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「軽量化疲れ」の果てにたどり着いた至福の寝心地。NEMO「エクリプス オールシーズン」マットレスが導き出した「軽さと快適さ」の新たな黄金律【実践レビュー】

軽さは正義——。登山においてそれは多くの場合正しい。今やあらゆる山道具に「超軽量モデル」が存在しています。ただ、闇雲にそうした軽いモノばかりを物色し過ぎて、気がついたら旅を窮屈にしてはいないだろうか。

そんな空気を表すかのように、ここ1~2年の山岳用スリーピングパッド界隈も、ある種の曲がり角に来ていることが見てとれます。それは一言でいうと「快適重視の軽量コンパクト」モデルの登場であり、そこではとことんまで軽さを追求するというよりも、多少の重量を犠牲にしても、その妥協を許せるだけの寝心地のよさを備えた新製品が注目を集めているのです。その象徴的なモデルとして、例えば昨年ここでもレビューした、THERM-A-REST の「ネオロフト」など。

かつては「睡眠時の暖かさ」と「荷物の軽さ」とはトレードオフの関係にあったといわざるを得ません。しかし技術の進化と構造の洗練によって今のハイカーは、冬山ですら驚くほど軽い装備で快眠を手に入れられるようになっています。今や極限までの軽量モデルでなくても、納得できるだけの軽さの恩恵を受けることは難しくありません。

そんな「高断熱・軽量コンパクト」の波が押し寄せ始めている現在のスリーピングパッド市場において、今シーズン NEMO(ニーモ)が放った「Eclipse(エクリプス)オールシーズン」は、まさにそんな世の中の「軽量化疲れ」に悩むハイカーへの NEMO からの回答ともとれる興味深い一作です。

これまで同ブランドの屋台骨を支えてきたエアマットれる「Tensor(テンサー)」シリーズの系譜を受け継ぎながらも、その中身や構造は全くの別物。そこで今回は、特に山での快眠を妥協したくないハイカーに向けた「レギュラーワイドモデル」をチョイスし、その実力と、いわゆる従来の山岳向けエアーマットレスとの違い、どんなユーザーに向いているのかなどをフィールドテストのインプレッションとともにレポートします。

NEMO Eclipse All-Season の主な特徴

NEMO Eclipse All-Seasonは、極上の快適さとまずまずの軽量コンパクトさを両立させたエアー注入式スリーピングパッドです。厚さ約10cm という贅沢なボリュームに、2層のメタライズド・フィルムを浮かせる「Thermal Mirror™ 断熱テクノロジー」による「R値6.2」という厳冬期にも対応可能な断熱性能を提供。内部は新開発の「Spaceframe™ バッフル」による進化した垂直構造を採用し、従来の縦型バッフル構造にありがちなフワフワとした不安定さを解消しました。さらに、身体を中央に保つバッフル形状や、寝返り時の音を抑えた静音設計など、フィールドでの快眠に特化した機能が満載です。さらにこれだけのスペックを誇りながらも驚きの価格設定も大きな魅力。現代のオールシーズン・パッドの潮流に合わせた新たなスタンダードとなるポテンシャルを秘めたモデルです。

お気に入りポイント

気になるポイント

主なスペックと評価

アイテム名 NEMO Eclipse All-Season
サイズ 183×51cm(レギュラーサイズ)、 183×64cm(レギュラーワイド)
収納サイズ 24×12cm (レギュラーサイズ)、27×12cm (レギュラーワイド)
厚み 10.0cm
表面素材
  • トップ:40D 100%ナイロン
  • ボトム:40D ナイロン
断熱素材 サーマルミラー × 2枚
公式重量(本体のみ) 460g(レギュラー)、560g(レギュラーワイド)
R値 6.2
対応季節(参考) 4シーズン
付属品
  • 専用スタッフサック
  • コンプレッションストラップ
  • パッドポンプ
  • リペアパッチ
Outdoor Gearzine評価
快適性 ★★★★★★
断熱性 ★★★★☆
重量 ★★★★☆
収納性 ★★★☆☆
使い勝手 ★★★★☆
耐久性 ★★★★☆
コストパフォーマンス ★★★★★

詳細レビュー

断熱性・重量・価格のバランス:冬もカバーする「R値6.2」と、驚異的なコストパフォーマンス

このマットレスの全体的なスペックを見てまず驚かされるのは、そのスペックと価格のバランスです。

エクリプスは、上下に2層の「Thermal Mirror™ フィルム」を吊り下げる構造により、地面の冷気を遮りながら内部の暖気を効率よく閉じ込めることができ、雪上でも底冷えを遮断する暖かさを実現しています。そしてこの構造のもう一つの大きな利点ですが、使用中にカサカサといったフィルムの擦れる音は一切しません。

それによってマットの断熱性を表す値であるR値は「6.2」。この数字は厳冬期の登山でも十分活躍できる断熱性で、これまで高価な極地用マットでしかありえないスペックでした。

ちなみに同社の代表的エアマット「テンサー™ オールシーズン」では同じようにこのフィルムを2枚使用していながらR値は5.4と少し低めで軽量コンパクト。ここからはこのマットの断熱効率の高さと、軽さよりも断熱性と快適性を優先するというコンセプトの違いが見てとれます。いずれにしても、ここまでの高断熱を実現していながら、レギュラーワイドで3万円を切る価格を実現しているのはなかなかの事件です。

実際に身体をマットの上に横たえてみますと、確かにマットの方から熱がジーンと戻ってくる感じ。試しに気温が一桁の夜に寝袋と組み合わせて使用した限りでは、外気は顔が凍えるほど冷たくても、体の他の部分、特に地面側にはまったく冷たいという部分がなく、暖かく快適な夜を過ごすことができました。厳冬期の冬山で試していないので限界能力までは確認できませんでしたが、寒い夜でもしっかりと安心の温もりを与えてくれるマットであることは間違いありません。

他社の競合製品のうちR値が6以上のマットレスでここまでの価格は、本格アウトドアブランドでは「arata ASP-R7」くらいしか見当たりませんが、重量や耐久性などを考えるとこの驚きのコストパフォーマンスの高さがよくわかるかと思います。

重量は約560g(レギュラーワイド)。軽量コンパクトを謳うテンサー™ シリーズと比較すれば数十グラム重いですが、後述する10cmの厚みとワイド幅がもたらす睡眠の質を考えれば、背負う価値は十分すぎるほどあります。

収納性に関しても、レギュラーワイドモデルでもナルゲンボトル程度にまで圧縮できるコンパクトさ(下写真)はありがたいというほかありません。

レギュラーワイドモデルでも、圧縮して畳めば1Lのナルゲンボトルより少し大きいくらい。スタッフサック自体は大きいので細長く畳むこともできる。

スタッフサックの中にはリペアキットが付属

快適性:10cmの厚みと安定感抜群の垂直バッフル、そして「ワイド」がもたらす極上の寝心地

ただ実際のところ、今や新進気鋭のメーカーからノーブランドの怪しい製品まで、高断熱性を謳うマットレスは珍しくなくなっているのも事実。

そんななかでも、なるほどエクリプスならではと思わせてくれる魅力的なポイントが、このマットの最大の進化ともいえる「Spaceframe™  バッフル」構造による快適な寝心地の良さにあります。

エクリプスは「軽量化<快適性」というコンセプトに従ってすべてのラインナップが余裕のあるレクタングル(長方形)シェイプ。軽さを追求した「マミー型」はない。

これは垂直(縦型)のバッフル構造をベースとしつつも単純なそれではなく、よく観察すると微妙な横方向にも波打った縦横ハイブリッドなデザインになっています(下写真)。このデザインと内部の低伸縮ダイカット・トラス構造のおかげで、実際に横になってみると、厚みが10cmと極厚であるにもかかわらず、かつての縦長バッフルにありがちなトランポリンのようなフワフワした感触とは異なり、よりしっかりとしたサポート力と安定感がありました。

また10cmという厚みは仰向けで寝ることが多い人にとってはあまり気にならないかもしれませんが、自分のように横向きで寝ることが多い人間にとっては体圧がより集中しやすいため、この十分な厚みがありがたいと感じました。ただこの厚みによって床が高くなるため、逆に室内が狭くなるという欠点もあります。厚ければ厚いほどいいという分けでもありません。厚みはこのくらいが限度でしょう。

また、マットの上で寝相を変えたとしても左右の揺れは最小限に抑えられ、常に身体を優しく包み込むようにマットの中央に安定させてくれます。これは両端のバッフルが中心付近のバッフルに比べてわずかに高ボリュームになっているため、まるでゆりかごのようにパッドの中央に体を固定するよう機能します。寝返りをよく打つ僕のような寝相の悪い人間でも、端の方に体がずれていくような心配はまったくありませんでした。

さらに今回選んだ「ワイドモデル」ですが、わずか13cm幅広になるだけで、その恩恵は計り知れません。

標準的な51cm幅は身体の幅とほぼ同じ。仰向けになった際に「ぎりぎり肘がはみ出すかはみ出さないか」なので、当然リラックスするとたいていはみ出してしまいます。自分はその微妙な冷たさで寝つきが悪くなることがよくありました。

一方64cm幅のワイドモデルなら、身体全体がパッドの上に収まってもゆとりがあるため、冷気にさらされる心配がなくなります(もちろんこのパッドの外側バッフルの厚みも安心感につながっています)。さらに横向き寝が多い自分にとって、足を曲げたり背中を丸めたときのゆとりの多さも非常にありがたい。一度この幅に慣れてしまうと元の幅に戻れなくなったという人を多く知っていますが、その気持ちはワイドで寝てみたことがある人ならばきっと分かるはずです。

耐久性と使い勝手:上下40Dナイロンの安心感と相変わらずの使いやすさ

軽量化のために極薄生地(20Dなど)を採用するモデルが多い中、エクリプスはトップ・ボトムともに40Dナイロンを採用しています。実際に触ってみると、しなやかさと微妙な伸縮性を保ちつつ、砂利程度ならば吸収してくれるような安心感のあるコシの強さが感じられます。

また、NEMO定番の「Laylow™ マイクロアジャスト・バルブ」は操作性も良く、寝ながらの微調整も容易。出っ張りがなくて畳みやすいのも素晴らしい。

そしてこちらもおなじみ、他のマットレスと比べて空気の注入スピードが段違いの「Vortex™ ポンプサック」ももちろん付属されています。空気の流れを考慮し、小さな吹き込みですぐにポンプサック内に空気を溜めることができます。

まとめ:極限までの軽快さを追求するなら「攻めのテンサー」、自分のペースで山を愉しみたいなら「守りのエクリプス」で死角なし

NEMO エクリプス™ オールシーズン(レギュラーワイドモデル)は、価格だけでみるとこれまでの定番「テンサー™シリーズ」と比べて相対的に安価なモデルですが、それは決して単なるエントリーモデルを意味している訳ではないことが今回のレビューで分かったかと思います。

もちろんテンサー™シリーズの軽さとコンパクトさは、少しでも荷物を切り詰めたいタフなルートを攻める場合には依然として魅力的であることは言うまでもありません。しかし誰もが毎回それほどシビアな登山をしたいわけではありません。その意味でエクリプスは「軽さよりも快眠。でも重すぎるのは嫌だ」といった、軽量化の行きついた先に気づく「一周回ってバランスの良さを重んじる」多くの登山家やハイカーにとっては、現時点で最も有力な選択肢といえるかもしれません。

今回はあえてレギュラーワイドモデルを選択しましたが、幅が気にならないという人は、通常モデルを選んでもこのパッドの寝心地の良さ、優れた快適性は十分に実感できるはずです。重量もさらに抑えられることからレギュラーモデルも十分におすすめできます。またこの断熱性の高さは、これから冬山テント泊登山を始めたいが、予算を抑えつつ妥協したくない人にとってもかなりおすすめです。

個人的にはこの快適さを存分に実感できるワイドモデルを選んでも、そこまで重さ・かさばりは気にならなかったので、後悔はしていません。もしあなたが「レギュラー幅」か「ワイド」で迷っているなら、まずはこのワイドモデルをお店でチェックしてみてください。ワイドでの朝の目覚めは、これまでとは全く違ったものになるはずです。

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