比較レビュー:登山用 軽量ガスストーブ(バーナー)を比べてみた【初心者・ソロハイクに最適】

最もポピュラーな山岳用ストーブ、スペックだけで選ぶなかれ

キャンプや登山などのアウトドアで外せない醍醐味のひとつが野外でのごはん。そこで必要になってくるのが加熱器具。一般的に登山で活躍するのは携帯性に優れたバックパッキング・ストーブ(シングルバーナー)といわれており、燃料によって「ガス」「ガソリン」「アルコール」「固形燃料」など、さまざまなモデルが存在しています。それぞれのモデルは一長一短あるため、季節や目的、人数によって何をもっていくのがベストなのか、その問題を掘り下げていくと結構な検証が必要になってきてしまいます。その広範囲な比較は今後にとっておくとして、今回は初心者でも扱いやすく、登山ショップでも比較的手に入りやすいストーブである「ガスストーブ」を比較評価していきたいと思います。なお、今回は特にはじめて購入するのに最適で、携帯性に優れた軽量(100g以下)・コンパクト(1~2人用)モデルをピックアップしています。それでは早速いってみましょう!

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今回比較した軽量ガスストーブについて

  • 初心者でも取り扱いが簡単なガスをチョイス(ガソリン・アルコールは取り扱いが慣れるまでが難しい)。
  • はじめて購入するのに最適な、1人から3名程度の少人数パーティで十分使える軽量モデルをピックアップ。
  • パーソナル・クッキング・システム(例:ジェットボイル)タイプは汎用性・シンプルさの点で今回の比較からは除外(参考として同条件での沸騰時間は掲載しました)。

比較テストアイテム

PRIMUS(プリムス) 115フェムトストーブ

EPI(イーピーアイ) QUOストーブ

snow peak(スノーピーク) ギガパワー ストーブ地 オートイグナイタ付

SOTO(ソト) AMICUS(アミカス)

テスト環境

2015年8~9月に同条件での沸騰時間チェックや山行・野外での使用を通じての総合的なテストを行ないました。極端な低温環境でのテストは今回行っていません。

実地テストによる詳細評価

総合順位 1位 2位 3位 3位
アイテム SOTO アミカス SOD-320 PRIMUS 115フェムトストーブ EPIgas QUOストーブ snow peak ギガパワーストーブ地 オートイグナイタ付
ここが◎ パワー、耐風性、価格 軽量、コンパクト 燃焼効率、安定性、使い易さ 信頼性を含めたバランスの良さ
ここが△ ツマミの使いにくさ 価格 パワー、耐風性、重量、収納性 耐風性、ツマミの使いにくさ
燃焼力
(20点)
18 15 10 13
耐風性
(10点)
8 7 5 5
燃焼時間
(10点)
6 6 8 6
重量
(15点)
11 13 9 8
収納性
(15点)
13 14 10 12
安定性
(10点)
5 5 5 5
使い易さ
(10点)
6 6 8 6
価格
(10点)
8 5 6 6
総合点(100点満点) 76 73 63 63
スペック
重量 81g 56g 98g 105.5g
最大出力 2600kcal/h 2100kcal/h
(Tガス使用時)
2600kcal/h
(230P+カートリッジ使用時)
2500kcal/h
使用時間 約90分
(SOD-725Tガス使用時)
約80分
(IP-250ガス使用時)
約120分
(G-7009ガス使用時?)
約85分
(GP-250Gガス使用時)
ガス消費量 153g/h(推定) 170g/h 190g/h 210g/h
着火装置
収納サイズ H75×D43×W40mm H74×D27×W54mm H89×D52×W54mm H82×D46×W35mm
収納 ナイロンケース ナイロンケース ハードケース ハードケース
参考価格 5,432円 7,560円 6,480円 6,372円

燃焼力

燃焼力とは端的にいうとバーナーの火力のこと。各メーカーではそれぞれの製品に「最大出力」という形でガスストーブの火力の目安となる数値を公表していますが、それはあくまでも可能性としての最大値であって、普段の使用で実際にその火力が出続けるのかという点については検証が必要です。実際のところ、ガスストーブの火力というのはそう単純に計れるものではなく、気温・湿度・気圧(高度)・風の状態・カートリッジの状態など、さまざまな環境要因によって発揮できるパフォーマンスは違ってきますし。そこで今回のテストではできる限り同条件で各アイテムの湯沸かしテストを行ない、沸騰までの時間を比較することで基本的な性能比較を行ないました。

timetoboil_1

沸騰までにかかった時間(無風)

アイテム SOTO アミカス SOD-320 PRIMUS 115フェムトストーブ EPIgas QUOストーブ snow peak ギガパワーストーブ地 オートイグナイタ付 (参考)JETBOIL MINIMO
沸騰までの時間 3m33s 4m06s 4m50s 4m27s 2m49s
テスト条件
  • ガスカートリッジは各社の小型ハイパワーモデルを使用(いずれも未使用)
  • 気温24~26℃、湿度40~50%
  • 25oz(約700ml)、23℃の水をチタン製クッカーに入れて沸騰までの時間を計測

1番沸騰時間が短かったのはSOTO。公表されている最大出力が2600kcal/hなので、なるほど流石にハイパワーといえますね。一方、2番目に早かったのが最も最大出力の低い(2100kcal/h)PRIMUSですから、実際に使ってみないと実力は分からないものです。もちろん、先ほど書いたようにガスの出力は環境によって多少の変動はありますので、どんな条件でも常にこの結果が正しいといいたいわけではないのでご注意を。

耐風性

燃焼力テストでは一般的な状況でのテストでしたが、今度はもう少し厳しい状況である、風が吹き付ける状態での実力をテストしてみました。日本の稜線上は常に風が吹いていることが多く、野外で使用する以上はこうした厳しい状況での使い勝手が重要です。では実際に人口的に風を起こした状態での湯沸かしテストの結果をご覧ください。

沸騰までにかかった時間(風あり)

アイテム SOTO アミカス SOD-320 PRIMUS 115フェムトストーブ EPIgas QUOストーブ snow peak ギガパワーストーブ地 オートイグナイタ付 (参考)JETBOIL MINIMO
沸騰までの時間 6m01s 7m26s 10mでも沸騰せず 10mでも沸騰せず 3m03s
テスト条件
  • 無風状態と同条件の下、約1.5m離れたところから扇風機の弱風を当て続ける

ここでの結果は意外にもはっきりとしたな結果となりました。SOTOとPRIMUSの2つは時間こそほぼ2倍弱にはなりましたが、きちんと沸騰まで到達。一方EPIとsnow peak(以下、SP)の方は(今回のテストでは)10分経っても気泡が多くなる程度で、なかなか沸騰まで到達しそうにありませんでした。おそらくその原因のひとつはヘッド部分の作りにあります(下写真)。上段2つについては、形状的にやや凹んだヘッド部分から炎が吹き出すような、風を避ける構造になっています。ところが下段の2つは炎が吹き出る部分が突き出た形状のため、風の影響をもろに受けてしまいます。実験でも実際に風によって炎の一部分がかき消されてしまう様子が見てとれました。

stove_head

各ストーブのヘッド部分。上段左からPRIMUS、SOTO、下段左からEPI、snow peak。

もちろんここで評価が低いからといって、風の中では役に立たないというわけではありません。そもそも風に強いからといってまったく風への対策をしなくてよいわけではなく、風向きを考えた場所選びや、風防などでの工夫など、その場の自然状況への準備は常にお忘れなく。

少し余談ですが、単なる湯沸かし時間だけで考えると参考で比較したJETBOILのクオリティの高さが分かります。ただこのクッキング・システム、湯沸かし性能以外では全体的な重量や、水以外の調理ができないものが多い、専用の容器でないと本来の実力が発揮できないなど、汎用性は低いのでそこは注意が必要。今後これらもレビューしていきたいと思いますが、用途をしっかり見極めた上でチョイスするのはアリだと思います。

燃焼時間

燃焼時間とは、各社で公表している、推奨ガスカートリッジを使用して何分間使用出来るかにあたる「使用時間」を比較し、評価したものです。本当のところは厳密に「燃焼効率」を比較・評価したいと考えていたのですが、燃焼効率と一口に言っても、同じ出力で単位時間当たりにどれだけの燃料を消費するかを厳密に比較することははっきりいって不可能。おまけに燃焼効率について公平に比較出来る共通の指標が公表されているわけでもないので、ここは便宜的に、各社が発表している数値に従って評価しています。

それによるとどうやらEPIの約120分という数値が最も高い数値を示し、それ以外は80~90分程度でまとまっています。まぁこの数値もどういう条件で使用してこの時間なのかという詳細な根拠が書いてあるわけではないので、実際に使用する際には、あくまでもメーカー発表の参考として考えた方がいいくらいの数字でしょう。

重量

ガスストーブを選ぶ人がおそらく最も気にしやすい部分かも知れない、分かりやすい比較要素である重量。PRIMUSの56gという数字は板チョコ約1枚分と考えるとやはりずば抜けてます。ただ他のモデルについても気になるような差ではなく、どれもガスストーブの強みを遺憾なく発揮してるといえるのではないでしょうか。実はガスストーブカテゴリでは数年前に軽量化競争が激化した時期がありましたが、各社約50gに迫った時点で一旦その波が止み、現在ではその揺り戻しとしてより機能のバランスを保つようにモデルチェンジしてきているようです。つまり、軽ければ軽い方がいいのは確かですが、その他の部分が犠牲になっていては本末転倒であるということは頭の片隅に入れておいた方がいいでしょう。

収納性

重量と共にガスストーブの得意分野である収納性についてもPRIMUSの優秀さが目立ちます。ヘッドが小さく、さらにゴトク(容器を乗せる台の部分)を折りたたんだときに全体が薄くなることで、他モデルにはないコンパクトさを実現できています。他モデルも健闘はしているのですが、EPIとSPは厚みが、SOTOは高さとヘッドの大きさの点で若干不利です。ちなみに、EPIとSPは付属しているハードケースに入れてしまうとクッカーの中にカートリッジとストーブをコンパクトに収納するのが(不可能では無いですが)かなり厳しくなりますので、別の袋かもしくは裸でクッカーに収納するなどの工夫が必要になります。

stove_packed

ストーブのパッキング比較。左からEPI、PRIMUS、SOTO、snow peak。

使い易さ

まず前提としてですが、今回の軽量ガスストーブというカテゴリは、ガソリンやアルコールのストーブに比べてそもそも基本的に扱いがラクです。複雑な部品の組み立ても、面倒な余熱などの準備も必要なく、燃料の取り扱いも安全。このため各モデルでの使い易さの比較はどうしても重箱の隅をつつくようなものかもしれませんが、主に次の2つのポイントで比較してみました。1つはセッティング(片付け)のしやすさ、もうひとつは火力調整のしやすさです。セッティングについてはどのモデルも優劣つけ難い程に簡単なのですが、一方で火力調整についてはツマミの形状によって差が出ました。PRIMUS・EPIに採用された円形のツマミは繊細な調整も素早い調整もしやすく、SOTO・SPのワイヤーツマミは素早い調節が難しいためその分扱いにくく感じます。最後にあくまで経験上ですが、PRIMUSのヘッド部分(炎の吹き出し口)の精密な構造は、吹きこぼれ等ですぐに調子が悪くなる傾向があり、目詰まりの修理しやすさ等を考慮すると使い易さに若干の不安があり、評価を下げています。

今回の比較まとめ

安定した高火力と手頃な価格で初心者からベテランまで満足できる:SOTO アミカス SOD-320

今回実際に比べて、日本のこの小さなブランドがここまで驚かせてくれるとは思いませんでした。見た目こそ若干大振りな印象はありますが、一度使ってみるとまずその高火力と日本製らしい使い心地のよさでまったく気にならなくなります。そして何よりも風に強いヘッド部分の作りが素晴らしく、この安定感はさまざまなモデルを渡り歩いてきたベテランにとっても納得の仕上がり。そんな完成度の高いモデルが着火装置付きでこの価格ですから、山登り初心者に対しても十分おすすめできる逸品ではないかと自信をもっておすすめできます。

とにかく軽量コンパクト、それでいてハイパワー、完成度の高さでおすすめ:PRIMUS 115フェムトストーブ

やはりソロハイク用として軽量・コンパクトさをとことん突き詰めたいという人にとってはこちらの方がおすすめ。この軽量ストーブシリーズは何年も前からモデルチェンジを続けていますが、長年培ってきた技術力と、軽量・コンパクトさを突き詰めた経験が今回も着実に積み重ねられているといっていいでしょう。軽量化・高火力化を進める一方で、一時不安定極まりなくなったゴトクも今回は安定感を増し、細かい火力調整がさらに可能に、そして着火装置と調整ツマミの効率的な配置などはさすがというべき品質です。

以上、ソロハイクや少人数登山に最適なガスストーブの比較テストをお送りしました。最近この分野では他にもパーソナル・クッキング・システムやアルコールストーブなど、新しい(?)タイプのストーブが目白押しですので、次回はそれらの比較でお会いしましょう(未定)。

なお、まだ長期的な使用での耐久性や修理のし易さ、低温下でのテストが行っておらず不十分な面もあるかもしれません。それについてはこれからも引き続き情報を更新していきたいと思います。また今回できる限り実際の状況に近い形でテストを行なっているつもりですが、テストの方法等で明らかな不備などがあれば指摘していただけると有り難いです。

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