目次
快適な走りをサポートする5本指ソックスを完全比較
最近のランニングソックスは色使いも多様でファッショナブルに、そしてより高いパフォーマンスを実現できるような高機能化が進んでいます。ついつい見た目で選びがちですが、山中を縦横無尽に駆け巡るトレランでは足元にかかる負担は相当なもの。快適なトレラン・ライフにはソックス選びも妥協できないでしょう。
そうした多様なランニングソックスのなかでも、ムレにくさと踏ん張りやすさから、愛用するランナーが最近ますます増えているのが、五本指のランニングソックスです。普段は履かないけれども、特に濡れと下りでの衝撃が激しいトレイルランニングでは5本指を履くという友人を多く知っています。もちろん同じ地形を相手にする意味ではハイキングやファストパッキングなどでも活躍してくれるでしょう。
そこで今回は1足平均2,000円程度の高機能モデルや、3足980円という激安モデルを含めて、気になるモデルをピックアップ、いつものように多角的な視点で比較してみました。見た目では分からない違いも、実際に履いて走ってみると、素材の違いや締めつけ方、滑り止めの有無などで快適さ、走りやすさは大きく違います。各々の特徴を紹介しますので、皆さんのベストバイ発見の役に立てればと思います。
目次
今回比較した5本指ソックスについて
今回比較した5本指ソックスは以下の6モデル。
- Tabio トレイルラン5本指ショートソックス
- R×L SOCKS TRR-35G メリノウールソックス5本指【ショート丈/滑り止め】
- ITOITEX ランニングソックス 5本指 ショート
- CW-X CW-Xパーツ 5本指ソックス(ショート)
- C3fit ペーパーファイバー5フィンガーソックス
- ワークマン アーチパワーアシスト ショート5本指靴下
今回の比較では化繊メイン、綿と化繊の混紡、メリノウール、そして特筆すべきは和紙繊維の混紡モデルなど、素材だけでもバラエティに富んだチョイスになりました。その他、構造や縫製の違いや滑り止めの有無(Tabio、R×L、ワークマンの3モデルは滑り止めアリ)、防臭性などによって違ってくる性能を、以下の7点に着目して多角的に評価しました。
- 素足感覚(快適性)・・・一般的な「心地よさ」というよりも、素足感覚(どれだけ「靴下を履いている」という感覚を忘れさせてくれるか)を重視
- 乾きやすさ(速乾性)・・・大量の発汗を素早く発散させる能力
- ムレにくさ(通気性)・・・速乾性と同じくかいた汗を素早く発散させてくれるだけでなく、どれだけ蒸れ感を忘れさせてくれるか
- ズレにくさ(ホールド感)・・・ブレーキ時や踏み込んだときにシューズの中で足が暴れにくいかどうか
- 衝撃吸収・・・特にブレーキ時に衝撃をどれだけ吸収してくれるか
- 疲れにくさ・・・土踏まずのアーチや足首など、疲労軽減やけが防止への貢献度
- 耐久性・・・激しい動きと長時間の使用でどれだけ摩耗したりへたったりしにくいか
テスト環境
2018年6月~7月。テストの均一性を保つためコースとシューズは環境を合わせました。10㎞のトレイル周回コースをアルトラ製のシューズで、1足につき3周走ってテストしました。その他、川の中を走ったり藪中を走ったりサイドステップを多用したり、意識して酷使してみたりを繰り返しました。
テスト結果&スペック比較表
総評 ~タイプ別おすすめモデル~
テストを重ねた結果、全体的に高いレベルで、オールラウンドに使えたのがTabio トレイルラン5本指ショートソックス。履き心地の良さ、速乾性・通気性の高さ、土踏まずや足首のサポート、足裏の滑り止め、つま先部分の補強などスキがありません。個人的には足底アーチの補強が秀逸。練習にレースに、夏から冬まで季節を問わず使えるので、1足はもっていたい。
1発レースならITOITEX ランニングソックス 5本指 ショートが面白い。とにかく速乾性と通気性は抜群で、濡れていても肌面はドライ感が持続し、雨天や水はけの悪いレースでは抜群の強さを感じます。また驚くほど軽く、最も素足感覚で履ける1足といえます(ビブラムファイブフィンガーズでも履けます)。ただし耐久性、特に指先の弱さがあり、シューズ内に余裕があると穴あきの要因になります。長距離のレースでは予備の1足を忘れずに。
高い速乾性をもちながら、より履き心地・耐久性のバランスの良さも求めるならC3fit ペーパーファイバー5フィンガーソックス。ITOITEXよりも耐久性と速乾性・サポート力のバランスが良いモデルで、夏場のショートレースに最適です。ただ滑り止めがないため、シューズとの相性により足底疲労がでる可能性あり。
練習でガシガシ使うならばコスパ最強のワークマン。50㎞までのレースなら十分使いきれる1足です。ただ綿がメインの混紡素材のため乾いている間は自然な履き心地ですが、濡れると不快感は倍増し、通気性と速乾性も期待できません。あくまでも練習用として考えたい。
ビギナーや練習不足の足に優しいのがCW-X CW-Xパーツ 5本指ソックス(ショート)。同ブランドはスポーツタイツで有名ですが、その機能を応用したコンプレッションによって足首と土踏まずのアーチをサポートするつくりが見事。超長距離レースでは後半用の替えソックスに使いたい感じです。
最後にスピードや過酷さに耐える性能よりも、マイルドな天候下での快適なランニングをイメージするならRxL SOCKS TRR-35G。足入れ感が良くメリノウールの優しい肌触りは日常でも履ける1足です。さらに滑り止めのソフトな素材はロングレースほど効果があるでしょう。ただ厚手生地のため速乾性は期待できず、雨天時のレース使用は避けたいところです。
前ページでは比較した5本指ソックスそれぞれの評価・スペック、そしてそれに基づいたおすすめモデルを紹介しました。ここからはその評価について、どのような基準で評価したのか、なぜそのような評価になったのかについて解説していきます。
各項目詳細レビュー
素足感覚(快適性)
トレランにおけるソックスの快適性は足裏からの情報を脳に正確に早く伝達し次の1歩を安全に振り出せるかがポイントとなります。よって、日常のソックスの気持ちよさとは若干判断基準が異なります。薄手のC3fitとITOITEXは非常に素足感覚であるため、シューズであってもトレイル情報を目と足裏から集約し走りが楽しいソックスでした。一方で厚手のソックスは安全性と安定感があるため走りにおいても限界値が高い分、レースでは逆にハンデとなるでしょう。
乾きやすさ(速乾性)
テストは暑い時期で川にドボンしたり汗で靴中がびしょ濡れになったり速乾性のテストには最適な季節でした。速乾性がなければ足裏が蒸れマメの原因となります。レースでは靴の脱ぎ履きを頻繁にすることはなく速乾性はアクシデント防止には欠かせない機能です。当然ながら薄手のソックスは基本乾きも早いです。今回のC3fitとITOITEXは薄手に加えて「和紙」素材を用いることで速乾性をより高めています。厚手であってもTABIOとCW-Xは夏以外であれば問題ないでしょう。冬場こそ速乾性は大切な機能ですので重視すべき機能です。
ムレにくさ(通気性)
足裏の熱と汗を開放する機能は速乾性と同様にアクシデントを防ぐ機能です。特にトレランは足底筋を駆使するスポーツです。足裏の温度はロードランニングよりも高くなるため、ドライ感の維持できるソックスがベストです。薄手のC3fitとITOITEXは快適で足裏の汗を感じず走りに集中できました。厚手でもTABIOは通気性のために前足部がメッシュとなっているため汗抜けは良い方です。RxLとワークマンは汗により足底部の生地にヨレができる場面もありました。
ズレにくさ(ホールド感)
一般的に滑り止めのあるタイプは靴中で足がズレにくくホールドされ、安定感と疲労軽減の効果が高まります。ただし、滑り止めゴムの形状や厚さ、配置などが自分の走りとマッチしないと、靴下と足裏が分離してアクシデントを起こしてしまうこともまれあり、その点、万能ではないということも注意したいところ。要は靴の中で足が暴れなければよいのであって、大前提はシューズのサイズと形が自分の足をマッチしていることが大切です。それを踏まえて、TABIOは柔らかいシリコンゴムが前足部とかかと部に配置され、安定感があり、ロングレースでも安心して使えそうです。RxLは弱めの滑り止めゴムを前足部に配置し靴下内での擦れを防止する機能を持たせよく考えられた滑り止めですが、ゴム素材が硬いため思った以上に滑ります。ワークマンは柔らかめのゴムを前後と足指に配置していますがゴムの厚みが気になるのでショートレース向けです。
クッション性
トレイルからの突き上げは初心者のうちにダメージを受けやすいものです。練習で使用するソックスなら大切な選択基準です。やはり厚手のソックスは安心できるアイテムとなります。RxLはメリノウール素材で足全体を包み込みフカフカなので不整地では安心感がありました。TABIOとワークマンも厚手なので岩場に着地しても痛みを軽減できるものでした。
サポート力
走りを補助する機能が際立つCW-Xは軽い締め付けのテーピングを履いてる感覚でした。特に足首の補強は履いた瞬間にわかります。トレランでは怪我防止のためにテーピングをしてる人も多いですが、ソックスで補強できるのは手間が省けてありがたいです。実際に走ってみるとテーピングほど強力ではないので過度な期待は禁物ですが、普段テーピングをしない人なら効果を感じられるでしょう。TABIOは特にアーチ部のサポートがしっかりしていて気持ちよい締め付け感でした。今回は30㎞程度の試走でしたが、確実に足底筋を補助をしているのでロングの後半では効果を実感できると思います。
耐久性
薄手ですが、C3fitは意外なほど不安のない作りです。旧モデルの際には100㎞レースを3戦しても指先の穴あきはありませんでした。ITOITEXは軽量で和紙を多く使い速乾性最高の尖ったモデルなだけに耐久性は劣りますが、特に雨のレースでは使いたいモデルです。厚手ではTABIOの耐久性が抜群です。洗濯を繰り返し使用しましたが毛玉が少なく連続使用が可能です。他のモデルは毛玉ができるので取り除かないと擦れよりマメができる恐れがあります。RxLは指先とかかとに補強が施されていますがメリノウール製なのでアーチ部などに摩耗が見られました。
まとめ
あらためて全部履いて走ってみての自分の結論をまとめます。オールマイティーで1足は欲しいTABIO。素足感覚を長く楽しむならC3fit。練習でガシガシ使うならワークマン。1発レースならITOITEX。練習不足で不安ならCW-X。ゆっくりロングランならRxL。個性的なモデルが多かった今回のインプレッション。それぞれの使用場面に応じて選択する際に役立ててみてください。
ソックスについてはこちらの記事もおすすめ
東條 一矢
レビュアー募集中
Outdoor Gearzineではアウトドアが大好きで、アウトドア道具についてレビューを書いてみたいというメンバーを常時募集しています。詳しくはこちらのREVIEWERSページから!