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Patagonia ナノエア・ライト・ハイブリッド レビュー:冷えにくく、蒸れにくい。これこそ待ち望んでいた冬アウトドアのための行動着

通気性と断熱性を兼ね備えた新しい中綿を使った「アクティブ・インサレーション」は、市場に出始めてから約10年ほど経ち、今やフリースに取って代わる勢い。新しい冬の行動着として、秋冬のアウトドア・アパレル市場で最も活気のあるジャンルのひとつにまで成長していきました。その結果、ここ最近ではターゲットとなるアクティビティや季節によって少しずつ特徴の異なる個性豊かなモデルが各メーカーから次々と登場しています。

そんな人気のアクティブ・インサレーションにいち早く参入し、このジャンルの進化を推し進めてきたPatagoniaの人気シリーズといえばご存じ「ナノエア」シリーズ。なかでも個人的なお気に入りのひとつ、ラインナップの中でも特にアクティブなシーンにフォーカスしたPatagonia ナノエア ライト ハイブリッドが今シーズンバージョンアップしました。

以下では、この新しいジャケットを2023年の冬~春(2~4月)、そして秋(10~11月)にバックカントリースキーや登山で着用してみたレビューと、おすすめの季節や使い方などについてまとめたいと思います。

Patagonia ナノエア・ライト・ハイブリッドの主な特徴

Patagonia ナノエア・ライト・ハイブリッド(ジャケット / フード)は、低温下でのハイテンポなアクティビティ中に行動着として着るのに適した軽量なアクティブ・インサレーション・ジャケット。身体の熱を逃さない程度の断熱性に加えて通気性と伸縮性を備えた40グラム・フルレンジ・インサレーション(中綿)を胴体の前面と腕の上部に配置し、一方で脇の下と背中全体には同社のR1エアに採用されている抜群の通気・速乾性と伸縮性を備えたフリースパネルを組み合わせることで、冬の発汗を伴う激しい行動時にも冷えにくさと蒸れにくさを両立します。フィット感の高いフード(フーディタイプの場合)や高めに配置したハンドポケットなど、厳選された機能はフィールドでの実用性が細部まで考慮され、真冬のハイクやラン、バックカントリースキー、アイスクライミングなど低温下の活発な活動でより軽く、速く快適に活動したいというプレーヤーにとって最適です。 フーディ・ジャケットタイプがラインナップされています。

おすすめポイント

  • 軽くて心地よい肌触り、動きやすくて快適な着心地
  • 寒さが厳しい季節での高負荷アクティビティにちょうどいい保温性
  • 活動中も蒸れすぎない通気性
  • ハーネスやバックパックに干渉しない計算されたポケットの作り
  • (フーディタイプの)フィット感抜群のフード

気になったポイント

  • 10℃前後より暖かくなると、激しい運動ではやや暑い
  • シェル表生地の耐久性
  • 前モデルであった防臭性加工が無い

主なスペックと評価

項目ナノエア・ライト・ハイブリッド ジャケットナノエア・ライト・ハイブリッド フーディ
実測重量282g(Sサイズ)316g(Sサイズ)
カラーObsidian Plum、Black、Nouveau Green、Shrub Green、Sedge Green (旧カラー)Obsidian Plum、Black、Nouveau Green、Wax Red (旧カラー)
サイズXS / S / M / L / XL
シェルと裏地通気性に優れた1.6オンス・30デニール・リサイクル・ポリエステル100%のシャドー・ストレッチ・リップストップ。PFCフリーDWR加工(有機フッ素化合物不使用の耐久性撥水コーティング)済み
フリース地中空糸を使用した5.7オンス・リサイクル・ポリエステル100%のジャカード・フリース
インサレーション40グラム・フルレンジ・ポリエステル100%(リサイクル・ポリエステル93%)
ポケット隠しジッパー式ハンドウォーマーポケット2
Outdoor Gearzine 評価
快適性★★★★★
保温性★★★☆☆
ムレにくさ★★★★★
動きやすさ★★★★☆
機能性★★★☆☆
重量★★★★☆
収納性★★★☆☆
冬山満足度★★★★★

詳細レビュー

大事なところは保温しながら、抜けて欲しいところは爆通気 ~気温一桁以下での動きのあるアクティビティに最適なバランス~

Patagonia ナノエア・ライト・ハイブリッドは2つの異なる生地を組み合わせたハイブリッドな防寒ジャケット。フロントと両腕パネルには40グラムのフルレンジ・インサレーション(中綿)が封入されています。これは同社の7年前の誕生当初から変わらないオリジナルのナノエア・ジャケットで使用されている 60グラム・フルレンジより薄手に調整されており、このモデルでは若干ではありますが断熱性を抑えることで、よりアクティブなシチュエーションのために軽さと通気性を向上させる意図がうかがえます。

フロントや腕の上部には通気性を備えた中綿を配置。程よく風も防いでくれるのでアウターとしても活躍。

これは(自分も実はそうでしたが)、冬の一日中ずっと(脱ぎ着しないで)着続けられると期待したのに実際は意外と暑くて脱いじゃった、なんていう経験のある多くの冬ラン・雪山初歩・BCスキーヤーにとって歓迎すべきポイント。寒さよりも常時活発に動くことによる暑苦しさの方が気になる人にとっては、むしろこれくらいの中綿量がちょうどよかったりします。ちなみにそうはいっても同社のR1フリースなどよりは暖かいので、さすがに気温10℃前後までいくと行動中は暑くるしくなってくると思います。その意味では季節的にこれからの冬本番シーズンがベストです。

一方、背中と脇の下にはウェーブ状の立体的な模様が入ったジャカード・フリースが配置されています。そう、これは以前当サイトでも絶賛していたPatagonia R1 Airでも採用されているフリースと同じ。ワッフル・ニットのフリースを採用していた前モデルから大きく進化した点です。リサイクル・ポリエステル100%の中空糸によるニットは軽さと伸縮性・吸湿性を備えると同時に、立体的な表面による優れた通気・速乾性によって、軽さを保ちつつより高い汗処理性能を実現しています。

R1 Airでも採用されているジグザグ模様のフリースパネル。行動時の蒸れがここからどんどん発散される。

ジャケットタイプに比べてフーディタイプの方が背面に配置されたフリースの面積が若干広い。熱がこもりがちなフーディをより通気性高めにという意図だろう。

脇の下から放熱されていく感覚がたまらんのです

この「フルレンジ」と「R1エアフリース」生地のコンビネーションは、実際フィールドでも驚くほどうまく機能してくれました。

日帰り分の荷物を背負って氷点下前後の気温のなかでバックカントリースキーや、気温一桁~0℃前後での重荷での登山などでテストしてみたところ、まず外気に露出して寒気を感じやすい身頃前面や前腕~肩が守られているため寒さはあまり感じられず。一方身体はかなりの熱を発しているにもかかわらず、脇の下あたりが冷気や寒風によって冷やされているのがはっきりと感じられ、全体としてオーバーヒートまでいかず、結果脱ぎ着せず行動し続けられます。ベースレイヤーにかいていた汗は不快になるほどたまらず、気づかないうちに乾いてしまいました。

晴れた冬のバックカントリーでハイクアップして大汗をかいても、オーバーヒートまでいかないこの絶妙な保温・通気のバランス。

特に激しい運動を伴うアクティビティであれば、気温は低いほどより快適に着られます。この低温下での汗処理と保温のバランスこそ、この製品が他の製品と比べて頭一つ抜きんでている点といえます(ただ逆に言うと、ゲレンデでまったりスキーしたり比較的じっとしている時間の長い活動などには適していないとも)。

適度な防風性、そしてDWR(耐久撥水加工)によって、ある程度の風や不意の雨にも備えあり

このジャケットの風や雨雪などに対するプロテクションは、決して高いというわけではありません。それでも雨に曝されやすいフロント・肩~腕部分の表生地にはしっかりとDWR(耐久撥水加工)が施されていますので、その意味では最低限の耐候性は備えています。この必要最低限の耐候性は特にアウターとして活用するときには重要な機能ですので、定期的に撥水回復処理をしてしっかりと性能をキープしておくことが重要です。

防風性に関しても、フリース部分は風を通しやすい一方でシェル部分は(通気性はありながら)風に対してワンクッションの防風機能が働いてくれます。止まっているときはしっかりと防風してくれる方がありがたいのは当然ですが、あくまでも行動中の快適さとの兼ね合いを考えれば、これくらいの防風性で十分、というか個人的にはちょうどよい気がしました。

中綿部分の表生地にはDWR加工が施されている。購入して一度洗った生地だが、まだしっかりと撥水性を保っていた。

軽くて心地よい肌触り、理想的なフィット感と快適性

シェル部分の表裏に採用されている極薄のリサイクル・ポリエステル100%リップストップ生地は、ふわっと軽くてしなやかな手触り。触っただけで品質の高さがうかがえます。半袖Tシャツの上に着用しても心地よい肌触りの良さも気に入っています。

ただこの極端な薄さは(もちろん同じ薄さの一般的な生地と比べれば堅牢にできていますが)残念ながらフィールドでの擦れや引裂にまったく注意を払わなくてよいというほどの万全な耐久性は期待できません。特にアウターとして着る場合には、鋭い木の枝やザラついた硬い岩肌にうっかりやられないように多少は気を配る必要があります。

袖を通してみると、177センチの自分でもSサイズで余裕があるほどにやや長めで余裕のある丈。後ろの着丈もハーネスの着用を考えて長めになっています。

身幅は上に重ね着することを考えてスリムで身体のラインにフィットします。だからといって窮屈な感じは一切なく、柔らかいフリース・インサレーションはともに伸縮性があるため身体の動きを妨げるようなことがありません。腕を高く上げても裾が引っ張られることもほとんどなく、肩回しもスムーズ。全体的にこれほど着心地の良いジャケットはそうそうないといえるほどの快適さです。

巧みな立体裁断と生地のストレッチ性によって身体の動きが妨げられるようなこともなし。

袖口は手の甲が長めにカットされ、掌側にはエラスティック素材で伸縮する。細部までフィット感とプロテクションを考えた仕様。

ピッタリと吸い付くようにフィットするフード

これまで自分はパタゴニアの多くの製品でその「フードの作りの良さ」に感動してきましたが、今回のナノエア・ライト・ハイブリッド・フーディのフードも抜群にフィットし、ズレず、ムレず、快適なことこの上なしでした。両サイドの適切な位置に伸縮ゴムが配置され、頭の形に合わせてフィットし、隙間風を防ぎます。

頭を左右に振った際にも顔の動きに追随してくれ視界を遮られるようなこともなく、快適さは変わりません。しかも首の裏部分はフリース地になっているため、頭部の熱気も排出しやすく配慮されていたりと、隅々まで考えられ異常に完成度が高くなっています(下写真)。

軽さを実現するために最低限に集約された収納・機能

このジャケットに備わっている収納類はシンプルなフロントジッパーに手を温める左右のハンドポケット、以上、これだけ。これだけの軽さを実現しているので多少は覚悟していましたが、必要以上のものはなく、必要以下のものもありません。ただこの厳選されたポケットはハーネスの装着を考えて高めに配置され、隠しジッパー式で主張しないなど、さすがしっかりと作りこまれており好印象。

あれもこれもポケットに入れて重々しく歩くのではなく、必要最低限の装備で可能な限り身軽に(ただそこで残された機能には決して手を抜かない)という意図は明白です。ただ、やっぱり胸ポケットが欲しいと言ったら贅沢といわれてしまうのでしょうか。個人的に胸ポケットはすぐに取り出しやすく、適度に体温で暖められるのでスマホやバッテリーを入れておくのに便利なだけに、欲が出てしまいます。

まとめ:すべての冬山愛好家が待ち望んでいた『保温 × 通気』のベストバランス

冬山登山やバックカントリースキー、そして氷点下でのトレイルランやスピードハイクなど、寒さが本格化した冬でストップアンドゴーを繰り返す、激しい発汗を前提としたアウトドアを考えた時、Patagonia ナノエア・ライト・ハイブリッドはベースレイヤーの上に羽織る中間着として自分が求めている要素を現時点で最も多く満たした一着です。このジャケットによって冬の行動中には何度もあるのが当たり前と考えていた脱ぎ着の回数が、嘘のように少なくなります。

さらに素晴らしいのはミッドレイヤーとしてだけでなく、アウターとしても十分に機能するところ。今回掲載している写真を見ていただければ分かると思いますが、早春や晩秋、冬でもハイクアップなど特に発汗量が多い時には薄手のベースレイヤーや半袖Tシャツの上にこれ一枚で非常に快適に過ごせます。

ようやく始まる冬山シーズン。厳しい寒さのなかでも常に攻めていきたいすべての冬山愛好家におすすめです。

開示情報:著者は当初フーディタイプのウェアを所有していましたが、今回のレビューにあたってジャケットタイプの新色モデル提供を受けました。