爆風も寒さも問題なし!PRIMUSの新作「P157インテグストーブ」はどんな悪天にも負けないハイエンド・シングルバーナー【実践レビュー】
北欧スウェーデンで130年以上の歴史をもつPRIMUSから新しいガスストーブの登場です。筆者もかれこれ数十年愛用しているストーブメーカー「PRIMUS」から新発売されたP-157 インテグストーブは、立っているのが厳しい爆風の中でも無風状態とさほど変わらない速度でお湯を沸かすことができる山岳向けシングルバーナーです。
雪山でお湯を沸かそうとしたことがある人なら、誰もが一度は全然火力が上がらずお湯を沸かすのにえらい時間がかかったという経験をしているのではないでしょうか。バックカントリーの厳しい自然で使用するストーブは風や寒さに対する強さが特に重要。劣悪な環境下でも問題なく使用できるストーブが欠かせません。
そんな優れた耐候性を備えた新しいハイスペック・モデルが、プリムスの「P-157 インテグストーブ」です。
このモデル、何やらこれまでOutdoor Gearzineの比較テストでトップクラスのパフォーマンスをたたき出していた「SOTO ウィンドマスター」に匹敵するスペックを持っているようですが、果たしてその実態は?さっそくフィールドで試してみました。
目次
PRIMUS P-157 インテグストーブの主な特徴
P-157インテグストーブはレギュレーター機構を搭載した新設計のバルブを採用し、あらゆる環境下で安定した高性能と快適なユーザビリティを発揮する高性能シングルバーナーです。
レギュレーター機構を搭載した新設計のバルブは温暖な環境や寒冷時でも安定したガスの供給を実現。すり鉢状になったバーナーヘッドが内傾した炎をつくりだし、炎の熱エネルギーを効率よくクッカーに伝えることで耐風性能も高く、あらゆる環境下で安定した燃焼を発揮してくれます。
4本のゴトクは径の大きいフライパンやクッカーを使用した時でも安定感に優れており、従来の製品よりも高い位置にゴトク面を設定することで、炎の外縁部の最も温度が高い部分を効率的に鍋底に当てることができる設計に。
高スペックであり、高い安定性を確保しつつも重量は100gという軽さを実現。高いレベルで「実用性」と「携帯性」を兼ね備えています。
お気に入りポイント
- 驚きの速度で湯沸かしが可能な高い火力
- 爆風でも問題なく使用できた耐候性の高さ
- 連続使用や寒冷下でも安定した火力を維持する新型バルブ
気になるポイント
- 重量・サイズ感はソロ用のシングルバーナーとして考えるとやや大きめ
- 直径の小さいクッカーには非対応?
主なスペックと評価
アイテム名 | P-157 インテグストーブ |
---|---|
タイプ | 直結型 |
出力(kcal/h) | 3.3kW / 2,840kcal/h(IP-250T使用時) |
ガス消費量(g/h)※1 | 220g/h(IP-250T使用時) |
重量 (g) | 100g |
ゴトクサイズ(Φ mm) | 148mm |
収納サイズ | 7.3×10.1×4.7cm |
着火装置 | あり |
300ml沸騰タイム | 75秒 |
Outdoor Gearzine評価 | |
燃焼力 | ★★★★★ |
耐風性 | ★★★★★ |
燃焼効率 | ★★★★★ |
収納性 | ★★★☆☆ |
使い勝手 | ★★★★★ |
汎用性 | ★★★☆☆ |
重量 | ★★★☆☆ |
※1 スペック表より算出
詳細レビュー
標高2,000m〜2,500m、気温0〜5度の環境で何度かテストをしてきたことをお伝えしてきます。立っているのがやっとなほどの強風時にも使用してきましたので厳しい自然環境での使用を想定している人にとってリアルな使用感をお伝えできると思います!
驚きの速度で湯沸かしが可能な高い火力
インテグストーブを使ってみてまず驚いたのが火力の高さです。
無風状態での予備燃焼テストをしたところ、300mlの常温の水が完全沸騰するまでにかかった時間は75秒(1分15秒)!筆者がこれまで使用していたストーブと比べても1分も早くお湯を沸かすことができました。
インテグストーブの出力は2,840kcal/h。同じくプリムスのガスストーブ、ウルトラバーナー(P-153)は出力が3,600kcal/hでインテグストーブよりも高い出力を誇りますが、300mlの水が完全沸騰するまでの所要時間は105秒、インテグストーブはウルトラバーナよりも出力が低いにも関わらず、30秒も早く完全沸騰させてしまいます。
この火力の強さを実現させているのが「すり鉢状」になったバーナーヘッドです。内側に向かって収束するように設計されたバーナーヘッドにより、炎が鍋底に当たった時に外側へ逃げてしまうのを防ぎ、炎のエネルギーが無駄なくクッカーの底に当たることで燃焼効率が最大まで高められ、驚愕してしまうほどの火力になっています。
爆風でも問題なく使用できた耐候性の高さ
すり鉢状になったバーナーヘッドの効果は火力の強さだけではありません。耐候性(特に風)の高さも驚くほどの性能を発揮してくれます。
燃焼テストをしにフィールドに行った際、予報では風速10mだったのですが、実際には立っているのが辛いと感じるほどの爆風に。さすがにこの天候では湯沸かしなどできないだろうと感じつつもテストをしてみると、300mlの水を85秒で完全沸騰させることができました。気温は5℃ほどで、爆風という劣悪な環境下でも予備テストでの燃焼テストよりも10秒だけ時間がかかっただけでお湯が沸いてしまいました。これにはもう脱帽するしかありません。
すり鉢状になったバーナーヘッドと、燃焼部に直接風が当たらないように設計されているからこそここまで高い耐候性を実現できているのだと思います。
公式ホームページによると、ゴトク位置を従来よりも高い位置に設計していることにより、炎から離れてしまう分、強風下では燃焼効率が下がってしまうのではと心配でしたが、全くの問題ありませんでした。
競合製品との火力・耐候性を比較
Outdoor Gearzineで過去にガスストーブでオールラウンド部門でおすすめしてきたSOTOウインドバーナーとの比較テストも行いました。※以下はOutdoor Gearzine独自テストによる見解です。
300mlのお湯が完全沸騰するまでの時間を計測しテストしましたが、予備テストではインテグストーブが75秒、ウインドマスターが81秒と差は6秒と誤差の範囲内だったのですが、屋外でのテストでは差が現れました。
気温約0℃、風速は体感で3〜5m、標高約2500m地点で同じようにテストしたところ、インテグストーブは84秒、ウインドマスターが110秒という結果に。インテグストーブの方が26秒早かったです。
ここで一応念のため書いておきますが、ウインドマスターの「110秒」というタイムだって決して遅くはないのです。インテグストーブはさらにそれを上回る結果になるとは、率直に驚きでした。
連続使用でも安定した火力を維持する新型バルブ
ガスバーナーを使用するにあたって気になるのが連続使用による火力の低下「ドロップダウン現象」です。
誰でも経験したことがあると思うのが、通常、ガスストーブは連続して使用することによりガスカートリッジ本体が気加熱により冷えてしまうことでカートリッジ内部の燃料が気化されにくくなり、火力が低下してしまいます。
そのため各メーカーは「寒冷地仕様」のカートリッジをラインナップしていますが、寒冷地仕様のカートリッジであっても残念ながら連続使用による火力の低下は少なからず発生します。
火力の低下は低温環境の方がより影響を受けやすく、特に厳冬期の積雪期のような環境での連続使用時の火力の低下は顕著です。
ではインテグストーブはどうか?
標高2,500m、気温0℃、風は体感で3〜5mほどの環境で連続使用し、300mlのお湯を3回連続で沸かす時間にどのような変化が起こるのかテストしてみたところ、1回目は84秒、2回目は85秒、3回目は90秒でした。
回を増すごとに沸騰するまでの時間は増えますが、1回目と3回目の差は6秒と誤差の範囲内。インテグストーブは連続使用でも効率が下がらずに燃焼できるストーブであることを体感できました
安定したガスの供給を可能しているのが搭載されたレギュレーター機構を搭載した新設計のバルブのおかげ。まさに北欧スウェーデンで130年以上にわたりリーディングブランドとしてガス燃焼器具の製造・販売を手掛けてきたPRIMUS社と、日本のパートナーであるイワタニが培ってきたレギュレーターの技術とが融合した結晶です。
温暖な環境などガスの内圧が高い状態ではガスの流入を抑制し、寒冷時などガスの内圧が下がってきた時には十分なガスの流路を確保できるようになっているため出力の低下を防げるようになっています。
安定した高火力と引き換えに、軽量・コンパクトさはやや控えめ
厳しい自然環境である山岳地帯でオールシーズン使うことを想定するのであれば、インテグストーブは火力・耐候性の観点から安心感の高いガスストーブとして自信をもっておすすめできます。
ですが、他のガスストーブと並べてみるとやはり目立つのは「大きさ」と「重量」です。
燃焼効率や耐候性を考えられて設計されているすり鉢状のバーナーヘッドは他のストーブのバーナーヘッドよりも大きく、収納サイズも大きくなります。
実際に筆者が普段使用している小型のクッカーはフェムトストーブはカートリッジと合わせて収納できますが、インテグストーブはぴったりと収納することができませんでした
インテグストーブの重量は100g(実測値も100.2g)で、他のガスストーブと比較してみると軽量とは言えません。
重量を優先させるのであればSOTOウインドマスターは重量が67g(バーナー+ゴトク3本)、燃焼効率こそインテグストーブが勝りますが、重量面で比較するならウインドマスターに軍配が上がります。
更に言うと、ウインドマスターはゴトクを軽量な3本タイプと、安定感に優れる4本タイプをオプションで選ぶことができる分、軽さだけでなく汎用性も高いと言えそうです。
収納サイズや重量は性能とトレードオフの関係になっているため、使い手が何を優先させるかや、どんな環境で使うかによってベストなストーブは変わってきます。
ゴトクの大きさは高い安定感の一方で思わぬ落とし穴も
インテグストーブはゴトクを広げると14.8cmになります。ただでさえ4本のゴトクで高い安定感なのに、大きめのクッカーやフライパンにも十分対応できる大きさです。
ソロ用のクッカーだけでなく、2人用の大きめのクッカーでも安定して使用することができる設計になっています。
広げると大きめのゴトクですが、気になったのはゴトクを広げた状態だと小さめのクッカーに対応できないこと。
ゴトクを広げた状態にすると、約9cmの間隔が空いているため、経の大きさが12cmほどあるクッカーならさほど気にならずに使用できましたが、径が10cmほどのクッカーでは真上から中心を確認しながらでないと置くことができませんでした(フィールドで実用するには難しい)。
ゴトクを折りたたんだ状態であれば径の小さいクッカーにも対応できますが、プリムスの他のストーブ、フェムトストーブには折りたたんだ状態でも使えるようにゴトクにスリット(切れ込み)が入っていますが、インテグストーブにはスリットが入っていません。
小さめのクッカーの使用は想定されていないのか、折りたたんだ状態で使えないことはないものの、スリットが入っていないことが気になりました。小さめのクッカーをソロで使う人は、フラットになっていることをしっかりと確認してから使用するようにしましょう。
まとめ:ひとつのストーブでオールシーズンカバーするならインテグストーブは最適解!
プリムスのP-157インテグストーブを紹介しました。
爆風の中でも問題なくお湯を沸かすことができ、連続使用でも燃焼効率が変わらなかったインテグストーブは130年以上の歴史を持つPRIMUS社とイワタニの共同開発によって作られたフラッグシップモデル!
絶対的な安心感はまさに守護神。ポケットサイズの守護神を相棒に山へと冒険に出かけましょう!
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Yosuke(ヨウスケ)
不便にならない程度に「できるだけ軽く」をモットーにバックパックひとつで行動する人。
春から秋にかけては山奥のイワナを追いかけて渓流へ釣りに。 地上からは見ることのできない絶景を求めて山を歩き。 焚火に癒されたくてキャンプ。 白銀の山で浮遊感を味わいにスノーボード。
20年以上アウトドアを嗜み、一年中アウトドアを自分流に楽しむフリーランスのライター。数十以上のアウトドア系WEB媒体での記事執筆経験をもとに、自身の経験や使ってみて良かった道具を発信していきます。