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【忖度なしの自腹レビュー】未来キタ!THE NORTH FACE エクスペディションドライドットクルー 吸汗・速乾・サラサラ感。1枚で何役もこなすヤベえやつ

久々にニンマリとする。これだから山道具はおもしろい。

一般的な衣類でいうところの「肌着」に当たるベースレイヤーは、登山ウェアの中でも肌の上に直接着用する、安全で快適な服装(レイヤリング)にとってまずおさえなくてはならない、基本中の基本。その役割は、身体から出る汗を吸収してできる限り素早く外へと拡散(蒸発)させ、肌面をドライな状態に、そして一定の温度に保つ(冷やさない)ことが求められます。

かつて化繊のナイロンやポリエステル製の「吸汗・速乾機能」に優れたモデルが登場し、それらは今でも登山用ベースレイヤーの主流です。そして近年では0.5レイヤーだとかいろいろな呼ばれ方で、ベースレイヤーのさらに下に肌に密着させて着るアンダーウェアが市場を席巻するようになりました。これによって「肌面をドライな状態に保つ機能」が加速されたわけです。

その0.5レイヤーが登場してから数年、今春ノースフェイスから新登場の最新ベースレイヤーはそこからさらにまた一歩の前進を感じさせてくれる、驚きの一着でした。

能書きはこのくらいにして、早速この春バックカントリースキーとハイキングに着用したインプレッションをお届けします!

THE NORTH FACE エクスペディションドライドットクルーの主な特徴

肌面に撥水加工を施したドライ層と、汗を素早く拡散し乾燥させる吸水層の表生地を組み合わせることで実現したダブルフェイス(二重)構造によるベースレイヤー。かいた汗は肌面のドライ層にとどまることなく、ドット上の接結面を通じて瞬時に生地表面へと移行し、蒸発を促進します。立体裁断による動きやすさを備えながら伸縮性を備え、過度に密着せず適度なスリムフィット。わずかにデッドエアーを作り出す、嵩のあるニット構造が保温効果も発揮。袖口はサムホール仕様。胸ポケットにはストレッチ生地にはスマートフォンも収納可。ストップ&ゴーが多いアクティビティや、気温・天候変化の激しい高所で活躍するテクニカルな一着。

おすすめポイント

  • 優れた吸汗性と体感的な速乾スピードの速さ
  • 大量の汗でも瞬時に戻ってくるサラサラ感
  • 身体のラインに沿った立体裁断と適度なストレッチによるキツすぎず・ゆるすぎずの高いフィット感
  • 2着分の機能を備えていると考えたときの軽さ
  • ほんのりとした保温性

気になったポイント

  • 摩耗・ひっかきに対する耐久性
  • 真夏で走る場合にはやや暑いかもしれない
  • 抗菌防臭機能(未確認)
  • 高価

主なスペックと評価

名前THE NORTH FACE エクスペディションドライドットクルー
重量142g(Mサイズ実測)
生地Future Dot Fleece(ポリエステル100%)
UVプロテクション
抗菌・防臭機能
評価
フィット・快適性★★★★☆
通気性★★★★☆
速乾性★★★★★
吸汗性(汗冷えしにくさ )★★★★★
耐久性★★★☆☆
重量★★★★★

詳細レビュー

3月に購入し、4月の北アルプス・中央アルプスでのバックカントリーで、その後低山でのハイキングに2度ほど着用し、シェルの下に着込んだ状態からむき出しの1枚で使用するなど、一通りのレイヤリングパターンで汗をかいて試してみました。

汗の不快感が瞬時に解消してすぐにサラサラ。驚きの吸汗・速乾性とドライ感

このカットソーの”異変”に気づいたのは、ピーカンの蓮華温泉から栂池に戻っている登りの最中でした。その日は気温こそ流石にそこまで高くはないものの風もなく、登りはじめるとまたたく間に大量の汗が吹き出てきて、すぐに着ていたシェルを脱ぎ捨てこれ1枚でせっせとハイクアップすることになったのですが、当然脱いだ直後のベースレイヤーは汗でびっしょり。

ここで従来の「一般的な」化繊ベースレイヤーであれば、ある程度乾くまでは生地が肌にぴたっと貼り付く不快感と、汗の蒸発とともに奪われる体温のヒンヤリ感(汗冷え)がどうしても避けられないものです。あるいはメリノウール系のベースレイヤーであれば、ピタピタ感や冷えは軽減されるものの、本来的な速乾性は劣るため乾ききったサラサラ状態になる時間は化繊よりもかかります。

このエクスペディションドライドットが他のベースレイヤーと違ったところは、まさに従来の化繊ベースレイヤーのような不快感や冷えをほとんど感じなくてすむ(あるいは感じる時間がとても短い)にもかかわらず、驚異的な速乾性も実現している点です。

何とかこの驚きを言葉で説明するとすれば、たくさん汗をかいても「ジメジメ・ピタピタ」といった不快感を感じる瞬間がほとんどなく、それでいていつの間にか、あっという間にウェアが乾いている(ように感じられる)、結果として激しい発汗をともなう登山でも常に身体はサラサラ、といったところでしょうか。

世の中にあるさまざまなベースレイヤーのうち、ポリエステルなどの化繊をメインとするモデルは特に速乾性能に優れているものが多いのですが、その吸汗・速乾スピードはどのモデルも流石にそれなりに高く、実際のところその差は正直どんぐりの背比べといっても言い過ぎではありません。ところが、このエクスペディションドライドットはそうしたこれまでと同じようにポリエステル100%の素材構成にも関わらず、その体感速乾スピードは明らかに違いました。

雪山だけでなく4月下旬の低山ハイクでもその効果を実感。ピーク直下の急登でかいた大汗も、ものの数分足らずでサラサラに(下写真)。稜線に上がったときのの嫌な汗冷えも感じにくくなっています。

1枚で肌離れの良さと吸汗・速乾性とを両立するその秘密とは?

この魔法のような機能を可能にしているのは紛れもなく独自開発の「 Future Dot Fleece」によるものですが、その仕組を知るとますますこのベースレイヤーがもつ「科学の力」のスゴさが分かります。

このモデルに採用されている素材「 Future Dot Fleece」は肌面に撥水加工を施したドライ層と、汗を素早く拡散し乾燥させる吸水層の表生地を組み合わせて1枚としたダブルフェイス(二重)構造。かいた汗は肌面のドライ層にとどまることなく、ドット上の接結面を通じて瞬時に生地表面へと移行し、蒸発を促進します。下の写真は、肌面の撥水加工を施したドライ層に水滴を落としたものでうす。確かにしっかりと弾いておる。

この撥水と吸汗を同時にこなす仕組みを今度は動画で見てみましょう。前半は2年ほど着ている一般的な化繊ベースレイヤーの肌面に水滴を落とした様子、後半はエクスペディションドライドットで同じように水滴を落とした様子です。

見事に撥水加工を施したドライ層部分は水滴がポロポロと弾き落とす一方で、吸水層の表生地へと通じる筋状の接結面に触れた水滴は、瞬時に吸い込まれて表生地へと移行していくのが分かるかと思います。

ちなみに表生地は微妙にふわふわと立体感のあるニットで、当然ながら表生地に水滴を落とすと瞬時に吸水し、拡散されます。表裏での水分の拡がり方の違いは下写真で比べてみれば一目瞭然です。

この構造によって、

  1. かいた汗は肌面のドライ層にとどまることなく表生地へと移行(表地に移行した水分は素早く拡散・蒸発)。
  2. 筋状(ドット状)の接結面はわずかに凹んでいるため、肌面に触れているのはドライ層のみ。
  3. そのドライ層は水分が弾かれているため、理論上は肌面が常にサラサラ。

ということになるわけです。

ここで「理論上は」と書いたのは、実際のところ大量の汗でウェアが拡散しきれない程の水分で満たされると、ドライ層は「完全に」乾いているということにはならず、多少のピタピタ感が生じてしまうのが現実だからです。それは現在のところどんなにドライを謳っている製品でも避けられていない事象のため、その点については特に不満ということはなく、逆に他のベースレイヤー等と比べてもそうした状態になる時間が明らかに少ないと感じる分、十分に優秀だと言わざるを得ません。

身体のラインに沿った立体裁断と適度なストレッチによるキツすぎず・ゆるすぎずの高いフィット感

一般的な0.5レイヤーと呼ばれるウェアはコンプレッションの効いたピッタリタイプが多いなか、このモデルの着心地は通常のベースレイヤーと同じか、あるいはややタイトめといったキツすぎず・ゆるすぎずのアスレチックフィットであることもこのシャツを気に入っている点のひとつです。

バックパックのショルダーベルトとの縫い目を避けつつ肩の動きを妨げないラグランスリーブ。さらに上半身を大きく動かしても突っ張り感や裾上がりなどが少ない立体裁断になっており、適度に効いたストレッチと合わせて着心地のよさ、動きやすさも抜群(下写真)。きっと開発段階で(プロモーション映像にも写っていた)多くのクライマー達の意見を取り入れていることでしょう。

肌触りこそ、いかにも化学繊維といったカサカサした感じは否めませんが、微妙に立体感のあるふわっとした生地感は悪くない。そしてほんのりとした保温性も感じられます。春秋の登山や冬のベースレイヤーとしてはかなり使いやすそうです。逆にいくら肌離れよく速乾だとしても、このちょっとした保温性によって真夏の汗がとめどなく出る場面では、さすがにもっと薄手の冷却効果のあるモデルなどの方がいいかもしれない、そんな印象も感じました。

やはりこの1着が活きるベストシーズンは春・秋・冬のアクティブな活動、そして夏の高所。6インチのスマートフォンならばちょうど入れて温めておけるチェストポケットや、肌寒いときやレイヤリングでも便利な袖口のサムホールは、そうしたシーンで活用することが十分に想定されています。

まとめ:プロやアスリートだけじゃなく、激しいアクティビティを志向するすべての人に届く最先端の快適さ

THE NORTH FACE(ノースフェイス) 【SUMMITシリーズ】Expedition Dry Dot Crew(エクスペディションドライドットクルー) NT12123

これまで素材も厚みも構造も違うベースレイヤーを何十着と試してきましたが、それでもまだこうして新しい機能と着用感をもった新作が現れてくることに、素直に興奮しています。素晴らしい速乾性とドライ感に加えて、それらを1着としてまとめたことによる異次元の軽さ、自然な着心地と動きやすさはこれからもヘビロテ間違いなしです。特に気温と体温がアンバランスになりがちな春のアウトドアではこれまでになくフィットしました。もちろん、フィット感や着心地の好みには個人差もありますので一概に手放しで絶賛するわけではありませんが、真夏以外でのハイテンポなアクティビティや、温度変化の激しい環境であれば、プロやアスリートでなくてもその高い実用性を存分に享受することができるはずです。その意味では自分にとっても(高価な)値段に十分見合った買い物でした。

今回紹介したクルーネックタイプの他には、より体温調節がしやすいジップアップモデルやこの生地を使ったパンツなどがバリエーションとして出ています。個人的に1枚として羽織るならばジップタイプも捨てがたい。そして将来的にはここから厚手・薄手等の派生モデルが出てきてくれることも楽しみだし、他ブランドからこれに対抗した新作が登場してくるか?ということもまた楽しみでなりません。自分にとってはそんなこれからのベースレイヤー全体の新展開まで期待してしまうような、久々に現れた革新的1着でした。