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【今年も】ベースレイヤー50着以上を着比べて選んだシーン別ベスト・バイと、最適な一着を選ぶための5つのポイント

アウトドアでの快・不快を大きく左右するベースレイヤーの最適解を探して

素材や厚み、編み方、縫製など、近年ますますバリエーション豊かになりつつあるベースレイヤー。外気の状態や発汗などによる環境変化が激しい登山では、直接肌に触れるベースレイヤーが行動中の快適さを直接的に左右する最も影響の大きなピースと言って過言ではありません。どのメーカーも自分のが一番スゴイといいますが「結局どれが一番なのか?」もちろん誰も教えてくれません。それなら自分で調べてみようということで、このサイトでは毎年最高のベースレイヤーを求めて旅を続けています。

そんなわけでこのサイトでは新発売モデルも含めて毎年数十のモデルをチェックし、その中から気になるモデルを自腹で購入して実際に試してみて、その結果季節や用途に応じた「今揃えておくべき」一着を選定しています。そんなわけで、今年も数ある優秀なベースレイヤーの中から厳選したベストモデルを紹介していきたいと思います。

ベースレイヤーに求められる機能は目的によって違うから、部門別にベスト・バイを選出

ベースレイヤーと一言で言っても、夏の暑さや蒸れを軽減してくれるものから冬の寒さを防ぐ性能が高いもの、ランニングに使いやすいモデルから軽いハイキングに向いているモデルなど、用途や目的に合わせた多様な特徴を備えており、一概に比較することは難しいのが実際です(よくある単純なランキング記事は正直意味が分かりません)。

そこでこの記事では用途・目的別に7つの部門を設定し、それぞれから「ベスト・バイ」を選出することで読者の皆さんの使い方にマッチしたモデルを紹介できるようにしてみました。後半ではこれまでの経験を踏まえて、初めてベースレイヤーを選ぶ人が自分に最適なモデルを選ぶためのチェックポイントについてもまとめています。

目次

シーン・用途別おすすめベースレイヤー

ベスト・オールラウンド部門:どんなアクティビティでも納得の快適さ・使いやすさ

Black Diamond ソリューション150 メリノベースレイヤークルー

お気に入りポイント

NuYarnテクノロジーと見事な裁断による機能性と快適性の高次元での両立

気になるポイント

フードなしでジップネックモデルがあったら最強

あらゆるアウトドア・アクティビティで優れたパフォーマンスを発揮するだけでなく、衣服としての快適さもしっかりと備え、長く使える耐久性も備えた優等生がBlack Diamond ソリューション150 メリノベースレイヤークルー(下写真はジップネックタイプ)。

最も魅力的な点は、ウール78%・ポリエステル22%の混紡素材ながらウール100%生地とそん色ないほどの着心地の良さを備え、メリノウールがもつ「天然の保温・調温機能や快適性」と化繊のもつ「通気性・吸汗速乾性・伸縮性・耐久性」をこれまでになく高いレベルで両立させている点です。

18.5ミクロンという極細メリノウールと化繊をミクロのレベルで加工・ブレンドした「NuYarnテクノロジー」を初めて体験しましたが、最高レベルの着心地良さと、激しいアクティビティでの快適さをここまで高いレベルで実現するその完成度の高さにすっかり惚れ込みました。それにしてもここ数年の「メリノウール × 化繊」ブレンド技術の目覚ましい進化ぶりにはあらためて驚かされます。

ユルすぎず窮屈すぎない的確なフィット感、そして適度なキックバック性による動きやすさも活動時の快適性を支えています。生地自体の厚さはそこまででもないので、その気になれば1年中着倒すこともできるでしょう。寒い時期ならばフード付きのジップネックタイプが出ているので、そちらもおすすめです。いずれにせよBlack Diamondのベースレイヤーってことで正直侮ってましたが、びっくりするほど良質な一着でした。

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ベスト・パフォーマンス部門:行動中の快適さ&機能性No.1

Patagonia キャプリーン・エア・フーディ

お気に入りポイント

圧倒的な快適性と抜群のフィット感、激しい運動でもべたつかない通気性を高めた立体構造の生地

気になるポイント

耐久性の低さと高価格

MILLET ホールガーメントワッフル ウール フーディー

お気に入りポイント

ワッフル生地による極上の着心地、ホールガーメントによる計算された通気設計

気になるポイント

耐久性の低さ

耐久性の低さを除けば、行動時に最も優れたパフォーマンスを約束してくれるベスト・パフォーマンス部門はこの2着を選出。

特徴的なのは、どちらも肌に触れる部分が抜群の伸縮性を備えた立体構造、なおかつ縫い目のないホールガーメントによって編まれたニットであること。肌触りはふわっと軽くて病みつきになるほど心地よく、さらに溝に閉じ込められたデッドエアー効果によって生地の厚みや重量のわりに保温性も高い。汗をかいても凸凹構造によって肌離れもよく、べたつき感はゼロ。そしてひとたび風が吹けばこの凹凸を空気が通り抜けるため通気性も適度にあり、速乾性も高いという、一石で何鳥にもなる巧みな構造を備えています。

違いを強いて挙げるとすれば、ホールガーメントワッフル ウール フーディーの方が極細ウール素材の割合が高く肌触りに関しては若干心地よい一方フィットは緩め。どちらかというと穏やめなアクティビティに向いています。一方キャプリーン・エアの方はより身体にピッタリとフィットして生地の構成的にも汗処理性能が高めのため、よりアクティブなスポーツ全般に向いているといえるでしょう。

なお、このカテゴリにおけるもう一つの候補であったTeton Bros. MOB Wool Hoody、山と道 DF Mesh Merino Long Sleeveも受賞の2点に勝るとも劣らぬ優れたベースレイヤーですが、普通に洗濯機で洗うと縮みやすいという手入れのわずらわしさが個人的にどうしても受け入れられず、残念ながら次点にさせていただきました。

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ホールガーメントによって縫い目が気にならず、立体構造のニットによって快適な肌触りは唯一無二。

ベスト・ハイキング部門:泊りの登山やハイキングで使いやすい良バランス

Black Diamond メンズ L/Sリズムティー

お気に入りポイント

軽くてソフトできめ細かい肌触りの良さと抜群の伸縮性による快適なフィット感、さらに優れた通気速乾性を両立

気になるポイント

薄手なので保温性はそこまで期待できず、洗濯によって毛玉もできやすい

ACLIMA LIGHTWOOL UNDERSHIRT LS

お気に入りポイント

17.5ミクロン繊維のしなやかな肌触りと心地よいフィット感

気になるポイント

100%ウール繊維のためどうしても耐久性の低さは否めない

選んだ2アイテムは、どちらも非常にソフトで滑らかな肌触りをもち、ずっと着続けていたくなるようなクセのない着心地の良さを備えています。特にBlack Diamond リズムティーは、NuYarnテクノロジーによるウールとナイロンとの混紡であるにもかかわらず非常にきめ細かく心地よい肌触りを有している点は驚きでした(毛玉になりやすいのが玉に瑕)。

2つのそれぞれの魅力ですが、まずBlack Diamond リズムティーは、混紡生地とは思えない快適な着心地に加えて抜群のストレッチ性によるストレスフリーの動きやすさが挙げられます。薄手でしかもポリウレタンなどを使っていないにもかかわらず気持ちよいくらい伸び縮みする生地は、身体のラインにやさしくフィットし、もう1枚の皮膚のように外界からの影響を軽減し、身体からの水分を排出してくれます。

上質な極細ウールによって生地厚から想像するよりも高い保温・調温性をもたらしてくれるので、厳冬期を除く広い季節でうまく機能してくれるはずです。

NuYarnテクノロジーによる、薄手ながら驚くほどよく伸縮する運動性の高い生地。

一方、ウール一筋80年以上(!)北欧の老舗ウールウェアブランドACLIMAの定番ベースレイヤーLIGHTWOOL UNDERSHIRT LSは、世界トップレベルの高品質100%メリノウール繊維によって丁寧に作られた、春~秋向けの薄手モデルです。

なんといっても17.5ミクロンという極めて繊細なメリノウール100%を、絶妙な密度で編んだ生地のきめ細かく滑らかな肌触りは、思わず頬ずりしたくなるほどの素晴らしさ。袖を通したときの心地よさと言ったら!。肌に無理なくフィットする巧みな裁断と縫い目のごろつきを抑えたフラットロックシーム、きつ過ぎない伸縮性は毎日着てもいいくらい。ハイキング部門とはいえ、登山はもちろんのこと、ほかのアクティビティでも幅広くマッチするはずです。

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ベスト・高負荷アクティビティ部門:短時間で発汗の激しい活動に最適

THE NORTH FACE エクスペディションドライドットクルー(春秋冬)

THE NORTH FACE(ノースフェイス) 【SUMMITシリーズ】Expedition Dry Dot Crew(エクスペディションドライドットクルー) NT12123
お気に入りポイント

優れた吸汗速乾性と肌面のドライ感、適度な保温性

気になるポイント

表面の耐久性、真夏では暑すぎる(&高価格)

Mountain Hardwear エステロロングスリーブジップTV.4(夏)

お気に入りポイント

ストレスのない動きやすさと抜群の通気・速乾性。

気になるポイント

保温性はほとんど期待できない。

この部門では当然化繊のベースレイヤーが有利ですが、今の時代、ただ化繊であるだけでは他よりも突出したパフォーマンスを見せることはできません。多くのメーカーが出している速乾重視の化繊ベースレイヤーの中でも、受賞した2枚はそれぞれのアプローチによって頭一つ突出したクオリティを実現していました。

THE NORTH FACE エクスペディションドライドットクルーはこのサイト以外でも散々取り上げらているのでご存じの方も多いかもしれませんが、大量の汗を素早く肌面から引き剝がし効率的に外側へ蒸発させる革新的な技術を用いた「Future Dot Fleece」によって、寒い時期での激しいアクティビティで驚くほどの快適さを提供してくれました。この1枚がスゴイのは、ただ速乾なだけでなく、汗の不快さを肌面に残さないので乾いている最中でも常に肌面をドライでサラサラな状態にしていることです。

もう一方のMountain Hardwear エステロロングスリーブジップは、薄手で通気性抜群の生地を使い、動きやすさと風通りの良さを両立する計算された裁断でまとめ上げた、オーソドックスながら確かな実力をを備えた一着です。このモデルは5年以上前からお気に入りで、長い間、夏の定番としてバージョンアップを重ねてきている実績があります。ラグランスリーブでなおかつ縫い目が気にならないフラットロックシーム、そして薄手でながらも微細な凹凸とグリッド状のメッシュ構造によってドライ感を感じやすいつくりなど、とにかく一つ一つの仕事が丁寧。とにかく常にクールでドライでいたい真夏のアクティビティでこれ以上なく使える一着。今すぐには必要ないかもしれませんが、春夏シーズンにはぜひチェックしてみてください。

濡れていてもドライ感と通気性を失わない微細な凹凸とグリッド状のメッシュ構造。

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ベスト・レイヤリング部門:ベースにも中間着にもなる優れモノ防寒レイヤー

Mountain Hardwear エアメッシュ 1/2 ジップ

マウンテンハードウェア 【22秋冬】Men’s AIRMESH 1/2 ZIP(エアメッシュ 1/2 ジップ)メンズ L 352(BLACK SPRU) OM2466
お気に入りポイント

「異次元の保温性」と「異次元の通気・速乾性」が別のベースレイヤーの上に重ね着するブースターとして驚異的な効果を発揮

気になるポイント

単体のベースレイヤーとして考えた時の、ともすれば高すぎる通気性、肌着としての着心地の悪さ、伸縮性のなさ

ここ数年新たに登場した、帝人の「Octa」などに代表される吸汗速乾性と保温性を兼ね備えた多機能レイヤー。まだ未体験の人も多いかもしれません。

これらのウェアの特徴は、繊維の形や裏地の起毛構造によって中綿のように空気を溜め込むことができるため、劇的な軽さにもかかわらず従来では考えられなかったような保温性を実現する一方、メッシュと言っていいほどの通気性の高さによって空気をバンバン通すこと。つまり「無風状態であれば身体を温めてくれるが、少しでも風を受ければ逆に身体をクールダウンする方向に働く」ため、単体で使う場合には常に動いているような短時間・高負荷アクティビティに限られます。肌触りも特段優れているというわけでもありません。

非常にクセの強いこれらの新素材ウェアを様々な場面で試していった結果気がついたのは、自分のような通常の登山やハイキング用途では単体で肌の上に着るよりも、ベースレイヤーの上から重ね着することで、想像の斜め上をいく優れた使い勝手を発揮してくれるということです。ベースレイヤーの新たな可能性を切り開いたという意味で、今回特にあえて1部門として取り上げてみました。

中でも今シーズンの秋冬に新登場したMountain Hardwear エアメッシュ 1/2 ジップは、多くのOcta採用モデルがもつ優れた性能に加え、仕立ての良さやあか抜けたカラーリングを備えています。2021年にはクルーネックのみでしたが22年からはジップネックタイプも追加され、これ1枚あれば気温が高めの時期には防寒レイヤーとして、また気温の低い時期ではベースレイヤーに保温性をプラスオンするチョイ足しレイヤーとして役立てることができます。この冬、ぜひお気に入りのメリノウールベースレイヤーの上にこれを着てみてください。どんなベースレイヤーよりも優れた快適レイヤリングになっちゃいます。

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手に持つとふわふわ厚手に感じられる生地は、裏が透けて見えるほどの空気透過性を備えている。

ベスト・コストパフォーマンス部門:やっぱり気になるお買い得モデル

mont-bell スーパーメリノウール L.W. ラウンドネックシャツ

お気に入りポイント

群を抜いて高いコストパフォーマンス

気になるポイント

寸胴で平凡なデザインとカラー

大方の予想通り、やはりここはモンベルが強かった。高品質なメリノウールと巧みな縫製によって作り上げた機能性の高さにもかかわらず、安定のお手頃価格。随所に快適さと機能性に優れた仕様を施されています。

ただ、これだけ至れり尽くせりなのになぜか食指が動きにくいのはやはりその色気の無さでしょうか。どんなスタイルの良い人でも寸胴のずんぐり体型に見せてしまうのだから困ったものです。

ベスト・汎用性部門:山だけでなく日常でも着ていたいと思える一着

Houdini Ms Activist Turtleneck

お気に入りポイント

リラックスしたフィットながら洗練されたシルエットとカラーリング、心地よい暖かさ

気になるポイント

通気性や速乾性といったアクティブなシーンに対応した機能はそこそこ

BRING WUNDERWEAR CREWNECK

お気に入りポイント

洗練されたデザインと快適性・機能性を両立した作り

気になるポイント

緩めのフィットのため激しいアクティビティのレイヤリングには向いていない

本気の山に着ていくもよし、おまけに毎日の普段着や家族との休日にも重宝する、アウトドアが生きがいとする人々の日常着にピッタリなモデルです。どちらもアウトドアで使うための実用性はもちろん、街での日常に溶け込むために求められるデザイン性、どちらにも深く精通しているブランドからこそできる質を備えています。これらのモデルはどちらも「日常+ちょっとアウトドア」というバランスで設計されているので、ガチのアウトドア用として比較すると所々が控えめで、機能性という意味では価格に見合ったものが得られないかもしれません。ただ、一度アウトドアウェアの快適さを毎日の生活に取り入れてみると、その便利さ、心地よさからきっと手放せなくなるに違いありません。

例えばHoudini Ms Activist Turtleneckに一度袖を通してみれば、その心地よいフィットと上品なシルエットと風合いを両立した見事な仕立てに誰もが気づくでしょう。メリノウールとテンセルをブレンドした生地は、環境に配慮した天然由来で最大限の機能性と快適性を引き出しています。秋冬に着たいぼくの好みでまずはタートルネックをチョイスしましたが、この他にクルーネックも、半袖も幅広くラインナップされていますので、各種類もって1年中着てしまうかもしれません。

淡い光沢感を備えた上品なウール・テンセルの混紡生地と、身体のラインをきれい見せる洗練されたシルエット。

次にBRING WUNDERWEAR CREWNECKは日本発の新しいブランドによる超快適&シャレオツベースレイヤー。サーキュラーエコノミーを社会に実装するというエシカルな目標を掲げ、機能性とデザイン性、持続可能な服づくりを行っています。その高い理想に負けず品質も素晴らしく、エクストラファインメリノウールと独自のサステナブルなポリエステル「BRING Material™」の混紡を採用。立体的な表面とホールガーメントによる最先端の編立技術を駆使し、極上の軽やかな肌触りと汗抜けの良さを両立しています。ややゆったり目に作られたリラックスフィットと優しいカラーリングは日常使いに丁度よく(もちろん機能的にアウトドアでも全然いけます)、この冬欠かせない一着となりそうです。

選び方:ベースレイヤーを賢く選ぶ5つのポイント

はじめに:レイヤリングの基本とベースレイヤーの役割

まずはじめにアウトドアでよく聞くこの「ベースレイヤー」というウェアの基本的な意味や役割から理解していきたいと思います。そのためにまずはアウトドアで快適に過ごすための「レイヤリング」という概念について知っておく必要があります。

レイヤリングとは「重ね着」の意味。コロコロと変わりやすい天気や、暑かったり寒かったりと気まぐれな身体の状態にすばやく適応するためには「上手に重ね着して」細かく調整できるようにすることが最良の方法のひとつであり、この効率的で汎用的なアウトドアでの上手な重ね着の仕方(ルール)がレイヤリングというわけです。正しいレイヤリングは、夏の激しい発汗時や突然の雷雨、あるいは頬を刺すような寒さのなかでも衣服内を一定の状態に保ち、常に気分よく行動することができますが、逆に誤ったレイヤリングでは、いくら高価なアウトドアウェアを着ていたとしても簡単に不快な状態へと陥ってしまいます。そうならないためにもまずは正しいレイヤリングを実践するための簡単な仕組みをぜひ押さえておいてください。

正しいレイヤリングの基本は、以下の3つの各レイヤー(層)が連携して機能することです。適切なレイヤリングによって、すべての層が連携して衣服内の汗(水分)を発散させ、熱を保持し、風や雨から身を守ることができます。

厳密にいうとウェアによっては一着で複数の役割をこなしてくれるものありますし、風のない真夏のランニングなど、季節やシチュエーションによってはすべてのレイヤーを重ね着している必要がない場合もあり、これらの機能と役割を理解したうえでシーンに応じて調節するのが賢いレイヤリングといえます。

ここで各レイヤーの基本的な役割をまとめてみます。

レイヤー ベースレイヤー ミドルレイヤー シェルレイヤー
イメージ
主な役割
  • 吸汗
  • 排出・発散
  • 調温・調湿
  • 断熱
  • 保温
  • 透湿
  • 防水
  • 防風
  • 遮断
主なウェア
  • ベースレイヤー
  • Tシャツ
  • アンダーウェア、インナー
  • フリース
  • 化繊インサレーション
  • ダウン
  • レインウェア
  • ウィンドシェル
  • ソフトシェル
  • ハードシェル

常に欠かせない最重要レイヤーとしてのベースレイヤー

どんな場合であっても、ベースレイヤーは文字通り「ベース(基礎)」として、あらゆる季節・アクティビティで欠かすことのできないレイヤーです。ベースレイヤー1枚だけで行動することはあっても、肌面にシェルレイヤーだけ着て活動するということはまずあり得ません。かように重要なウェアであるベースレイヤーは、今やさまざまなメーカーから多彩なモデルが発売されていて、何を選べばよいか迷うことも多いでしょう。ここからはそうしたバラエティ豊かなベースレイヤーから自分にピッタリの一着を選ぶための5つのチェックポイントについて説明していきます。

ポイント1:素材 ~化繊とメリノウールの違いを知ろう~

ベースレイヤー選びで最も重要なポイントのひとつは、それがどんな生地でつくられているかという素材選びです。

まず大前提としてアウトドア用のベースレイヤーには、濡れると保温性が失われてしまうような綿の使用は避けなければなりません。代わってよく使われているのが、濡れても保温性を失わず速乾性を備えた素材であるポリエステルやナイロン、ポリプロピレンなどの合成繊維(化繊)、あるいはオーストラリアやニュージーランドで多く生産される羊毛であるメリノウール、そしてこれらウールと化繊の混紡素材の3タイプです(細かくいうと化繊にも種類によって違いがあり、メリノウール以外にもシルク、カシミヤ等の天然繊維やテンセルなどの再生繊維などいろいろありますが、とりあえずはこの化繊とウールという大きな二種類を知っていれば問題なし)。

それぞれの大まかな特徴を下にまとめます。それぞれに向き不向きがあるので、1年中同じ素材が最適という分けではなく、季節やアクティビティに合わせて着分けるのが快適に過ごす秘訣です。

素材 化繊 メリノウール ウール+化繊
イメージ
メリット
  • 速乾
  • 吸汗
  • 通気
  • 軽量
  • 擦り傷やしわに強い
  • 手入れが簡単
  • 伸縮性
  • 安価
  • 吸汗
  • 調温性
  • 調湿性
  • 保温
  • 肌触り
  • 抗菌防臭
  • 軽量
  • 伸縮性
  • 天然繊維
  • 速乾
  • 吸汗
  • 調湿
  • 保温
  • 着心地
  • 抗菌防臭
デメリット
  • 臭いがつきやすい
  • 石油由来の素材
  • 調温性
  • 着心地
  • 速乾性
  • 重量
  • 耐久性
  • モノによっては縮むのでケアが大変
  • 高価
  • モノによっては中途半端な特徴に
適したシーン
  • 夏のハイキング
  • トレイルランニングなどの激しい発汗を伴うアクティビティ
  • 春・秋・冬の登山・アウトドア全般
  • 夏でも寒暖差の激しい高山
  • 真夏の極端に発汗の多いアクティビティ以外のアウトドア全般

ポイント2:生地の厚み ~季節とアクティビティによって選ぶ~

ベースレイヤーの各モデルは、同じスタイルでも異なる厚みがラインナップされていることが多く、メーカーは生地の厚みを変えることで多様な季節やアクティビティに対応させようとしてます。ちなみに生地の厚みの単位ですが、一般的には分厚く編むほど生地は重くなることから、その生地の1平方メートルあたりのグラム数(g/㎡)で表わすことが多いです。

薄手(ライトウェイト)

夏や発汗の激しいアクティビティに合わせて作られたもので、保温性は少ないものの軽くて通気性と速乾性に優れた厚みです。この薄手の上にもう1枚ベースレイヤーを重ね着することで1年中活躍してくれるという使い方も不可能ではありません。厚みの目安としてはだいたい100 ~ 170 g/㎡前後の範囲。

中厚手(ミッドウェイト)

春・秋のアクティビティを中心に、1年を通して使える最も汎用性の高い厚みです。最初の1着で選ぶならこの厚みがおすすめ。厚みの目安としてはだいたい160 ~ 250 g/㎡前後の範囲。

厚手(ヘヴィーウェイト)

冬場の厳しい寒さに対応する十分な保温性を備えています。ただ水分管理が優先事項ではないため、吸湿発散性はそれほど期待できません。冬には最高の心地よさを提供してくれますが、暖かい季節には暑すぎて着ていられません。厚みの目安としてはだいたい250 g/㎡以上。

個人的な経験では、厳冬期の冬山登山などをするのでなければ厚手のベースレイヤーは正直使い勝手が悪いので急いでそろえる必要はありません。まずはミッドウェイとやライトウェイトの厚みを準備するのがよいでしょう。

ポイント3:形状・編み方・縫製 ~目的に合った作りを選ぶとより快適に~

ベースレイヤーのスタイル(形状)は、主に4つのタイプがあります。それぞれには向いている季節やアクティビティがありますので、それぞれの長所・短所をを以下にまとめてみましたので、ここにある内容を踏まえてよりフィットするスタイルを選択してください。

個人的には半袖(半袖ジップネック)やフーディ―タイプは季節・アクティビティが限定されるためあまり使っていません。なので特にこだわりがなければ登山・ハイキングなどのアウトドアには長袖タイプがおすすめ。首回りの形状は、機能性だけでいえばジップネックタイプが温度調節がしやすく便利なのですが、あわよくば普段着のインナーとしても使いたい場合にはクルーネックタイプの方が使いやすく、そこは悩ましいところです。

タイプ 半袖タイプ 長袖(クルーネック)タイプ ジップネックタイプ フーディタイプ
イメージ
涼しさ ×
暖かさ ×
温度調節しやすさ ×
適した季節・アクティビティ
  • 季節:夏
  • 発汗の多いアクティビティ
  • 季節:真夏を除くオールシーズン
  • 登山を中心にオールラウンドなアクティビティ
  • 季節:オールシーズン
  • 登山を中心にオールラウンドなアクティビティ
  • 季節:冬
  • スキーなどのウィンターアクティビティ

編み方・縫製にひと工夫があるモデルに注目1:ホールガーメント

一着丸ごと立体的に編み上げる無縫製ニットウェア。通気性や肌触り、伸縮性など適所に異なる機能を盛り込んだ複雑な編みで構成されているにもかかわらず、まったく縫い合わせることなく、シームレスに編むことができます。軽くて暖かく通気性があり、縫い目のごろつきもなく、驚く程の着心地とフィット感を実現することができます。

編み方・縫製にひと工夫があるモデルに注目2:立体的な編立

ホールガーメントでも書きましたが、ワッフル地に代表される肌面と布地との間に空気の通り道を作るような立体的な編みにすることで、よりデッドエアを保持しながら、適度な換気効果を提供することができます。

ポイント4:着心地・フィット ~基本は肌に密着するシルエット~

ベースレイヤーのシルエット(フィット)は、若干の差はありますが、身体のラインに沿ったピッタリとしたスリムなものが一般的です。

その理由は大きく2つあります。ひとつは行動中にかいた汗を吸収して肌面から水分を引き剥がし、効率よく蒸発させやすくするために、生地を肌に密着させる必要があるから。もうひとつはレイヤリングを想定しているため、ゆったりダボついたシルエットでは重ね着がしにくいから、といった理由です。

逆にあえてややゆったりシルエットにしているモデルは、リラックスしたときに快適でいられるように意図しているか、日常でも着やすいようにカジュアルに寄せているか、あるいは通気性を重視した夏向けTシャツタイプか、はたまたベースレイヤーにもミドルレイヤーにも使えるようにしているかなど本来の目的+αの意図があると考えられます。いずれにせよこれらのフィット感に唯一の正しい答えはありませんが、そのモデルの狙いと自分の求めている機能とを照らし合わせて検討しましょう。

なお、こうしたシルエットはメーカーのHP等に記載された「スタンダードフィット」や「スリムフィット」「トリムフィット」といった表示からある程度想像できますが、最終的には試着してみて、自分の体型にフィットするか個々人の感覚で判断するのが確実です。

ポイント5:その他細かい機能・特徴 ~より高品質・高機能モデルにある機能を押さえておく~

UVプロテクション

特に夏向けに多いのが、生地に紫外線防止効果が付加されているベースレイヤーです。これは文字通り日焼け止め効果を意味していますが、服を着ていても必要なのか?と思うかもしれません。実際のところ高地や雪等の反射が強い場所で活動するアウトドアでは服の上からでも多少なりとも紫外線の影響を受けてしまいます。このためどうしても日に焼けたくないという人は、特にこのような機能があるモデルを選択することは有効です。

抗菌・防臭

ベースレイヤー、特に化繊モデルは昔から臭いの問題は避けられませんでした。なぜなら一般的な登山では大量の汗をかき、それを何日も着続けなければならないですし、化繊はどうしても繊維の中に汗の残留物や臭気物質が選択しても生地に残り続けてしまうからです。

ただ最近では技術の進化によってある程度臭いの問題から救われる道が見えてきました。

ひとつは「ウール」を配合したベースレイヤーを着ることです。ウールには天然の強力な防臭機能が備わっており、たとえ汗をかいたとしても、乾くと不快な匂いはほぼなくなり、何日着続けても比較的快適に着用することができます。人によっては「1週間着続けても匂わない」と言われるほどで、その意味でもウールは登山用ベースレイヤーとしてこれ以上ない特性を備えているといえます。

もうひとつは、ウールほどではないにしても化繊で消臭機能を搭載したモデルを選ぶことです。例えば生地に練り込まれた銀イオン※による「制菌」機能(モンベル)や、天然の抗菌物質を利用したポリジン防臭加工などを実現した「抗菌防臭ウェア」が主流になりつつあります。逆に言うと、そういった機能が無い化繊モデルについては、臭いの問題には気をつける必要があるということは覚えておいてもよいかもしれません。

※近年サステナビリティの観点から欧米では消臭機能に使われる銀塩などの金属由来原料を避ける動きが進んでいるため、この分野でも新たな環境対応技術への更新が進んでいます。

肌にゴロつかないフラットな縫い目

肌に密着することが前提となるベースレイヤーは、裏地にある縫い目が盛り上がっているとそこに擦れが生じ、バックパックのショルダーハーネスと干渉するなどして不快感や擦れに繋がる可能性があります。こうした擦れに対するケアにきちんと対応しているかどうかは細かいですが重要。

擦れを避けるように縫い目をフラット(平ら)にした「フラットロックシーム」、あるいはショルダーハーネスが当たる肩の頂点部分に縫い目が来ないように裁断パターンを設計するなど、細やかな対応がされているモデルを選ぶようにするとより快適です。

ウールは「洗濯によって縮むかどうか」を重々注意するべし

最後に、ウールのベースレイヤーを購入する人に、ついつい忘れがちなことをお伝えしておきます。昔からウールの衣服は「洗濯機で普通に洗うと縮む」ものでした。それは今でも基本的には変わりません。ウールの表面は「スケール」と呼ばれるウロコ状の層になっており、それが水に濡れると開いた状態になり、洗濯によってスケール同士が絡み合い、縮みが発生するからです。

ただ、最近の高性能なウールは紡績過程において優れた防縮加工が施されており、これらの製品は普通の洗濯機で洗濯することが許されています。もちろんこれらが100%まったく縮まないということはないとは思いますが、少なくとも自分の経験の範囲では洗濯後に着られなくなる(までいかなくとも、明らかに縮んだなと思える)ような大惨事には至りません。

このためついつい最近の山用メリノウールベースレイヤーはどれも何となく洗濯できちゃうものだと思いがちですが、実際にはそんなことはありません。トップレベルのパフォーマンスを見せてくれる製品でも実は縮みやすくて手洗いなどの丁寧なケアが必要だった、ということは決して珍しくないものと思っておきましょう。

できることならこうしたケアが楽な製品の方が何も気にせず他の衣類といっしょに洗えるので、ありがたいことは間違いありません。このためメリノウールのベースレイヤーを選ぶ際には縮みやすさの注意が書いていないかどうかチェックし、できることなら普通に洗濯できるモデルを選ぶようにすると、ケアも楽です。一方で洗濯すると縮む可能性がある場合には、必ずメーカー指定の手入れ方法で洗うようにしましょう。

まとめ:シーンに合わせて使い分けるのを前提に

ベースレイヤーは肌に密着する大事なウェア。季節やアクティビティに合った機能性や保温性を選ぶことが重要です。今回のレビューや選び方のポイントを参考に、さまざまな役割と魅力をもったベースレイヤーに興味をもっていただき、皆さんがそれぞれにピッタリの一枚に出会う助けになれればありがたいことです。もちろんベースレイヤー単体をいくらしっかりしたとしても、その他のミドルレイヤーやシェルレイヤーにも気を配ることをお忘れなく。それでは楽しい山旅を!

【参考】今年試した52着のベースレイヤー(多分抜け漏れ若干あり)

いつものように、世界的な総合アウトドアブランドをはじめとして、特定のアクティビティに強い小さな実力派ブランド、ベースレイヤー専門ブランド、そして日本の人気アウトドアブランド等の発売モデルをまずはしらみつぶしにチェックしました。対象アクティビティは登山(沢登り)・トレイルラン・バックカントリーが中心です。

そこから琴線に響いたものや、実際にお店で見たときにビビっと来たもの、とにかく自分自身が「着たい」と思わせてくれた、厳選モデルが以下、今年の52着です。

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