毎年恒例、ワークマン2020年春夏モデルを登山・アウトドアに実際に使ってみたレビュー。今回は梅雨も目の前に近づいていたということで、低山ハイキングや軽登山、トレイルランニングなどに活用できそうなレインウェア・アウターを掘ってみました。
目次
レビュー評価について
ここ最近ではテキストサイトからYoutubeまで、多くのワークマンアイテムレビュー情報が集まるようになりまし。ただ現状、その内容に関しては玉石混交で「誰にとって・何にとって」良いのか(悪いのか)という、読み手にとって実用性のある有益な情報が届きにくくなっているのも事実です。このサイトでは自分が読み手だったとして、読んで損したと思うような情報は届けたくないのです。だから本当に欲しい情報、つまりは実際のフィールドで使ってみて良いのか悪いのかをきちんと伝えたい。そこでこのサイトの評価スタンスをあらかじめお伝えしておきたいと思います。
このレビューでは特にことわりのない限り「登山やトレイルランなどのアウトドア・アクティビティ」をメインにした使い方という視点から、使えるワークマンアイテムのレビューをお届けしていきます。ここで「使える」というのはあくまでもハイキングや軽い登山などのアウトドア。逆にいうと、ここで低評価であったとしても、キャンプやバイクツーリングなどの軽いアウトドアであれば問題なかったりもしますので、そのあたりはみなさん読み替えてください。
ピックアップアイテム
今回選んだのは、軽登山やトレイルランニングに使えそうという視点から、ウィンドシェルやレインウェアなど4モデルをピックアップしました。もちろん過酷な登山にも十分というコンセプトで作られている本格ウェアではなく、あくまでもアウトドア「にも使える」ワークウェアです。逆に言えば過酷なアクティビティでなければ、十分利用できる可能性は十分あるとみて、その視点から評価しています。
また、今回は2020年春夏モデルの注目ということで、この企画当初からチェックし続けている定番のレインウェア「R006 透湿レインスーツSTRETCH」やウィンドシェルジャケット「R007A エアシェルジャケット」については、すでにある程度使えるということが分かっているため、選定から外しました。
- ACTIVE シェルジャケット
- 2.5レイヤーハードシェルジャケット
- DiALiGHT(ディアライト) カットレインジャケット
- 3レイヤー透湿ストレッチレインスーツ
レビュー結果&スペック比較表
スマホ向けの軽量表示で表が見づらいという方はこちら
おすすめ度 | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
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アイテム | ||||
種類 | 撥水ジャケット | 防水レインジャケット | 防風・撥水ジャケット | 防水レインスーツ |
ここが◎ |
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ここが△ |
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防風・防水性 | × | ◎ | △ | ◎ |
透湿(通気)性 | ◎ | △ | ◎ | ◯ |
着心地・ストレッチ性 | ◎ | ◯ | ◯ | ◯ |
機能性・使い勝手 | ◎ | ◯ | △ | ◯ |
スペック | ||||
参考価格(税抜) | \2,900 | \3,900 | \3,900 | \4,900 |
実測重量 | 99g(M) | 266g(M) |
315g(M) |
636g (Lサイズ上422g/下214g) |
素材 | ポリエステル100% | ナイロン100%(ポリウレタン透湿コーティング) | ポリエステル100% | ポリエステル100%(ポリウレタンラミネート)・裏側:ポリエステル |
ポケット |
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ベンチレーション | ◎ | ◯ | △ | △ |
パッカブル仕様 | ◯ | |||
反射材 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
商品番号 | S014 | R013 | F20 | R1300 |
各モデルのインプレッション
ACTIVEシェルジャケット 登山おすすめ度(撥水ジャケットとして):★★★★☆
おすすめ◎ポイント
- 高い通気性
- 動きやすさ
- 撥水性
- 軽くて肌触り良好な着心地の良さ
- ポケッタブル仕様
ここが△
- ポケッタブルのファスナーは取付位置が悪く開閉しづらい
2020春<Field Core>から新作ACTIVEシェルジャケットが発売された!昨年レビューした防水透湿機能を持つ<Field Core>エアシェルジャケットはアウター。個人的には春夏に使える、動きやすくて防水・防風・軽量なミッドシェル的ジャケットを探していたところで登場しただけに、期待が高まります。ワークマンらしい斬新な機能をあわせもつ新作シェルはワークマンオンリーレイヤリングを完成させる1枚となるのか?暖かな春山で探ってみました。
最大の特徴はシェル内の熱気を排出できる脇下のベンチレーション。ファスナー開閉式ではなくドッド式を採用することで通気性を維持する作りになっている。斬新で如何なものか不安はあったがウェアの脱着回数を減らせた。これはレイヤリングにおいてアドバンテージになりそうだ。しかし、基本的にはウィンドブレーカーですが、通気性抜群のシェルだから風はある程度通る感じがします。もっと防風性を重視したアウターとしては同社のR007Aエアシェルジャケットをオススメしたい。
ポリエステル100%の素材にもかかわらず腕の上げ下げをラクラクにする工夫が脇下にあります。脇裾から手首までを1枚のパネルで作り上げることで脇下に大きなマチができています。これにより肩回りにゆとりがうまれ腕をどんな方向に伸ばしてもシェルが不快にずり上がることはありませんでした。自在に動けるストレスフリーなシェルに仕上がっています。
撥水機能について、テフロン加工は米国ケマーズ社のフッ素樹脂をコーティングすることで優れた撥水・撥油性と防汚機能を生み出す確かなクオリティを持った技術です。アウトドアアイテムにおいては雨などの対天候性能が向上するだけでなく、汚れも付きづらく手入れも簡単。そして生地本来の質感や柔軟性を損なわないものメリットの一つ。
肌触りはテフロン仕様のおかげでシャカシャカする音もなく柔らかい優しい風合いになっています。透け感のある生地のため半袖の上に羽織っても肌が苦しくならないサラッと感が持続します。また、薄い生地により汗はウェアの表面へ素早く染みでます。そしてテフロン加工の撥水機能により汗を拡散するため速く乾きました。吸汗性に優れたベースレイヤと組み合わせることで運動量を気にせず使いこなせました。
ポケッタブル仕様でパッキングしやすく軽量です。(Mサイズ99g)ポケッタブルのファスナーは取付位置が悪く開閉しづらいのは残念な点です。また唯一のポケットはポケッタブル用と兼用なのでポケットにモノをいれたままシェルを収納するときは注意が必要です。それとリフレクターの位置はザックを背負っても見えるように要改良でしょうか。さらにレイヤリングを考察するうえでフードなしモデルの展開があると嬉しいかもでした。
本格登山には不向きでしょうが軽登山~ハイキングなどのシチュエーションでは無限に使えるウィンドシェルになっています。暑い時期ならばちょうどよいウィンドシェルとして、寒さも感じる季節ならばちょうどよいミドルレイヤーとしてなど、ちょっと重ね着したいときに重宝します。細身シルエットで丈も短めで風によるバタつきも軽減され快適に動けます。まさにACTIVEシェルの商品名にふさわしいものでした。今回はトレランを通じてファストパッキング向けのレビューとなっていますが重ね着にも使いやすいので、肌寒さを感じた際のちょっとした羽織ものとして間違いなく春~秋まで1着あれば重宝することでしょう。
2.5レイヤーハードシェルジャケット 登山 おすすめ度:★★★☆☆
おすすめ◎ポイント
- 防水性
- 動きやすさ
ここが△
- 透湿性
モデルチェンジを繰り返してきた<AEGIS>の2.5レイヤーハードシェルジャケット。完成度を高めてきたモデルならばアウトドアフィールドでも活躍できるのではないか。耐水圧に優れるワークマン<AEGIS>レインウェアをハードにつかい倒しみました。
メーカースペック
- 耐水圧 15,000㎜
- 透湿度 3,000g/㎡24h
外気9℃雨天での10kランニングテストでは<AEGIS>の高い耐水圧で浸水することはありませんでした。ところがフロントファスナーの上げ下げとサイドファスナーのベンチレーションのみでは湿気と蒸気でシェル内がグッショリと濡れてしまいました。外気24℃晴天のハイキングではシャツがしっとりしましたが湿度を逃がしつつ活動を続けられました。透湿度のスペックからすれば期待は禁物でしたが運動量の少ない活動では使いやすさも感じました。
釣り糸にも使用されるナイロン100%のタフな素材は引き裂き摩耗に強く、枝に引っかかったぐらいで破れることはなかったです。生地の伸縮性はありませんが脇下のマチにより肩回りに余裕がありザックへのアプローチもしやすく走っても歩いても動きやすかったです。また後身頃が長いサイクルカットは前傾姿勢になりがちなトレッキングに向いてました。さらにシルエットは細身でバタつきも少なく袖口のベルクロもあり風の中でも安心でした。
生地は2.5レイヤーで表面となる1層目が撥水生地。裏面となる2層目が防水ラミネートで肌にあたる部分はベタ付き防止の凹凸プリントがされています。裏地がないので2.5層といいます。この凹凸が防水ラミネートを汗や皮脂から守って防水性を長持ちさせてくれます。使用後にバサバサとシェルをはらえば水切れが良くとても乾きやすいです。凹凸プリントの肌触りはイマイチでベタ付きは軽減できる程度でした(長袖やアームカバーを着用すれば気になりませんでした)。
一般的な3レイヤーのレインウェアと比較すれば2.5レイヤーらしい軽快さがありました。透湿度が低い点は残念な点ですが、以前のモデルのように脇下にファスナーのベンチレーションがあれば通気性が加わり快適になりそうです。現時点ではランニングならば涼しい時期の街ラン向きです。比較的運動量の少ない釣り、軽いサイクリング、ハイキングなどでアウトドアでも活躍できそうです。
DiALiGHT(ディアライト) カットレインジャケット 登山おすすめ度(撥水ジャケットとして):★★★☆☆
おすすめ◎ポイント
- 透湿性
- 防風性
ここが△
- 重量
ワークマンPBのひとつFindOutはスポーツ専用モデルを数多くラインナップしているがレインウェアの数は少ない。今回のディアライトカットレインジャケットは、登山向けのレインウェアといえるほどの高い耐水圧はありませんので、防水はあくまでもおまけとして、基本は撥水ジャケットとして考えられますが、高い透湿性など従来の製品とは違ったアプローチを感じます。スポーツユーティリティの可能性をテストしてみました。
メーカースペック
- 耐水圧 5,000㎜
- 透湿度 10,000g/㎡24h
三菱商事ファッションのディアライトはスポーツ用途にも対応する高性能で耐久性のある撥水加工に加え生地裏面にラミネート加工やコーティング加工を付与することで優れた防水性と透湿性を合わせ持った複合機能素材です。今回の外気9℃中雨の10kランニングテストで真価を測ってみました。低い耐水圧のわりにシームテープ加工もしっかりしていて縫い目から浸水することはありませんでした。また防風性も良く風を通すことはありませんでした。
ところが高い透湿度の割には湿気と蒸気をコントロールしきれずシャツが濡れて汗冷えを起こしてしまいました。サイドファスナーのベンチレーションは運動量が増えるにつれて通気性不足をおこしてしまいました。さすがに透湿度が高いとはいえ、やはり本格アウトドアの高機能素材の比ではなく、暖かい季節にこれを着てランニングを快適に続けるの難しいと感じました。縦横以外にも斜めにもストレッチするポリエステル100%の素材で伸縮率は130%程度です。ランニングのようなダイナミックな腕の動作では伸びも縮みもゆっくり追従してくれるのが望ましいのですが伸縮する力が強いためスムーズな腕振りを邪魔してしまいました。
伸縮の力の差は硬いゴムと柔らかいゴムの差に近いです。肩を大きく動かすスポーツの着用には不向きですが通常の使用ではストレッチ素材で快適な着心地でした。
裏地無しタイプですが半袖で着用してもベタ付きは少なく快適なのは良い点でした。しかしストレッチ素材のため比較的重めの313g(Mサイズ)は長時間の運動には不向きでした。本格的なスポーツユーティリティモデルではなさそうです。しかしタウンユースから軽いトレッキングまで幅広く使えそうな1着です。比較的厚手のジャケットなので春秋に活躍できる防風・撥水性に優れたアウトドアジャケットと考えればありでしょう。
3レイヤー透湿ストレッチレインスーツ 登山おすすめ度:★★★★☆
おすすめ◎ポイント
- 防水性
- 耐久性
- 保温性
- 上下セットのコストパフォーマンス
- 裏地の肌触り
ここが△
- 重量
- 透湿性
- ごわつき
かつてのワークマンを象徴する、堅牢で確かな防水性を誇る<AEGIS>シリーズから、本格アウトドア仕様と銘打った3層構造生地(3レイヤー)を採用したレインウェア。デザイン的にもアウトドアテイストを多く取り入れているようで、どの程度使えるものか期待しながら使用してみました。
メーカースペック
- 耐水圧 20,000㎜
- 透湿度 3,000g/㎡24h
スペック的には耐水圧20,000㎜ということで、これは本格的な登山用のレインウェアと変わらない防水性能といえます。生地は3層でもあるためやや厚手で、その分、羽織った瞬間にじんわりと暖かさを感じます。その点ではこれを真夏の低山日帰りハイキングやトレイルランニングに持ち歩くにはやや大げさかもしれませんが、従来の登山やハイキングでのレインウェアとして持っていく分にはしっかり機能してくれるほどの安心感を感じました。
3層構造の裏地はペタペタしたコーティングではなく生地が当ててありますので、微細な毛羽立ちが肌触りとしては心地よく、さらに衣服内の蒸れによる濡れがあったとしても、裏地が多少であれば吸収してくれるため、半袖の上に着たとしてもダイレクトでベチャッと濡れるようなことがなく、低めの透湿性の割には蒸れた時の不快感は少ないかも知れません。
着た感じ、比較的厚手の生地なので、どうしても多少のごわつきを感じます。ただ微妙に効いたストレッチによって、そのごわつきは動いているさいには特に不快に感じるほどではありません。特にパンツではこのストレッチ性が歩きやすさに繋がっていてとても快適です。
細かいパーツ類に目を向けると、フードは深めで十分ですが、調節は顎の脇左右のみのため、つばの角度を調節することができません。後頭部にベルクロなどで角度調節ができればもっと微妙な視界を調節できたのにと思います。袖口は伸縮ゴム+ベルクロと快適なフィット感と密閉性を確保するのに十分です。左右のポケットは止水ファスナーで、位置も一般的な登山用と同じようにバックパックのウェストベルトを締めたときでも干渉しない高い位置に置かれているのも、きちっと考えられていると感心しました。
しっかりとした防水性と耐久性を備え、細かいパーツ類についても本格的なアウトドア用レインウェアとはいかないにしても、いわゆるホームセンターのカッパとは比べ物にならないくらいしっかりしています。とはいえ、3,000g/㎡24hという透湿性能はやや心もとなく、厚手の生地であることからも、高所・長期の登山や、高温下や汗を大量にかくアクティビティの場合には、衣服内の蒸れは覚悟しなければなりません。逆にいうと、比較的穏やかな気候か、寒い季節にそれほど大量に汗をかくことがないようであれば、非常にコストパフォーマンスの高い一着といえます。
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