楽しすぎて時間忘れる。テント泊登山に持っていくストーブ・クッカー・カトラリーの選び方【実践編】

先月公開した「テント泊登山に持っていく調理道具リストと選び方【基本編】」で予告した通り、今回は【実践編】と題して登山で実際に持っていく道具の現時点での自分なりの一軍ラインナップを紹介したいと思います。

前回の基本編でも話したように、山の調理道具に何を持っていくべきかは極端な話、その時々の山行によって毎回違います。例えば「季節や場所」「人数・メンバーの質」「用途・山行スタイル」「何を食べるか」など、多くの要因によって最適なチョイスが変わるもので、それを考える楽しみというのが登山やスルーハイキングの醍醐味のひとつと言っても過言ではないでしょう。

常日頃、その山行のたびに、無意識で道具をチョイスしていましたが、今回あらためて典型的なケースと最適セットを選んでみたのですが、まぁ楽しい楽しい。楽しすぎてあれやこれやと検討していくうちにどんどん時間が過ぎていってしまいました。

あまりにも膨大なケースそれぞれに最適なチョイスを決めていてはいつまでたっても終わらないので、今回は基本的に「ソロ登山・ソロハイク」のテント泊で、「調理多め or 湯沸かしのみ」でのストーブ・クッカー・カトラリーのセットを、選んだ基準を含めてまとめてみました。もちろんあくまでも自分の場合なので、これを参考に自分だけのクッキングセットを見直してみることをおすすめします。きっとめちゃくちゃ楽しいよ。

ソロ用というテーマに絞ったとしても、アクティビティやスタイルによって大きさ・形状・作りなど最適なモデルはさまざま。

目次

調理あり・米炊きありでまったりいくならばこのセット

まずはオーソドックスな登山・ハイキングのケースを考えてみます。想定しているスタイルは、余裕を持った行動プランで、無理しないペースで歩いて、テン場ではちょっとした調理もして、なおかつご飯も簡単に炊きたいという場合。自分が学生時代から続けていて個人的にも一番馴染みのある、典型的なテント泊登山のケースといってよいかと思います。限界ギリギリを攻めた山行も充実感ありますが、これはこれで何ともいえない贅沢なひとときが過ごせるものです。

このケースではあまり堅いことは考えず、とにかく優先するポイントは5つ。シンプルで、簡単で、安全で、壊れにくく、汎用性が高いものを選ぶ。

ストーブ:SOTO ウィンドマスター

火器(ストーブ・バーナー)については、簡単さと安全さ、汎用性の高さで、ほぼ迷わずガス式を選ぶことになるでしょう。初心者でも簡単に使え、点火~火力の調節~消化まで安全に使えるようしっかりと考えられているので、余計な神経を使う必要がないという安心感があります。

そんな最も王道といえるアクティビティで使用するストーブは、数十年に渡って着実な進化を遂げ、現在では多くのメーカーから信頼性の高いモデルが揃っているため、はっきりいって名のあるメーカーの主力モデルを選べばどれでも大きく失望することはないでしょう。それでもあえて今1つ選ぶとすれば、SOTOのウィンドマスターを挙げます。

シンプル・軽量ながら安定した高火力がウィンドマスターの魅力。

その理由は、基本的な機能に加えてとにかく風や寒さにも強く、環境によらず高火力という安定感、さらにそれかかわらず軽量でシンプルな構造であること(このあたり、他モデルとの比較レビューはこちらを参考に)。1年通して使い方や環境によらず安定して高いパフォーマンスを提供してくれる汎用性の高さは若干ですが頭一つ抜きん出ています。ただし取り外し可能なゴトクはともすれば初心者にとってとっつきにくいかもしれません。その意味ではPRIMUS P-153も捨てがたい。

なお、安定性を考えて、ゴトクは別売りの「フォーフレックス」にすることをおすすめします。

クッカー:PRIMUSイージークックNS(ノンスティック)・ソロセットM

クッカーも、このケースでは特段これじゃなきゃだめ、というほどの強い理由ではないですが、色々試した結果、総合力で選ばれたのがPRIMUS イージークックNS(ノンスティック)・ソロセットMでした。先程の5つの優先ポイントに沿ってその理由を挙げると、まず取っ手とカップ一体型の「シンプル」設計。アルミ製なので多少分厚く重くはなっていますが、その分「頑丈」で熱の回りもよく、内側がノンスティック加工なので焦げつきもなく調理が「簡単で安全」(焦げつきにくいということは壊れにくいことにもつながります)。

イージークックNS・ソロセットMであれば、シーンに応じて同社のSサイズクッカーと110サイズのカートリッジがスタッキング可能。

900mlのポットと400mlのミニポットはややもすると大きすぎるともいえますが、もちろんこれのSサイズであったとしても不便はありません。ただ、調理や炊飯を考えるとやや大きめサイズの方が都合がよく、250サイズのガスカートリッジが入る方がよかったり、そんなことを考えるといろいろと対応できる「汎用性の高さ」でMサイズをおすすめします。なお、実際には主菜・汁物・ご飯とすべてきっちりと揃えようとするとさらにもう1つカップが欲しかったりするのですが、その場合にはここにもう1回り小型のポット(イージークックシリーズのミニキット、ソロセットSなど)をスタッキングすることでスマートに拡張することもできます。

カトラリー:humangear GoBites Click(箸が必要ならば モンベル スタックイン 野箸も)

このケースでは、正直にいうとカトラリーに関してもそこまで神経質になる必要はありません。家で使っているものでも、100円均一でも何でもいいので好きなものを持っていけば良いといえば良いのですが、せっかくなので、今回のセットにちょうどよく収納(スタッキング)できて食べやすいモデルを挙げるとすると「ゴーバイト CLICK(& スタックイン 野箸)」です。

元々食べやすい形状・材質で、しかもボタンをクリックしてスライドさせればコンパクトに収納も可能。

スライド式の柄が付いており、食べやすい大きさのスプーン・フォーク・箸がコンパクトになって隙間にいい感じに入ってくれます。いずれもモンベルショップで入手可能と手近なのもいい。

湯沸かし主体で、信頼性・使いやすさ重視ならこのセット

同じく難しいコースを攻めるわけではないけど、特に食事にそこまで凝るつもりはなく、インスタント・レトルトやアルファ化米で済ませてよいのであれば、前述のケースほどゴージャスに揃えなくても十分になってきます。そしてできることならその分軽量・コンパクトに済ませたいでしょう。次はそんなある程度山に慣れてきた人や少しシビアに重量・容量を切り詰めていきたいという人におすすめセットを考えてみました。実際のところ、最近ぼくが出かけるほとんどの山行がこれにあたります。

優先するポイントとしては、上記の「シンプルで、簡単で、安全で、壊れにくく、汎用性が高い」という5つから「簡単・壊れにくい・汎用性が高い」という3点について妥協し、その代わり「軽量・コンパクトさ」の優先度を高めているといったところでしょうか。

ストーブ:PRIMUS P-115 フェムストーブ

ライターよりも少し大きいくらいの驚異的なコンパクトさ。

軽さと収納時のコンパクトさでいえばトップクラスのガスストーブです。それでいてハイパワー、着火装置も付いているので操作も簡単。火力調節ダイヤルも繊細で使いやすい。世界中をくまなく探せばもっと軽いストーブはあるものの、怪しい海外ブランドにはない絶対的な信頼感は代えがたいものがあります。

クッカー:スノーピーク ソロセットチタン(SCS-004TR)

自分が現在使っているのは旧モデル(ソロセット 極 チタン)になりますが、最新モデルでも引き継がれているこのセットの大きな魅力は、薄くて軽いながらも安心の強度を保ったチタン製であるということ。そしてなにより必要なものがきれいに収納できる絶妙にスタッキングのしやすいサイズ感という点にあると思っています。今回は軽めで行こうと思ったとき、迷わず選べる安心感はさすがと言えます。

110サイズのカートリッジが2つ入る深さなので、上にP-115を収納してもかなり余裕がある。カトラリーもライターも紅茶コーヒーも、意外と沢山パッキングできてしまう。

ポットの底には十分な深さがあるカップ、ポットの中には110サイズのカートリッジ、P-115 フェムストーブ、ライター、折りたたみ式のカトラリーも収納してしまうことができます。

TOAKS チタニウムポット POT-750でもほぼ同じスタッキングが可能。ただこちらは小カップがないので、例えばSea to SummitのXマグなどを追加してもいい。ある程度好みの問題ですが、個人的にはスノーピークのチタンの滑らかな手触りが好きなので、やはりどちらかといえばソロセットの方に手が伸びてしまいます。

カトラリー:スノーピーク スクー

数ある山用カトラリーを試してきましたが、何だかんだで軽量・コンパクトさと食べやすさを両立している点で、個人的には「唯一無二の」といい切っても良いくらいの完成度を誇るのがこのスノーピークのスクーです。

いわゆるスプーンとフォークの一体型カトラリー(スポークとも呼ばれています)といえるものは、両端それぞれにスプーンとフォークがついているパターンの他に、このモデルようにスプーンの先が割れてフォークの使い方もできるようになった先割れパターンがあります。そのうち両端パターンの場合はそれぞれが食べやすい大きさ・形状である一方、手が汚れやすいなど使い勝手にやや難があり、片側に食べる部分が集約されている先割れ型の方が明らかに使いやすいといえます。ただ、先割れ型で問題になるのが食べやすさ。具体的には先割れが小さすぎるとフォークとして十分に使えないのが若干のストレスになるのです。

先割れタイプのスポークは多くあるが、これほどフォークが主張しているモデルはスクー以外には見たことがない。

その点、スクーは他の先割れタイプに比べて見た目にも明らかにフォーク的な部分が強く主張しており、フォークとして使いやすくなっています。山での食事シーンでは、実際のところスープよりも麺やご飯などの固形物をすくうことの方が多いからなのでしょうか、こちらの方がなんともいえず食べ心地が良いのです。しかもフォークとして使いやすいからといって、スプーンとして使いにくいわけでもないばかりか、食べるときにフォークですくった麺に加えてスープもかすかに絡められたりして、絶妙な美味しさまで感じます。

少しくぼみの大きいスプーン部分に溜まるスープが麺と程よく絡まり合って、特にラーメン系の食事ではちょっと得した感じの美味しさがある。

フォークとスプーン、性質の違うそれぞれのカトラリーのフォルムをバランスよく両立させてあり、その絶妙さはどれだけ考えても見事という他ないです。まさに唯一無二。

ご飯を炊くときに便利な飯炊きスケールが付いていたりして、小技も効いています。今回のポットセットの中にスタッキングできないのだけは残念ですが、それを差し引いても、軽量アウトドアカトラリーの中での感動的なまでの食べやすさを考えると外すわけにはいきません。※最新モデルのソロセットチタンにはスクーのショートバージョン「ショートスクー SCT-130」がセットできるみたいですが、食べやすさからショートスクーにはあまり期待していません。。

とことん軽量・コンパクトさを追求した物好きセット

ここからはある意味、趣味の領域。自分は実際にはそこまで頻繁に超軽量装備で山に入ることは少ないのですが、渓流など燃料が比較的入手可能な山行などで、どこまでも軽量・コンパクトを突き詰めたい場合に実践している一例をご紹介します。

ここでの優先ポイントは、何をおいてもまず「軽量コンパクト」。そのうえで、どこまで「快適」に食事を過ごすことができるかを念頭においています。そのため誰でも簡単にすぐ使えるというものではなく、使い方などは事前に習熟しておく必要がありますし、多少の不便は我慢しなければならないことは抑えておく必要があります。ただそのハードルを超えた先にはこれまでが嘘のように無駄のない、スマートなハイキングが実現できることでしょう。

ストーブ:RSR Stove (2nd model)

ガスストーブは1~2回使用するだけでも、構造上、余分な量を持っていかなければならないため、軽量化を追求すると選択肢としては考えにくい。そこでよりストーブ自体をコンパクトに、そして燃料を柔軟に調節できるガス以外の燃料を使ったストーブが有力なオプションとして上がってきます。中でもやはり高火力と燃料調達の簡単さでいえば、最も便利なのはアルコールストーブでしょう。作りがシンプルなものから複雑なものまで、有名メーカーから個人自作品まで、アルコールストーブは世界中で数多く作られていますが、個人的に愛してやまないストーブが、日本の小さなアウトドアギアメーカー、RiversideRambler (RSR) によるRSR Stoveです。RSRは源流野営釣行をテーマとしたアウトドアギアを開発・製造・販売するメーカーで、ちょうど自分が沢登りを再開してろいろなギアを漁っているころで偶然にも出会ったのでした。

アルコールストーブ本体に加えて、オプションで十字ゴトク、簡易風防、火力調節リング、消化蓋のセットで使用するのが便利。ちなみにゴトクはいろいろなバリエーションがある。

実は当初RSRのソロ焚き火台の方が目当てだったので、アルコールストーブを作っているとは知らず、こちらの方はちょっとついでにといった感覚だったんです。でも使ってみてもう、一目惚れ。高火力・小型・堅牢、そして何よりアルミ合金削り出しの美しいフォルムと青く渦巻くトルネード燃焼の炎。何から何までよく出来すぎていました。

点火後しばらくすると完全燃焼を意味する青い炎が、渦を巻くようにして吹き上がってくる。ある意味芸術品。

これでいてその他に、使いやすさを保ちながら極限まで切り詰められた火力調整蓋・消化蓋・ゴトク・風防・燃料ボトルがすべてスマートに揃っています。ここまでユーザー視点で細部まで行き届いたこだわりの工夫を施されると、もう頭が上がりません(もちろんアルコールストーブ特有の危険性や煩わしさはあります)。

沢登り・源流釣り発の道具だからといっても、もちろん決してその狭い枠組みに囚われているわけではなく、小型軽量を志向するすべてのアウトドアで活用可能。これだけの逸品が、沢登りや源流釣行という、日本でMYOGの精神を最も体現したアウトドアアクティビティの界隈から生まれたというのも個人的に感慨深い。ちなみにこのブランドのソロ焚き火台も本当に素晴らしくよくできているので、近いうちにそのレビューもしてみたいと思っています。

また、アルコールに限らず固形燃料や小さな焚き火もできるマルチ燃料ストーブを利用するのも面白い。その場合自分の現在のイチオシはFIREBOX (ファイヤーボックス) GEN2 ナノストーブ チタン ウッドストーブ 3インチなのですが、その話はまた別の機会に。

クッカー:エバニュー Ti570CUP & 570CUP フタ

ULハイカーの間で厚い支持を集めるエバニューの超軽量チタンクッカーは、ここであらためて語る必要のないほど各メディア・個人のレビューが上がっていますので、ここでは詳細は省きます。薄さ軽さ、滑らかな使い心地、底や縁のあしらい、目盛りなど、ほんとによくできています。

なので、これ自体でもチョイスする価値は十分ありますが、嬉しいことに上記RSR Stoveとの相性もすこぶる良いのです。下の写真のように、アルコールストーブに燃料ボトルと風防を履かせたときのサイズが、あらピッタリ。もうこれで決まりでしょう。

燃料ボトルに風防を巻き、アルコールストーブに入れて、Ti570CUPに入れてみると、見事にフィット。

ひとつ悩ましいのが、この入れ方をしてしまうと、このクッカーと親子関係にあるエバニュー 400FDがスタッキングできないということ。やっぱりクッカーは2つあった方が便利です。もちろん燃料ボトルを別にすればスタッキング可能なのですが、個人的には燃料も入れたいので、ここは困ったときのSea to Summit Xマグ君ということで、蓋の上にちょこんと乗せて対応。

Sea to Summit Xマグは嵩張らずにカップを携帯できるので、どんなセットにも携行しやすく、自分にとっての超便利屋。

カトラリー:Toaks 折りたたみスポーク SLV-06

最後にカトラリーですが、とことん重量を切り詰めるならばやはりスプーンとフォーク一体型のスポークがいい。普通に考えると、先程話した個人的ベストであるスクーを挙げるところなのですが、このケースでは違います。ここでこだわりたいのは「Ti570CUPに収納できるスポーク」であること。

その条件に合うスポーク、意外と選択肢が少ない。そんななかでTOAKSのSLV-06はスポークであること、そして折りたたみ式であることでピッタリであるだけでなく、超軽量なチタン製。欲を言えばちょっとだけフォークの先端がマイルドであればよかったけど、鏡面加工されて口当たり良好なので概ね満足です。

チタンの折りたたみ式だから超軽量コンパクト。折りたためるスポークって探してみると意外と選択肢が少ない。

何より重要なのはクッカーの中に食材以外で燃料含めて食事に必要なアイテムが気持ちよくすっぽりと収納できてしまうこと。下の写真にはTi570CUPの中に以下のアイテムがすべて収まってしまっています。

  • RSR Stove 2nd
  • 簡易風防
  • 燃料ボトル(アルコール100ml含)
  • 十字ゴトク
  • 消火用蓋
  • 火力調整リング
  • ライター
  • Toaks 折りたたみスポーク
  • 紅茶パック×2、インスタントコーヒー×1

清々しいまでにピッタリと収まったときの何ともいえない満足感。

平地では大体カップ1杯(450ml程度)の水が30mlのアルコールで沸騰しますので、満タンで持っていけばざっくり計算で3~4回の食事は可能。これで1~2泊のルートがまかなえてしまうと。スゴくないですか?

Toaks 折りたたみスポーク SLV-06
created by Rinker
Toaks(トークス)

俺のアウトドアクッキングシステムへの果てしない旅は続く

山行スタイル、道具へのこだわり、食の好み、今自分の手元にある道具など、人によって選べる最適なクッキングセットは違います。もちろん別に売られているものをあらためて買わなければいけないこともありません。ふと自分の手近にある器やタッパーがシンデレラフィットすることもよくあること。今回あらためて自分のベストを選びながら、自分的にはこれ以上ないという手応えがありましたが、他の人が選んだらきっと違う結果になるだろうことも当然あり、その多様性がアウトドアの楽しみでもあると思います。

好きなブランドや流行の道具を追うことも楽しいかもしれません。でも忘れてはならないのはあくまでも道具は旅を充実したものにしてくれるための手段であること。ブランドに旅を合わせるのではなく旅に道具を合わせると、自分だけの装備リストが出来上がってくるはず。そのときはじめて、アウトドアを心底楽しんでいるんだという充実感が待っていると思うのは自分だけではないはず。

楽しく安全なアウトドアのために、ストーブをはじめとした火器の使い方には十分に注意したうえで、今日も今日とて、次の山行に向けた想像?妄想?を膨らましていきましょう。

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