Patagonia ボルダー・フォーク・レイン・ジャケット レビュー:洗練された機能と優れた汎用性。長いトレイルで信頼できる「間違いのない」レインウェア
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道具好きの自分は、レインウェアというと「軽さ」とか「透湿性」といった、あるひとつの機能に特化した「尖がった」ギアにどうしても目が行きがちです。それはそれで特定のスタイルやルートであれば選択として十分アリといえますが、慣れないルートや長い日数の山旅をするとなると、そうした極端なモデルはある程度の「読み」と「経験」を必要とします。薄手・軽量・高透湿の雨具は穏やかな天候であればそれでも十分ですが、荒れた天候や予想外の寒さに対しては脆いという一面は無視できません。
そうしたことを考えたとき、機能や重量などのバランスがとれた汎用性の高いレインジャケットは、実は何だかんだ一周回ってとても重宝します。自分のなかであまり想像のつかない場所や、天気に多少の不安がよぎった時などに「迷ったらコレ」と自信をもって持ち出せる一着があることで、旅のリスクを大きく抑えることができます。
Patagoniaから今シーズン新たにリリースされたボルダー・フォーク・レイン・ジャケットは、まさしくそんな一着。Patagoniaで汎用性の高いレインウェアのスタンダードといえば「トレントシェル」があるかと思いますが、この新しい防水透湿ジャケットはトレントシェルのカジュアルさを残しつつよりフィールドでの使い勝手にフォーカスし、さまざまなフィールドでのアクティビティに対応するようにアジャストされた「新しいスタンダード」と位置づけられるかもしれません。早速レビューしてみたいと思います。
目次
Patagonia ボルダー・フォーク・レイン・ジャケットの主な特徴
パタゴニア ボルダー・フォーク・レイン・ジャケットは、海岸沿いのトレイルから高山の山頂まで、多様なフィールドを進むハイカーや登山者に必要な高い機能性と耐久性を備えながら、価格と重量を現実的な範囲に抑えたリサイクル3 層生地の防水透湿性レインジャケット。シームテープ加工が施された完全防水仕様に、タイト過ぎないゆとりのあるサイジングは寒い季節の重ね着にも対応。防水・防錆仕様で耐久性の高いフロント止水ジッパー、胸・左右にジッパー付きポケット、調節可能でフォーム入りのつばを備えたフード、ベルクロ留めの袖口、ドローコードで調節可能な裾を備え、ハイキングやクライミング、フィッシングなど幅広いシーンで荒天時の身体をドライに保ってくれます。
お気に入りポイント
- 優れた耐候性と耐久性
- 自然なフィットで動きやすい快適な着心地
- 調節が簡単でフィット感が高く、つばも長く防水性が高いフード
- 豊富なポケット
- 汎用性の高さ
気になるポイント
- より換気性を高めるための脇下ベンチレーション(ピットジップ)、あるいはフロントダブルジッパーがない
- 平均的な3層レインウェアよりもやや重い
- 収納が容易なパッカブル仕様ではない(丸く畳むことは不可能ではないけど)
主なスペックと評価
項目 | Patagonia ボルダー・フォーク・レイン・ジャケット |
---|---|
重量 | 388g(Sサイズ実測) |
カラー | Forge Grey, Smolder Blue, Basin Green, Gather Green, Pufferfish Gold |
サイズ | XS / S / M / L / XL |
レディースモデル | ◯ |
防水透湿機能 | PFC/PFAS不使用のH2Noパフォーマンス・スタンダード・シェル(3層構造) |
表地 | 3.7オンス・30デニール・リサイクル・ポリエステル100%のリップストップ。DWR(耐久性撥水)加工済み |
裏地 | ポリエステルのメンブレンとリサイクル・ポリエステルのトリコット |
ポケット |
|
その他機能 |
|
Outdoor Gearzine 評価 | |
対候性(防水・防風性) | ★★★★★ |
透湿性・ムレにくさ | ★★★☆☆ |
快適性・動きやすさ | ★★★★☆ |
重量 | ★★★☆☆ |
機能性 | ★★★★☆ |
耐久性 | ★★★★☆ |
多用途性 | ★★★★★ |
春の低山トレイルで着用した詳細レビュー
着心地・快適性・動きやすさ:行動中のストレスなし、Tシャツ一枚でも、中間着の上からでもちょうどよくフィット
ボルダー・フォークは、ラミネート裏地やメッシュの裏地などと違って柔らかく肌触りの良いトリコット裏地を備えた3層構造の生地を採用しており、レインウェアの中でも快適な着心地を有しているモデルのひとつ。汗をかいた時のべたつきや、重ね着したときの違和感などが大幅に少なく、Tシャツ一枚で直接肌に着てもサラサラと心地よい肌触りを提供します。サイズは全体的にゆとりのあるサイズとやや長めの袖のため、176cm、62kgの自分がSサイズを着用してもちょうどよくフィットしてくれました。アームホールも適度に広めで、中間着を着ても脇が締め付けられることなく快適なレイヤリングが可能です。
ゆったりとリラックスした着心地ながらも野暮ったさを感じさせないシルエットの良さはかなり気に入っています。
またストレッチ性は無いものの巧みな立体裁断によって手を上に上げても袖がずり上がったりすることも少なく、動きの中での抵抗感もほとんど感じられません。
裏地の首の裏側部分にはマイクロフリースの裏地が当てられており、油分や汗を吸収することで快適性と耐久性を高めてくれます(下っ写真)。
ポケットはやや高めに位置しているため、バックパックを背負っているときに干渉してしまうこともありません。ただ、パックを背負っていなくても手を入れにくいほどの高さにあるわけでもないので、街・山どちらでも使い勝手の良いデザインです。
耐候性と透湿性:風雨に対する抜群のプロテクションと適度な透湿性
ボルダー・フォークの表地は、30デニールと細い糸を使ってはいるものの、3.7オンスとやや厚手のリップストップポリエステル生地を使用し、さらに防水透湿メンブレンとトリコット裏地を備えた3層構造であることから、ここ最近の一般的なレインウェアの中では丈夫で耐候(防水・防風)性や保温性に優れたレインウェアといえます。4月の残雪期、信州でのハイキングにて、ベースレイヤーの上から直に着用していましたが、1,000mを越えた稜線上で冷たい風に吹かれても風と寒さをある程度シャットアウトしてくれました。
また弱い雨やシャワーに打たれて防水性をチェックしてみた際、雨水が衣服内に侵入するという心配がある個所はほとんどありませんでした。フルシームテープが施された生地の耐水性はもちろんのこと、袖口・裾はしっかりと締められるし、フードも顔周辺をしっかりと密閉し、つばも十分な長さを持っているため顔にもかかりにくく、防水性に関しては非常に優秀であることが分かりました。
ただし通常はフラップで覆われているので問題ないのですが、胸と左右のジッパーは防水仕様でないため、ピンポイントでの浸水には注意が必要です。
一方樹林帯の中をハイクアップしたときなどには発汗が激しくなり、衣服の中は水蒸気で蒸れてきます。ある程度の傾斜までならばこのジャケットの透湿性能によって蒸れは外に排出され、裏地のトリコットも肌のべたつきを軽減してくれるため快適でいられました。それでも全体的に厚手の生地なこともあってやがて透湿性にも限界が訪れ、急傾斜の登りやハイペースでの行動ではずっと着ていられるほどの抜けの良さは感じられなくなります。裏地を見てもポケット裏がメッシュになっていないことなどからこれはある程度予想されたことではありますが、それだけに蒸れが限界に達したときにピットジップ(脇下のベンチレーション)やフロントのダブルジッパーなどでガッツリと換気できる仕様であったならばと、やや惜しい気持ちです。
機能性:相変わらずフードのデザインが素晴らしい
このジャケットの名前にある「Fork(フォーク)」とは道や川などの分岐点を示す言葉。つまりフィールドにおけるさまざまなシーンやアクティビティの中間点といった意味合いを表わしており、それを裏付けるように汎用性と利便性にフォーカスした工夫が多く見てとれます。海岸沿いから山岳地帯、森や渓谷、ボルダーエリアなど多様な自然のなかで幅広いアクティビティをこれ一着でカバーできるように配慮されているのがこのジャケットの一番の特徴といえます。
調節可能なフード
このジャケットの個人的お気に入りポイントのひとつに、視界の広さと優れたプロテクションを備えた素晴らしいデザインのフードがあります。ややボリュームの大きな、深くて防水性に優れたフードは長めのフォーム入りつばが付いており、雨粒がメガネや目に入るのを防ぎます。頭部を3点で締める方式とは異なり、後頭部にある1つのドローコードを絞れば顔全体をちょうどよい形にフィットするよう締めつけてくれます。
この基本的でありながら非常に効果的なフードのデザインは非常に優れた性能を発揮し、片手または両手で簡単に締めたり緩めたりすることができます。フードはほとんどの帽子や頭のサイズに簡単に対応し、ビーニー帽や野球帽をかぶっていても、何も着ていなくても頭をストレスなく包み込み、首を振ってもズレずに良好な視界を提供してくれます。
ただあくまでもハイキング用として、登山用ヘルメットには対応していないため、ヘルメットしながら着るときにはヘルメットの下に着用する必要があることは留意しておきましょう。
収納力抜群の大型ポケット
ポケットは左右2つのジッパー付きハンドウォーマーポケットだけでなく、左胸にもジッパー付きチェストポケットが備えられています。これらのポケットは通常よりも明らかに大きなスペースが設けられており、胸ポケットなら大きなスマホも余裕で入る大きさ、左右ポケットは小物だけでなく大きめの地図やペットボトル、釣り道具など意外といろいろなものが収納できる便利な収納となっていました。
バックパックを背負っての本格ハイキングでも、ちょっとした手ぶらの散策でも役に立ってくれそうです。
フロントジッパー、ベルクロ留めの袖口、裾ドローコード
ボルダー・フォークで新しく採用されたフロント止水ジッパーは、海沿いでの使用にも耐えるよう防水・防錆加工が施されているところはユニーク。
袖口は安価な伸縮ゴム性ではなく、手袋との併用を考慮したベルクロ留め。春先から初冬まで幅広く対応素手でも手袋でも幅を調整して手首の密閉性を高められます。
下からの水や冷気の侵入を防ぐため裾を絞ることができるドローコードは右ポケットから調節可能。
まとめ:悪天候から身を守るシェルとしても、便利なアウターとしても優秀
Patagonia ボルダー・フォーク・レイン・ジャケットは、ハイキング、バックパッキング、フィッシングなどで積雪期以外の一年中使える快適な3層レイン ジャケットです。その安定したプロテクションとコシのある丈夫さが魅力で、梅雨時や長距離の縦走など一日中雨に打たれることが予想されるコースや、濡れることが多い水辺などで確固たる保護を必要とする人におすすめです。逆にファストパッキングやランニングなどライト&ファストなアクティビティでは別の選択肢(例えばPatagonia ストーム・レーサー・ジャケット)がよりマッチするでしょう。ちょっとした寒さを和らげるためのアウターとしても機能するので、街から里山、本格トレイルとシームレスに移動する際なんかもちょうどよく着続けていられます。この良バランスの優れた機能性と耐久性、利便性による飛び抜けた汎用性の高さは、着る人やシーンを選ばずこれからもきっと活躍してくれるでしょう。