Outdoor Gearzine "アウトドアギアジン"

これぞメリノウール新時代の神ベースレイヤー。大復活したibexのメリノウール製品をまとめてレビュー

90年代にアウトドアの世界で目覚ましい復権を果たした「メリノウール」。この天然素材を使った肌着(ベースレイヤー)は、今では多くの人々によって、アウトドアから日常まで多様なシーンで愛用されるまでに成長していったのはご存知の通りです。

1997 年創業の「ibex(アイベックス)」は、その当時のリバイバルで重要な役割を果たしたメーカーのひとつであり、高品質なメリノウール・アパレルメーカーとして多くの支持を集めていたブランド。実は2018年に一度惜しまれつつ事業停止に至ってしまったのですが、数年前にアメリカで再起を果たし、ここ日本でもめでたく2023年に再上陸となりました。

自分にとってibexは、当サイト開設初期の2015年あたり、まだメリノウールの右も左も分からなかった時代からからずっと馴染みのあるブランド。このニュースを聞いて食指が動かないわけがありません。幸運にもこの新しくなったibex の代表製品を実際のフィールドで試すことができたので、さっそくレビューしたいと思います。

今回試したibex ベースレイヤーの主なスペックと評価

アイテム WOOLIES 1 CREW INDIE HOODIE WOOLIES TECH LONG SLEEVE 1/4 ZIP WOOLIES PRO TECH CREW
イメージ
素材
  • メリノウール100%
  • メリノウール100%
  • ウール81%
  • ナイロン12%
  • エラスタン7%
  • メリノウール85%
  • ナイロン15%
生地 メリノウール MERINO EDGE COOL WOOLIES TECH PRO-TECH(Nuyarn)
生地厚 17.5ミクロン / 180 gm2 18.5ミクロン / 185 gm2 18.5ミクロン / 180 gm2 19.5ミクロン / 125 gm2
実測重量(g) 186(Mサイズ) 273(Mサイズ) 260(Mサイズ) 135(Mサイズ)
バリエーション
  • クルー
  • フーディ
  • クルー
  • 1/4ジップ
  • クルー
  • 1/4ジップ
フィット 身体に密着 レギュラー 肌に触れる 肌に触れる
サムホール × ◯※仮留めしてある
ここが◎
  • ピッタリとしたフィット感
  • 動きやすさ
  • 快適な肌触り
  • 重ね着のしやすさ
  • デザイン
  • リラックスフィット
  • 良質な肌触り
  • 自然で無駄のないシルエット
  • フィット感がありながら締め付け感がない着心地の良さ
  • 耐久性と保温性、速乾性、機動性を高いレベルで実現
  • 重ね着しやすいサムホール(不要な場合は閉じていられる)
  • 驚くほどの軽さ
  • フィット感がありながら締め付け感がない着心地の良さ
  • 飛躍的に機能性が向上したNuyarn生地
  • 速乾性
  • 動きやすさ
ここが△
  • 耐久性
  • 速乾性
  • 腕まくりがしにくい
  • 耐久性
  • 速乾性
  • 重量
  • (他モデルに比べ)重ね着にはあまり向かない
  • 特になし
  • 特になし
Outdoor Gearzine 評価
快適性 ★★★★☆ ★★★★★ ★★★★☆ ★★★★★
保温性 ★★★☆☆ ★★★★☆ ★★★★☆ ★★★☆☆
通気性 ★★★★☆ ★★★☆☆ ★★★★☆ ★★★★☆
速乾性 ★★★☆☆ ★★★☆☆ ★★★★☆ ★★★★★
動きやすさ ★★★★☆ ★★★☆☆ ★★★★★ ★★★★★
耐久性 ★★★☆☆ ★★★☆☆ ★★★★☆ ★★★★☆
重量 ★★★★☆ ★★★☆☆ ★★★☆☆ ★★★★★

各アイテム詳細レビュー

WOOLIES 1 CREW:肌に一番近いレイヤーとして最適な、クラシックibex を象徴する一着

おすすめポイント

気になったポイント

おすすめ着用シーンやレイヤリング

概要

旧ibex時代からの不動の定番であったこのWOOLIES 1 CREW は、過酷な環境でのアクティビティにおけるピュアメリノウールの潜在能力の高さと可能性の大きさを見せつけたといえる、ibex の象徴的なモデル。薄手軽量で身体のラインに密着する無駄を省いたパターン、ポケットやジッパー、サムホールなど重量を加算させるものは一切なく、シンプルでミニマルなベースレイヤーです。

着心地・フィット

17.5ミクロンという極細のメリノウール100%の生地を使った極薄生地に、タグのないデザインとフラットな縫い目。その軽さとナチュラルな肌触りは着ていることを忘れてしまうほど非常に快適です。

動きやすさ

さらには本当にメリノウールだけ?と思わせるほど十分な伸縮性を備えており、ラグランスリーブの肩回りもあって大きな動きでもストレスは皆無でした。

レイヤリングしやすさ

袖口はずり上がりにくいようなカフ?仕様になっており、重ね着したりするときに袖がずり上がったりしないようになっています。これは冬場にはとてもありがたい作りですが、逆に暑い時には袖まくりができないということを意味し、暑い夏に着るにはちょっと心配です。

保温性

さすがウール100%、生地厚や重さの割には非常に暖かいといえます。12月の低山でこれを着たところ、発汗量の多いアクティビティならこれ一着の上にシェルでも十分に快適です(つまり10~11月のマイルドな活動でもちょうどよく調整して着られるということ)。一方冬本番のスキー等では、これとフリースやインサレーション、そしてアウターがちょうどいい。180 gsmという生地厚はむやみに厚すぎないため、重ね着の仕方によって幅広い温度帯に(レイヤリングによって)調節できるという利点があります。たださすがに夏に着るにはやや厚手であり、前述した袖まくりできない問題もあって不向きでしょう。

評価

オーソドックスなベースレイヤーとして総じて汎用性の高い特徴を備えたWOOLIES 1 CREW は、寒い日のスキーやハイキングをはじめ、クライミングやサイクリングなどあらゆるアウトドアアクティビティにフィットし、さらには外で仕事をするときにも暖かく快適に過ごすことができるでしょう。ただ、メリノウール100%ゆえに耐久性(まだ長く使っているわけではないですが)や速乾性という弱点を克服できているとは言えないため、その点は留意する必要があります。

INDIE HOODIE:アクティブなシーンから日々の暮らしまで、シームレスに気持ちよく過ごせる唯一無二の一着

おすすめポイント

気になったポイント

おすすめ着用シーンやレイヤリング

 

概要

INDIE HOODIE はメリノウール100%、アクティブなベースレイヤーとしても日常のパーカーとしても使える、非常にユニークな多用途型フーディ。厳しい環境や自然の中で丸一日過ごすことも、毎日の仕事や旅行・外出に着ていくのにも適していました。

着心地・フィット

まず何より感動したのは抜群の着心地の良さ。袖を通した瞬間「ふぅ」と思わず感心してしまうほど滑らかな肌触りに感動し、また適度にゆとりのあるリラックスしたフィット感に「ああ、これは毎日着ていたい」と思わずにいられませんでした。

この違いを生み出しているのは、このINDIE HOODIE に採用されているメリノウールに施された独自の蒸し加工「MERINO EDGE COOL(メリノエッジクール)」にある模様。とりあえず見た目的にも若干の光沢感が好印象なこの加工について、公式の説明では「肌触りが涼しくなり、さまざまな気候での汎用性が高まっている」と記載されていますが、この「涼しく」という部分が個人的な感覚として「滑らかな肌触り」と感じられたように思われます。表現はどうであれ、この独特の肌触りの良さは単なるメリノウールと片付けるにはもったいないくらい、別格な心地よさでした。ちなみにこのちょっとした涼感は冬場には余計な寒さを感じさせてしまうのではという心配もしましたが、特にそのようなことは感じられませんでした。

動きやすさ・レイヤリングしやすさ

こちらもラグランスリーブの肩回り、そして縫い目のゴロつきを防いで肌面のストレスを軽減するフラットロックシームなどによって動きのストレスはほぼ感じられません。

肩回りの動きやすさを生み出し、バックパックのショルダーハーネスを避けたラグランスリーブ。

脇下には動きを計算に入れた立体的なカッティング。

他のモデルと違ってややゆったりめのレギュラーフィットであることから、重ね着するのに最適な一着というよりもむしろ「山ウェアとして重ね着もできる薄手パーカー」という印象。ただ袖口にはサムホールがついているためこの上からレイヤリングしたとしても苦になることはありませんでした。

レギュラーフィットでややゆったり感はあるが、サムホールがあることによって重ね着で袖が捲られるということもない。

保温性

メリノウール100%で生地厚185 gsm ということでは、前述のWOOLIES 1 と同様、夏の暑さを除けば調節次第で幅広く対応するボリューム。12月初旬の信州(無風)でのハイキングでは、ベースにWOOLIES 1 を着てその上からこのINDIE HOODIE を着たところ、行動中はこの2枚でちょうどよいほど暖かく快適に過ごすことができました。もちろんこの1枚をベースレイヤーとして肌に直接着ることも可能で、ただその際は同社の他モデルと比べてサイズをややタイト目に意識するのがよいでしょう。

フロントにある1/4 ジップは汗をかいた時の温度調節に、ヘルメットの下にかぶれるバラクラバタイプのフードはちょっとした風よけになり、幅広い温度域に対応してくれるはず(その分、重量感は出てしまっていますが)。

評価

「アウトドアで着る本気のベースレイヤーとしても優秀でありながら日常にも着やすい」という、ありそうで難しい特徴を備えているところが他にはないこのモデルの個性であり魅力です。ガチのアクティビティに特化したものがいいという場合には、これから説明する2モデルをおすすめすると思いますが、アウトドアもやるし、日常でもアウトドア・ウェアの快適さをあきらめたくないという自分のような人間には、この一着が刺さるに違いありません。

WOOLIES TECH LONG SLEEVE 1/4 ZIP:アドベンチャーに求められる快適性と機能性を漏れなく備えたハイパフォーマンスモデル

おすすめポイント

気になったポイント

おすすめ着用シーンやレイヤリング

概要

WOOLIES TECH は、高品質のメリノウール、ナイロン、そして伸縮性を高めるためのエラスタンで作られた、プレミアムなベースレイヤーです。単体でも見栄えがよく、中間着と組み合わせたとしても違和感なくレイヤリングでき、低温下でのさまざまなアドベンチャーに最適。アクティブなシーンでの汎用性の高さはピカ一といえます。

WOOLIES TECH の特徴は快適さを含めた、機能的な面での総合力の高さ。着心地が良くて、暖かくて、動きやすくて、速乾性もあって、耐久性もある。ほんとに隙がなさすぎる。

その高い完成度を可能にしている要素の主役は、メリノウールと化繊のハイブリッド素材である「WOOLIES TECH※」生地です。

※日本の公式サイトでは「PRO-TECH」となっていますが、2024/01/12時点では米国公式サイトで「WOOLIES TECH」となっているためそちらを参考にしています。

WOOLIES TECH 生地では、ナイロン・コアにメリノウールを巻き付けるようにして繊維が構成されています。これによってピュアウールの快適な肌触りをキープしながら、ウールよりも耐久性を高めることができています(どうしてもメリノウールは時間の経過とともに伸びたり擦り切れたり、穴が空いたりしてしまう傾向があります)。これでナイロンの耐久性と速乾性、そしてウールの保温性や快適性を両立。また残りの7%を構成しているエラスタンによって、このレイヤーは他モデルと違って確かなキックバックのある非常に心地よいストレッチ性も兼ね備えることができていると。

着心地・フィット

WOOLIES TECH は従来のWOOLIES 1 に比べてほんの気持ちゆったりと自然なフィット感で(特に腕~袖周り)、アクティブなシーンで着用するのに最適化された無駄のないシルエットであることは確かです。またWOOLIES TECH 生地化繊とのハイブリッドであるにもかかわらず、肌に触れる部分はウールなので、肌触りも他と比べて劣るということはまったくありません。

動きやすさ

腕や上半身を大きく動かしても伸縮性の高さと肩回りも縫い目が肩の頂点を避けつつ動きやすさを確保したラグランスリーブ、スムーズな裏地を提供するフラットロックシーム、立体裁断の脇下パネルなどによって動きやすさは格別。

メリノウール100%と比べて可動域の広さが非常に気持ちの良いWOOLIES TECH。

保温性・速乾性

BCスキーや雪山登山でこのレイヤーを着てみましたが、どちらの場合でもハイクアップ中にかいた汗で極度な不快感を感じることはなく、その後止まっているときに汗冷えを感じることもなく(もちろん中間着などとの兼ね合いもありますが)快適な暖かさを保ってくれました。

レイヤリングしやすさ

身体のラインにフィットするシルエットはレイヤリングする際のストレスもありません。また袖には予め仮留めされたサムホールがあるのもユニークな特徴。これは特にサムホールが必要ないという人に対する配慮で、必要な人が縫い糸をカットすることでサムホールが利用できるようになります。

評価

ウールの弱点を補いながら、ウールの魅力を最大限に感じさせてくれるWOOLIES TECH には、一流のベースレイヤーに備わっているべき要素がほぼすべて備わっています。決してやさしい価格ではありませんが、この品質と予想耐用年数を考慮すれば、それに見合った価値はあるはずです。

WOOLIES PRO TECH CREW:これまでの常識を覆す技術によってさらなる進化を遂げたメリノウール新時代のベンチマーク

おすすめポイント

気になったポイント

おすすめ着用シーンやレイヤリング

概要

WOOLIES PRO TECH は、「Nuyarn®」テクノロジーを採用し、アイベックス史上最軽量にして寒冷な条件下で最高のパフォーマンスを発揮できるように設計されたベースレイヤー。この技術によって、従来のメリノウールの特性(魅力)は損なうことなく重量を驚くほど抑え、保温力は35% 高く、伸縮性は85% 高く、速乾性は5倍高く、耐久性は8.8 倍高くすることができているとか。

着心地・フィット・動きやすさ・レイヤリングしやすさ

フィット感に関してはWOOLIES TECH と同じ、身体に密着しつつほんの気持ちゆったりと自然なフィット感です。

繊維の太さが19.5ミクロンと他モデルのメリノウールより太いにもかかわらず(それでも極細ですが)、その違いが分からないほどこちらも滑らかで心地よい肌触り。首後ろにタグのないデザイン、ラグランスリーブ、フラットロックシーム、脇下のガセットなど、快適な着心地とレイヤリングしやすさ、動きやすさを提供するスキのない作りも健在です。また85% 高くなったという伸縮性に関しても、ポリウレタンなどの伸縮繊維をまったく使用していないとは思えないほど気持ちよく、スムーズに伸び縮みしてくれます。

ただ何よりも驚きなのは120 gsmという異次元の軽さ。WOOLIES 1 では「着ていることを忘れるほど」といいましたが、ここまで来るともうこれはそう「セカンドスキン」。

脇下には動きのなかでツッパリ感を軽減するための、立体裁断によるガセットが配置されている。

縫い目もフラットに仕上げてあり、圧迫されても違和感は感じられない。

保温性・速乾性

繊維を撚っていない構造の「Nuyarn®」テクノロジーでは、繊維の中に自然なエアポケットができるため、それが効果的な断熱材として機能します。その増加したロフトとウールの保温性の相乗効果により、従来のメリノウールに比べて軽くてかつ優れた保温力を発揮することができます。また通気性の向上によって速乾性もアップしています。フィールドで実際に着てみると、比較的活動量の大きなバックカントリーでのハイクアップでも化繊のベースレイヤーのような蒸れにくさと快適さ、素早い乾燥スピードを得ることができていました。この軽さで、メリノウールなのに、この汗抜けの良さは何だ?という驚きは新鮮です。

評価

冬のさまざまなシーンで着用し、あらゆる状況でこのベースレイヤーは常にこれまでとは段違いの快適さを提供してくれました。WOOLIES PRO TECH は、最先端の革新技術とメリノウールの匠が融合して生まれた、メリノウールベースレイヤーの新時代を告げる画期的でなおかつ非常に完成度の高い製品です。また、今後開発されるであろうメリノウール製品はどうしてもこの一着と比べることになってしまうであろうという意味で、これからの新たなベンチマークともいえる。それくらい印象深い一着。ハイカー、スキーヤー、クライマー、バックパッカーなどあらゆるアウトドア愛好家だけでなく、寒い季節を快適に過ごしたいと思うすべての人にとっておすすめしたい一着です。

参考:サイズ感、フィット感の比較

176cm、64kg、Mサイズを着用。

まとめ:メリノウールは新時代へ。

このサイトでは数年前から「Nuyarn®ヤバイ」ということを言い続けてきましたが、今レビューを終えて、今回の「WOOLIES PRO TECH CREW」はとうとうその本命製品が生まれてしまったなという気持ちでいっぱいです。メリノウールの「快適素材」としての魅力はそのままに、従来の活動時パフォーマンスを大幅に向上し、なおかつ軽さと耐久性を手に入れた「Nuyarn®」。この夢のような素材を、長くアクティブなベースレイヤーでの実績を積み重ねてきたibex が料理した結果、まったくスキのない(ほぼ)理想の冬のベースレイヤーが出来上がってしまった。今のところこれを超える冬のベースレイヤーは見当たらないと思います。厚すぎないのでちょっと肌寒くなったくらいから春先までずっと使えます。これまで数十着の製品を着比べ、毎年新作をチェックしている自分でも今、夏以外で使えるベースレイヤーを聞かれたら迷わずこれをおすすめするでしょう。もちろん他のモデルも基本的な性能・デザイン性の高さはまったく心配はいらないし、本文に書いたようにそれぞれ得意な領域や良さを持っているので、自分の好みとそれらが合致したものを選べばきっと幸せになれるはず。

見事復活したibex にこれからも注目です!

ibex ベースレイヤーの詳細と購入について

製品の詳細についてはibex 公式サイトをご確認ください。

モバイルバージョンを終了