登山やランニングなどの最中にかく大量の汗は、誰にとっても不快でしかない厄介もの。これだけベースレイヤーの性能が発達した現在でも、その不快さについてはいくばくかの我慢が必要でした。ところがここ数年、ここ日本において、実はこの汗による不快さ対策にちょっとした革命が起こっていたことを知っていますか?それが今回ご紹介するアイテム「高機能メッシュアンダーウェア」です。
ただこれらのアイテム、まだカテゴリとしてはこれといった正式な呼び名がなく、この名前自体、編集部が独自に付けたもので、メーカーによって「ドライレイヤー」とか「0.5レイヤー」「トランスファーレイヤー」など、呼ばれ方はまちまちなのが現状。ともあれ中身は端的にいうと、ベースレイヤーの下、つまり肌に直接触れるように着て、汗をかいたときの不快感や汗冷えを大幅に軽減し、行動時の快適さを飛躍的に高めたメッシュ状のシャツのことです。この夏、とある知人から「ヤバイので着てみるべし」と勧められ、半信半疑で着続けてみました。・・・結果は想像のはるか上をいく衝撃。ということで今回はそれについてまとめてみましたので、早速いってみましょう。
目次
行動中の汗がまったく気にならない、高機能メッシュアンダーウェアとは何なのさ?
まずこの耳慣れないアイテムについて着てみるまでに感じた素朴な疑問について、ぼくなりに調べてみたことを下記にまとめてみます。
高機能メッシュアンダーウェアは何が優れているの?
- 肌面の汗を素早く吸収し、生地表面へ拡散、優れた通気・速乾性により肌のドライ感を維持
- 一度かいた汗が肌に残り、外気に触れてひんやりしてしまう汗冷え・汗戻りを軽減
- 寒すぎず暑すぎず、安定した肌面温度を維持(ベースレイヤーと組み合わせて着ていることが前提)
普通のベースレイヤーだけではダメなの?
もちろん、一般的なベースレイヤーはすでに、吸汗・拡散・速乾・保温などのいくつかの役割を果たしてはいますので、ダメというわけではありません。じゃあこのアンダーウェアがあるとどんな良いことがあるのか?それは大きくいって2つの効果です。1つはこのアンダーウェアがベースレイヤーの役割のうち「吸汗・拡散・速乾」機能をブーストしてくれるという効果。もうひとつは、ベースレイヤーの課題である「汗冷えの軽減」という機能を追加してくれる効果。つまりベースレイヤーと合わせて着ることによって、ベースレイヤーの機能を最大限に高めることができる存在が高機能メッシュアンダーウェアというわけです。例えば冬、メリノウールなど保温に強い(汗処理に弱い)ベースレイヤーと組み合わせて使うことによって、吸汗・拡散・速乾・保温が完璧なレイヤリングの理想形が完成します。これが一度ハマってしまったら止められないのは想像に難くありません。
ちなみに、ベースレイヤーの役割についてはこのページで解説していますのでよかったら参考に。
通気性の高いメッシュシャツと何が違うの?
夏の店頭に多く並ぶ、いわゆる夏用の薄手メッシュTシャツ(ユニクロのエアリズムなども含む)とは何が違うのでしょうか。夏用メッシュは通気性を良くし、汗を素早く乾かすとともに、身体の熱を逃がすようにつくられているのでとにかく涼しい。ただし汗戻り・汗冷えなどの対策が弱かったり、適度な保温性を確保する等の配慮は無いものが多い。ここが汗処理のブーストと汗冷えの軽減(保温性の確保)を想定している高機能メッシュアンダーウェアとの大きな違いです。また、通常のベースレイヤーと組み合わせて最高のパフォーマンスを発揮することを想定している点でも若干位置づけが異なります。
高機能メッシュアンダーウェアはどうやって使うの?
汗から水蒸気として生地表面に送られた湿気をより効果的に拡散させるには、身体にフィットした吸水速乾のベースレイヤーをこのアンダーウェアの上に着ることが望ましいとされています。ただメーカーによってはこの1枚でそのままベースレイヤーとしても大丈夫としている場合もあるので、詳しくはそれぞれの推奨を確認した方がいいでしょう。
今回試してみた高機能メッシュアンダーウェア4着
それではここで、今回ピックアップして試してみた代表的な高機能メッシュアンダーウェア4着をご紹介します。
finetrack スキンメッシュ シリーズ
「ドライレイヤー」というワードを生み出し、このカテゴリの爆発的人気の火付け役となったファイントラックのヒット作。特徴的なのは生地の強力な耐久撥水機能による、内側からの汗は上に着たベースレイヤーに吸い上げられ、外側からの雨は肌にたどり着くことができない、その結果肌は常にドライというユニークなコンセプト。今期さらに機能強化し、フィット感をより向上させ、濡れ感をさらに軽減する仕様にリニューアルしました。
MILLET DRYNAMIC MESH シリーズ
2015年に大ブレイクした、究極のドライ感を実現する次世代のベースレイヤー。着ていることを忘れるくらいに伸縮性抜群、嵩(かさ)高のあるメッシュによって一度吸い上げられた汗が肌につくこともなし。メッシュというよりもかつて70年代に一度流行を博したといわれる「網シャツ」に近いようなインパクトのあるビジュアルからは想像もつかないくらい、夏も冬も冷えと無縁の快適な着心地を実現しています。
Phenix Transfer シリーズ
肌面は撥水性のある糸を用いて肌をドライに保ち、さらに表面には吸汗速乾性のある糸を用いるというハイブリッド構造を実現した独自技術「クイック&ドライUP」を採用。このためこれ1枚でほぼベースレイヤーとしての働きができてしまう完成度の高い1枚です。夏にはコレ1枚でベースレイヤーとして十分、そして寒い時期には吸汗速乾の化繊からウールなどの保温性の高い素材まで幅広いチョイスができてしまいます。
THE NORTH FACE Paramount Mesh シリーズ
このアイテムで採用された素材配分(ポリプロピレン100%)は、水を吸わないという特性を持ち、昔から速乾性の高いベースレイヤーとして珍しいものではありませんでした。ただ今回目の粗いメッシュ構造にすることによって、高い通気性と伸縮性を確保。吸汗速乾性を備えたベースレイヤーとの重ね着によって汗戻りを軽減し、ドライ感をキープすることができます。
スペックと性能を比較してみた
アイテム | finetrack スキンメッシュ シリーズ | MILLET DRYNAMIC MESH シリーズ | Phenix Transfer シリーズ | THE NORTH FACE Paramount Mesh シリーズ |
---|---|---|---|---|
着心地 | ◎ | ◯ | ◎ | ◯ |
汗処理 | ◯ | ◎ | ◯ | ◯ |
汗冷え | ◯ | ◎ | ◯ | ◯ |
保温性 | ◯ | ◎ | △ | △ |
撥水性 | ◎ | △ | ◎ | △ |
速乾性 | ◎ | ◯ | ◯ | ◎ |
防臭性 | ◯ | ◯ | ◯ | △ |
耐久性 | ◎ | ◯ | ◎ | △ |
おすすめ度 | ★★★☆ | ★★★★★ | ★★★★ | ★★ |
スペック | ||||
生地 | ポリエステル100% | ポリプロピレン66% ナイロン28% ポリウレタン6% |
ポリエステル88% ポリウレタン12% |
ポリプロピレン100% |
バリエーション | VネックT T ロングスリーブ ノースリーブ タイツ ボクサー ブリーフ ※男女別タイプあり |
NS クルー 3/4 スリーブ クルー ボクサーショーツ 3/4 タイツ ※男女別タイプあり |
ショートスリーブ Vネックショートスリーブ ロングスリーブ ※男女別タイプあり |
ショートスリーブ タンクトップ ショーツ |
今回の比較まとめ(おすすめの2着)
言葉通りドライで冷え知らず、未体験の超絶快適レイヤー:MILLET DRYNAMIC MESH シリーズ
4枚を何度か試してみた結果、どれも確かに汗によるベタつきなどが感じられずドライ感があり、動きのなかでの不快感は見事になくなりました。ただ汗冷えという点に関しては、濡れたシャツで風を受けても冷やっとした感じがまったくしないのは意外にもこのミレーだけ。これは他のシャツが濡れてしまうと肌にピタッとくっついてしまい外気との接点をつくってしまうのに対し、このシャツだけは厚みのある嵩高のメッシュが空気の層をつくり出すことによって外気をシャットアウトしてくれるからでしょう。この嵩高メッシュは(公式のユーザーコメントでも見られますが)夏は涼しく冬はほんのり暖かいという安定した保温性と抜群の伸縮性によって、オールシーズンあらゆる状況で未体験の快適さを提供してくれます。ちなみに、これだけはボクサーショーツも試してみたのですが、これまで履いたなかでも一番の、感動するくらい完璧な下着でした。
これ1枚でも十分使える高い汗処理性能と汎用性:Phenix Transfer シリーズ
このシャツの素晴らしさは(今回の比較のメインどころである)汗処理能力の高さだけでなく、何といってもバランスの良さにあります。保温性能はそもそもコンセプトにないことを考えると、着心地・汗処理はもちろん耐久性や防臭性等も含めて全体的に隙のない、高い品質であることが分かりました。おまけにこれ単体でも普通のTシャツとして着てもおかしくない程度の細かいメッシュなので、使うシーンも選びません(他の透け透けメッシュシャツは単体で着るには無理がありすぎます)。
まだまだ認知度の低いメッシュアンダーウェア。ぼくも試してみるまでは半信半疑でしたが、使ってみて、快適さってまだまだこんなに追求できるものなのかと正直、驚愕でした。その効果は誰もが実感できるほどと断言できます。確かに今のところはまだマストアイテムとまではいえませんが、この着こなしが当たり前になる日も近いかもしれません。というわけで、余裕があればぜひ試してみることをおすすめします!