登山用靴下を甘く見てはいけない5つの理由と最適な靴下の選び方

長時間足裏に強い荷重をかけ続けるアウトドアにおいて、シューズ選びはアウトドア・ギアのなかで最も重要な装備のひとつです。ただ、そのシューズの機能を活かすも殺すもソックス次第といっても言いすぎではないことはあまり知られていません。どれだけ高機能なレインウェアを着ていても、中身のベースレイヤーが酷ければ濡れは防げないのと同じです。そこで今回はなぜ登山用靴下を用意する必要があるのか、そして最適な登山用靴下(ソックス)を選ぶためのポイントについてまとめてみました。

目次

1. ズレない(適度なフィット感)

2. 擦れない(快適な肌触り)

3. ムレない(乾きやすい)

4. 疲れない(衝撃が少ない)

5. 暖かい(保温性の高さ)

五本指ソックスは快適?便利?

ソックスの重ね履きは必要?

まとめ

登山向けソックスの比較テスト結果はこちらのページへ

登山に靴下をケチってはいけない5つの理由と選び方のポイント

1. ズレない(適度なフィット感)

山歩き用の靴は低山やトレラン用のモデルを除いて、基本的に堅牢なアッパーやソールでできていますので、どうしたって靴と足の間に空間はできやすい。そこへ、特に下りなんかでは大きな重力がかかるわけですから、ズレを防止するために一般の靴下にはない気遣いが必要です。一方登山用ソックスはさまざまな厚みが用意されているため、足にフィットさせるだけでなく、足と靴の間にある空間をしっかりと埋めることでズレを最小限に抑えることができます。そうすることで重荷でもズレたり逆に圧迫しすぎたりもしない、適度なフィット感で長時間安全に歩くことができます。

【ソックス選び方のポイント】

  • 自分の靴を履いた時にジャストフィットする厚みを選ぶ。ピッタリした靴に厚い靴下や、ゆったりした靴に薄い靴下では足を痛めます。重い荷を背負っていればちょっとしたズレでもすぐに水膨れができてしまうのが登山です。
  • Smartwool PhDシリーズやX-SOCKSなど、スポーツ工学的なアプローチから設計された構造や、左右の足型に合わせた別々の形状をしたモデル(R×Lソックスなど)も最近は増えてきており、フィット感が他とは確実に違いますのでおすすめ
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同じブランド・カテゴリでも複数の厚さがあるので、目的と靴のサイズにフィットするものを選ぶのが◎。

2. 擦れない(快適な肌触り)

登山中、靴の中の湿度は80~90%と言われ、ふやけた肌は擦れた時傷つきやすい状態になっています。そんななか、綿の靴下はすぐに汗を吸収してしまい、濡れた靴下が足と擦れる結果、水膨れができ易く非常に厄介です。登山用ソックスの場合、ドライに保つ素材とフィットしてズレにくい構造によって水膨れを最小限に防ぐ工夫が施されています。

【ソックス選び方のポイント】

  • コットンは汗を吸収したまま発散しないため、擦れやすく危険。登山などの発汗の多い活動には不向き。
  • 肌触り・フィット感・温度調整力を考慮すると、メリノウールと化繊の混紡がおすすめ

3. ムレない(吸汗・発散・速乾)

足にはエクリン腺と呼ばれる汗腺が集中しており、足は人体の中でも最も汗をかきやすい場所のひとつであるといわれています。ソックスに使われる素材(生地)は、そうした汗を効率的に外に排出する機能を備えているため、どれだけ歩いても靴の中を快適に保ってくれます。

【ソックス選び方のポイント】

  • ウールは綿と違って吸収した水分を外に発散させる機能が高く、登山用ソックスの素材としては最適。ただし化繊よりも高価で乾きが遅い。
  • 速乾性と価格を優先するならば化学繊維もあり。ただしウールに比べると肌触りが悪くムレやすいものが多い。
  • 薄手の方が通気性が高いからといってムレにくいとは限らない。中厚手のソックスはより多くの湿気を吸収してくれ、ドライ感を保ってくれる場合もあるので、あくまでも厚みは靴の種類と靴と合わせたフィット感を優先すべき。

4. 疲れない(衝撃を吸収する)

登山用ソックスの多くは踵をはじめとした荷重がかかる部分の厚みを増したり、裏面をパイル編み(下写真参照)にしているため、通常の靴下よりも重荷で歩きやすく疲れにくくなっています。また、フィットした状態で歩くことにより地面をしっかりとホールドすることができ、無駄な体力の消耗を抑えます。

【ソックス選び方のポイント】

  • (ジャストフィットしている前提で)靴の硬さに応じたクッションを選ぶ。堅牢なブーツには厚手でクッション性の高いモデルが必要ですが、軽快な柔らかいトレッキングシューズには薄手で通気性の高いモデルでも問題ありません。
  • 先ほど挙げたSmartwool PhDシリーズやX-SOCKSなどは、対衝撃についても科学的な裏付けに基づいて靴下の厚みを部位によって細かく調整した設計になっています。その点からも現在のところ最もおすすめなソックスのひとつです。
パイル編みはタオル地のようにループ状の繊維を残そた編み方で、肌触りやクッション性に優れる。

パイル編みはタオル地のようにループ状の繊維を残そた編み方で、肌触りやクッション性に優れる。

5. 暖かい(保温性の高さ)

冬では保温力の高い厚手のソックスはもちろん必須アイテムですが、夏だからといって保温が不要なわけではありません。稜線に出たり、雨が降ったりすればとたんに寒さという恐怖が襲ってきます。綿100%の靴下では保温性は失われ、そこから体温をどんどん奪われてしまうため、どんな場合であれ登山用靴下に綿はNG。さすがに夏に極厚の素材までは不要ですが、最低限濡れても保温性を失わないウールや化繊の素材を使いましょう。ちなみに、メリノウールには体温を一定に保とうとする温度調整機能が備わっているため、夏に履いても暑すぎるということはありませんので、中厚手程度ならば心配要りません。

【ソックス選び方のポイント】

  • 冬用のソックスとしてより保温性を優先するならウールの割合が多い(=厚手でクッション性が高い)ものを選ぶ
  • 体温を一定に保とうとする温度調整機能があるメリノウールは、夏に履いたとしても(極厚でもない限り)暑すぎることはありません

五本指ソックスは快適?便利?

一部では熱狂的なファンをもつ「五本指ソックス」は何が良いのでしょうか。主に以下のような利点があるといわれています。

  1. 足の指の間の汗もしっかり吸いとることによるムレを防ぐ。
  2. 指と指が擦れないのでマメができにくい。
  3. 指が自由に動かせることで、踏ん張る指力をインソールに伝えやすい。

これらのメリットを感じられるかどうかは個人の感覚による部分が大きいかもしれませんが、今まさに上記のようなことで悩みを抱えている人は是非試してみると良いと思います。

ちなみに編集部では「五本指ソックスを履くと不思議と無意識のうちに指の先まで使って地面を掴むように踏ん張る」現象の原因と効果をどうにかして科学的に解明したいと思っているのですが、有効な資料はまだ見つかっていません。一方で「五本指の方が保温性が高い」という説には反対です。足全体を包んでいる方が暖かい空気の層に触れる面積が広いので五本指よりも暖かいのは、手袋の例(五本指よりもミトンタイプの方が暖かい)を考えれば明らか。

五本指ソックスは選択肢が少ない、取り扱いが面倒などのデメリットはあるが、人によってはハマる可能性大。

五本指ソックスは選択肢が少ない、取り扱いが面倒などのデメリットはあるが、人によってはハマる可能性大。

ソックスの重ね履きは必要?

登山靴といえば革製の重登山靴が主流であった時代には、多くの登山者がソックスを二重に履いて対応していました。しかし現在の進化したブーツにおいてはソックスの重ね履きは必ずしも必要ではありません。二重ソックスにこだわりすぎて足を強く締め付けすぎた結果、血行障害を起こすなんていう話もあり、これではまさに本末転倒です。個人差もありますが、さまざまな軽くて丈夫な高機能素材が流通する現在では、あえて重ね履きをしなくても済むくらい、1枚でも高性能なソックスは存在していますので、あえて重ね履きを前提に考える必要は無いでしょう。ただし効果がないわけではないので、1枚履きでは以下のような問題がどうしても解決できない場合には検討してみるのもアリです。その際、インナーに履くソックスはFinetrack フラッドラッシュスキンメッシュ ソックスに代表されるような吸汗・速乾性の高い化繊の薄手のソックスをおすすめします。

  • これまで何を履いても足がムレやすく、水膨れができてしまう(そこまで重症だと重ね履きで解消するかどうかは未知数ですが)
  • どれだけ厚い靴下でも靴が緩い、衝撃がキツい(そもそも靴のサイズが間違っている・・・?)
  • どれだけ厚い靴下でも足先が寒い(圧迫しすぎが原因でないことは大前提ですが)

まとめ

意外と奥が深い登山用靴下の世界。個々人の足と靴、環境によって正解が出しにくいのは事実ですが、「靴と合わせてフィットするか」「ムレにくいか」「疲れにくいか」というポイントを押さえればハズレを引かないようにはできます。ちなみにぼくの目下のお気に入りは、多くの人もおすすめしているスマートウールの PhDアウトドアヘビー・クルーです。それ以外の最強ソックスを求めて、近いうちに人気の登山用ソックス履き比べをレポートしていきたいと思います!

補足:靴下に使われている主な繊維の機能比較

現在ではほとんどがメリノウールと化繊との混紡になっていると思いますが、これはそれぞれの素材がもつ長所と短所をバランス良く取り入れながらそれぞれの目的に最適化しているためです。そこでそれぞれの繊維がもつ長所を中心に、主な繊維の特徴を以下にまとめました。

素材 メリノウール 化学繊維 コットン
用途・特徴 これまでのウールにあったチクチクした肌触りや縮みやすさを克服し、保温性と肌触り、防臭性の高さでソックス素材の主流となりつつある新しいウール素材。 最近ではウール100%のソックスはほとんどなく、登山に求められる機能を付加するためにさまざまな化学繊維素材が部分的に用いられています。<br/ >【化学繊維の例】
ナイロン、ポリウレタン(スパンデックス)、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン
実際のところ綿100%は登山用のソックスとしてはまったく推奨されませんが、その肌触りなどの特徴から一部分で使用されている場合があります。
強み
  • 気温の高低にかかわらず安定した保温性
  • 吸汗発散・調湿性能
  • クッション性
  • しなやかな肌触り
  • 抗菌防臭性
  • 濡れても保温力が落ちない
  • 伸縮性(ナイロン・ポリエステル・ポリウレタン等)
  • 耐久性(ナイロン・ポリエステル・アクリル等)
  • 速乾性(ナイロン・ポリエステル・ポリプロピレン等)
  • 保温性(ポリプロピレン・アクリル等)
  • カビ・虫耐性(ナイロン・ポリエステル・アクリル等)
  • 低価格
  • (激しい発汗時を除き)快適な肌触り
  • 低価格
弱み
  • 化繊に比較したときの乾きにくさ
  • やや高価
  • 肌触りなどの快適さ
  • 濡れたときの保温力のなさ
  • 毛玉の出来やすさ
  • 静電気の出やすさ
  • 水分を吸収してしまい、乾きが遅い(水膨れの温床に)

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