まずはトレッキングポールの基本から
4月にBlack Diamond ディスタンスFLZ・ディスタンスプラスFLZ・ディスタンスカーボンZの比較レビューをしました。既に見ていただいたという方、ありがとうございます。「そんなのあった?」という方、こちらをどうぞ。
折りたたみ式のトレッキングポールを取りあげています。ちなみにこちらの記事では、トレッキングポールについてのキホンのキが書かれているので、新調したい方・どれを買おうかイチから迷っているという方、参考までにぜひ読んでみてください
「トレイルプロショック」とはなんぞや
トレッキングポールのイロハは上記の記事に任せるとして、今回取り上げるのはBlack Diamondのテレスコーピング式のトレッキングポール。テレスコーピング式は、いわゆるグルグル回してポールを伸縮するアレです。そのベーシックなモデルにこのたび「スマッシュロック」システムがついてバージョンアップ!その名も「トレイルプロショック」。
ところで、「スマッシュロック」ってなんぞや?というわけですが、ポールの収納・組み立てが一発で出来てしまう、とても便利な機能です。
ロック(フリックロック)を外してポールを伸ばし、一度ロックをするだけで組立完了。収納時にはロックを外してポールを上から押し、またロックすれば収納完了。と折り畳み式に比べると格段に使いやすくなっています。
ロックが固い場合はドライバーやレンチなどで緩めればOK。
例えば登山道が急に岩場や鎖場になった時、折り畳み式はカチャカチャパーツをはずして畳まなきゃいけない。これが結構面倒。なので、ポールを持ったまま不安定な状態で上り下りしてしまうことも(すみません)。でもトレイルプロならロックを外してポールを押し込んでロックするだけ(たぶん数秒)でコンパクトになってしまう素晴らしさ。
「スマッシュロック」まじで神です。特に自分の歩行ペースを崩したくない時(ありますよね?)には、重宝します。コースタイムと競う派の筆者としては快適さ・便利さ共にありがたい機能であります。
八経ヶ岳で使ってみるもちょっと不安
今回「トレイルプロショック」を使った山は、近畿最高峰の「八経ヶ岳」。修験道の山だけあって岩場も多く、獣害で倒木も多いとのこと。かつて数々の山でテレスコーピング式のポールをへし折ってしまい、ここ最近はもっぱら折り畳み式に頼ってきた筆者。久しぶりに使うテレスコーピング式ポールの強度や安定感が非常に気になるところです。
ちなみに折ったポールは、ロックも何もついていない純粋にクルクル回して上下の長さを調整するもの。単にスキル不足でポールに力をかけすぎたり、岩にガッツリぶつけて裂けてしまったり、木の根元に挟まってそのままポキッといったり、と折れ方はさまざまでした。
実際、テレスコーピング式はクルクル回して調整するのも手間だし、しっかり固定してもふとした拍子に縮むしで、イラチな筆者はあんまり好きなタイプではなかったのは事実でして。さてどうなることやら。
いざ実践
上る際にはグイっと推進力となり活躍してくれるポールですが、筆者の場合断然威力を発揮するのが下山時。へし折ってきたのも専ら下りですが…。もとい、上りの岩道は脚力でなんとかなっても下りの岩道は、滑る・足を置く場所を選ばないと転ぶ・高低差もある・体のバランスが必要、と上りと同じように脚力任せでは下れません。
そこで登場「トレイルプロショック」。
持った時、折り畳み式に比べて少し重いのが気になりますが、素材がアルミゆえの安定感や強度のためでしょう。早速下山開始。
ゴツゴツしてますね~。
高低差のある場所も下ってみます。
そこそこ体重を左右にかけて下りていましたが、ふとした拍子には縮みません。さすが堅牢なロック機構。ホールドしています。重量がある分、安定感もなかなかのもの。上半身がブレたりぐらつかないよう、しっかり支えてくれています。
岩に荷重しても問題なし。
なんならテンポよく足を運んで少し飛んじゃってます。
滑りやすそうな道も、ほいっほいっほいっと調子よく下ります。
ん~、なかなかできるぞこのポール。
初めは「重い…」と思っていたのに、なに、この身を預けてしまっていい安心感。すごいじゃないの。この安心感はポールの素材だけにあらずでは…?
はい、その通りです。
Black Diamondのハーネスにインスパイアされたこのストラップ。幅も広がり、手首を守ってくれている感かなりあり。そりゃハーネスに由来していたらこの安定感ですよ。
グリップでショックを吸収し手首や肩への負担を軽減。
上からポールを握っても安定感のある大きさとラバー素材。
だからこその安心感だったのねと納得。Black Diamondのあれやこれやの知識が結集しているわけです。
一番シンプルな「トレイル」も使ってみました
「トレイル」もグリップとグリップトップがよりソフトに新しくなったということで、こちらも使ってみました。
スマッシュロック機構はついていないものの、上下にフリックロック2がついているので、ふとした拍子のポール縮みもなし。簡単で確実にホールド。
高低差のある岩場も、
木の根っこの間もするするとクリアできました。
「トレイルプロショック」との違いは色々とありますが、スマッシュロック機構が搭載されていないのが一番大きな差でしょうか。、一発で収納・組み立てができるのはやはり便利。
歩行中にイチイチ止まらなくてもさっと収納・伸縮できるのがメリットですね。
でも、その手間さえ惜しまなければ「トレイル」はなんの遜色もありません。ストラップは内側がソフトな仕様になっていますし、「トレイルプロショック」より約40g軽くなっています。そして何よりお財布に嬉しい10000円を切る価格。コストパフォーマンスは最高じゃないですか!登山初心者の方にはぜひおすすめしたい。堅牢な作りなので筆者のように何度もへし折らずに長く使えることでしょう。最初から折り畳み式の高価なポールにする必要はありません!
まとめ ~ちょっと気になるところ~
「トレイルプロショック」「トレイル」で唯一気になる部分をあげるとすれば、「重さ」と収納性でしょうか。最上位モデルの折り畳み式ポール「ディスタンスカーボンFLZ」は350g~370g、「ディスタンスカーボンZ」は265g~295g、と約200gの差があります。「トレイルプロショック」「トレイル」を持った時「手首が重い…」と感じましたが、それも慣れてしまえば気になりません。
収納時の長さは「ディスタンスカーボンFLZ」は34㎝~40cm、「トレイルプロショック」は68cmと大きく違い、ここが好みの分かれどころ。コンパクトであることにこしたことはありませんが、強いこだわりを持たない方であれば「トレイルプロショック」「トレイル」で十分快適に使えるでしょう。
筆者もそうでしたが、ポールを何本か使ってみてようやく自分の好みや癖がわかってくるものです。登山シーズンが終わる前に、お気に入りのトレッキングポールで東西南北あちこちに歩きに行きましょう!