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Review:NEMO TANI 1P なるほど日本仕様。いつでも涼しく快適なのに頑丈・軽量な山岳テント

NEMO Equipment,Inc(ニーモイクイップメント社) は、デザイン系大学在学中の創業者が、高度な技術とデザイン性を兼ね備えたアウトドア道具作りを目指し、2002年に米国ニューハンプシャー州でスタートしたブランド。

今でこそ様々なギアを製造するまでに成長した同ブランドにとって、テントはその原点といえるもので、これまでに多くの革新的なモデルを作り続け、世界のトレードショーでアワードもたびたび受賞してきました。まさに テントとともに成長した会社です。

そんなNEMOが日本の山岳シーンでの使用を想定して作ったのが今回紹介する TANIシリーズです。2018シーズンにアップデートされたTANI 1Pを、実際に使用してみた感想をレビューしていきます。

NEMO TANI 1Pの大まかな特徴

NEMOが日本の山岳に開発した1人用テント。15デニールの極細繊維を使用し1060gという軽量性もさることながら、効率的なベンチレーションによる高い通気性の確保、防水・圧縮可能な本体の収納袋が悪天候でもそのまま収納できるなど、高湿度多雨な日本の気候に合わせた仕様となっています。他にも2人用のTANI 2Pもラインナップされており、2Pは最低重量1180kgと、1Pとの重量差も少ないことから自らのスタイルによって選択肢に入るでしょう。

おすすめポイント

気になったポイント

主なスペックと評価

項目 スペック・評価
就寝人数 1名
カラー グリーン
公式最小重量 1060g
実測重量 1104g(ガイライン・ペグ・収納袋含めて1255g)
フライ素材 15デニール Sil/Silナイロン
インナー素材 15デニールナイロンメッシュ
インナーボトム素材 15デニール Sil/PeUナイロン
ポール素材 DAC社製 Fatherlite NSL Green(TH72合金)
サイズ 間口202×奥行105×高さ103cm
収納サイズ 本体:8×17×27cm、ポール39cm
フロア面積 2.2㎡
前室面積 0.8㎡
付属品
  • スタッフサック(収納袋)
  • ガイドライン
  • ペグ 5本 (各16g)
  • リペアキット
オプション
  • フットプリント
居住快適性 ★★★★★
設営・撤収の容易さ ★★★☆☆
耐候性 ★★★★☆
耐久性 ★★★☆☆
重量 ★★★★★
携帯性 ★★★★★
汎用性 ★★★☆☆
総合評価 ★★★★☆

詳細レビュー

収納しやすいサイズと袋

本体、ポール、ペグの3つに分かれていますが、本体収納袋には本体、フライシート、ペグが収納できます。圧縮可能なコンプレッション式で絞れば小さくなるため、これら以外にもテントを使用するときのみにしか使用しない道具を入れておけば、リュック内のスペースを有効利用できそうです。

実測値は本体重量1104g(テント、フライ、ポール)と、メーカー値の1060gよりわずかに重かったのですが、誤差の範囲でしょう。収納袋やペグなどを合わせた重量は 1255gで、それでも十分軽量です。それぞれ個別の実測値は本体789g (テント422g、フライ312g、袋54g)、ポール379g(ポール本体370g、袋9g)、ペグ86g(79g:ペグ16g× 5本、袋7g)でした。

設営の簡単さは及第点

設営は一般的な自立式ドーム型のテントと同じ。ポールはスリーブに通すのではなく、ポールを四隅にセットしてからフックを掛けていくパターンです。ある程度慣れが必要な非自立式と違って直感的に素早く設営できるので、初めての人でも迷うことはなくスムーズにいきそうです。 ポールは2本のポールが中央にあるパーツで連結されています。

ポールを伸ばし、テント本体の四隅にあるコーナーアンカーにポール先端をはめるだけで自立します。

あとはポールに本体のフックを引っかければ本体は完成です。数分で完成しますし、慣れていれば日没後でも余裕で設営できるでしょう。

レインフライは四隅のフックを、コーナーアンカーに引っ掛け、内側のベルクロでポールに接続すればひとまず完成です。末端のドローコードでテンションをかければガイラインで張らなくてもかなりしっかりと張ることができ、風の心配がない場所ならばこれだけで十分といえるほど。インナーテントとフライがくっつくなんてこともありません。

スペック以上に高い居住性と抜群の換気性

インナーテントは15デニールの非常に薄く軽量な生地で、手が透けるほどです。フライがないと中の様子が透けて丸わかりなほど。しかしブリーザブルナイロンという通気性と耐風性を両立した生地を使用しており、スケスケにも関わらず風は侵入してきません。

入り口は長辺側にあり、かまぼこ型の開閉によってかなり広く、全開にすると室内がほとんど見渡せます。室内は202cm x 105 cmと、レギュラーサイズのマットを敷いても、 スペースはある程度確保できます。こうやって入口がガバっと開くとスペック以上に広々としているので、実感としての居住性は非常に高いです。

前室もそこそこの広さを確保でき、靴・汚れものを置く、調理をするくらいであれば余裕です。ただ高さがないため出入りする時はフライにぶつかりがち。露や雨などでフライが濡れていると、いちいち背中が濡れてしまうので気を遣います。

また、なんといっても見逃せないのが通気性の高さ。様々な方法で通気性を確保し、見た目の美しさも犠牲にしていません。まず入り口の生地はナイロンとメッシュの二重になっていて、開けると入り口面の1/4ほどがメッシュになります。

入り口反対側上部にも大きめのベンチレーションがあり、両方開けておけばかなり風が通るようになります。フライをつけた状態でも、芯の入ったつっかえ棒で通気性を維持できます。特に入口部は雨が降っている状態でも通気性を確保できるので、しとしとと降り続く雨天時の野営でもある程度通気性は確保できそうです。

室内は前述したように202cm x 105cmと、広くも狭くもなく、レギュラーサイズのマットを敷いてもある程度のスペースは確保できます。天井まではおよそ100cmです。

短辺外側にはフライと連結できるガイドラインが付いており、テンションを張れば、室内スペースが少し広がります。

天頂部にはフックが一つ付いていて、ライトや小物を吊ることができます。フックは反対側が直接ポールに接続されているので、多少の重量のものであれば、たわむことはなさそうです。

実際に使ってみたインプレッション

インナーテントのコーナーアンカーにポール先端を差し込むだけで自立するので、設営は慣れてしまえばほんの数分で完成します。夕方暗くなるギリギリまで動いていても設営に不安はないでしょう。ただ、このコーナーアンカーですが、実際に使った感じだとそこまで丈夫そうではないので、これが壊れてしまわないかだけが不安です。もちろんメーカーも壊れにくい工夫はしているはずですが、パーツがこのテントの肝なので、取り扱いは丁寧に扱うべき箇所です。

入り口はファスナーを全て広げればかなり広く、出入りに苦労はしません。通気性といっても、このテントはかなり通気性をよくする工夫がしてあり、この時期は締め切らないと風が通り過ぎて夜は寒いくらいでした。さすが日本用モデル、高温多湿の気候を考えての通気性なのでしょう。

結露は数泊した状況では、フライはかなり濡れますが、インナーが濡れることはほとんどありませんでした。そのためのダブルウォールテントなので、結露の心配はなさそうです。

もうひとつ特筆すべきは便利な収納袋。防水かつ圧縮できるようになっています。濡れたフライをそのまま入れても、他の荷物が濡らすことなくパッキングできます。袋の形も四角く、バッグのスペースを有効に使えます。細かい点に気配りが伺えます。

また、オプションで専用のフットプリントが販売されています。フットプリントにもコーナーアンカーがついているので、ポールとフライのみで雨よけとして設営することも可能です。天候が悪い時は役立ちますし、雨天時はまずフライから設営してゆっくりインナーテントを設営ということも可能です。

まとめ:こんな人におすすめ

一人用軽量テントを検討する際に、確実に比較対象に上がる mont-bellのステラリッジテント1と比べると、重量はほとんど変わりませんが、価格が10000円ほどTANI 1Pの方が高く、修理時のコストなど今後もかかるであろう必要経費を考えると、価格では太刀打ちができません。しかし、出入りのしやすさ、居住性、通気性、収納性などを考えると、年中を通してソロでのバックパッキングでの山行が多い方にはそれを上回るアドバンテージがあるように感じます。そして通気口を全開にしたときも、ただ通気口をつけただけのテントと比べると、その機能美が与えてくれる満足感は高いはず。自分なりのこだわりを持つ一方、機能性の高いテントを!という方には、使うたびに愛着のわくテントになるでしょう。

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