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驚くほど軽いのに強くて快適、価格も◎。斬新なアイデア盛り沢山の「arata AX シリーズ」は自立式山岳テントの新しい景色を見せてくれる【実践レビュー】

登山・ハイキング向けのテントにはさまざまなフォルムや構造が存在していますが、日本の登山界隈で最もメジャーなスタイルといえばやはり「自立式(ドーム型)ダブルウォール型」でしょう。

これにはいくつかの理由が考えられますが、北米などでのハイキングに比べて、日本の登山では風が強くスペースも狭く、地面も硬くてペグが刺さりにくい険しい山岳地帯の稜線上にのテント場があることが多い、あるいは降雪にも耐えられるような高い強度が求められる、といった日本国内の登山特有の事情が大きく影響していることなどが主な要因に挙げられます。

そんな事情もあって、日本ではこの「自立式(ドーム型)ダブルウォール型」テントに関して昔から優秀なモデルが多数存在してきたのは皆さんもご存じの通り。それらは長らく定番として多くの登山者に愛用されてきましたが、一方で安定しすぎてなかなか次の画期的な新機軸が生まれにくいという、いわゆるマンネリと言えなくもない状況が続いていたのも事実でした。

しかし2024年、そんな長年続いた状況を一変させるかも知れない、ついに潮目が変わるかもしれないと思わせてくれるテントが登場しました。それが今回紹介する山岳テント「arata AXシリーズ」です。

端的に言えば、日本の山岳地帯ならではの悪天候に対して十分な強度を保ちつつ、従来よりも桁違いに軽量コンパクトなテント。言うのは簡単ですが、実際にはこれまで何十年もの間実現されてこなかったのが現実です。「arata AXシリーズ」はその壁を画期的なアイデアによって乗り越え見事に形にしていました。

Outdoor Gearzineではこの夏テント泊縦走で1人用自立式ダブルウォールテント「arata AX-79」をさまざまなシチュエーションの下で泊まってみて、その驚くほどのパフォーマンスの高さと自立式テントの新しい可能性に、忘れかけていた新鮮なワクワクを感じてしまいました。

そこで今回はこのAXシリーズの代表モデル「arata AX-79」を中心に、このテントの革新性と、さらなる進化・改善を期待したい部分についてレビューしていきます。

arata AX-79 (AX-75、AX-130) の主な特徴

arata AX-79は強度・軽量さ・機能性を兼ね備えた4シーズン対応の山岳向け自立式ダブルウォールテント。従来に比べて軽量なポールを採用して最小重量915gという軽さを達成するなど徹底的に軽量化を図りながら、独自のスリーブハブ構造やガイライン、耐風性の高いフォルムなどを駆使することで従来の山岳向けテントにも劣らない強度を実現。また重量と快適さのバランスを保つ最小限の室内スペース面積を確保しながら、ユニークな後室空間を用意することでさらなる居住快適性と高い通気性を提供。他にも快適さと使い勝手の良さを隅々まで考えられた細かな工夫がちりばめられ、使う人のストレスを極限まで軽減してくれます。シリーズには2人用モデルの「AX-130」の他、小柄な人に最適なサイズの「AX-75」をラインナップ。製品にはテント本体とレインフライ・ポールの他にグラウンドシートやペグも付属しており、テント泊を始めるのに必要なものがすべてそろったパッケージになっています。

お気に入りポイント

気になったポイント

主なスペックと評価

項目 スペック・評価
就寝人数 1名
最小重量 915g(インナーテント・レインフライ・ポールのみの重量)
総重量 1060g(ガイライン・ペグ・収納袋含めての重量)
フライ素材 15D リップストップナイロン 耐水圧1,200mm シリコンコーティング
インナー(キャノピー)素材 10D 通気加工ナイロン
インナー(フロア)素材 15D リップストップナイロン 耐水圧1,500mm シリコンコーティング
ポール素材 DAC Featherlite NFL 8.7
室内サイズ 210×80×98 cm
出入り口の数 長辺に1(反対側の長辺に後室への窓あり)
収納サイズ 24×17×11 cm
フロア面積 約1.7㎡
前室面積 約1.0(0.5×2)㎡
付属品
  • ペグ×8
  • ガイライン(インナー×4・アウター×4)
  • 専用グラウンドシート
  • 収納袋
居住快適性 ★★★★☆
設営・撤収の容易さ ★★★★☆
耐候性 ★★★★★
耐久性 ★★★★☆
重量 ★★★★★
携帯性 ★★★★☆
コストパフォーマンス ★★★★★

詳細レビュー

重量・コンパクトさ:自立式ダブルウォールテントとしては最軽量クラス

今やテント場で見かけないことはないといっていい程定番の山岳テントとして、モンベルのステラリッジ テントが挙げられると思いますが、このテントの1人用での最小重量は公式で1,140g。その他の現状販売されているオーソドックスな自立式テントを見てみても、日本の山岳での通年使用を想定しながら1kgよりも軽いモデルというのはなかなかありませんでした。

そんななか、このarata AX-79の最小重量は1.1kgを大幅に切る915gを実現。これが春夏の中~低山限定のテントではなく4シーズン対応の自立式というのだから驚きです(下表参照)。

製品名  公式発表の最小重量(インナー・レインフライ・ポール)
arata AX-79 915g
mont-bell ステラリッジ1 1,140g
アライテント エアライズ1 1,360g
Nemo TANI OSMO™ 1P 1,120g
finetrack カミナドーム1 1,130g
PuroMonte VL-18 4S 1,190g
ZANE ARTS YAR-1 860g

このサイトでも何度か書いていますが、テントは登山装備の中でもバックパック・寝袋・マットと並んで最も重量のかさむアイテム「ビッグ4」のひとつであり、このモデルによって軽量化できるこの「200グラム」は、クッカーをアルミからチタンに替えることで達成できる数十グラムと比べるまでもなく、全体のパッキング・ウェイトにとって少なくない影響力を持っていることが分かります。

実際に持ってみるとその軽さは明らかで、サイズ的にも、すべての付属品をまとめても片手に乗るほどコンパクトに収まっています。

なぜこのテントはこれほどまでに軽いのか?そこにはさまざまな要素を計算に入れたうえでの深い配慮が働いています。

たとえばテント生地の軽量化。インナーテントに採用された生地にはテントとしてはギリギリの薄さである10Dのリップストップナイロン、インナーのフロア部とレインフライにも15Dという薄手のPUコーティング加工リップストップナイロンと、最軽量クラスの軽量素材を採用し、極限まで重量をそぎ落としています。

ただ、これだけなら他モデルでも似たようなレベルでトライしているのが事実で、これで1kgを下回ることはできません。AX-79の飛び抜けた軽量化は、ここからさらに(重量に大きく影響する)ポールを「DAC Featherlite NFL 8.7」という、これまで4シーズンの本格山岳テントが採用することがなかった超軽量タイプのアルミ合金にした点に見ることができます。公式サイトにその詳細なパフォーマンスの違いが掲載されていますが、このポールは従来のこのタイプの山岳テントによく用いられてきた「DAC Featherlite NSL 8.5」と比較して約22%も軽量だといいます。

さらにその他テントのサイズ感や細かいパーツ類に関しても、生地重量やパーツ重量をできる限り少なくするように隅々まで検討され、結果として約900gという新しい次元の重量にたどり着きました。

ただ、ここまでそぎ落としたうえでも決してテントとしての耐久性と快適さは失っていないのがこのテントのさらに素晴らしいところで、それについては後ほど触れていきます。

付属品と設営:自立式テントならではの場所を選ばない建てやすさ、簡単な設営

AX-79は購入すると本体セットだけでなく、専用グラウンドシートとガイライン(インナー×4・アウター×4)、ペグ8本が付属しており、オプションなどを別途買わなくても通常の登山ができる装備が一通りそろっています。特に軽量化のためフロアも薄手の生地になったことでグラウンドシートは必須と思われますので、別売りにしなかったことは賢明な判断といえます。なお個人的にはこの標準セット以外に「後室用グラウンドシート」も快適性を大幅に上げてくれるパーツですので、余裕があればぜひ揃えておくことをおすすめします。

インナー・フライ・ポールの他、付属品は収納袋にペグ8本とグラウンドシート(写真の右端に見えている小袋は別売りの後室用グラウンドシート)。

付属のペグは軽量で高い強度と広い接地面積を持つアルミ製V字型ペグ。

テントの設営しやすさに関しては、一度でもテントを建てたことがある人ならば迷うことはまずないでしょう。

一般的なスリーブ式のテントと同様、片側から2本のポールを奥まで差し込んで最後手元側のスリーブに差し込むことですぐにテントは張りを持った状態で立ち上がります。自立式なので、当然ポールを立ち上げる前にペグを打つ必要もありません。

インナーテントを設営した状態(左上)。背面には後室用の小窓(右上)。グラウンドシートはテントの四隅に連結できるような仕組み(左下)。短辺側にメッシュありの換気口が1つ(右下)。

インナーテントの上に被せるレインフライはバックルで固定してからアジャスターを引いてテンションをかけることができます。固定に必要な箇所にはあらかじめガイラインが付いているため、必要に応じてペグを刺し、フライシートのテンション(張り具合)を調整します。

フライシートの固定はバックル操作で簡単(左上)。インナーテントのテンションを調節できるアジャスター(右上)。フライの要所にはテンションを掛けられる自在コード付き(左下)。インナーの四隅には固定用のガイラインが標準で付属(右下)。

テントの下に敷くグラウンドシートは、インナーテントの四隅のループに固定する方式で、固定したまま撤収することができます。こうすることで毎回いちいちグラウンドシートを敷きなおす必要もないので、これは地味に便利です(下写真)。

グラウンドシートはテントに一緒に連結できるので、取り付けたまま収納することもできて便利。

堅牢性と耐久性:1年を通して日本の山岳での使用に耐え得る堅牢さ

これまでの自立式ドーム型テントが1kgの壁を越えられなかった理由はおおむね「そりゃ単に軽くするだけなら簡単だけど、そうしたら日本での過酷な登山に耐えられるだけの耐風性や強度が保てないでしょ」といったものでした。これはある意味正しく、従来の構造のままポールや生地を軽量化しただけでは、北アルプスの稜線で長時間の嵐には到底耐えられません。AX-79ではその長年の不可能に挑戦し、1kgを切る軽さにも関わらず、これまでなかった新しいやり方で4シーズン対応の本格自立式テント並みの優れた堅牢性と耐久性の高さを実現しようとしています。

第一に、このテントの側壁は風がより流れやすいように斜めの角度がきつめについており、形も左右対称で全方向からの風に対して高いプロテクションを確保するフォルムであることが挙げられます。またフライシート自体も地面近くまで近づけることができるようにデザインされ、下からの風が入り込みにくい構造となっています(下写真では暑かったためあえてそこまで低くしていませんが)。

そのうえでさらにユニークなテント構造のひとつが、ポールの頂点に設けられた「フルスリーブインナーテント x 独自のスリーブハブ」です。

これまでの自立式テントのポール構造は主に「吊り下げ式」と「スリーブ式」に大別されますが、「吊り下げ式」では数か所のフックをポールにかけることによってテントを吊り下げます。この構造では強風時ポールにかかる負荷が分散されにくい一方で、ポール同士は頂点で連結されているため2本のポールが互いに支え合い横からの力にも強い構造です(下写真左)。

一方で「スリーブ式」ではスリーブ全体でポールを支えるため強風時にポールにかかる負荷は分散されやすいというメリットがある一方で、2本のポール同士は独立しているため、横からの力でテントが歪みやすくなってしまいます(下写真右)。

この吊り下げ式・スリーブ式双方の強度的な弱点を解消したのが「フルスリーブインナーテント x 独自のスリーブハブ」で、構造的には下の写真のように、基本的にスリーブ式構造ながら頂点でポール同士が繋がるように生地全体が縫い合わされていることが分かります(下写真)。

試しに建てたテントの頂点部分を手で持ち、強い力で揺らしてみたところ、(従来のスリーブ式では簡単にグニャグニャと歪む一方)独自スリーブハブ構造のテントは微動だにせず、驚くほどの安定感と堅牢性が感じられました(下写真)。

さらに強度を高めるもうひとつのユニークな仕組みは、テント内外に設けられたガイラインポイントです。通常耐風性を高めるガイラインポイントはテントの周囲四隅、あるいはその他側面に限られていますが、AX-79ではこれに加えてテント室内の短辺側に十字のインナーガイラインが標準で配置されています(下写真)。これはさまざまな産業でモノ作りに携わってきた開発者がプレハブ工法の技術を応用して取り入れた構造で、長辺側からの風によるテント変形を抑制する働きがあるといいます。

さらには先述のスリーブハブにもガイラインの締結ポイントが設けられており、頂点からテントをしっかり固定することでさらなる耐風性の強化につなげたり(下写真右)、極めつけはテント内部の空間を犠牲にしながら対角線上にガイラインを張り巡らすことで、最も強固な補強が可能になるといいます(下写真左)。

正直なところここまでしないと不安なほどの荒天には遭ったことがないし、少しでもそんな恐れがある山行は全力で避けるつもりですが、「万が一の時にはここまでできる」という安心感は何よりも心強いものです。

今回のテストでは(強風での設営は無かったものの)インナーのガイラインをつける(場合によっては付けないことも)程度でも十分にしっかり強固な設営になっていましたので、別売りオプションの「エマージェンシーガイラインキット」は常に設置されていなくてもまずは問題ないかと思われます。

一方で雨に対する強さはどうでしょうか。幸いにも夏の中央アルプス縦走では午後にまとまった夕立があり、稜線上のテント場で結構な雨に降られました(下動画)。

レインフライはしっかりと雨を弾き、フライとインナーの空間も保たれて張り付いてしまうようなこともなく、またバスタブ(テントの底部)も高めで地面からの跳ね返りなど含めてテント内部への浸水もしっかりと防いでくれました。

ただ上の動画後半にもあるように、注意していないとオプションの後室用グラウンドシート(後述)にレインフライから落ちた雨滴が入り込んでしまうことが分かりました。後室に置いた荷物が濡れてしまわないように、グラウンドシートがフライの外に出過ぎないように気をつけましょう。

テント内部の住み心地:広さ自体は最小限だが、狭さを感じさせない「前室・後室」が秀逸

「軽さ」を目指しながら「強さ」もあきらめないAX-79ですが、他には見られない独自の工夫によって室内の「快適さ」についても妥協せずとことん追求されている点も見逃せません。もちろんさすがにキャンプ用テントのようなラグジュアリーな広い居住空間は持ち合わせていませんが、それでもこの軽さにしてはその狭さを感じさせない、気の利いたアイデアが詰まっています。そのひとつが入口と反対側に設けられた「後室空間」。

一般的な1人用テントと同様、AX-79の入り口にはフライとインナーテントの間に前室が備わっており、靴や炊事道具などを置く場所として使用できます。ちなみにAX-79の場合、耐風性を高めるためもあって他のテントよりも角度が付いており、前室も広めで使いやすくなっていました(下写真)。

通常の山岳用1人用テントであればこのような前室は入り口側に1つのみで、反対側は単なる壁であることがほとんどですが、AX-79ではここに小さなかまぼこ状の窓が付いており、そこから広大な後室にアクセスして追加の荷物置き場とすることができるようになっているのです(下写真)。

ソロテント泊では食料や濡らしたくない荷物は室内に置くことが多く、その場合どうしてもテント内はせっかく面積が広かったとしても荷物で溢れてしまって快適性が損なわれてしまうものなので、これはありがたい。上写真のように別売りの後室用グラウンドシートを敷けば、荷物が直接地面に触れることなく置けるので、テント内と同じ感覚で荷物を置いておけます(ベルクロ留めは外れやすく、雨滴がグラウンドシートにこぼれやすいので注意)。おかげで室内スペースを十分に活用でき、特段狭さを感じることはありませんでした。

ちなみに室内には(あまり大きくはないけど)メッシュポケットが2つ、天井付近に5か所のハンギングループが備わっており、不便さを感じさせない程度に小物の置き場にも困りません(下写真)。

1人用のマットレスが余裕をもって敷ける広さ(左上)。176cmが足を延ばして横になっても余裕があった(右上)。入り口側の短辺には小さめのメッシュポケットが2つ(左下)。天井部には細引きやギアロフトを吊り下げられるハンギングループ(右下)。

後室は荷物置き場としての利便性だけでなく耐風性・通気性向上にも貢献

この後室空間があることによって背面からの耐風性を高めているだけでなく、山岳テントでは難しかった通気性アップにも貢献されています。入口のメッシュ地自体は軽量化を意識して決して大きなものではありませんが、反対側の後室窓と上部の換気口と3か所風の通る孔があることで、自立式山岳テントとしてはかなり風通しはよいと感じました。

入り口のメッシュ窓は大きくはないけれど風通しは十分。外を眺めるのにもちょうどいい。

レインフライを締めている状態でも、ダブルスライダー構造のフライ上部にあるベンチレーションロッドで換気口を作ることができる。

小柄な人、窮屈でもいいからできる限り軽くしたい人にはさらなる軽量モデル「AX-75」がおすすめ

普通のメーカーでは考えられないユニークな試みはまだまだあります。

AX-79には同じシリーズに2人用モデルの「AX-130」と「AX-75」という兄弟モデルがラインナップされていますが、特におもしろいのがAX-75。仕様はほとんど同じながら、小柄な人にとってちょうどいいサイズにAX-79を小型(長辺の長さで10cm、高さ・短辺幅で5cm小さく)したモデルとなっており、その結果さらに15グラムの軽量化を実現しています。

ここで176cmのぼくは「1グラムでも軽くなるなら多少の窮屈感は我慢するぜ!」と思い、何とかAX-75でいけないかな?と、実際に試してみたのですが、結果は何とも悩ましいことに。まさに僕の身長あたりがちょうど選べるギリギリの境目でした。

というのもAX-79は当然快適に寝られた一方で、AX-75は横になったときに頭と足先が短辺に付く程度にギリギリのサイズ。寝られないわけでは決してありませんが、頭部と足部分は恐らく内壁に付いた結露の水滴で濡れてしまうでしょう。そのためにシュラフカバーを追加で持っていったら意味がありません。やはり自分はAX-79がよさそうです。ちなみに天井の高さ(93cm)・床の幅(75cm) については、AX-75でもそこまで快適さが変わるということも個人的には感じられませんでした。

このことから試した限りの個人的見解では、身長175cm以下であれば、1グラムでも軽くしたい人はAX-75でも耐えられるかと思われます。というか僕があと2cm背が低ければAX-75を選んでいたでしょう。一方176cm以上の身長であれば、軽量化したいとしてもAX-79を選んでおくことをおすすめします。

左からAX-75、AX-79、AX-130

AX-75はテントだけでなく径が細くコンパクトなポール(Yunan UL 7.5)も採用。

この軽量・高耐久テントに合わせて、arataからさらに野心的な関連アイテムが続々とリリース

このレビューを書いている最中に、arataからまた新しいニュースが飛び込んできました。2024年秋に厚さ3mmの超薄手軽量ポリエチレン製ながらR値0.4以上の高断熱ロールマット「arata ASP-03」と、TPUフィルムと熱線反射PETフィルムを組み合わせ、-30°C環境に対応するR値6.5を誇るエアーマットレス「arata ASP-R7」新たにリリースされました。こちらもテント同様、はじめて参入したばかりだというのに、いきなり重量当たり断熱性能でトップクラスのパフォーマンスをたたき出しているとか、実践での試用はまだですがこちらもこれから要注目です。

エアマットの下に敷いて性能をブーストしたり、重量を極限まで切り詰めるULスタイルにも対応する超軽量PEマット「arata ASP-03」

軽さと高いR値を両立させたオールシーズンエアマット「ASP-R7 Series」

まとめ:総合的に考えて現時点で最も軽さと強度・快適性・価格を高いバランスで備えた、つまり「買い」な山岳テント

長らく自立式ドームテントは多かれ少なかれ「軽さ」と「居住性・耐久性」がトレードオフの関係にありました。つまり「軽さ」をとるなら「窮屈さと、過酷なシチュエーションで使えないという不便さ」を受け入れなければならなかった。しかしarata AXシリーズの登場で、ようやくその高かった壁も少し乗り越えていけそうです。今回のテストは一般的な縦走のみでしたが、オーソドックスな山岳テントなのでハイキング・トレッキング・登山をはじめ無雪期のバリエーションルートや沢登りなど広くアウトドア全般に使用でき、1,500mくらいまでの低山であれば雪山でも十分使えるでしょう。

約900グラムの軽さのなかに、本格登山に耐え得る強度と、標準以上の居住快適性の高さを備えたこのテントは、現時点で最も高いバランスを備えた隙が無い、総合的に優れた山岳テントでした。価格の面でもここまで高パフォーマンスを実現したにもかかわらず、かなり競争力のある価格は本当にありがたい。テント泊入門用としてももちろんまったく問題ありません。

最後にやや余談ですが、このテントを開発したデザイナーはこれまで家電から自動車、産業用機械まで多様なモノづくりの現場で設計に携わり、さらにここ数年は中国の良質なアウトドアメーカーの製品をたった一人でゼロから交渉し、日本で取り扱うようになり、さらに別注モデルなども手掛けるようになるまで成長するなかで多くのノウハウを吸収し、地道に研究開発を重ねてきたという異色の経歴の持ち主。「arata」の製品には、そんなアウトドア業界のメインストリーム外にいた人間だからこそできたのだとしか考えられない、ユニークで画期的なアイデアに満ちています。ただそれは決してこれまで積み重ねてきたカルチャーを軽視したようなでたらめなものではなく、過去へのリスペクトや深い研究を土台としたうえでの工夫であり、(粗削りな部分が無いわけではないけれど)すべてが理にかなっている点で清々しい。その意味で、Outdoor Gearzineではこうやって流行に惑わされず良いものを生み出そうとしてくれる作り手を、これからもどんどん応援していきたい。何が飛び出してくるか分からない面白さがあるarataに、これからも期待しましょう!

12月1日(日)Outdoor Gearzineのオフラインイベントにてゲストトークが決定!

実は前々からいつかやりたいとずっと機会を狙っていたのですが、先日発表したOutdoor Gearzineのオフラインイベント(12月1日12時~)にて、arataのデザイナーであり代表の杉目さんとのトークイベントが決定しました!

AXテントシリーズはこれから始まるarata快進撃の序章にしか過ぎなかった。

テントを皮切りに、これからも次々と画期的な新製品が登場していくarataの豊富なアイデアと行動力はどこから生まれてくるのか?世界のアウトドア製品市場を裏から眺めているarataから、今の日本のアウトドアはどう見ているのか?arataの見据えているその先の世界とは?などなど、ここでしか聞けないアウトドアの刺激的で奥深い世界を一緒にじっくり体験しましょう。

12月1日(日)Outdoor Gearzineのオフラインイベントについてはこちらで紹介しています↓↓↓

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