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360度アクションカメラ Insta360 X3 で「まるでドローン」なスキー映像を撮るのが楽しすぎる【どうやって撮る?】

一眼レフを捨て、360度アクションカメラ「Insta360 X3」で山スキーに行こう

ここ数年、冬山で山スキー(バックカントリースキー)をすることが増えてきてからというもの、360度アクションカメラ「Insta360 (最新モデルはInsta360 X3)」が手放せません。

これまで自分が山に持っていくカメラといえば、画質の確かな一眼レフや、アクションカメラとしてそれなりの映像が確実に撮れるGoproだったのですが、どちらもバックカントリーでの撮影には少なからず不便さを感じていました。

それが今ではこの進化したInsta360と高性能スマホカメラさえあれば一眼レフ・既存のアクションカメラどちらの不満・不便もある程度解消されるばかりでなく、このカメラでしかできないユニークな映像も楽しめてしまいます。こうして気がつけば一眼レフもGoproも手放し、特別な目的がない限りはInsta360一本(&スマホ)で十分というスタイルになっていました。

臨場感あふれる360度動画が撮れるInsta360 X3で最高のスキー滑走動画が撮りたい!

そんなInsta360 X3の一番の特徴であり魅力といえば何といっても通常のカメラでは不可能な臨場感満点の360度動画が手軽に撮影できることなのですが、最近では携帯性や画質、機能性の進化も相まって、工夫次第でこれまで撮影できなかったよりユニークな映像が誰でも簡単に作れるようになりました。

その中でも自分が特にハマっているのが背中越しからの第三者に撮影されたような「追い撮り」構図です。一人で撮影しているのに、あたかも他のカメラマンやドローンが斜め上空から自分を撮影している(追い撮りしている)かのように撮ることができます(しかも両手がフリーなのでアクションにも集中できる)。試しにその構図で最近撮影した鍋倉山でのツリーランの模様を貼っておきます。

下の動画はInstagramに投稿した縦長画角バージョン。

従来のアクションカメラでは、スキーのように激しい動きの中で自撮り棒などを手で持たずに安定して被写体をとらえ続けるのはほぼ不可能でした。それがInsta360を使えば実はいとも簡単に作れます。ただしこの撮り方はまだ一般化されていないため、ちょうど良い方法を確立するには自分なりの工夫が必要でした。

そこで今回はこうした「ドローンスタイル(疑似追い撮り)」撮影が誰でも簡単にできる方法をあれこれと検証してみた様子と、その結果たどり着いたベストな方法をレポートします。

はじめに:Insta360 X3のここがお気に入り ~Insta360 x3でできること~

ポイント1:十分すぎるほどの高画質と手ブレ補正

基本的な使い方で最大5.7K 30fps、または4K 60fpsの動画撮影が可能です。さらによりリアルな明るさを表現できる「アクティブHDR」モードでも5.7K 30fpsの高画質。もちろん手ブレ補正アリ。写真の画素数も360度写真で7200万画素(ここから特定のサイズにトリミングされる)とそれなりに十分です。

もちろんイメージセンサーは所詮1/2サイズなので一眼レフに比べればまだまだ写真の精細さは遠く及びません。また最新スマホカメラの画像処理技術に比べれば多少見劣りしないわけでもないので、手放しに称賛できるわけではありませんが、静止画の撮影はスマホカメラに任せているので、動画撮影でこのレベルがあれば自分にとっては十分です。

ポイント2:撮影した360度映像を後から自分好みの構図にトリミングできる

一般的なアクションカメラでは当然ですが決められた四角い画角でしか動画が撮影されないため、撮影後にチェックしてみたらズレていた、なんてことが少なくありません(しかも縦長か横長かも、予めどちらかしか選べません)。ヘルメットなどに固定した際にも、たとえ最初に画角をしっかり決めたとしても、激しい動きの中でいつの間にか角度が変わってしまっていたりすることもあります。冬山では、1秒でも早くこの場を離れたいと思うような過酷な環境でカメラをセットすることが多く、悠長に確認なんてしていられません。そこでのカメラに求められる機能は、素早く、簡単に、確実な映像が撮れるということが不可欠です。

Insta360なら、レンズがどこに向いていようが360度撮れているので、構図は後で編集する際に決めれば大丈夫。下山しながら「あの最高のライディング、ちゃんと撮れているかな」なんてドキドキする必要はありませんし、撮影した動画は後からスマホ用の縦長動画に、Youtube用の横長動画にと自由自在にトリミング可能です。

もちろん360度映像を後から編集で四角い動画にトリミング(フレーミング)するという作業が発生しますが、そのわずらわしさは得られるメリットに比べれば微々たるものなので、今では慣れてしまいました。

ちなみにInsta360 X3なら、360度撮影だけでなく「シングルレンズモード」を利用することで普通のアクションカメラとしても撮影することができます。その際も、カメラアングルを常に自分中心に捉え続けていられる「ミーモード」など、360度レンズならではのアクションカメラ機能が楽しめます。

ポイント3:これ1つで撮りたいものはほぼすべてまかなえてしまう多彩な撮影モード

自分はまだそこまで多彩な機能を使いこなしているわけではありませんが、このカメラひとつで以下のように一般的な「デジカメ」としても「アクションカメラ」としても、そしてもちろん「360度動画カメラ」としても一通り使える機能が揃っています。

普段から休日、レジャーに旅行にアウトドアアクティビティにと、ここぞというときに使える機能が一通り備わっているので、自分のような山スキーヤーに限らず幅広いアウトドア好きにおすすめできます。

ポイント4:IPX8等級の10m防水、そこそこ強靭、バッテリーも低温下で問題なし

年間通して登山やスキーで使用するのであればしっかりとした耐久性と防水性、そして低温対応は必須ですが、その点もまずまずクリアしています。ちなみにバッテリーについても連続録画時間は81分間と、ピンポイントでの使用であれば問題ない容量を備えています(冬山では念のため予備バッテリーは持っていた方がいい)。

ただ360度カメラの弱点である突き出たレンズだけは、どうしてもデリケートな取り扱いが必要です。そのためにオプションで粘着式レンズ保護カバーが販売されていますが、太陽の光線が入るとレンズとの間で微妙な乱反射が映り込んで画が汚れるという難点があります。このため人によっては画質のためにカバーをしない(レンズが壊れたら潔く有償修理)という人もいますが、自分の場合はスキーでコケたり林の中を滑走して枝にぶつけることが余裕で予想されるため、カバーは必須です。

ポイント5:見えない自撮り棒で第三者視点(ドローンのような)での撮影が可能

これが今回の本題ですが、Insta360では専用の自撮り棒で360度動画を撮影すると、自撮り棒が画像処理されて消えています。また前後レンズの境界線も、ほとんど分からないくらいきれいに画像処理され、この結果自撮り棒が存在していない自然な360度動画になります。

はじめは面白半分で、自撮り棒に付けたカメラを肩越しに担いで滑ってみたのがきっかけでした。すると何と、自分の背後からぴったりと追い撮りしてくれているような映像になっているではありませんか。これはもう少し極めてみる価値がある、そう思い立ったことからこの試行錯誤にドハマりしていきました。

なおちなみに、このマウント方法は背後に自撮り棒が長く伸びているため、混雑したスキー場や人混みなどで不用意にやるのは大変危険です(しかもかなり目立つ)。言うまでもなく周囲には十分注意して自己責任で楽しんでください。

Insta360 x3で最高のドローンスタイル撮影を実現するまで

検証その1:バックパックにシンプルに刺してみる

まずは何にせよとりあえずバックパックに1.2メートルの自撮り棒をバックパックに垂直に立てて固定してみました。

基本的に必要なのは自撮り棒だけで、固定するために特別なマウントは必要ありませんが、激しい動きによってカメラの向きがクルクル回転してしまわないように、また自撮り棒自体がすっぽ抜けてしまわないように末端に何でもいいのでアンカーとなるようなものをくっつけています(下写真)。またバックパックの口が開いたり、ストラップが緩んだりしないようにする工夫も適宜必要です(自分はスキーストラップでジッパーを固定)

そうやって撮影したのが下の動画(比較のため横長・縦長の2種類の動画を書き出しています)。

縦長動画であれば何とか全体が収められていますが、横長動画にすると自分がほぼ映らず、頭にマウントしたのとほとんど変わらない映像になってしまいました。これだとそもそもカメラの位置が頭の上過ぎて、自分を入れようとすると地面ばかりのアングルになってしまいます。仮に固定位置をバックパックのメイン収納ではなくサイドポケットの位置にしたとしても結果はほぼ同じ。このことから分かるように、自分と風景を俯瞰で入れるにはカメラは一定程度以上、斜め後ろで離れたポジションに置かなければなりません。またカメラをしっかりと固定するためには自撮り棒を荷物で圧縮してブラブラと動かないように固定しておかなければならないという手間もあります。やり方はとてもシンプルで簡単なので場合によってはありですが、ベストなマウント方法とはいきません。

検証その2:バックパックのショルダーストラップに固定してみる

次に試したのがこのショルダーストラップ固定です。

カメラを自分の背後斜め後ろに置くのに最もいいポジショニングを考えたとき、それは飛脚の竿のような肩口から伸びた直線上なのではないか、ということでショルダーハーネスにマウントを取り付け、そこに自撮り棒を固定する方法を考えました。

さっそく試してみたら、これがかなりいい。映像だけならば最も理想に近いです。何よりも期待通りカメラのアングルと距離感がばっちりで、自分の後方かつやや上方から捉えつつ、ふかふかの雪面と正面の山々や青空を収めることができます。さらにカメラがあまり高すぎない位置にあるため、風を切っていくスピード感もあります。

この固定方法で使用したマウントを紹介します。僕の場合ショルダーストラップへの固定には、一眼レフの携帯に使用していたPeak DesignのカメラホルダーCapture(キャプチャー)と、それにGopro等が取り付けられるようするためのマウント「P.O.V. キット」。とにかくショルダーストラップに自撮り棒が固定できればよいので、必ずしもこれである必要はありません。それをショルダーストラップの脇下の高さあたりにセットし、さらに首横あたりでスキーストラップなどを使ってもう1点固定します(下写真)。

ただ一方で困ったことに、映像的には素晴らしいのですが固定方法には大きな問題が2つありました。1つは肩回りだけで固定しているため、どうしてもカメラのある先端部分がブラブラとブレがちになること。もうひとつは硬い棒がショルダーストラップにがっちり固定されるため背負っているとちょっと痛いということ。映像は最高なんだけど、実に惜しい。ピンポイントで大きなターンの大斜面専用という感じでしょう。

検証その3:純正の第三者視点バックパックマウント(およびスキー撮影セット)を試してみる

ところで、Insta360には一応「スキー撮影セット」なるマウントセットや、また今シーズンには「三人称視点バックパックマウント」なんてそのものズバリのアイテムもオプションで販売されています。これらは果たして使えるのか?もちろんそれも試してみました。

まず前者のスキー撮影セットはヘルメットか胸部、もしくはポールに固定するためのマウントと自撮り棒のセットであり、そもそも今回のような変則的なマウントは考慮されていないため、今回のテーマに限っては関係ありません。

ただ後者については、ここ1年あれこれ悩んでいた自分にとっては朗報かもしれないとさっそく発売直後に試してみたのですが。

結果は、まったくもって大失敗でした。

このマウントはバックパックのショルダーストラップに後ろから伸ばしたベルトをベルクロ留めする構造なのですが、いかんせんこの固定方法がまったくと言っていいほどグダグダ。

どんなにしっかり留めても、スキーのように大きな遠心力がかかるとマウントはすぐにゃぐにゃブラブラとへたってしまいます。またマウントのボール状の固定部分も、温度差の激しい冬山では締まりすぎたり緩みすぎたりするため使いにくい。構造的に自分の使い方のバックパックにはまったくフィットしようがない代物でした。はぁ高い買い物だったのに残念。

最終的にたどり着いた、Insta360 x3でのベスト・ドローンスタイルマウント方法

そうしてあれやこれやいろいろなマウントや自作の固定具を試してみて、たどり着いたのがこの方法です。ウェストハーネスからバックパックのサイドを通って後方に伸ばします。

この方法だとショルダーの時のように固定したときに痛いこともなく、また左右にぶらつくことも気にならないほど。アングルは前の方法に負けず劣らずちょうどよい角度で迫力のある映像が撮れていました。

このマウントで撮影した動画をさっそく見てみます。

ショルダーストラップに固定していたよりは若干上めからのアングルになりますが、この方法でも縦長・横長両方で自分と風景を入れたうえで歪みの極力少ない第三者視点の滑走動画が撮れました(実はこの映像は若干失敗しており、固定の仕方次第でもう少し低い角度から背面から撮影することが可能です)。しかもがっちりとぶらつかないで固定できるし、ありがたいことに固定したとしても身体はどこも痛くない。

この方式で使用したのは、Gopro用の手首につけるリストバンドマウントです。

こいつが適しているのは、マウント部分が360度回転するためウェストハーネスに巻き付けてから伸ばしたい角度に伸ばせるところ。見つかってみるとと簡単な話ですが、まさかこんなところにこんなうってつけの道具が眠っているとは思いもよりませんでした。

リストバンドマウントをウェストハーネスに巻き付けます。それをバックパックのサイドにあるどこかしらのループ(低い位置であればあるほど良い)に通します。ここで必要に応じてスキーストラップその他でぐるぐる固定すれば、よりぶらつきは抑えられます。

まとめ

これで現状のベストなドローンスタイル撮影が可能になりましたが、まだカメラと被写体との距離間についてはまだ検証が必要です。やはりできる限り歪みの少ない映像にしたく、そうするとなるべくカメラを引いて置きたいのですが、今回使っている自撮り棒は1.2メートルの標準サイズのため限界があります。これを3メートルの長い自撮り棒にすれば(3mまで伸ばさなくても)さらに引いた視点からちょうどいい感じの俯瞰映像が撮れるかもしれません。いずれにせよこれからもより完璧なマウントの旅は続きそうです。

Insta360は、単に360度映像が撮りたいというカジュアルなニーズから、こんな風に自分だけの工夫で凝った映像が撮りたいというこだわり派まで、多くのアウトドア人に新しい驚きをくれる可能性を秘めたガジェットであることは間違いありません。Insta360でソロでのスキー滑走を撮影したいという、極レアな人たちをはじめ少しでも多くの人の参考になれば幸いです。

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