冬の山登りの難しいところは、歩いている最中は身体か発せられる熱によって暑くなり、一方少しでも止まれば冷たい外気やかいたばかりの汗によって途端に寒くなるという相反した状況に素早く対応すること。昔は面倒でも防寒着をこまめに脱いだり着たりする必要がありました。
そんな面倒を遠い過去の出来事にしてしまったのが、ここ数年大流行している、ハイテク化繊素材の中綿を使用したアクティブなインサレーション・ウェアです。ダウンジャケットのようにひたすら温かいだけでもなく、フリースのように保温性も吸汗性もそこそこなわけでもなく、この新しい中間着は秋冬のさまざまな状況に柔軟に対応してくれます。こうした超絶便利なインサレーションが登場してくれたおかげで長年悩まされていた脱ぎ着の面倒から解放され、登りはじめから下りてくるまでずっと着っぱなしでも快適な秋冬登山が楽しめるようになりました。
そんなアクティブなインサレーション・ウェアの特徴をあらためてまとめると大ざっぱにいってこんな感じ。詳しい話しは以前の記事にも書きましたので、興味のある方はあらためて読んでいただけると幸いです。
- フリースを上回る優れた保温性
- 中綿を使用しているにもかかわらず適度な通気性
- ストレッチ素材を配置するなど動きやすさ抜群の伸縮性
- 濡れても落ちない保温力と高い速乾性
- 軽量・コンパクト性
昨年に比べてさらに多くのブランドから、温かさや動きやすさ、通気性や重さなど多様なラインナップが新登場しているアクティブ・インサレーション・ウェアのなかから、今回は編集部の選んだ2016年のおすすめを紹介します。では早速どうぞ。
目次
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編集部のおすすめアクティブ・インサレーション・ウェア
patagonia ナノエア・ライト・フーディ
保温性★★★ 運動性★★★ 通気性★★★ 耐候性★★☆ 重量★★☆
今や冬のインサレーションの大定番といえるまでに成長したパタゴニアの新定番ジャケット「ナノエア・フーディ」をさらに行動着として進化させた今期初登場モデル。これまでのナノエア・フーディの大きな魅力であった、圧倒的に滑らかな肌触りと適度なストレッチ性による抜群の着心地、そして高い通気性による動きのなかでの快適さは相変わらず。本作はやや薄手のプルオーバータイプにすることでより軽量・コンパクトに、保温性を33%抑えつつ通気性を75%向上させるなど、山での激しい有酸素運動中の快適さを感動的なまでにアップさせたことでより「動ける中間着」としての機能が研ぎ澄まされました。実際に試用してみて格段に上がった山での使い勝手のよさを実感。※画像はメーカーサイトより引用
MILLET TOI LIGHT COMP JKT
保温性★★☆ 運動性★★★ 通気性★★★ 耐候性★★☆ 重量★★★
昨年登場し、その並外れた快適さから個人的な秋冬行動着の新定番となったミッドレイヤーが早くもバージョンアップ。独自の中綿「3DeFX+」は十分な保温性を備えながら同時に透湿性・ストレッチ性をもつという革新的な素材。これまででも十分にアクティブなインサレーションだったのですが、最新モデルでは中綿がボディと肩・腕部分のみになり、首周りや脇・前腕部分は4方向に伸縮する薄手のソフトシェル素材へと変更されさらにアクティブに進化。おまけに袖を取り外してベストとして使用することもでき、保温性と引き替えに動きのなかでの快適さは劇的に向上しています。その意味では冬のアクティブな用途のみならず、秋から冬の低山、残雪時期のハイキングにもピッタリです。
finetrack ドラウトⓇポリゴン3アッセントジャケット
保温性★★★ 運動性★★★ 通気性★★★ 耐候性★☆☆ 重量★☆☆
昨年登場した高機能ミッドレイヤーシリーズの最新モデル。同社が開発した独自の保温素材「ファインポリゴン」は、一般的な糸状の繊維ではなく超軽量の特殊なシート生地を立体構造にして”嵩”を作り出すというユニークな仕組み。優れた保温性に加えて濡れに強く、行動中でもウエア内の蒸れを排出し続ける抜群の通気性と汗処理能力の高さが魅力です。今季初登場の本作はアルパインクライミングをはじめとしたよりアクティブな使い方を想定しており、動きの多い袖や脇・腰部分によりストレッチ性に優れ汗処理性能の高い生地を採用。保温性と行動中の快適さとのバランスがさらに向上しました。結果、秋冬の幅広い寒さとアクティビティに対応した汎用性の高いモデルといえます。
mont-bell U.L.サーマラップ ジャケット
保温性★★☆ 運動性★★☆ 通気性★★★ 耐候性★★☆ 重量★★★
モンベルが独自開発した中綿素材を採用した化繊インサレーションの定番が今期さらに進化。とにかく軽くて(229g)通期性抜群、乾きやすく、濡れても落ちない保温力、アウターにもインナーにもなり、家庭の洗濯機でガンガン洗える使い勝手のよさなどは相変わらず。さらに今シーズンはよりスリムになったシルエットに加えて驚異的な伸縮性を実現した「ストレッチエクセロフト」など、動きやすさが格段にアップ。カラーリングも一新されてより垢抜け、フード・ジャケット・ベストタイプとバリエーションも豊富。そして何より手ごろな価格は文句なしのメリット。誰もが1枚もっておいて損はない、一年中使える大定番インサレーションです。
OUTDOOR RESEARCH DEVIATOR HOODY
保温性★☆☆ 運動性★★★ 通気性★★★ 耐候性★☆☆ 重量★★☆
昨シーズン米Backpacker誌でEditor’s Choiceにも選ばれた、まさに「家を出てから帰るまで脱ぐ必要がまったくない」保温のできる行動着。これまで保温性重視であった化繊綿と違い、適度な保温性と通気性を両立させた最新の中綿素材「Polartec Alpha」をボディに配置。抜けが良く圧縮性も高いグリッドフリースである「Polartec Power Dry High Efficiency」を背中から腕にかけてマッピングすることによって、必要最低限の保温性を提供しつつ、全体としてはクール&ドライを保ってくれます。風通しがよいので冬の防寒着としては物足りませんが、寒い季節の最適なミッドレイヤーとしておすすめです。
Houdini C9 Houdi
保温性★★☆ 運動性★★☆ 通気性★★☆ 耐候性★★☆ 重量★☆☆
北欧らしいデザイン性の高さと確かな品質で密かなファンも多いフーディニの「Polartec Alpha」を採用したモデルは昨年に引き続き、カラーリングが一新されて今年も健在です。クライミングなどを意識したピッタリフィットではなく、どちらかというと街着やスキー場などライトなアウトドアでの快適な防寒着を目指したモデル。とはいえ十分な保温力ときめ細かい肌触り、そしてわずかに効いたストレッチは山歩きなら十分で、他にはない快適さを提供してくれます。ガンガン汗をかくというよりも、静かなウィンターアクティビティに最適。なお、インナーとして使うならフードなしタイプもあります。
Arc’teryx アトム LT フーディ
保温性★★★ 運動性★★☆ 通気性★☆☆ 耐候性★★★ 重量★☆☆
ダウンに匹敵するほどの高い保温性と軽量・コンパクト性をもちながら、濡れても保温性を維持する化繊中綿素材「Coreloft」を採り入れたアークテリクスの定番化繊インサレーションの中厚クラスモデルは昨年に引き続きおすすめです。文脈的にはダウンの対抗軸として登場している素材から、保温性重視のウェアといえますが、にもかかわらずこのモデルがスゴイのは、立体裁断の袖やサイドパネルと脇下に配置されたストレッチ性の高いフリース素材による通気性と運動性の高さ、防風・耐久撥水仕上げの表地など、既に低温下でのアクティブな活動を想定し、最適化されている点。やや寒さが本格化してきた冬の低山にはもってこいの”動ける”化繊インサレーションです。※フードなしモデルあり。
まとめ 実物の展示やってます!(2016/10/30~11/13)
以上、2016年シーズンのおすすめ7着でした。昨年のPolartec Alpha祭りが一段落し、さまざまな素材メーカーが通気性に優れたアクティブな化繊素材を開発し、各メーカーがしのぎを削っているような傾向が見てとれる今シーズンですが、それぞれの細かい違いは数字だけ見ても分からないもの。そこでOutdoor Gearzineでは実際に触れて試せるリアルイベントを2016/10/31現在実施しておりますので、興味をもたれた方は是非お立ち寄りください!