Outdoor Gearzine "アウトドアギアジン"

【忖度なしの自腹比較レビュー】女性向けバックパック編。オスプレーが好き過ぎる百名山ハンターの登山女子に、新たなシンデレラ・バックパックは現れるのか?

私はバッグパックブランドの「Osprey(オスプレー)」が大好きです。歴代の相棒はVIPER(ヴァイパー)13 → EXOS(エクソス)38 → Kyte(カイト)36。コンプレッションバッグもアタックザックもオスプレー。気が付いたらオスプレー信者になっていました。ではオスプレーの何が好きなのか…?

【オスプレーが好きなポイント】

アタックザックにいたっては、パッカブルなのに上部収納とサイドポケットがついている充実ぶり。今現在愛用している「Kyte(カイト)36」に至っては、今のところ欠点がほぼ見つからない状態です。

【Kyte 36の個人的好きポイント】

背面パネル裏側のマジックテープを剥がすことで5段階の調整ができます

と、向かうところ敵なしの無双状態です。

メイン収納へ直接アクセスできるのでパッキングしやすく、荷物も整理しやすくかつ中の荷物も取りやすい

そんなオスプレー大好きっ子が今回、Outdoor Gearzine から「バックパックの比較レビューしてみない?」という無茶振りオファーが。

果たして無双カイトに勝てる猛者(バッグパック)がいるのか、他アウトドアブランドの代表的猛者を背負って確かめてみました。

そんな流れなので、今回果たして公平中立な比較レビューなのか正直自分にも分かりません。ただ、私とて別にオスプレーのアンバサダーでもなんでもありません。実際のところ、ぶっちゃけこれまでオスプレー以外のバックパックをまともに背負ったことがほとんどないので、もし今回カイトよりも自分にフィットするバックパックが見つかったら、いともかんたんに浮気してしまうかもしれません。果たしてこのレビューによって、益々オスプレー好きになってしまうのか、それとも別の相棒と出会ってしまうのか。みなさんも楽しみながら読んでみてください。

比較候補を選ぶ

まず大前提としては女性用に作られたバッグパックに限定しました。一般的にはユニセックス仕様になっているバッグパックが多く、悲しいかな女性用のバッグパックって少ないんですよね。多くは男性の体型に合わせて作られているので、背面長やウエストベルトの位置などが微妙に合わないことが少なからずあります。

ちなみに女性用のバッグパックの特徴は、

などなどです。

今回は、「小屋泊や荷物の多い日帰り用」と比較的オールラウンドに使える35~40リットル前後のバッグパックをピックアップしました。気になっていたファストパッキング向けのバッグパック1点は30リットル前後ですが、まぁ大目に見て。そんなこんなで以下、王者カイトに挑む選ばれしツワモノたちです。

Osprey カイト 36を超えるバックパックを探せ!対戦開始

第1ラウンド「同郷北米大陸の雄」GREGORY アンバー34 × OSPREY カイト 36

アンバー34の全体像。緑に赤はやっぱり映えますね~

ここが◎

ここが△

挑戦者グレゴリー。バッグパック界のロールス・ロイスと言われています。対するオスプレー。バッグパック界のスティーブ・ジョブズとでも呼ぶべき強烈なクラフトマンシップを持った現役の創業者によって作られたバッグパックブランドです。さてその戦いやいかに。

≪背負い心地≫甲乙つけ難し、引き分け!

背負い心地の良さ、腰へのフィット感はほぼ互角かそれ以上。流石というべき快適さです。強いて言えばやや背中は蒸れやすいと感じました。女性用の背面長は男性用に比べ短めだそうですが、私、胴長女子なのでマックスまで伸ばして使います。

背面長が変えられるのは、「かなり」重要

腰骨を包み込むようにウエストベルトを締められますし、しっかり腰で荷重を受け止められます。

腰骨を包み込む柔らかで幅広なウエストベルト

背面長を調整でき、腰骨をしっかり柔らかに支えられるグレゴリー氏、さすがロールス・ロイスと言われるだけあります。ここはジョブズなオスプレーとは互角の戦いでしょう。

≪使い心地≫グレゴリーの勝ち!

メイン収納の入口ストラップが非常に使いやすい!気持ち良いくらいスルスル開け閉めできます。

写真右の方にある「持ち手」に透明なカバーがかけてあり、指が痛くならないようにしている心遣いがニクいですね

一般的には硬めに閉める作りになっているので、全力で全開しなくてもいいのはありがたい。その他の細かい部分での使いやすいジッパーやストラップなども含め、ここはグレゴリーの勝ちです。

腰のポケットのジッパーはもちろん引っ張りやすい

≪収納性≫オスプレーの勝ち!

レインカバー収納が雨蓋上部にあるのが「なぜに???」(頻繁に使う荷物を入れる雨蓋の収納力はかなり重要)、前面のポケットが小さいのでウェアを複数入れられない、メイン収納の気室を分けられない。この3点は痛いポイント。小荷物持ちで小分け収納を愛する私としては、ポケットの大きさや収納性においてはオスプレーに軍配を上げたい。

雨蓋にレインカバーがあり、レインカバーと一緒に収納できる容量は少ない

≪結果≫(微妙に)オスプレーの勝ち!

背負い心地や細かい使い心地は互角かグレゴリーが一枚上手なのですが、やっぱり最重要な収納の利便性ではオスプレーの方が勝るところ多し。よって、オスプレーに軍配を上げます。

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第2ラウンド「UK出身おしゃれ番長」karrimor リッジ40 × OSPREY カイト 36

ここが◎

ここが△

UKの国旗を模したブランドロゴがトレードマークのカリマーは、イギリス北西部の街でサイクルバッグメーカーとして創業。英国山岳会や同国内の有名登山家に愛用されてきました。故・田部井淳子さんがエベレスト初登頂時に使っていたバッグパックは、なんとカリマー(豆知識)。ブランドの語源は「carry more=もっと運べる」とのこと。果たして今回は「carry more」なのか、結果は如何に?!

≪収納性≫カリマー辛勝!

リッジ40はとにかく収納が多い!マチ付き前面ポケット、前面ポケットの中にジッパー付きのポケット、サイドポケット(ドリンクボトル・ストック用など)2個、ジッパー付きのサイドポケット2個、腰ポケット2個、雨蓋に2個、計10個も小分け収納がありました。

前面ポケットの中にあるジッパー付きポケットは、公式には地図を入れるポケットのこと。でも、前面ポケットにウェアを入れても地図以上の荷物が入るので、これは便利

前面とサイド(ドリンク用)以外はポケットにジッパーが付いているので、物をよく落として無くす私のような人間にはとても嬉しい。

ジッパー付きサイドポケットは、マット・傘など縦長のギアを収めるのに最適。なんなら軽アイゼンも入るかも。帽子・ネックゲイター・手袋を入れてもOKです。ここにポケットがあるのは画期的でした

腰ポケットは横長で大きくサコッシュが要らないほどです。サコッシュは持っていると便利なのですが、長時間肩から下げているとけっこう肩がコリます。できるなら持ちたくない。というわけでここはカリマーの勝利ですね。

雨蓋の裏側へも直接アクセスできます

≪背負い心地≫わずかにオスプレー!

容量は40Lとされていますが雨蓋も可動するので、プラス5~10L位入りそうです。しかも重量は1640gと今回ピックアップしたバッグパックの中では一番重いはずなのに、実際のところそれほどには重く感じません。これはウエストベルトとショルダーベルトの幅が広く肉厚なのと、背面には荷重を分散させる「3Dバックパネル」が入っているからでしょうか。

ウエストベスト・ショルダーベルトが肉厚です

ぴったり背中にくっついてくれて一体感があり、ふんわりと心地よい背負い心地です。しかしその分蒸れます。激しく蒸れるわけではないですが、背中とくっついているところが暑いですかね。

腰と背中の柔らかパッドが心地よいのですが、蒸れるんですよね~。う~む

オスプレーは通気性を保ちつつ背中にピッタリと密着してくれる背面メッシュ仕様なので、二律背反を成立させてくれています。ここは好みの問題でしょうか。というわけで、結果は、うーんわずかにオスプレー。

≪背面長≫オスプレーの勝ち!

収納が多いし、重たくないしで、カリマー優勢か?と思いきや、残念ながらカリマー氏、背面長を変えられない。背面長42cm。オスプレーでは背面長をマックスの51cmにして使っているので、腰の位置が微妙に合いません。緩んだショルダーストラップを引っ張るとウエストベルトが上にずれてしまい、ウエストのくびれに乗っかってしまいます。くびれに荷重をかけるとくいこんで痛いし、腰で支えている感が無い。無理に腰骨に合わそうとすると今度はショルダーストラップが緩む。

背面長の調整ができないバッグパックが欲しい場合、自分の背面長を知っておくか、お店で背負ってみましょう。背面長が合わないものを無理やり背負うと、肩で荷重を負担することになったり(これが肩こり・首こりにつながって辛い)、バッグパックに体が持っていかれたりします。背面長が合うバッグパックを選ぶことはかなり大事です。話がそれましたが、ここはオスプレーに1票。

ビビッドなピンク色がかわいいですし、珍しい色で好きなんですけどね~

≪結果≫好みや体型次第、自分的には引き分け!

収納面では断然カリマーが強い。背負い心地は好み次第で互角。オスプレーは背面長が変えられる。よって、結果はドローです。

第3ラウンド「アウトドア大国ドイツのバックパックといえば」deuter フューチュラ Pro 34 SL × OSPREY カイト 36

ここが◎

ここが△

「d」のマークでお馴染みのドイツを代表する老舗ブランド、ドイター。日本を旅する海外の女性が70L位の大きいバッグパックを背負っている姿を度々目にしたことがあります。またアウトドアショップではドイターを勧められることも多く、女性向けのバッグパックブランドいうイメージが強いブランドです。余談ですが、その昔、テントのレンタル業も行っていたので、あの有名なビール祭「オクトーバーフェスト」の会場で初めてドイターのテントが張られたと言われています。さて、今春FUTURAシリーズを全てリニューアルしたばかりのドイター、バッグパック界のスティーブ・ジョブズ、オスプレーとFight!

≪収納≫意外にも大健闘、引き分け!

ドイターもオスプレーに負けじと収納が多いです。前面ポケット、サイドポケット(ドリンクボトル・ストック用など)2個、ジッパー付きのサイドポケット2個、腰ポケット2個、雨蓋に2個、計8個小分け収納があります。いい勝負ですね~。ジッパー付きのサイドポケットがあるのはカリマーと同じですが、ここに収納があるのはやっぱりありがたい。縦長の荷物を収納できますし、サイドポケットの余剰スペースを有効活用しています。

折り畳み傘2本分位は入ります

ただ、残念なのが腰ポケットの容量の少なさ。ウエストベルトのパッドが肉厚な分、物があまり入りません。サコッシュ無しで登りたい私としては、ここの容量は大きくあって欲しい。オスプレーはそこをクリアしています。ここの結果はドローです。

手前がドイター、奥がオスプレー。ウエストベルトのパッドの厚さが違います

≪背面システム≫いろいろ考えるとやっぱり引き分け!

「背中とバックパックの間に空間を作ることで通気性を高め、背中が蒸れない快適な背面通気システム」を最初に始めたのは、実はドイター。元祖とだけあって、背中の快適さは申し分無しです。一方オスプレーも、背中とバックパックの間に空気の流れを作り、熱がこもらない「エアスケープバックパネル」を備えているので、こちらも涼しい。どちらかというと背面に空間が大きいドイターの方がさらに涼しいような気がします。

ただ、ドイターは背面通気システムに使用している頑強なフレームがメイン収納をえぐってしまっているので、パッキングがしづらいかもしれません。

ドイターの背面

左ドイター、右オスプレー。背面の仕様が全然違います

中の背面に装備するハイドレーションの収納には特に手こずる可能性アリです。例えば、プラティパスに水を2L満タン入れた場合は押し込むのが大変かも。色々加味すると結果はやはりドローですね。

ドイターの内側の背面。手で広げている部分がハイドレーション収納部です。フレームがかなり頑強

≪外部アタッチメント≫ニクイパーツがたくさん散りばめられていてドイターの勝ち!

アタッチメント類を見ると、ドイターの細かい気遣いが随所にあります。まず、メイン収納のストラップが開閉しやすい。これはグレゴリーでもそうでしたが、バッグパックの中の物を早く出したい時にとてもありがたいポイント。雨の時などにシャッと開けられるのは重要です。

ここを引っ張れば、シャッと開きます

次に、伸び縮みするゴムで素早くストックを固定することができる。今回比較する6つのバッグパックの中でドイターがピカイチの取り付けやすさでした。岩場を登る時などストックを収納するのに意外と手を焼くので、とても便利です。

上で止めて…

このループに通すだけ

珍しかったのが、グラスループ。いわゆる「眼鏡かけ」です。私の場合、眼鏡着用で登山する時があり、サングラスが必要なそうな場合はループに既に引っ掛けておけばいいので、重宝する機能でした。「あれ、眼鏡(サングラス)どこどこ?」とあわあわしません。ここはドイターが勝利です。

眼鏡人間にとっては重宝するグラスループ

≪背負い心地≫快適だけどやっぱり背面長問題が。オスプレーの勝ち!

さて肝心な背負い心地。ドイターさん、背面長が変えられないのはマイナスポイント。背面長を計ると42㎝でした。私のサイズは51㎝…。ショルダーストラップを緩めて無理やり腰骨で固定して背負いました。急登や下り坂では腰でがっしり荷重を支えている感があり行動しやすく、「さすが」と思いました。が、平坦な道を歩いている時はひたすらバッグパックの重さを肩で感じ、疲れてしまいました。

ウエストベルトのサポート力は抜群なはずなのに、性能を生かしきれず残念。背面長がシンデレラフィットする方には大いにそのパフォーマンスを発揮することと思います。自身の胴が長くて悔しい…。ここは背面長ピッタリのオスプレーに軍配を上げます。

おまけ。緊急時用のマニュアルが雨蓋裏にプリントされています。万が一の時に役立ちますね

≪結果≫総合評価では、、引き分け!(体型と好みによって評価が分かれる可能性大)

収納面、背面システムではドロー。細かなアタッチメント類ではドイター。背負い心地はオスプレー。よって、またまたドローです。

第4ラウンド「フランスからボンジュール!日本の細やかな気遣いも忘れない」MILLET サース フェー 30+5 LD × OSPREY カイト 36

ここが◎

ここが△

ミレーの代表的ロングセラーバックパック「サース フェー」。「ファーストクラスの背負い心地を提供する」として、その名を広く知られています。知人から「サースフェーは良い」とリコメンドされていたのと、登山中に背負っている人をよく見かけたので、一度は使ってみたいと思っていました。バッグパック自体がスイスの好きな街の名称である時点で、既にポイントが高いですけどね。さぁ、オスプレーに勝つバッグパックとなるか?!

≪収納性≫前面にポケットさえあれば……引き分け!

さて収納対決です。サースフェーには、サイドポケット(ドリンクボトル・ストック用など)2個、ジッパー付きのサイドポケット1個、腰ポケット2個、雨蓋に3個、ショルダーベルトに1個、計9個小分け収納があります。しかも左腰ポケットの収納は折り畳み式で、倍の大きさに広げることができます。ペットボトルも山と高原地図も入ってしまう大きさで、この変化球にはびっくり。これはかなり重宝するポケットです。

ペットボトルもゼリー飲料も入りました

ショルダーベルトのポケットも同じく折り畳み式で、広げればスマートフォンが入る大きさに。一般的に胸のポーチは別付けしなければいけないバッグパックが多いので、既に装備されているのがありがたい。

マジックテープを広げると、このとおり

雨蓋はレインカバーが収納されているポケットも活用すれば2個使えます。上段のポケットは小さめですが、小分けできると思えば問題なし。各ジッパーも引っ張りやすいジッパーになっています。

下段の黄色がレインカバー。中は広め

ただ!残念なのが、前面にポケットがない!アウターや行動着諸々をサッとしまえない!ここにポケットが無いのは致命傷とは言わないまでも、かなり痛いポイント。メイン収納を開けずにしまえるとしたら、雨蓋にあるレインカバーが収納されているポケットですが、ここにしまうのもしっくりこない。前面にポケットがあれば完璧なのになぁ。そもそもアルパインスタイルのバックパックだから、わがままは言っちゃだめですかね…。でも、個性的で実用的な収納があるので、ここはドロー。

ジッパー類はすべて引っ張りやすい仕様

≪アタッチメント≫ハンドレストループバンザイ!こちらも背面長調整さえできれば……ドロー!

何より良かったのが、ハンドレストループ!お初のハンドレストループは、心身共の支えになってかなり良かったです。今まで疲れた時にはショルダーストラップに手をひっかけて歩いていました。背中や肩に圧がかかるので、結局はさらに疲れるわけなんですが。しかし、ハンドレストループに手をかけると腕も疲れないし、無駄な圧もかからない。むしろ荷物が少し軽くなり、疲労も少しは軽減され、心も安定します(しんどい時はイライラするものです)。背面長が変えられず、また私の胴長背面長には合わないわけですが、このループがあるので、良しとします。というわけで、差し引き0でまたドロー。

これがハンドレストループ。どのバッグパックにもつけてほしいくらい

≪容量≫ぎっしりから、あともうひと伸ばしできるっていいよね、サースフェーの勝ち!

しっかりとパッキングしてきたのに、荷物が当初のように入らない。山小屋で買ったお土産が図らずも増えてしまったので、無理やり荷室に詰める。これは「泊まりあるある」で、よく自身も後悔します。そんな時活躍するのがまさに「+5」分の雨蓋の伸びしろです。5L分の余裕があると安心感もあります。備えあれば患いなし。オスプレーも雨蓋がストラップで伸ばせるような設計だったら、さらに便利なのになぁ。というわけでここはサースフェーに1票。

背面から見た雨蓋。ストラップが伸びます

正面から見たメイン収納の開閉部分。荷室が伸びます

≪使い心地≫初めての人には分かりにくいパーツが多くてややとっつきにくいか、オスプレーの勝ち!

オスプレーはシンプルな作りで、説明書無しでも一見みるだけでだいたいの機能がわかります。しかしサースフェーは「何に・どう使えば?」というストラップ・アタッチメント類が割と多めです。前面に6個ついているループや内部にあるループはどう使えばいいのか考えてしまったり、腰ポケットの裏にあるマジックテープで実は余ったヒップベルトを収納できたり、など。「そんなのわかって当然」という声も聞こえてきそうですが、ビギナーにわかりやすい作りであって欲しいのです。そんなわけで、ビギナーに優しいオスプレーに1票。

≪背負い心地≫ファーストクラスもいいけど、ジョブズ的工夫もなかなかよ。ってなわけでドロー!

さて、さすがのファーストクラスの背負い心地なのか、サースフェー氏。確かに体に直接触れるパッド部分(白色の部分)の肌あたりはとても優しい。オスプレーと比べると、サースフェーは腰と背中にパッドが付いており優しさ増し増し。腰部分をバックパックにしっかりと引き寄せられるストラップも付いており、体にぴったりととフィットしています。ユーミンの「やさしさに包まれたなら」みたいなフィット感と思われます。対するオスプレーも負けてはいません。肌あたりは負けるとしても背面から腰にかけては、サースフェーより涼しい。腰部分をバックパックに引き寄せるストラップも付いており、安定感はサースフェーと同じ。肌あたりを取るか、涼しさを取るかは、皆さんの好みによるかと。ここはドロー。

パッドの肌触りがとにかく良い。特に腰

≪結果≫ポテンシャルはかなりあり。引き分け!

収納面、ハンドレストループ&背面長ではドロー。可変式の雨蓋ではサースフェー。バッグパックそのものの作りではオスプレー。よって、今回もドローです。

第5ラウンド(番外編)「スイスから来たマンモス」MAMMUT デュカンスパイン 28-35  Women × OSPREY カイト 36

ここが◎

ここが△

スイスでロープメーカーとしてスタートした、1世紀以上の歴史を持つ老舗アウトドアブラウンド「マムート」。スイスを旅した時、至る所でマンモスのマークを見かけましたし、ツェルマットのガイド組合の制服もマムートだったことを覚えています。さて最終ラウンドは、趣向を変えてファストパッキング用のバッグパックの登場です。「軽い装備で早く動く」が基本のファストパッキング。果たして私の重装備に対応してくれるのでしょうか?!

≪収納性≫そもそも比べるのに無理があったか……オスプレーの勝ち!

ファストパッキング用のバッグパックは基本的にとてもシンプルです。極力余計なものは削ぎ落し、必要最低限の機能だけ備えています。このマムート氏も然り。サイドポケット2個、首裏あたりに1個、左腰に1個、付属のポーチが1個、計5個。ポケットの数を見ただけで小分け収納が足りないのは明白です。しかもそれぞれの収納がとても小さい。まぁそもそもファストパッキング用のバッグパックを、今まで見てきたバッグパックと比べるのがお門違いなのかもしれませんが…。

小分けが少ないですが、荷物をスタッフサックに分けて入れれば、快適に使えるのかなとも思ったり。これはこれで新しい発見があって面白いです。結果は、不戦勝でオスプレーですかねぇ…。

スマートフォンが入るポケットが左腰に。図で示しているのも丁寧で好感が持てます。スマートフォン入れですが、大きさに余裕がないので入れづらい

首裏の収納。かろうじてヘッドライトとスマートフォンの充電器が入るくらいの大きさ

付属のポーチ。中が防水仕様でジッパーは止水ジッパー

バッグパックのさまざまな位置に取り付けられる旨がポーチの裏側にプリントされています。こちらも容量少なめ。濡れてはいけないものを厳選して入れる感じでしょうか

≪使い心地≫ビギナーにも優しい作り、よく考えられてるねぇ。引き分け!

マムート氏、ド直球に正面からメイン収納にアクセスできます。この斬新さ、好きです。ウェア類をすぐに出し入れできるのも〇。

フルオープンのジッパーが正面に

メイン収納の開口部はこんな感じ。ロールトップ型でメイン収納の開口部はジッパーがついています。より軽量化を図ったバッグパックだとジッパーはついていないので、ジッパーがついている分安心感があります。

大きく開きます

バックルは上でも留めても横で止めてもOKな仕様。

バックルを上で留めるとこんな感じ

容量がバックルの留め方次第で変えられるのは簡単で良いですね。

ドローコードは引っ張って引掛けるだけでよく、このコードの中にウェアや寝袋などが固定できます。一見しただけでわかる、ビギナーにも優しい作りです。

ここにはウェアを固定したり

下部には寝袋を収納したり

使わないストックはここに収納。

私のストックはZ型ではないのでここではないですが一応収納してみました

テレスコーピング式はここに収納

ストックの図がプリントされていて、わかりやすい

ドローコードの使い方が分かりやすいのは良いのですが、固定力が気になります。行動中、ストックがぶらんぶらん揺れてけっこう気になりました。メイン収納部のドローコードは特に細いので、ウェアなどが落ちないか気になって何回も後ろを振り返ることしばしば。薄いものは中にしまうのが良さそうです。

オスプレーとの使い心地比べなのに、デュカンスパインの使い心地レビューになってしまいました…。ビギナーに優しい作りという点では共通しているので、ドローとしましょう。

≪背負い心地≫カイトとは比べる次元が違うけどどちらも快適!引き分け!

マムート氏は「荷重分散に優れ、快適な背負い心地かつ重さをほとんど感じない背面システム」を売りにしているバッグパックなので、そもそも比較のしようがなく、レビューみたいになってしまいますがゴメンナサイ。ウエストベルトが今までのバッグパックみたいに頑強ではない見た目なので、「あー、これはファストパッキング独特の、肩で背負う疲れるバッグパックだわ」と思っていました。マムート氏の売りを信じずに背負って歩いてみること数十分。いっつも気になる肩が痛くない!荷重分の重さを感じない!しかも背中がめっちゃ涼しいし!見た目が複雑なこの背面システムなんなの!と、体でひしと感じました。いやーテクノロジーの進化はすごいです。このようなバッグパックがこれからも生み出されていくのでしょうね。

話がそれました。背面システムやストラップにこだわったオスプレーの背負い心地はもちろん快適です。ただ、マムート氏とは次元の違う比較になるので、ここもドローにします。

砂時計のようなこの背面システムが特許技術「Active Spine Technology」なのであります

≪結果≫ファストパッキングをするとしたらこれを選ぶかも……引き分け!

収納はオスプレー、使い心地・背負い心地ではドロー。よってオスプレーに軍配を…と言いたいところですが、マムート氏の技術も素晴らしいので、結果はドローです。

まとめ:新たなシンデレラ・バックパックは現れた?

結果発表!シンデレラ・バッグパックは……「オスプレー」!

どこがシンデレラだったのか?!

ハイドレーション収納がバッグパック外側にあって(唯一無二の機能)、収納も多くて、メイン収納にもダイレクトアクセスできて、体にもフィットして、背中も涼しくて、背面長が変えられて、ニクイ心遣いが要所にあって、ビギナーにも優しい作りで、お値段はなんとなんとのアンダー2万円!あちこちに工夫がたくさんあるにも関わらず、すっばらしいコストパフォーマンスじゃないですか?皆さん。

ひとえにマイク・プフォーテンハウアー氏(オスプレーの創業者&現役デザイナー)の努力の賜物。一見地味でひっそりと目立たない佇まいのオスプレー氏ですが、数々の創意工夫が詰まったキラキラのバックパックなのです。

で、欲を言うなら…

グレゴリーの使いやすいジッパーやストラップ、カリマーの収納性、ドイターの気の利いたアタッチメントと抜群なウエストベルトのサポート力、ミレーの独特な収納とハンドレストループと伸びる雨蓋、マムートの「Active Spine Technology」を搭載した、煩悩だらけのバッグパックがあれば、それが私のシンデレラ・バッグパックです!

今回、オスプレーからの浮気はしませんでした。が、バッグパックの世界は目下ますます進化中。百名山ハンター女子は次なるシンデレラ・バッグパックを探し続けるのであります!

対戦結果&スペック比較表

総合評価 AAA AAA AAA AA A A
アイテム Osprey カイト 36 GREGORY アンバー34 karrimor リッジ40 deuter フューチュラ Pro 34 SL MILLET サース フェー 30+5 LD MAMMUT デュカンスパイン 28-35 Women
ここが◎
  • 女性用モデル(男性版はケストレル)である
  • 背面長が調整できる
  • 上と横、両方向からアクセスできるメッシュサイドポケット2つがある
  • 両腰のポケットが大きく使いやすい
  • 前面のポケットが大型
  • 小分け収納が多い(雨蓋に2個、本体を2気室にできる、前面に1個、腰に2個、サイドポケット2個)
  • ストックを脇差しできる(ストウオンザゴートレッキングポールアタッチメント)
  • バッグパックの中ではなく、外の背面にハイドレーションを収納できる
  • 腰とバックパック本体を引き寄せるためのストラップがついている
  • サイドに大きなジッパーがある
  • 機能が一見するだけでだいたい把握できる
  • 背面長が変えられる
  • メイン収納のストラップが開閉しやすい
  • 引っ張りやすいジッパー
  • 収納がとにかく多い(計10個)
  • 雨蓋の位置調整ができる
  • 雨蓋の裏側の収納に直接アクセスできる 
  • 柔らかいショルダー
  • 色が良い
  • 実際の重量より重く感じない
  • 収納が多い(計8個)
  • 背中が涼しい
  • 急登や下り坂で荷物の重さを感じにくい(バッグパックに体が持っていかれない)
  • メイン収納のストラップが開閉しやすい
  • ポールが収納しやすい
  • 眼鏡・サングラス用のグラスループがある
  • 収納が多く個性的(計9個)
  • 引っ張りやすいジッパー
  • ハンドレストループで疲れを軽減
  • 雨蓋が伸びて容量を増やすことができる
  • ダイレクトにメイン収納にアクセスできる
  • 容量が自在に変えられる
  • 図による表示がプリントされており、わかりすい
  • ドローコードが使いやすい
  • とにかく肩が痛くなく重さを感じない
  • 背中が涼しい
ここが△

 

  • 雨蓋にレインカバーがある
  • 前面のポケットが小さい
  • メイン収納は1気室
  • 背中が意外と蒸れる
  • 背面長が変えられない
  • 背中が蒸れる
  • 価格がお高め
  • 重量感がある
  • 背面長が変えられない
  • 前面にポケットが無い
  • 背面長が変えられない
  • ストラップ類の使い方が一見するだけでは把握しづらい
  • ポケットがほとんどない
  • ドローコードの固定力が心配
  • 留めたポールの・揺れが結構気になる
  • 価格がお高め
快適性 ★★★★☆ ★★★★★ ★★★★☆ ★★★☆☆ ★★★★☆ ★★★★☆
安定性 ★★★★★ ★★★★☆ ★★★☆☆ ★★★★☆ ★★★★☆ ★★★★★
収納性 ★★★★★ ★★★☆☆ ★★★★★ ★★★★☆ ★★★★☆ ★★☆☆☆
使いやすさ ★★★★☆ ★★★★★ ★★★☆☆ ★★★★☆ ★★★☆☆ ★★★★☆
耐久性 ★★★★★ ★★★☆☆ ★★★★☆ ★★★★★ ★★★★★ ★★★☆☆
重量 ★★★☆☆ ★★★★☆ ★★☆☆☆ ★★☆☆☆ ★★★☆☆ ★★★★☆
スペック
本体生地・素材
  • メイン=210Dx630Dナイロンドビー
  • アクセント=420HDナイロンオックスフォード
  • ボトム=500Dナイロンパッククロス
  • 210D Nylon / 420D High Density Nylon
  • 840D Ballisitc Polyester
  • 210D Bird’s eye NY (Nylon 100%)
  • 210D Mini R/S NY (Nylon 100%)
  • 210D ナイロン RECYCLED
  • 600D ポリエステル
  • N/210 CORDURA OX
  • N/210D DOUBLE R/S SD (68*63) PU
  • 210D Nylon Dragon
  • 100D Nylon with colored Ripstop
公式重量(g) 1470 1230 1640 1560 1450 1260
サイズ (cm 高さx幅x奥行) H70×W34×D32 H63.5×W30.5×D24.1 H70×W32×D26 H68×W28×D24 H64×W27×D17 H50×W28×D12
メイン収納へのダイレクトアクセス △(ボトム) △(ボトム) △(ボトム) △(ボトム)
背面長 (cm) S/M=40.5 – 51 35.6 – 48.3 42 42 43
背面調整機能        
レインカバー

【補足】バックパック比較レビューについて

テスト環境

トレランの方達の間で有名な神奈川県・葉山の「仙元山」のハイキングコースで実施。急登あり、コンクリート舗装の長めのアプローチあり、滑りやすい赤土のコースありで、低山ながらバリエーションに富んだコースです。

ザックの中身は、

2Lのハイドレーション、500mlのペットボトル2本、インナーシーツ、エマージェンシーシート、化繊ダウン、速乾Tシャツ1枚、スカート1枚・レインウェア上下、靴下、行動食(あめ・グミ・チョコレート・柿の種など)、お菓子(ポテトチップス・かりんとうなど)、朝食・昼食(パン・おにぎり・魚肉ソーセージ・チーズ・ゆで卵)、粉末飲料、宿泊セット(下着・歯ブラシ・メイク落とし・体拭きシート)、ヘッドライト、小型充電器、お金、日焼け止め、常備薬、虫よけスプレー、サングラス、ポータブルオーディオプレーヤー、手ぬぐい2枚、消毒液、マスク、ティッシュペーパー、ビニール袋

をパッキングしました。改めて思いましたが、小荷物が多いですね~。でもこれ以上は減らせない…。だから私には小分け収納が必要なんです!

評価ポイント

評価指標は以下の6つ。なぜこの指標が大切なのか?詳しくは以前の記事「バックパックの選び方」をご覧ください。ちなみに当該記事文中の「最適なバックパックを選ぶためのチェックポイント」に、「女性向けモデルがあるかどうか」という項目があります。やはり女性用のバッグパックを選ぶことは、登山にとっての「きほん」の「き」であるわけですね。

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