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【2023年版】どこまでも自由に山を楽しみたい人のための、ウルトラライトバックパックのベスト・モデルと、後悔しない選び方のポイント

より身軽に山を楽しみたい人、より純粋に自然と向き合いたいと思う人に寄り添う相棒

極限まで重量を切り詰めて身軽に歩く「ウルトラライト(UL)・バックパッキング」という考え方は、21世紀の新しい登山の楽しみ方としてすっかり定着しました。

ULを志向する理由はそれぞれですが、ひとつには「荷物が軽ければ軽いほど、もっと速く、もっと長く、もっと楽に歩ける」という実利的な側面が当然あるでしょう(実際にはそんな単純な話ではないにせよですが)。そしてもう一つには、荷物をそぎ落としたその先にある「本当に必要なもの、本質的なものだけで自然と向き合う」という理念的な純粋さもまぎれもない魅力のひとつとして挙げられます。

いずれにせよ、今や自分が山を始めた20数年前のように、20キロを超えるようなバカでかい荷物で歩く人は以前に比べれば少なくなりました。軽量コンパクトな荷物での長距離ハイクは新しい常識となりつつあります。

今回は、そんなミニマルな装備での山歩きに適したバックパック、「ウルトラライト(超軽量)バックパック」のベストモデルを選んでみました。このサイトでは開設当初からこれまで8年にわたってインディーズブランドのバックパックから大手メーカーの最新バックパックまで、コツコツと背負い比べてきました。その成果をここで満を持してシェアしたいと思います。以下に紹介するバックパックは、より身軽でアクティブな山旅を楽しむためにこれ以上ない魅力を備えたモデルばかりです。今回そのなかから、とりわけ日帰りだけでなくテントを背負って2泊以上のハイキングまで対応できる約40リットル前後の容量を中心に選びました。

後半にはこれまでの経験を踏まえて、初めて超軽量バックパックを選ぶときに特に気をつけたいポイントについてもまとめています。なかなか試したりすることが難しい超軽量バックパックですが、なるべく失敗せずに最適モデルと出会うための手助けになれば幸いです。

【部門別】今シーズンのベスト&注目ウルトラライト・バックパック

ベスト・オールラウンド(総合)部門

ラディカルなコンセプトであるが故にどうしても一点突破型の特徴を持った尖がったモデルが多くなりがちなULバックパックにあって、この種のザックに求められる機能・性能がまんべんなく高いレベルでバランスよく備わっているバックパックを選出したのがこのオールラウンド部門。

ウルトラライトの黎明期から長年にわたって熱狂的なファンによって支持されてきた老舗ブランドの代表モデルから、最新の素材と流行の機能を搭載したニューウェーブまで、桁違いの軽さと快適な背負い心地、利便性、洗練されたスタイルを兼ね備えた良モデルたちで、いずれも初心者からベテランまで幅広く愛せるモデルです。

Durston Kakwa 40(775g 前後 ※パーツの着脱可能、40 + 外部収納15L)

お気に入りポイント

 

Zpacks Arc Haul Ultra 50L(800g 前後 ※パーツの着脱可能、50L)

お気に入りポイント

 

山と道 ONE(600g 前後 ※カスタマイズ可能、50-55L)

お気に入りポイント

 

Gossamer Gear Gorilla 50(800g 前後 ※パーツの着脱可能、50L)

ゴッサマーギア GOSSAMER GEAR GORILLA 50 Ultralight
お気に入りポイント

ベスト・ビギナー向け部門

注文されてからひとつひとつ手作業で作られるか極めて小規模な生産が一般的であったULバックパックが、その人気の高まりを無視できなくなった大手アウトドアメーカーによって開発・生産されるようになったのがここ5年くらい。今や世界トップシェアのバックパック専門メーカーまでもが超軽量バックパックを取り扱うようになり、それまで限られた愛好家たちだけのものであったウルトラライトはここにきてついに一般のハイカーにも広く門戸が開かれるようになりました。

そんな大手アウトドアメーカーが作るバックパックがもつ共通の特徴は、端的にいうと(良くも悪くも)初心者に優しい作りであるといえます。そんな近年続々と新作が生まれにわかに活気づく、ビギナーに優しく全体的なクオリティも素晴らしい3モデルを紹介。

まず重量に関しては、いずれも決してそこまでびっくりするほどの軽さはありません。ただその代わり、従来の登山用バックパックをベースとした安定性と通気性を備えた背面フレームやパネル構造、軽量ながら耐久性の高い高機能生地、多彩な収納類など、初心者を置いてけぼりにしない手厚さが魅力で、総合部門とは別の意味での完成度の高さを見せてくれます。これまで普通のバックパックを背負っていたハイカーがウルトラライトに初めて移行しようとする場合はもちろん、これから山を始めようという人がこのバックパックから背負いはじめてもスムーズになじめるのではないでしょうか。

Osprey エクソスプロ55(約960g、55L)

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OSPREY(オスプレー)
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お気に入りポイント

Arc’teryx エアリオス 45(約1,090g、45L)

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ARC'TERYX(アークテリクス)
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お気に入りポイント

 

deuter AIRCONTACT ULTRA 50+5(約1,210g、50-55L)

お気に入りポイント

 

ベスト・大容量(タフネス)部門

ULバックパッキング文化は米国にある全長数千kmにも及ぶロングトレイルを数カ月かけて歩くハイカー達の間で広まっていきました。その成り立ちからも分かるように、たとえ軽くても大量の荷物を持ち運べなければ意味がありません。軽さの中にもしっかりとした荷重安定性と、重力を受け止めるクッション性、そして生地や縫製の十分な強度などがまんべんなく備わっていることが求められます。そんな「これならばどれだけの重荷も安心」といえる、重荷上等な超軽量モデルを3点紹介します。

まずHYPERLITE MOUNTAIN GEARは、早い時期から軽さと強度、そして高い防水性を兼ね備えた超軽量・高強度生地である「DCH(ダイニーマ・コンポジット・ハイブリッド)」を全面的に採用したUL製品を展開するブランド。軽さと強靭さを兼ね備えたDCH製のボディに、軽量かつ剛性の高いアルミステーで重さを支える構造は、荷物を目一杯詰め込んだとしても万全の安定感を提供します。さらに今シーズン初登場のUNBOUND 40は最先端の快適・便利な収納を多数搭載し、今どきの軽快なスルーハイクに対応します。

その他Gossamer Gear マリポーサは先ほどのゴリラと同様、高い次元で重量と機能のバランスを保った見事なつくりをそのままに、60リットルという大容量を可能にしています。ULA Equipmentは日本ではさほど馴染みはないブランドかもしれませんが、長年にわたって全米のハイカーから支持され続けているメイド・イン・ユタ州のブランド。2023シーズンはすべての定番モデルが話題のUltra Fabricによってアップデート。背負い心地の安定感とバランスの良さはそのままに、さらなる軽さと強さを身に着けました。

HYPERLITE MOUNTAIN GEAR UNBOUND 40(約853g、40L)

お気に入りポイント

 

Gossamer Gear Mariposa 60(約914g、60L)

お気に入りポイント

ULA Equipment ULTRA CIRCUIT(約958.2g、68L)

お気に入りポイント

ベスト・スピードハイク部門

超軽量バックパックの進化はこれまで説明してきたULバックパッキング以外に、例えばトレイルランニングといったアクティビティからも影響を受けてきました。「軽量であること」が求められるのはトレイルランでも同じ。軽さと自由という理念を共有した二つのアクティビティは、お互いにインスパイアされながら近年の「ファストパッキング(ファストハイキング)」と呼ばれる、テント泊ハイキングとトレイルランのハイブリッドな遊びに発展していきました。

従来のトレイルラン用パックのようにウェストベルトを排して背中と胸板で挟んで背負うベスト型構造は走行時の動きやすさを提供し、従来の登山用バックパックのようにある程度の容量を背負えるように調整されたことで、「走れる・背負える」という二つの特徴を兼ね備えたファストパッキング向けの超軽量バックパック。このタイプでの優秀モデルを紹介します。

まず何と言っても個人的に外せないのが、今シーズンフルアップデートしたpaagoworks rush30。身体を包み込むようにフィットしてくれる背面とショルダーハーネスの密着感には背負った瞬間に心地よさが伝わってきます。そしてまで細部まで丁寧に作り込まれた使いやすい収納類で、行動しながらさらに惚れ込む。無駄を省いた軽量性に加えて安定性・フィット感を損なわないスキのないクオリティの高さは一度使うともう離れることは難しく、少ない荷物でアクティブに行動するスタイルの時には必ず持ち出しています。

その他、2023シーズンはブラックダイヤモンドからまったく新しいシリーズがファストハイキング部門に参戦。またUltrAspireのファストパッキングバックパック、エピック XTシリーズにさらなる大容量(35リットル)モデル、「3.0」が登場。どちらも期待以上のパフォーマンスで今シーズンのベストといえるほど甲乙つけがたいおすすめモデルです。

paagoworks rush 30(約720g、31L)

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PaaGoWORKS(パーゴワークス)
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お気に入りポイント

 

UltrAspire エピック XT 3.0(約1077g、フレームを取り外すと805g、35L)

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UltrAspire(ウルトラスパイア)
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お気に入りポイント

Black Diamond パーシュート30(約796g、30L)

お気に入りポイント

 

ベスト・小容量(フレームレス)部門

ULバックパッキングに興味があるとはいえ、現実問題として数泊もするような山旅はそんなに頻繁にできないという人も多いと思います。そんな人には週末1~2泊での軽量ハイキングに最適な30リットル台の容量がおすすめです。

このクラスの容量であればしっかりとしたフレームが入っていなくても肩と背中である程度快適に背負えてしまう場合が多く(ものによってはウェストハーネスすらない)、その結果これらの「フレームレス・バックパック」はとにかく異次元の軽さが実現されているのが特徴です。その「究極のミニマリズム」といえる作りにはまだまだ根強いファンも多く、極限までそぎ落とすウルトラライトのコンセプトをたっぷりと堪能することができるでしょう。ここではそうしたフレームレスの超軽量バックパックで優秀なモデルを3モデルピックアップしてみました(どれも生産量が少なく、またメーカー直販が多いため、日本では非常に入手が困難なモデルですがご了承ください)。

まずZpacks Neroは、極限までの軽さを追求しながら、最先端の快適性と機能性にも貪欲な「伝統と革新」を合わせ持った気鋭のブランドによる日帰り~週末向けバックパック。今シーズンから従来のDCF素材よりもさらに軽量・高耐久なUltra Fabricを採用し、さらなる軽量化に成功しました。背面には凸凹付きのシットパッドを取り付けられたり(クッションにも通気性にもプラス)、ウェストベルトの位置を三段階に調節可能など、実用性に関してもアイデア満載です。

さらに、昨年ここでも取り上げたLITE WAY GRAMLESS PACKも、今シーズンからUltra Fabricを採用。この生地のここ最近の勢いはとどまることを知りません。素材の変更を除けば、すべての製品が縫製師によるハンドメイド、軽量でシンプルながら無駄のない使いやすさが凝縮された高い機能美といった魅力は相変わらずです。

最後はここ数年のULバックパック・トレンドの発信源といってもいい、ユタ州発のコテージブランド、PA’LANTEの代表的モデルv2。FKT(Fastest Known Time)というニッチな目的に特化した最新の素材使いと斬新な構造は、今や多くの熱狂的なフォロワーを集めるまでに至りました。37リットルのメイン収納以外にさまざまな収納オプションを外側に搭載し、行動中でも必要なアイテムへの素早いアクセスを可能にしました。

Zpacks Nero Ultra 38L(約298g、38L)

お気に入りポイント

LITE WAY GRAMLESS PACK ULTRA 35L(約390g、35L)

お気に入りポイント

PA’LANTE v2(約495g、37L)

お気に入りポイント

ベスト・コストパフォーマンス部門

小さなメーカーによる少量生産が主流の超軽量バックパックはどうしても高価に、そして納期も長くなりがち。こうした状況にあって、確かな品質と手ごろな価格を実現してくれるコストパフォーマンスの高いモデルはやはりありがたいものです。今シーズンは全般的に価格高騰でなかなか高コストパフォーマンスなモデルが見出しにくい中、やはり安定の価格を提供してくれるのはモンベル。性能的には可もなく不可もなくですが、この価格は相変わらず図抜けています。

mont-bell バーサライトパック 40(約480g、40L)

お気に入りポイント

選び方:ウルトラライト・バックパックを賢く選ぶ5つのポイント

はじめに:ウルトラライト・バックパックを選ぶ際に注意したいこと

何かとクセの強めな超軽量バックパックですが、基本的な考え方は登山用バックパックと変わりません。ここでは登山用バックパックについての知識を踏まえたことを前提として、従来の登山用とは違うULバックパック特有の特徴や傾向・クセについてこれまでの経験から得た選び方のコツについて書いていきますので、もしあなたが登山用のバックパックについての基本的な知識にまったく触れたことがないという場合には、ぜひともまず以下の登山用バックパックの選び方についての記事に目を通すことをおすすめします。

もうひとつ老婆心ながら話しておかなければならないことですが、残念ながら超軽量バックパックはすべてが決して万人向けに作られているとはいえません。なぜならばこれらのバックパックは従来の登山用リュックに比べて、快適に背負える重量の限界が特に低く作られているからです。

一般的な登山用バックパックは相当の重荷でも快適に背負えるために、堅牢な支柱(サスペンション)とウェストハーネスで重さを支える構造となっています。超軽量バックパックの多くはこの重荷を支える部分をこれまで以上に大幅に省くことで、重さに耐える性能を最低限に抑える代わりに、通常では考えられない軽さを実現しています。

このため通常の登山と同じノリで荷物を詰めていった場合、それは単に「背負い心地の悪いザックでハイキングをしているだけ」という目も当てられない状態になってしまう可能性があります。つまりULバックパックで快適に山を楽しみたいのであれば、それに応じて携行する荷物全体を見直し、自分が本当に必要なものだけに厳選して各アイテムもできる限り軽い作りのものをそろえる必要があるのです。

そうなると必然的に、自分がこれから行くトレイルで何がどこまで必要で何が必要でないかを事前に判断できる力が必要になってきます。これはどこかのマニュアルに書いてあるわけではなく個人によって大きく異なり、ある人の必需品は別の人の贅沢品である場合が少なくありません。その意味でウルトラライト・バックパッキングは(厳しめの言い方をすると)ある程度トレイルを歩き多くの時間を自然の中で過ごすことで、自分に必要な道具が何かということについての判断力を磨いてきたハイカーだけに許された遊びであるといえます(突き詰めて考えると、そうした能力はどんなスタイルの登山であっても必要なことに変わりないのではありますが)

もし、ふかふかの快適なマットレスや枕、清潔な着替え、新鮮な食材を使った豪華な食事が譲れないのであれば、超軽量バックパックはあなたの登山を幸せにしないかもしれません。逆にもしあなたが、試行錯誤でそぎ落とした装備でどこまで遠く、どこまで長くどこまで楽に行けるのかということに情熱を注ぐ準備があるなら、ULバックパックはあなたのかけがえのない相棒になってくれるに違いありません。

UL装備冬の装い(+撮影道具)。防寒着やチェーンスパイクなど冬の備えがかさむため45リットルで丁度いいくらい。

ポイント1:重量と背負い心地のバランスを見極める

極限まで軽さを追求するULバックパックではとんでもない軽さのバックパックがごろごろしています。しかし注意したいのは、基本的にバックパックの軽さと背負いやすさは相反する関係にあるということ。ぶっちゃけ過去に背負ったことのあるULザックで二度と背負わないと思ったモデルはいくつもありました。もちろんそれらにも適したシーンや好みがマッチする人もいたかもしれません。いずれにせよ、自分に最適なULバックパックを選ぶためには、自分に最適な軽さと快適さのベスト・バランスを見極めることが重要です。

「どれだけの重量を背負うのか?」から逆算して選ぶ

これまでぼんやりと「ウルトラライト」とか「超軽量」などと書いてきましたが、実際のところどれくらいの重量を言うのか。ここでひとまず自分が想定している目安を決めておきます。所説あるし、こうでなければいけないということもないのですが、一般的に「ウルトラライト」と呼ぶ場合には、食料・水・燃料などの消耗品を除いた全重量(ベースウェイトと呼ばれています)で3~5キログラム以下に納まっていることを想定しています。

これはこれまでの多くのULハイカーたちの経験から導き出された「負担がかからず楽に歩ける重量」であるということもありますが、もうひとつには、UL系のバックパックが許容できる荷物の限界(荷重限界)の値とも関係しています。多くのULバックパックの荷重限界が10キロ台前半であることを考慮して、こうすればここに数日~1週間分の食料などを追加してもだいたい10キログラムを超えない程度に納められるからです。逆に言えば、消耗品をそこまで積まなければ、多少中身を多くしても誰も怒ったりしませんし、15キロまで荷重限界あるザックで、自分の体力的に問題がないのであればもう少し基準を緩めてもいい。そこに正解はありません。あくまでも考え方の目安であり、自分のこだわりを納得いく形に作り上げていくのがULの面白さだったりします。

フレームなしか、フレームありか?

パックの重量を重さ(負担)の感じにくい腰部分にしっかりと伝えるために、背面のフレームは非常に重要です。ただ、例えば首尾よくベースウェイトを5キログラム以下に抑えて荷物を非常に軽くできた場合、あるいは体力に自信があり長時間重荷で歩くことに慣れている人は、快適な背負い心地のために必ずしも背面フレームがある必要はないかもしれません(個人差はあります)。

フレームを省略することによってバックパックの重量は大幅に削減することができます。まずフレーム分の100グラム程度、さらに荷重を腰に伝えるフレームがないということでヒップベルトを削減すれば、さらに200グラム程度重量を削ることに成功します。フレームレスバックパックにヒップベルトがあったとしても、それは腰ポケットを固定するためか、早歩きをした時にパックが揺れないようにするためのものでしかありません。

ただし、フレームレスバックパックではすべての重量が肩にかかることを覚悟しなければなりません。肩は腰ほど強くはないので、荷物が重ければ重いほど疲れや痛みなどの不快感は加速度的に蓄積されていきます。それらを考慮して、フレームレスバックパックを選択する際には、ショルダーハーネスのパッドの幅やクッション、重心の位置(重みで後ろに引っ張られたりしないか)などを考慮してできる限り負担のかかりにくいモデルを選ぶと良いでしょう。ちなみに、フレームレスバックパックを背負う場合には、少しでも背負いやすくするためにクローズドセルフォームのマットレスをバックパックの中に入れて、疑似フレームのようにすることで背負い心地は劇的に向上します(個人的にエバニューの折り畳み式マットレス「FPmat」は必需品)。

一方で冬など荷物が多くなる季節やスタイルによっては、ベースウェイトが5キログラム以上になることも十分に考えられます。また初めてウルトラライト・ハイキングにトライしたいという人、軽量化の中でも少しでもより快適な背負い心地が好みの人、身体の強さに自信がないという人など、さまざまな理由からいきなり極端な軽さへ移行するのに躊躇することも多いと思います。そんな時は無理せずにフレーム入りの超軽量バックパックでまったく問題ありません。

フレーム入りバックパックは背面に軽量なアルミやカーボンで作られた支柱や、樹脂製パネルを内蔵することによってバックパックを支える構造です。腰のヒップベルトに荷重を伝え、バックパックの重量を腰と肩・背中に効率よく分散させる仕組みとなっています。言うまでもなく背負い心地と安心感はフレームレスとは大違いです。またフレーム入りバックパックはモデルによっては必要に応じてフレームやヒップベルトを取り外すことができるモデルもあります(下写真)。このように中身の重量に合わせてカスタマイズすることでいろいろなシーンに対応しやすいという利点からも、フレーム入りバックパックはおすすめです。

ポイント2:走るか、走らないか?

前半のおすすめモデル紹介で取り上げましたが、最近の超軽量バックパックの中には、トレイルラン用パックの特徴を融合して走りやすさも念頭に入れた「ファストパッキング」系のモデルが多く見られるようになりました。

ファストパッキング向けバックパックの多くは重さを背中と胸部の「面」で支えるベスト型構造をしており、走った時にもブレにくくする仕組みになっていて、行動中の煩わしさが大きく違います。またショルダーハーネスにポケットが多数ついていたり、ハイドレーションやソフトフラスクの収納も考えられており、走りながらの補給がしやすくなっているのも大きなメリット。細かい部分ですが、よりスタイルに合った使い勝手の良さを提供してくれます。

ファストパッキング向けの場合、どうしても容量の大きいモデルが少ないという点には注意する必要がありますが、あなたがもしトレイルを走ることも重視している人は(シンプルなULバックパックでも走れないわけではないですが)ファストパッキング向けバックパックを検討してみるのも悪くないでしょう。

ポイント3:容量はどのくらい必要か?

はっきりとした基準はありませんが、ウルトラライト・バックパッキングをするうえで、いったいどれくらいの容量が必要なのか。さまざまなガイドブックなどの情報をもとに、自分のこれまでの経験から自分がたどり着いた目安はこんな感じです。

50リットル以上:どんなアクティビティでもまず不足のない容量

将来的に1週間以上のロングトレイルを考えている人、1つのパックで今後あらゆるUL旅をまかなおうという場合、50L程度のモデルを選ぶのが賢い選択です。これひとつでほとんどのトレッキングに必要なものすべてを持ち運んでも余裕をもってパッキングすることができます。また水の少ないトレイルで、どうしても水を多めに運ばなければならない場合などでもこのクラスであれば安心です。

35~45リットル前後:1週間以上のULバックパッキングはしない場合に最適

ほとんどのULハイカーにとってちょうどよいサイズがこのクラス。また経験豊富なスルーハイカーであればこのクラスでロングトレイルに出る人も珍しくありません。自分の場合、一般的な3シーズンで45リットルのバックパックにUL基本装備と食料・水・燃料をパッキングすると、だいたい2日~5日程度のテント泊が可能でした。一方容量が30リットル台の場合、水や食料の補給状況次第ではギリギリかもしれません。その辺は季節や日数、装備などによって変わってきます。

25~35リットル前後:日帰りか、真冬を除く季節で1~2泊のハイキングしかしない場合に最適

いつもはデイハイクがメイン、あるいは初めてウルトラライトに足を踏み入れるという人にまず入門としておすすめできるのがこのサイズ。外部のアタッチメントを駆使し、タープやツェルトなどのUL泊装備であれば複数泊のハイキングも可能でしょう。またちょっとした普段使いリュックにも使えてしまうので、その点からも意外と使い勝手が良いとも言えます。達人級のULハイカーはこのサイズで1週間とか行ってしまうらしいですが。

ポイント4:生地・素材はどうするべきか?

ウルトラライト・バックパックは重量をできる限り抑えながら最低限の強度を維持するため「軽くても(薄くても)強い」生地 = 最先端の高機能素材を使用する必要性が出てきます。これらの素材はどうしても高価になってくるため、これが超軽量バックパックの価格を桁違いに高くする理由のひとつになっているといえます。

ここ数年での超軽量高耐久素材の主役はダイニーマ・コンポジット・ファブリック(DCF)またはダイニーマ・コンポジット・ハイブリッド(DCH)X-Pacでした。現在でも最も人気のある素材のひとつではありますが、2021年「Ultra Fabric」の登場によって、これまでダイニーマを使用してきたメーカーが軒並みUltra Fabricへのシフトをはじめ、その勢力図は大きく変わりつつあるのが現状です。また軽量高耐久かつ「環境に配慮」された「ECOPAK」にも注目です。

ダイニーマ・コンポジット・ファブリック(DCFやDCH、別名キューベンファイバー)

引用:Ripstop by the Roll

超高分子量ポリエチレン繊維であるDynema®はスチール(鋼)の15倍ともいわれる強度を誇り、同時にナイロンとポリエステルよりも30%、  アラミドよりも45%も軽量。それをUV樹脂でラミネートしたフィルム状の生地がDCFで、「世界で最も強い布」とも呼ばれています。このため超軽量にもかかわらず耐摩耗性も強く、ナイロンのように伸びない、UV耐性もある、さらにほぼ100%の防水性を持っているため、テントやタープ、バックパックに急速に活用され始めました。染色しにくい生地であるため、一般的には透け感のある白か黒のどちらかが多くなります。

X-Pac

引用:Ripstop by the Roll

船の帆に使う布として開発された、高強度ポリエステル繊維をエックス状に組んだ層を、表地と耐水加工を施した裏地とで張り合わせた3層構造の特殊素材。ダイニーマほどではないにしてもこちらも軽量で、引き裂き強度が強く、防水性やUV耐性も備えており、生地の形状も安定してハリ・コシがあるためザックが自立しやすく、こちらもバックパック適した特徴がそろっています。価格や入手困難度がダイニーマに比べてより手頃でカラーリングも豊富であったことから、小物バッグなども含めて広く採用されるようになってきています。

Ultra Fabric

引用:Ripstop by the Roll

Challenge Outdoor社によって開発されたこの生地は、ダイニーマ® のブランド名でおなじみの「超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)繊維」と高強力ポリエステル繊維をブレンドして織られた布帛(織物)です。コーデュラナイロンなどと比べても数倍の強度と耐摩耗性を備え、あのDCFやDCH、X-Pacと比べても同等以上の重量当たりの耐久性を備えていると言われています。さらに裏地にはリサイクル素材のRUV™ フィルムがラミネートされることで、生地として優れた防水性を実現しています(ただ縫い目はシームテープされていないため、バックパックとしては完全防水ではありませんのでその点は注意)。

ECOPAK

引用:Ripstop by the Roll

ECOPAK は、100% リサイクル糸を使用して作られた世界初の複合生地で、標準的な生地と比較して二酸化炭素排出量を 1 ポンド削減することができるとか。ポリエステル繊維と何層にもラミネートされたフィルムによってつくられた生地はX-PacやDCFハイブリッドよりも軽いうえに優れた耐摩耗性をもち、同じように100%の防水性を備えています。

ULバックパック選びでは、予算さえ許せばこの上に挙げた最先端の素材を選んでおけばまず安心です。一方で薄手のナイロン生地を使用している場合は、軽さと耐久性を強化した特別なナイロン(例えば高密度 Robicリップストップナイロンなど)を使用しているか確認することをおすすめします。逆にいうと形だけ超軽量の外観をしたノーブランドの格安バックパックには要注意です。

ポイント5:ポケット、ストラップ、その他収納について

超軽量バックパックはポケットの使用を最小限に抑える傾向にありますが、そのなかで可能な限り便利で使いやすい収納であることが使いやすさの差となって現れてきます。最後に個人的に絶対に譲れないポケットと、あると嬉しい収納を紹介します。

フロントポケット → 必須

フロントポケットはULバックパックにとって個人的には最重要といえる収納パーツかもしれません。多くのULバックパックは雨蓋がないロールトップ式であるため、小物を入れるスペースとして最も使いやすいのがこのフロントポケットです。メッシュであると湿ったものが乾きやすく、さらにストレッチする方が引っかかりにくく、そしてもちろん大きくて深い方が防寒ジャケットや帽子なども入れられるのでパッキング的にはありがたいですが、ここは重量との兼ね合いで悩ましいところでもあります。

サイドポケット → ほぼ必須

側面底部に取り付けられたサイドポケットには主にウォーターボトルを入れることが多いと思います。経験上、少なくとも1リットルの水筒が楽に入るくらいに大きい方が使いやすく、また歩きながらでも出し入れできるような位置にあるか、入口が斜めに角度がついているモデルが素敵。

ヒップベルトポケット → 無くても問題なし

ヒップベルトの位置にある小さなポケットはちょっとした行動食や日焼け止めなどを入れるのに便利。ですが経験上、サイズ的に小さすぎて意外と物が入らないことが多く、個人的には必須とは言えないか。

ショルダーハーネスポケット → 無くても問題なしだがあると嬉しい

パック前面に取り付けられたポケットとして、ショルダーハーネスに取り付けられたポケットは個人的にかなり有能。例えばスマートフォン。例えばソフトフラスク。ちょっとした行動食。形状的にヒップベルトポケットよりも役に立つことが多いこのポケットは標準で取り付けられているモデルはそれほど多くありませんが、もしオプションで付けられるのであればついつい付けちゃう。そんなポケットです。

アタッチメントやストラップ → 標準で付いてなくても、後から自分で取り付けられるかどうかが重要

可能な限り軽量化しているULバックパックには、標準で外側にストラップや伸縮コードなどはついていないかもしれません。その場合、外側にマットレスは括り付けられないのでしょうか?トレッキングポールやサンダル、カップをぶら下げることは?それらが可能かどうかは、ストラップやバンジーコードをつけるための「ループ(あるいはデイジーチェーン的な複数の輪が付いたベルト)」がついているかどうかによります。

もしループがついていれば、たとえ購入時点で何もついてなくても、後から自分で用意したストラップを使ってたいていの道具は工夫次第で括り付けることができます。バックパックの各所に紐を通すためのループがあるかどうか、あるいはメーカーとしてオプションが提供されているかどうかを確認しておきましょう。とにかく何か足したいと思ったとき、自分で何とかできるようになっているかどうかが重要です。

まとめ

UL系のバックパックは往々にして小さなガレージブランドによる小規模生産であることが多く、なかなか店頭でフィッティングすることが難しかったり、高価で納期も長いため、なかなか手が届きにくいアイテムのひとつです。最近では大手メーカーの参入も増え、昔に比べれば手軽にこの手のザックが試しやすくなったとはいえ、ネットの情報だけを頼りに高価な買い物をポチっとするのは勇気がいることかと思います。この記事で自分の経験(主に失敗)が、これからULバックパックの購入を検討している人にとって少しでも参考になれば。健闘を祈ります。

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