THE NORTH FACE ハイブリッドライエルジャケット レビュー:進化した GORE-TEX PRO の魅力が凝縮された万能ハードシェル

軽量快適さのために耐久性を犠牲にする時代は終わった!?

軽量コンパクト・高透湿・ストレッチ……。

レインウェアやハードシェルなどのアウトドアで着るアウター用素材(生地)のここ最近の流行は、より機動性を重視した機能の進化が中心であったことは間違いありません。

それによって僕たちはこれまでの、防風・防水・耐久性は高いけどゴワゴワして重たい雨具から、より軽快なシェルで快適な行動が可能となりました。ただ一方、それと引き換えに、本来厳しい自然でのアクティビティにおいてあればあっただけ安心なプロテクション性能を少しだけ諦めなければならなかったことも確かです。

そんななか、何よりも高いプロテクションと耐久性を誇り、アウトドア・シェル用の防水透湿生地として世界中から絶対的な信頼をおかれてきたGORE-TEXが、そうした今どきのニーズを取り込んで、ついに今また、そのメインストリームに返り咲こうとしています。

ついに登場した新しい GORE-TEX PRO プロダクト採用ジャケット

今シーズン新たに登場したTHE NORTH FACE ハイブリッドライエルジャケットは、前モデルから7年ぶりとなるリニューアルによってネクストレベルへと進化を遂げた新しい「GORE-TEX PRO ファブリクス」を採用し、雪山だけでなく無雪期のトレッキングなどをも含めたオールシーズンのアウトドアに対応する汎用性の高いハードシェルであり、レインジャケット。当サイトによる日本ゴアさんへのインタビューでもお伝えしたとおり、ハードシェルのこれからのベンチマークとなりうる大注目のプロダクトです。

そこで今回はこのサイトでは早速このジャケットを入手して、12月のバックカントリースキーで試してみましたので、過去の素材との比較や、同タイプの競合ジャケットなどと比較してどうかなどについて、率直にインプレッションをお伝えしていきたいと思います。

THE NORTH FACE ハイブリッドライエルジャケットの主な特徴

おすすめポイント

  • 耐候性(防風・防水性)と耐久性の高さ(にもかかわらず軽い)
  • 優れたDWR(耐久撥水)加工
  • 肩周りの伸縮性による動きやすさ
  • 透湿性の高い生地とベンチレーションによるムレにくさ
  • 使いやすいフードや裾のワンハンドアジャスター対応の調節プルコード
  • 取り外し可能なスノースカート

気になるポイント

  • 積雪期・無雪期と汎用性は高いが、逆に中途半端になりがちな各パーツの仕様や作り
  • 気になるシャカシャカ音

主なスペックと評価

スペック
アイテム名THE NORTH FACE ハイブリッドライエルジャケット
実測重量549g(Mサイズ)
素材<フード・裄ヨーク>3層 40D GORE-TEX PRO(GORE-TEX PRO stretch technology ナイロン100%)
<前身頃・後身頃・袖下>3層 30D GORE-TEX PRO(GORE-TEX PRO most breathable technology ナイロン100%)
ポケットハンドジッパーポケット×2、チェストジッパーポケット×1、インナーメッシュポケット×1
フード後・前部で調整可能なヘルメット対応フード
その他取り外し式スノースカート
評価
快適性・動きやすさ★★★★☆
耐候性★★★★★
透湿性・ムレにくさ★★★★☆
重量★★★★☆
耐久性★★★★☆
機能性★★★☆☆

12月のバックカントリーで着てみた詳細レビュー

12月、記録的な大雪後で少し早く雪の積もった信州でのバックカントリーで早速着てみることに。天候は晴れ。そこまで寒くなかったためミッドレイヤーは着ないで、メッシュアンダーウェア + ベースレイヤー + ハイブリッドライエルジャケット、といったレイヤリングでテストにのぞみました。

はじめに:GORE-TEX PRO の特徴と魅力を最大限に引き出すために考えられた素材のチョイス

まず詳細なレビューの前に、このモデルで採用されている生地素材についての前提情報から見ていきましょう。

以前のインタビュー記事でも述べましたが、今回新しくなったGORE-TEX PRO プロダクトは、長期間の過酷な環境にも耐えられる「最も高い耐久性と堅牢性」という基本的なコンセプトの上に、「耐久性」「透湿性」「ストレッチ性」にフォーカスした3種類のGORE-TEX PROテクノロジーを用いた素材を組み合わせた製品づくりができるようになりました。デザイナーは自分たちの作りたい製品に合わせて適切な特徴を備えた素材をピックアップすることで、より複雑に多様化したニーズに応えるプロダクト開発ができるようになったといえます。

この進化を受けて生まれたハイブリッドライエルジャケットは、ストレッチ機能をもった「GORE-TEX PRO stretch technology」と高い透湿性を実現した「GORE-TEX PRO most breathable technology」という2つのGORE-TEX PRO ファブリクスをハイブリッドしたジャケット。これまで不可能であった「強くてしなやか、さらに軽量、ムレにくい」という、新たなGORE-TEX PRO プロダクトの可能性を秘めた製品であるといえ、個人的には「待ってました!」としかいいようのないモデルです。期待しないわけにはいきません。

重量・快適性・動きやすさ ★★★★☆

まず、これまでのGORE-TEX PRO プロダクトでは不可能であった30Dという薄手の表地が身頃と袖下に採用されているため全体の重量は抑えめ、Mサイズの実測で549gと、高いプロテクションに加えスノースカートまで備えた冬向けハードシェルにしてはなかなかの軽量に仕上がっています。ちなみにスノースカートを取り外せば500gを切るまで軽量化できます。

身頃は極端に細身ということはないものの品のあるスリムさを備えています。またいわゆるヨーロッパ系のシルエットとは違い、肩周りのアームホールにはややゆとりがあるので、中間着の上から着ても窮屈感は感じません。

ゆったりめのスキー・スノボジャケットを探している人にとっては好みではないかもしれませんが、レイヤードの余地が十分ありつつ適度にトリムされたアスリートフィットはダブついた感じもなく、176cm・64kgの自分にとってMサイズで非常に快適に着られました。ただ唯一、生地が擦れた際の大きめのノイズは相変わらずで、そこだけは少し気になりました。

袖の長さは極端に短いということもなく、ヨーロッパ体型の裁断が合う腕の長めな自分にとっても十分な長さでした。もう一つ気に入ったのは、脇下のベンチレーションジッパーの作りです。しなやかな止水ジッパーや、干渉を避ける絶妙な位置取り、そしてアームホールの広さなど理由はいくつかありますが、一見いつも通りのベンチレーションにもかかわらずこのモデルに関してはよくある脇の下のゴツゴツ感をまったく感じませんでした。大きく腕を振り上げた際の突っ張り感も少なく、動きが妨げられるという感覚は決してありません。

次に今回新たに開発された、待望のストレッチ機能について。これよって動きやすさは飛躍的に改善されています。

首周り(フード)と肩から袖にかけての裄ヨーク部分には『GORE-TEX PRO stretch technology』による40Dのストレッチ生地を配置。しかもこれは重くて経年劣化の避けられないポリウレタンのような繊維との混紡による伸縮ではなく、ナイロン100%によるストレッチだから、耐久性と軽さを犠牲にすることなく機動性を高めています。もちろんポリウレタンのようなビヨンビヨンではないものの、昨年、同じノースフェイスからリリースされて話題となった「FUTURELIGHT」のストレッチと同じくらいのしっかりとした伸びとキックバックが感じられます。

これまでの剛性感の強い、鎧のような着心地が一変して柔らかい着心地を実現し、計算された立体裁断も相まってストレスのない自然な動きが可能になりました。

耐候性 ★★★★★

積雪期も見据えたハードシェルとしては、防水・防風(=ある意味での保温性)といった耐候性能は何よりも気にかけるべき大事なポイントといえます。この点については、ご想像の通り何の心配も要りません。素材メーカーでありながら個々の製品に対して独自の厳しい基準によるストームテストを実施し、クリアしなければ生産できないという厳しい品質基準を設けている、長らく世界最高峰のプロテクション性能と実績を証明してきたGORE-TEXです。抜かりはありません。

当然ながら防水性、防風性はかなりいい。降り注ぐ雨(今回は自宅シャワーでもテスト)や雪など物ともせずしっかりと縫い目もシーム処理が施され、完全防水です。さらに風で体温が奪われていく感覚もほぼ皆無でした。ここ最近人気の Polartec Neoshell や THE NORTH FACE FUTURELIGHT などの通気性のある防水メンブレンのジャケットでは、冷たい風が当たると微妙に身体に浸透してくるのを感じないこともないので、ミッドレイヤーに多少防風性のあるアクティブインサレーションなど準備が経験上必要となります。ですがこのジャケットではそのようなことはなく、ジャケットの上から冷たい風を当てても、外気をしっかりシャットアウトしてくれるので、行動中はベースレイヤーのみでも良いくらい。

またDWR(耐久撥水)加工の効きも非常によく、湿雪が降り注いでも、防水テストでシャワーを当て続けても、感心するほど長く滑り台のように水滴が落ち続けていました。まだ数回の洗濯しかしていませんが、今のところ撥水力のヘタリも見えていません。

透湿性・ムレにくさ ★★★★☆

スキーリフト頂上から歩きはじめて、当然まもなくして汗が出てきます。ただ、かつてのGORE-TEX PRO プロダクトであれば汗をかき続けるとしばらくして裏地に水滴がうっすら付着していることもあったのですが、今回は多少衣服内にムレを感じるものの、裏地はこれまでと比較してもサラっとしている印象。30Dの薄手生地による「GORE-TEX PRO most breathable technology」効果はゼロではないようです。

さらにフロントジッパー・脇下ベンチレーションを開けることで涼しい空気が身体を通り抜けていってくれ、効果的に熱をクールダウンしてくれました。この換気性によって、冬に着たままの状態でも汗でぐしょぐしょになったり、脱がなければならないほど不快になることはありません。

とはいえ、このジャケットの下(中間着やベースレイヤー)が汗を溜める、通気性の悪いものであった場合は、いくらこのアウターの透湿性が高くても、ムレは解消できません。季節やアクティビティに合わせて最適なレイヤリングをしておくことは、すべてのアウトドアの基本ですので、過信は禁物です。

耐久性 ★★★★☆

限りなく薄く軽く作られたとしても、GORE-TEX PRO プロダクトの厳格な基準を通過したこのハードシェルは他の軽快なモデルに比べても明らかに丈夫な作りをしています。ハリがあって、引き裂きや摩耗に強いナイロンを使用し、身頃の30D表地はさらに引き裂きに強いリップストップ生地を使い、強度には細心の配慮がなされています。

なお、30Dという数字だけ見ると薄すぎて耐久性には不安があると思う人もいるかもしれません。ただ実際には、表地30Dといっても厚みがしっかりとしたリップストップナイロンです。例えば手元にあった同じ30Dの厚みでGORE-TEX ACTIVE(ナイロン)を使用したNORRONA lofoten Gore-Tex Active Jacketに比べれば明らかにこちらの方が分厚くしっかりしているし、さらには前モデルのGORE-TEX PRO 40Dの生地を使用した現行Arc’teryx Beta LT Jacketと比べてみると、実際の厚みはほとんど変わらないか、人によってはBeta LT Jacketの方が薄いと感じるかもしれないというほどです。

表地の種類や織り方、裏地によって生地全体の性質は異なりますので、30Dだからすべて薄く(弱く)感じるということではないことが分かるとともに、このジャケットは30Dの細い糸を使って軽量に作られているにもかかわらず、しっかりと冬のハードな使用に耐えうる丈夫さを備えていることが分かります。

機能性 ★★★☆☆

デザイナーによるとこのジャケットは「トレッキングから雪山登山まで使えるオールシーズン対応の万能モデル」というコンセプトで作られています。このため各パーツやポケットなどの収納については、無雪期・積雪期を問わずどちらでも快適に使えるよう、バランスをとった作りになっています。

まずフロントのジッパーは防水かつ雪でも凍結しにくいビスロンジッパーで、滑りもスムーズ。

ヘルメットの上から被れる大きめのフードはヘルメットの上から被って極端に小さすぎることもなく、後頭部と頬の左右のコードロックによって調節が可能です。また首周りや襟元はやや広く、ピッタリと口元にフィットはしませんが、息苦しくはありません。

フード調節については特に後ろのワンハンドアジャスターは操作性もよく、その他、袖・裾のコードロックも含めた細部のパーツに関してはどれも文句なしに使いやすく、ハイクオリティ。

袖口はスキーグローブをしながらでもすんなり袖を通せるほどの広さでつくられており、大きめのベルクロ留めが手袋をしていても調節しやすいように配慮されています。

甲部分が微妙に長めで雪や雨、冷気の侵入を防ぐ緻密な作り。

裾の内側には大雪の中でのラッセルや、パウダーの滑降などにありがたいスノースカートが配置されています。取り外し可能なので、不要なときには外しておけます。

左胸のポケットは実用性と意匠性を両立した片側フラップ仕様。小さな部分で違いを見せてくるセンスの良さはお気に入りポイント。ただちょうどスマホが入るくらいの大きさは、冬にはちょっと物足りない感じが否めません。

左右2つのハンドウォーマーポケットは止水ファスナーで防水性もしっかり。ポケットの位置(高さ)に関してはデザイナーが「あえて街向けのジャケットと同じような(脇腹あたりの)位置にポケットをレイアウトした」と言うように、ヒップベルトやハーネスには多少干渉してしまいます。ここは議論が分かれるところかもしれません。個人的にはそもそもポケットにそこまでいろいろ入れないためそんなに気にはなりませんし、街で着るのに良いという意見にも多少うなずけます。

ジャケットの裏地には、ゴーグルがちょうど入るくらいのインナーメッシュポケットが1つ。これ自体は使いにくくはないのですがウィンターアクティビティのことも考えるのであればもう少し大きめで、さらに左右に2つくらいは欲しかったというのが正直なところです。

まとめ:過酷な冬を安心して任せられる圧倒的な堅牢さと快適さと、あと一歩の機能性

ハイブリッドライエルジャケットに搭載された新たなGORE-TEX PRO ファブリクスは、まさに自分が思い描いていた「冬のアウトドア・アウター」の理想にまた一歩近づく正当進化を見せてくれました。1種類の生地ですべてを解決するのではなく、適材適所に必要な機能と性能をもった生地を貼り合わせ、ウェア全体として高いパフォーマンスを達成するという戦略がバッチリとハマり、過酷な環境から身体を守りつつ、衣服の内側で起こる不快感を外に排出するという相反する役割を見事にこなしてくれました。これからは、蒸れを軽減するために薄手のうっすら寒いアウターを選ぶ必要も、丈夫さのためにゴワゴワ分厚くて重いジャケットを選ぶ必要もなくなる日が来るのかもしれません。そんな明るい未来を予感させてくれる素晴らしい一着です。

ただそれだけに、雪山に特化せずオールシーズン対応と汎用性を広げたことで、確かに”万能”ではあるのだけどやや中途半端にも感じられるパーツの仕様については残念な気がしました。シルエットやフード、袖の作りは雪山に耐えうる仕様なので無雪期に使うとやや大げさになり、逆にポケットの小ささ、少なさ、位置については無雪期には十分だとしても、雪山では満足いく作りではないなど、突き詰めて考えたときのこの”ちぐはぐさ”がどうしても気になってしまいました。もちろん通常の使用で気になるほどではなく、ハードな利用を想定した場合での話ではありますが、どうしても手軽な買い物でないだけに、みなさん自分のように奥深いところまで気になってしまうのではないでしょうか。

作りがオールシーズンに対応していたとしても、このジャケットはやはりGORE-TEX PRO プロダクトの実力をフルに活かすことができる、冬のアウトドア・アクティビティで使ってこそ活躍することができると感じました。スキーツーリングやアイスクライミングといったより負荷の高いアクティビティで(ポケットなどの収納について以外の部分では)十分に満足し、これまでにない安心・快適な活動を約束してくれます。また人によってはフードの大きさが気になることもあるかもしれませんので、購入前にヘルメットとともに試着してみることをおすすめします。

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