕上げを施して作られた最初のテクニカル・ジャケットのひとつです。耐久性に優れた75デニールの100% リサイクル ポリエステルの表面は、激しい吹雪のホワイトアウトやみぞれ、強風といったの過酷な状況に耐えうる頑丈なプロテクションを提供します。

ジャケットはレイヤリングしやすいゆとりのあるレギュラーフィットに、計算された立体裁断によって肩回りの動きやすさを提供。生地に備わった透湿性と2方向のピットジップによって蒸れを解消します。ヘルメットの上からフィットする調整可能なフードは硬いつばを備え、雪の侵入を防ぎつつ広い視認性を確保します。ハーネスに対応する高めのチェストポケットと左右ハンドポケットの両方を備え、多様なアクティビティに最適な収納を提供します。

パンツは大きな膝の屈伸にも自然な着心地をキープする立体的なカットとまち付きの股によって動きやすさを向上。ウエストはベルクロで幅の調節が可能で、ベルトループやスナップボタン留めとジッパー式フライ、左右ハンドポケットといった基本的な使い勝手を確保。上下両方から完全に開放可能な2WAYサイドジッパーはブーツの脱ぎ穿きやベンチレーションに便利。裾のエッジガードやスノーゲイターといったスノースポーツに対応する機能も備えています。

お気に入りポイント

  • より軽量でしなやかになったPFCフリーの防水透湿メンブレン
  • 優れた耐久性
  • 自然なフィット感と立体裁断による動きやすさ
  • ヘルメット対応で調節可能なフード
  • 豊富なポケット
  • 脇下ピットジップによる換気しやすさ
  • 汎用性とコストパフォーマンスの高さ

気になるポイント

  • DWR(耐久撥水)が弱く、こまめな洗濯・撥水処理必須
  • フロント止水ジッパーがやや硬い。できればビスロンで、ダブルジッパーであってほしかった

主なスペックと評価

項目Patagonia メンズ・トリオレット・ジャケットPatagonia メンズ・トリオレット・パンツ
重量510g(Sサイズ実測)520g(Sサイズ実測)
カラーLagom Blue, Shrub Green, Black, Touring RedBlack, Nouveau Green
サイズXS / S / M / L / XLXS / S / M / L / XL
レディースモデル
表地
  • 生地、メンブレン、DWR加工に有機フッ素化合物不使用
  • リサイクル・ポリエステル100%、3層構造の4.5オンス・75デニール・ゴアテックス・ファブリクス(DWR加工済み)
  • 生地、メンブレン、DWR加工に有機フッ素化合物不使用
  • シェル:リサイクル・ポリエステル100%、3層構造の4.5オンス・75デニール・ゴアテックス・ファブリクス(DWR加工済み)
  • エッジガード:2層構造の7オンス・210デニール・リサイクル・ナイロン100%(ポリウレタン・コーティング・ラミネート、DWR加工済み)
裏地トリコットトリコット
ポケット
  • ジッパーガレージ付き止水ジッパーの左右ナポレオンポケット2
  • ハーネスやバックパックに干渉しない位置の左右フロントポケット2
  • インナーメッシュポケット
  • 防水性ジッパー式縦型ハンドウォーマーポケットが2

その他機能
  • ヘルメット対応の調節可能なフード
  • 脇下2WAYピットジップ
  • ベルクロで調節可能な袖口
  • 2か所で調節可能なドローコード付きの裾
  • RECCO内蔵
  • 内側にベルクロで幅調節可能なウエストバンド
  • ベルトループ
  • スナップ留めを備えたジッパー式フライ
  • フルレングスの2WAYサイドジッパー
  • エッジガード付き裾
  • テープ留めとスナップ留めを備えたスノーゲイター
  • RECCO内蔵
Outdoor Gearzine 評価
快適性・動きやすさ★★★★☆★★★★☆
対候性★★★★☆★★★★☆
透湿性・ムレにくさ★★★☆☆★★★☆☆
重量★★★☆☆★★★☆☆
機能性★★★★☆★★★★☆
耐久性(丈夫さ)★★★★☆★★★★☆
耐久性(DWR)★★☆☆☆★★☆☆☆
多用途性★★★★★★★★★★

冬山登山とバックカントリーで着てみた詳細レビュー

幅広いスノーアクティビティに対応する作りのシェルということで、例年になく雪の定着が遅かった12月の谷川岳(ハイク)、そして年末~1月の長野でのゲレンデスキーとバックカントリーで着用。メンブレンの質を確かめるため天候もなるべく幅広く、晴れや曇りだけでなく霧雨、雪と強風などまんべんなく着てみました。基本的にはベースレイヤー、あるいはベースとミッドレイヤーを着てその上にジャケットというスタイルです。

着心地・快適性・動きやすさ:より軽く、よりしなやかになった新生 GORE-TEX

何といっても今回のジャケットでチェックするべきなのは新しいGORE-TEXメンブレンによってどう変わったのかということ。その違いはまず袖を通した瞬間に訪れました。75デニールの生地は適度なコシの強さがありつつ、(決して薄手とはいえはない厚みにもかかわらず)思ったよりも柔らかくしなやかで、裏地トリコットの肌触りも以前と変わらず心地よい。重さも、昨年モデルに比べて50グラム程度軽くなっています。第一印象としてはこれ以上なく好印象です。

176cm、64kg でSサイズを着用。

丈はスキー向けジャケットのような長めではなく、より汎用性の高いスタンダードな長さ。後部が少し長めでお尻を隠してくれます。基本的にはパタゴニアらしいダブつきの少ないすっきりとしたシルエットながら、レイヤリングのゆとりが十分あるレギュラーフィット。袖の長さも極端に短いということもなく、176cm・64kg、腕のやや長めな自分でも、Sサイズでちょうどよく快適に着られました。

個人差はあると思いますが、特に絶妙な高さと広さを備えた衿周りが気に入りました(下写真)。この部分、小さすぎる(狭すぎる)と息苦しかったり窮屈だし、大きすぎると寒かったり不格好だったりするので、細かいですが気になる部分です。もちろんチンガードによってジッパーの金属が当たるなんてことはありません。

しなやかな生地感と巧みな立体裁断によって肩回りの動きやすさも素晴らしく、大きく腕を振り上げた際の裾のずり上がりなどもほとんど気になりません。また脇下の換気用ピットジップのゴワつきの無さも気に入りました。

ただ、フロントの止水ジッパーはこの手のジャケットでは少し物足りなさを感じてしまいました。一般的なタイプなので不満とまでいってしまうのは言い過ぎかと思いますが、今どきとしてはスムーズさに欠け、屈曲もしにくいため、せっかくのしなやかな生地の足を引っ張ってしまっている印象なのが残念。ここがダブルのビスロンジッパーであったならば最高でした。

耐候性:雨風には相変わらず盤石の強さ。ただし耐久撥水性(DWR)はまだまだ。

GORE-TEXの厳しい環境に対する安心感は健在!

もうひとつのチェックポイントはもちろん生地の対候性、つまり雨・雪・風などの厳しい環境に対する強さです。積雪期も見据えたハードシェルにはここが何よりも大事なポイントといえます。この点についてはメーカーの言葉通りこれまで同様、安定の保護力を備えており、まったく心配いりませんでした。

これまでと同様の基準でストームテストをクリアしたのですから当たり前といえば当たり前なのですが、厚手のアウター生地は厳冬期冬山でも十分耐えられる耐水性・防風性を備えていました。フルシームシーリングされた縫い目、止水仕様のジッパーなどにより水、雪、風の侵入をしっかりと防ぎます。ベルクロ調節の袖口、裾には伸縮性ドローコードが付き、フードも3点で立体的に調節が可能で、隙間からの侵入も防ぎます。

DWRはまだ発展途上。撥水力の低下には要注意!

従来のメンブレンを使用していた前モデルから明らかに違いが見られたのはこのDWR(耐久撥水加工)の部分です。基本的にパタゴニアのこれまでのGORE-TEXジャケットで生地の撥水性に関して悪いと思ったことはなく、生地表面に落ちてきた水滴はビーズ状になってぽろぽろと落ちてくれ、その効果は普通の洗濯と乾燥だけで少なくとも1シーズンくらいはしっかりともってくれたように思います。今回も着たばかりの時は問題なく、下写真のように水を弾いてくれます。

しかし持続性に関してはやや注意が必要です。12月中旬、気温高めの霧雨のスキー場で半日着て行動していたところ、撥水が持たず生地が水を吸い始めてしまいました(下写真)。この時は購入してから洗濯2回目といったタイミングでしたが、普通に洗濯のみしてハンガーで乾かしただけで、アイロンや乾燥機などでの熱処理はしていませんで。とはいえそれでもこれまでのGORE-TEXに比べれば撥水力の落ち方が明らかに早い感じです。

ちなみにこれは撥水性の問題ですので、下写真のように表生地に水が染み込んでいたとしても衣服内に水が浸入しているわけではありません。メンブレンは確実に外からの水分をシャットアウトしています。ただ表生地が水分を吸ってしまうとその分ジャケットが重くなったり、透湿性が阻害されたりと、決して良い影響はありません。

きちんとケアをしていないと撥水性能が低下するのはどの防水透湿ウェアでも同じことだが、新GORE-TEXメンブレンでは現状まだ従来に比べて撥水性の低下速度は早い印象。

これはおそらく現状のPFCフリーDWR加工技術のパフォーマンスの問題や、新しいGORE-TEXメンブレンの「撥油性の低さ」という課題に起因することが推測されます。撥油性が低いことで、生地周辺の油や汚れがつきやすくなり、より水分を引き寄せやすくなってしまう(撥水性が落ちているように見える)というのです。

いずれにせよ、現状のePEメンブレンを採用したGORE-TEXプロダクトは以前に比べてDWR撥水力の耐久性は低くなったと感じられました。ただ上の「撥水性十分な生地写真」を見ればわかるように、決して常に撥水性が足りないということを意味している分けではありません。そもそも以前から生地の撥水性は使っていけば落ちるものであり、それが落ちないようにきちんと洗う、落ちてきたら撥水剤で回復させるというケアは必要なことであって、要はこれまでと同じようなパフォーマンスを維持するにはより短いスパンで手入れをすることが必要になっているということです。

市販の撥水剤に漬け込むなどしてきちんとケアすれば、ご覧の通り撥水力は回復する。

つまりこれからはアウタージャケットをシャツと同じようなタイミングで使ったらその都度洗う、そして2回に1回くらいのスパンでNIKWAXなどで撥水処理を回す、これを新たな習慣にすることが必要です。さまざまな意見はあるかもしれませんが、現状の環境負荷ゼロへと移行した新しい世界線において、ユーザーはその負担を避けることはできません。

透湿性・ムレにくさ:飛び抜けて高くはないが、脇下ピットジップと合わせて換気性は高く不満はない

トリオレットに使われているGORE-TEXは、ProやActiveといった特に透湿性や通気性に優れたプロダクトではない、ラインナップの中でもスタンダードなタイプ。さらに生地は75デニールと厚手のため、その意味で透湿性はそこそこ、感動するほど高いというわけではありません。冬山でもベース・ミッドレイヤーの上に着て登り始めれば、どうしても汗はかき、衣服内は湿気が溜まっていきます。

ただ脇下にあるピットジップを一度開けてしまえば、かなり快適な状態を維持できます(下にウールのベースレイヤーとポーラテックアルファの中間着を着ていました)。それを込みで考えれば、丈夫なシェルにしては十分な換気性を備えているといえます。-10℃くらいの晴れた冬の日中にスキーでハイクアップした際、ピットジップとフロントのジッパーを全開することで、かろうじて稜線までシェルを脱がないで歩くことができました。

機能性:軽さよりも利便性を重視した安心の作り

トレッキングから雪山登山、スキーツーリングまで使えるオールシーズン対応の万能モデルであるこのジャケットは、各パーツの仕様やポケットなどの収納については明らかに軽さよりも利便性を優先しており、初心者がシーンを選ばず快適に使えるよう十分な作りになっていました。

例えばヘルメットの上からも被れる大きなフードは、後頭部と頬の左右のコードロックによって立体的にフィット感を調節でき、ヘルメットがあっても無くても頭にジャストフィットさせることが可能。前述したように衿の高さと空間の作り方も絶妙で口元にフィットし、息苦しくなく快適です(下写真)。

首を振ったときにもズレずことなく視界は良好です。

袖口はスキーグローブをしながらでもスムーズに袖を通せる広さでつくられており、大きめのベルクロ留めが手袋をしていても調節しやすいように配慮されています。甲部分が緩やかに長くしてあり、グローブとの相性もぴったり。

左右の胸にある止水ジッパー仕様のナポレオンポケットは大きめのスマホやグローブも入る十分な大きさで、ものが入らないといったストレスはありません。また、ハードシェルには珍しく、腹部の左右にも2つのハンドウォーマーポケットが、さらに裏地の右側にはゴーグルがちょうど入るくらいのインナーメッシュもポケットも備わっており、この全方位的な配慮収納性の高さに関して異を唱える人はいないでしょう。

パンツ:丈夫さ、動きやすさ、実用性を備えたクセのない汎用性の高さが秀逸

ジャケットと同じように新しいePEメンブレンを採用し、PFCフリー・100%リサイクル素材で作られたトリオレット・パンツも、さまざまなアクティビティ、さまざまなレベルのユーザーに対応する汎用性の高い冬山用オーバーパンツ。

176cm、64kg でSサイズを着用。

想像以上に下半身の大きな動作が多い冬山でのアクティビティに対応すべく、股下にはガゼットクロッチ、膝には明確な立体裁断が施され、スリムなシルエットのわりに関節部分のストレスの無さは気に入っています(下写真)。ただスキーやスノーボード向けパンツのようにゆとりのあるシルエットに比べると、さすがにそこまでの機動性はありません。

ポケットは左右にジッパー付きのが2つ。できれば腿部分にも欲しかったところですが、スノーハイク用として考えればこれでも十分です。

裾の内側には深雪で雪が入るのを防ぐスノーゲイターを備えています。ベルクロ開閉で幅広のブーツにもつけやすく、縁には滑り止め加工がなされています。

内側の裾はアイゼンガードの補強があり、冬山登山に必要な万全のプロテクションを備えています。

サイドはフルジッパーで上下から完全にジップオフ・オンでき、アイゼンやブーツを履いたままの脱ぎ着や、歩きながらの換気が簡単に行えます。

ベルトループが付いたウエストは背面に付いたベルクロである程度フィット感を調節できます。

ベルトがあまり好きではない自分のような人のために、パタゴニアは今シーズン新たに純正のサスペンダーを発売しています。余分な費用を追加したとしても個人的には冬山用パンツではこの使い方が好みです(下写真)。

まとめ:過酷な冬を安心して任せられる圧倒的な堅牢さと快適さと、あと一歩の機能性

新しいPFCフリーのGORE-TEXメンブレンを採用したトリオレットは総じて全方位的に弱点の少ない冬山のオールラウンダーとして非常によくできたハードシェルであるといえます。DWR加工の持続性を除けば、なによりこれまでになかったまったく新しい、しかも環境負荷をかけない素材によって以前とほぼ同じようなパフォーマンスを実現しながら、さらに以前にも増して軽く着心地が良くなったということは驚くべきことです。クセのない仕様は、自分が出会ったジャケットの中でもトップクラスに汎用性が高く、ハイキング・登山、クライミング、スキーなど、温暖な天候を除く幅広い冬のアクティビティに適しています。

バランスを重視した機能面もさることながら、価格面で(製品価格の値上げが相次ぐ昨今にあって)良心的な点も見逃せません。これから何かしらのアクティビティで冬山を始めてみたい、そして未来に向けて環境への負荷を考慮した最先端の冬用シェルを探しているなら、ぜひこのジャケットを検討してみてはいかがでしょう。