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Review:ARC’TERYX ゼータFLジャケット GORE-TEXの新素材「PACLITE®PLUS プロダクトテクノロジー」の実力がいかんなく発揮された軽量レインウェア

暦の上では、立秋をすぎたとはいえ、酷暑の日々。天気予報をチェックしていても、山の天気は変わりやすいもの。夕立や雷雨に遭遇することも、そう少なくないはず。そんなときは携帯性に優れた、レインウェアが一枚あると、なにかと重宝するってもの。

撥水性や透湿性などはもちろんのこと、着用時の着心地や動きやすさ。フードや袖、首回り、裾などが機能性を重視したデザインになっているか、否か。そのあたりがポイント。

今回レビューしたのは、ARC’TERYX ゼータFLジャケット。ハイキング、トレッキング向けの軽量モデル「ゼータ」シリーズ。FLとはFast&Light(ファストライト)の意味で、敏速&軽量(さまざまなコンディション下での素早い移動を可能にする、高機能、軽量のミニマルデザイン)に特化したラインアップのレインジャケットだ。なによりも、今シーズンから生地にGORE-TEXの最新技術「PACLITE®PLUS プロダクトテクノロジー」を採用し、エッジの利いた特徴が光る逸品だ。猛暑の中を実際に使用したレビューをお送りする。

主なスペックと評価

スペック
生地
  • PACLITE®プラス 製品技術を使用したN20p ゴアテックス生地
重量(実測) 193g(Sサイズ)
ポケット
  • ハンドポケット(止水ジップ)×2
フード
  • ハローアジャスター付きストームフード™(ヘルメット非対応)
評価
重量 ★★★★★
防水性 ★★★★★
透湿性 ★★★★☆
着心地 ★★★★☆
機能性 ★★★☆☆
総合評価 ★★★★☆

軽く、しなやかな着心地

着てみた感じはと言うと、いわゆる、ソフトシェルとハードシェルの中間的な感じで、胴回りは細身のシルエットだ。レインジャケットといえば、概ねの重量は300g~400gてなところ。それに対し、ゼータFLジャケットの重量は205g(Sサイズの実測は193gだった!)と、超軽量。ユーザーの動きに対し、干渉することなく、軽やかかつしなやか。裏地の肌触りはサラサラで、心地良い。

防水性、透湿性、防風性に優れ、かつ、軽量の「GORE-TEX PACLITE® Plusプロダクトテクノロジー」生地を採用しており、裏地なしの2層構造。生地の縫い目には幅1.6mmのマイクロシームを採用しており、内側の縫代には細いGORE®シームテープ(実測1.3cm)が丁寧に配置されている。

袖口や裾には、ドローコードといった調節機能はなく、細身かつ、ストレッチ性素材を使用。シンプルだが、腕まくりしやすく、あたりも柔らか。脇下がややふっくらめなデザインで、腕を動かす際に、(つっかえるような)テンションはほぼなく、スムーズ。袖口も伸縮性があり、フロントを閉めれば、ヒップ上にピタッとフィットする構造だ。

フロントジッパーと、ジャケット左右にあるハンドポケットは、完全防水ではないが、雨の侵入を遮断してくれる防水仕様。フードはヘルメットには対応していないが、すっぽり頭部を包み込み、あご下もしっかりガード。フードはフォーム入りのつばを備えており、2パターンの調整が可能。フードを固定させるコードアジャスターの位置も操作性もちょうどいい。あごとおでこにあたる部分には裏地が施されており、滑らかなあたりだ。また、ジャケット全体を丸めて、フード部分に収納できる。コードアジャスターを引っ張れば、コンプレッションがかかり、よりコンパクトに携帯できるのもポイント高い。

袖口と裾口には伸縮性素材を配したシンプル構造。裏地なしの2層構造ゴアテックス生地。縫い目には幅1.6mmのマイクロシーム、縫代には細いシームテープと、細かく丁寧な仕上がり。サイズは若干細身だが、肌触りよく、軽く、しなやか。その着心地はARC’TERYXらしく、トップクラスだとうなずける。

裾はやや長めで、ヒップ上にかかるくらいの長さ。伸縮性があり、スッポリとフィットする。

伸縮性のある袖口。手首にピタッとフィット。腕まくりもスムーズ。

つばとあごの部分には裏地で補強されている。ソフトなあたりだ。

フード内にウェア全体が収まる感じのパッカブル。フードのコードアジャスターを引くと、コンプレッションがかかり、かなりコンパクト。

防水・防風・透湿、そして、ドライな肌触り!

レインウェアとして、核心的なポイント。そう、透湿性と防水性について。

残暑が厳しい8月中旬。渋川伊香保温泉トレイルラン(10月13日開催)のマーキングサポートに参加。群馬県渋川市・二ッ岳の麓で着用してみた。ちょうど、(運よく!?)雨が降ってきたので、「チャンスだ」と思い、着てみたものの、平坦なトレイルを少し歩いただけで、少しだけ蒸し暑くなってきてしまった……。とはいえ、8月の残暑時期。そもそもGORE-TEXの特性上、ウェア内外の温度差・湿度差が小さい環境では、透湿機能はあまり効果的に働いてくれない。許容範囲のレベルだ。

ベンチマークとして試した他の標準的なレインウェアと比べて分かったのだが、透湿性はまずまず優れているといえる。ただ、ベンチレーションが備わっているジャケットと比較するとそこまでの換気性はないようだ。その他ハンドポケットの裏地をメッシュにしたり、脇下にベンチレーションジッパーなどがあると、快適さはより高まるだろう(もちろんその分、重量は増加してしまう)。とはいえ、体が発する汗の影響で多少で裏地が湿り気を帯びるものの、裏地の凸凹がドライな肌触りを感じさせてくれ、サラっとしている。また、(当然ながら)防水性、防風性はかなりいい。降り注ぐ、雨が浸透してくる様子はなく、風で体温が奪われるということも感じられなかった。このあたりは、GORE-TEXプロダクトのコンセプトによるものなのだろうか。次の項で、このあたりを詳しく解き明かしてみたい。

コロコロと雨粒が転がる様子。さすが、GORE-TEXの「PACLITE®PLUS プロダクトテクノロジー」。

滑らかで、ドライな肌触りの裏地。縫代にはシームテープが丁寧に張り巡らされている。陽にかざすと、その薄さがわかる。

ロゴの裏面も、ガッチリと補強されている。

そもそも、GORE-TEX PACLITE®PLUS プロダクトテクノロジーは何が新しくなった?その進化についてメーカーに直接聞いてみた

長い歴史と実績から信頼され続けている、GORE-TEXファブリクス(生地)。その最新ラインナップである「GORE-TEX PACLITE®PLUS プロダクトテクノロジー」を採用した生地の詳細について、日本ゴア社に対して直接確認してみた。

まず防水・透湿・防風性が備わったGORE-TEXファブリクスを、より軽量に、パッカブルにするために開発されたのが「GORE-TEX PACLITE®プロダクトテクノロジー」。裏地を取りはらい、裏面に特殊なコーティングを施すことで、薄さ・軽さ・パッカブルを実現する仕組みだ。

そして今回の「GORE-TEX PACLITE® PLUS プロダクトテクロジー」は、その裏地コーティングの上に、擦れに強いドット状の耐摩耗加工を施した進化版だ。そのため、肌に触れる部分が凹凸状になることで、サラっとしたドライな肌触り、肌の滑りが格段に向上。肌触りだけでなく、結果として耐久性もアップしたというファブリクスなのだ。

「GORE-TEX PACLITE® プロダクトテクノロジー」、「GORE-TEX PACLITE® Plusプロダクトテクノロジー」を採用した製品は、「GORE-TEX プロダクト」というプロダクトクラスに分類されている。ここで以前当サイトでも取り上げた、GORE-TEX製品のプロダクトクラス(アウトドアアクティビティによって求められる性能や機能・特徴をもとに分類したカテゴリー)についてあらためて説明すると、以下のようになる。

プロダクトクラス

つまり「GORE-TEX PACLITE® Plusプロダクトテクノロジー」は「GORE-TEX プロダクト」の基準をクリアする耐久性や防水性の基準を満たしながら、軽くてコンパクトにたため、持ち運びしやすいという、汎用性の高い製品群として位置付けられている。

……ど、どおりで、汗をかいても思いのほかドライな肌触りで、裏地が肌に張り付きにくいわけっすね(爆)。

まとめ:こんな人にオススメ

いわゆるフーディニと言われる軽量ソフトシェルは、100g前後で軽く、防風性に長けている。しかし、耐久性・防水性となるといささか心許ない。枝などにひっかけたらすぐにほつれたり、裂けたりする可能性はかなり高い。ならば多少重量が加算されたとしても(たかだか、約100gの加算)、耐久性・防水性・透湿性に優れた軽量レインウェアを選んだ方が、アクティブな山遊びには合っているかな、と。

とりわけ今回取り上げたARC’TERYX ゼータFLジャケットはGORE-TEX PACLITE®PLUSを採用しているため、耐久性、防水性、透湿性はハイレベルの出来栄え。おまけに裏地はサラッと、ドライで滑らかな肌触りで、不快な感じは一切ない。裾や袖周りも伸縮性を帯びており、フィット感の調整はラクラク。そしてなによりも、軽く、しなやかで、パッカブル。レインウェアと言っても、防風対策にも当然有効。やや細身なシルエットだが、動きやすく、通年で使い倒せそうなジャケットだと言えそうだ。

おすすめポイント

気になるポイント

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