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パタゴニア ナノエア・ウルトラライト レビュー:着回しいろいろで一年中使える絶妙なボリューム感が愛おしい、超がつくほど便利なアクティブ・ミッドレイヤー

低温下での行動時でも「寒すぎず・暑すぎず」という適度な状態を保ってくれるミッドレイヤー、いわゆる「アクティブインサレーション」によって、秋冬の登山は以前にも増して一段と快適・安全になりました。

ただその快適さのインパクトに慣れてくると、さらに「より快適」を求めてしまうのが人間というもの。実際のところ、寒い季節といっても秋・冬・春先と時期は広く、活動の強度もアクティビティによってさまざまです。アクティブインサレーションなら何でも「行動中はちょうどよく快適」、なんてことにはならないのが残念ながら実情ではないでしょうか。

個人的な経験で思い浮かぶ場面としては、シャツ一枚では肌寒い程度の微妙な寒さで、防寒着を羽織ると暑くなる程度に高負荷な活動をしているとき。例えば低山での10月辺りのハイキングや11月辺りのトレイルラン、春の陽気の残雪登山、バックカントリースキーでの樹林帯ハイクアップなどです。

ベースレイヤーの上に薄手のフリースやソフトシェル、アクティブインサレーションを羽織るとやや風通しが良すぎるので、ウィンドシェルを重ねてみる。そうすると今度はまた蒸れやすい、と、なかなかジャストフィットするレイヤリングが見つからないのが悩ましかったりします。

そんな微妙なスイートスポットにぴったりと収まりそうなミッドレイヤーが、パタゴニアの2025年新作、今回紹介する「ナノエア・ウルトラライト」です。この新しいジャケットをこの1カ月ほどバックカントリースキーや登山で着用してみました。さっそくレビューを書いていきます。

パタゴニア ナノエア・ウルトラライト・フルジップ・フーディの主な特徴

パタゴニア ナノエア・ウルトラライト・フルジップ・フーディは、肌寒い気候でのアクティブな運動時に行動着として羽織るのに適した軽量ミッドレイヤー。必要最低限の保温性と適度な通気性を兼ね備えた20グラム・フルレンジ・インサレーション(中綿)を戦略的に配置することで、発汗を伴う激しい行動時に寒すぎず、暑すぎず、蒸れもせずの快適な環境を提供します。表裏生地には耐久性と通気性、防風性、伸縮性を兼ね備えた薄手のリサイクル・ポリエステルを採用。計算された立体裁断とストレッチによって大きな動きにも自然な着心地が実現。真夏を除いた幅広い季節での登山やクライミング、バックカントリースキーなど多彩なアクティビティに対応する汎用性の高さも魅力です。メンズ・ウィメンズモデルや、プルオーバータイプもラインナップ。

おすすめポイント

  • 薄手軽量ながら行動中の適度な保温性を提供する20グラムのフルレンジ・インサレーション
  • プロテクションと通気性の絶妙なバランスを実現した戦略的な中綿の配置
  • 快適性、通気性、伸縮性、耐久性、防風性を兼ね備えたシェル生地
  • 優れた立体裁断とストレッチ性による抜群の動きやすさと洗練されたシルエットの両立
  • 快適さと実用性を兼ね備えた袖下のストレッチ生地
  • パッカブル仕様のチェストジップポケット

気になったポイント

  • 機能・収納最低限のシンプルでミニマルな構造(個人的には気にならなかったが、より利便性を求める人にとっては物足りないかも)

主なスペックと評価

項目パタゴニア メンズ・ナノエア・ウルトラライト・フルジップ・フーディ
実測重量249g(Mサイズ)
カラーPollinator Orange、Wetland Blue、Smolder Blue
サイズXS / S / M / L / XL
ウィメンズモデルあり
他タイププルオーバーモデル(フードなし)
シェルと裏地通気性に優れた1.6オンス・30デニール・リサイクル・ポリエステル100%のシャドー・ストレッチ・リップストップ。PFAS不使用で製造されたDWR(耐久撥水)加工済
袖の下側パネル吸湿発散性を備えた2.3オンス・リサイクル・ポリエステル100%のダブルニット
インサレーションリサイクル・ポリエステル100%の20グラム・フルレンジ。フェアトレード・サーティファイドの工場で製造
ポケット裏返して収納できるチェストジップポケット
Outdoor Gearzine 評価
快適性★★★★★
保温性★★☆☆☆
耐風性★★★☆☆
通気性・ムレにくさ★★★★★
動きやすさ★★★★☆
重量★★★★★
コンパクトさ★★★★☆
多用途性★★★★★
適したアクティビティハイキング・登山・クライミング・トレイルラン・バックカントリースキー、その他軽さと機動性を必要とするアウトドア全般で活躍

詳細レビュー

中綿とシェル素材の絶妙なハーモニーによる、保温性・通気性・防風性・動きやすさの良バランス

アクティブインサレーションの先駆け「フルレンジ」の最軽量バージョンを初採用

さて今でこそどのブランドでも定番となりつつあるアクティブインサレーションですが、実はこの分野での先駆者のひとりでもあるのがパタゴニア。保温性と通気性を両立した独自中綿「フルレンジ」を採用したナノエア・フーディが初めて登場したのは2014年。まだアクティブインサレーションなどというジャンルが確立するはるか昔のことでした。ナノエアはその後「ナノエア・ライト」「ナノエア・ライト・ハイブリッド」と、広がる用途や季節に合わせてさまざまな進化を遂げ、定番シリーズとして定着して今に至ります。

その最新バージョンである本作では、これまでの60グラム、40グラムといった中綿の生地厚からさらに薄くなった「20グラム」のリサイクル・ポリエステル100%フルレンジ中綿を採用。ここが本アイテム一番の注目ポイントです。

触ってみると本当に何かが入っているのかと疑ってしまうほど薄い中綿で、それでもしっかりとじんわりと温かみがあるから不思議です。

この薄さが一体何を意味するのかといえば、もちろん従来に比べて保温力は減っているのは確かですが、一方であえて断熱性を抑えたことによって通気速乾性も向上することになり、より暖かい季節やよりアクティブなシーンに活躍の幅が広がったということもまぎれもない事実です。

実際のところ、厳しい寒さよりも「何となく肌寒い」という日が長くなっている昨今の日本の秋冬シーズンでは、このくらいの最低限の断熱性の方が、9~11月あたりのトレイルランやファストハイキングなどで一日中ずっと(脱ぎ着しないで)着続けられてちょうどよくマッチする薄さであったります。

以前このサイトでナノエア・ライト・ハイブリッドのレビューをした時には、気温10℃あたりで暑さが気になってくると書きましたが、今回のナノエア・ウルトラライトならばもう少し暖かくてもちょうどいい快適さで脱ぎ着をせずに歩く(走る)ことができました。

熱がこもりやすい場所はあえて中綿を排して蒸れにくくする戦略的なマッピング

もちろん、ただ中綿を薄くしただけでは終わらないのが、常にアウトドアブランドの先頭集団を走り続けてきたパタゴニアです。このフルレンジ中綿を全体に配置するのではなく、フロント・背中・腕の上側・フードに配置し、それ以外のサイドパネルと腕の下側にかけて(つまり汗や蒸れの溜まりやすい、熱や湿気が抜けて欲しい部分)は中綿を省略することで、フィールドでの最適な快適さを細部まで突き詰められているわけです。

適度な防風・撥水性と通気性を両立したシェル生地

またこのジャケットは、適度に風と水滴を防いでくれながら空気の流れも妨げない、リサイクルポリエステル100%のリップストップ生地が採用されています。

この生地は先輩モデルの「ナノエア・ライト・ハイブリッド」で採用された生地と同じで、いわゆるインサレーションジャケットでよくあるようなシャカシャカしてまったく通気しないシェル生地ではなく、ふわっと軽くてしなやかな手触りで防風性がありながらも適度な通気性を保ち、さらにはメカニカルストレッチによってそこそこ伸縮性もある生地。半袖Tシャツの上で着ても肌触りが良いので気にならない、強いて言えばソフトシェルに限りなく近い感触です。

つまり風や雨雪などに対するプロテクションをある程度備えつつ、動きやすさと通気性を損なわないという、行動アウターとして必要な機能をまんべんなく備えた表地と言えます。これは特にアウターとして活用するときには超便利。

テストでは特に3月の八甲田でスキー登山でのアウターとして着てみた際にその実力をまざまざと実感しました。外気温はマイナス5℃前後。樹林帯からやや強い風が吹く稜線までの登りでしたが、ベースレイヤーにこのジャケットというレイヤリングで、きつい登りでもオーバーヒートまでいかず、かといって冷気で凍えることもなく、まさにちょうどよい塩梅で脱ぎ着せず進むことができました(とはいってもそれはあくまでも「動いている時」だけで、山頂について止まると当然寒くなるのでこの上にハードシェルを羽織ります)。

厳冬期を除けば、激しい運動を伴うアクティビティならちょうどいいくらいの快適さをキープできますし、それほど発汗しないまったり系のアクティビティならば秋口から冬の入り口辺りまでちょうどよく着られると感じました。

フワッと軽やか動きやすい、行動中のストレスを感じさせない快適な着心地

ナノエア・ウルトラライトは、行動中での着用を想定して作られていることから、シルエットはややタイトで身体のラインに沿ったスリムなカッティングになっています。袖を通してみると、177センチの自分がSサイズでちょうどよいサイズ感でした(下写真)。裾の部分までかなり絞られているので下の写真では少し分かりにくくなっているかもしれませんが、背面の丈はやや長めになっており、ハーネスやバックパックなどによるずり上がりを抑えています。

身体のラインに沿ったスリムなシルエットとはいえ、動きにくいということはまったくありません。むしろ非常に動きやすい。肩回り、肘、脇下と可動部にかけては相変わらず見事な立体裁断によって、アクティビティでの激しい動きにも自然に追従してくれます。肘を曲げても肩を回してもノーストレス。また先ほども触れた通り中綿・シェル生地ともに適度なストレッチ性を備えていることもあり、不快なつっぱり感もまったく気になりません。スリムで滑らかな表地は重ね着での脱ぎ着もスムーズで、相変わらず服としての上質さ・仕立ての良さがそこかしこに感じられました。

行動着としての実用性たっぷりなディテール

機動性を重視して一見とてもシンプルに最小限の機能しかなさそうなナノエア・ウルトラライトですが、細かな部分でアクティビティを快適に過ごすのによく考えられた工夫がちりばめられているのがまたニクいのです。

ソフトでストレッチして袖まくりもしやすく、吸湿発散性と速乾性を備えた袖口

例えば袖口の作り。前腕の下部分には同ブランドの薄手ベースレイヤーである「キャプリーン・クール・ライトウェイト」素材が配置されています。

何がいいのか?確かに極寒時の保温性は下がるのですが、その代わりゴムやベルクロを省略して軽量化できる、汗抜けがよくなり余分な熱を逃がすのに便利、また自然なストレッチによって暑くなった時に袖をまくる・伸ばすが簡単になる、ソフトな肌触りで着心地もよいなど、マイルドな寒さでの使い勝手は総合的に向上しています。

パッカブル仕様のチェストジップポケット

このジャケットに唯一備わっているシンプルなチェストジップポケットは大きめのスマートフォンもすっぽりと入る大きさ。

さらにこのポケットを裏返しながら本体を丸め込んでいくと、スタッフサックに早変わり。カラビナクリップもちゃんとついているので、いざというときのためにハーネスやバックパックにぶら下げておくといった使い方ができます。

 

ヘルメットの有無にかかわらずフィットするフード

ナノエア・ウルトラライト・フーディのフードは少ないパーツにもかかわらず非常に機能してくれました。調節用のドローコードなどが無くても顔の両サイドにあるストレッチ生地が頭の形に合わせてフィット。相変わらず高いフィット感を備えており、頭を左右に振った際にも顔の動きにしっかりと追随してくれ視界を遮られるようなこともありません。3月の東北の雪山でも隙間風を防いでくれました。さらに後頭部のマチによってクライミング用ヘルメットの上から被っても調節無しでしっかりとフィットしてくれました(スキー用に作られてはいないため、大きめのスキーヘルメットの場合は不可能ではないにせよやや窮屈になります)。

まとめ:これまでありそうでなかったスイートスポットを埋める絶妙な行動ミッドレイヤー

ポケット類やドローコード、ベルクロといったパーツ類を可能な限り省略した非常にシンプルでミニマルなジャケットは、通気性に優れ、風を適度に遮断し、活動時に最適なちょうどいい断熱性を提供してくれる——。ナノエア・ウルトラライト・フーディはこれまでのアクティブインサレーションにはない思い切った中綿の減量と巧みなチューニングによって、ある意味この一着で薄手フリースの保温性と通気性、ウィンドシェルの軽さと防風性の良いところ取りをしたような使い勝手の良さがありました。

少し空気の冷たさが気になってから本格的な冬~初夏までの長い期間、あらゆるハイテンポなアクティビティで活躍できるようになった、文字通り「アクティブ」なシーンにフィットするミッド&シェルレイヤー、それがこのジャケットの最大の魅力です。

パタゴニアの他のフルレンジ採用ジャケットとの比較でいうと、中綿量60グラムのナノエア・フーディよりは保温性を抑えて通気速乾性が高いので大幅にアクティブ用途に向いている。また中綿量40グラムでフリース使用のナノエア・ライト・ハイブリッド・フーディと比べると保温性はやや少ない一方で防風性が高いのでアウターとしての使い勝手良さからより季節もアクティビティも幅広く汎用的に使えるといった違いがあります。

厳冬期のアクティブな用途の中間着にはナノエア・ライト・ハイブリッド、それ以外の幅広い季節でアクティブな中間着&アウターとしてまさにスイートスポットにハマるのがナノエア・ウルトラライト・フーディ、端的にいえばそんな印象です。

一着持っていればこの春からでもその便利さにきっと手放せなくなること間違いなしの頼れる相棒が、ワードローブにまたひとつ加わりました。

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