山岳用のスリーピングバッグといえば主にダウンか化繊がほとんどである中、「ウール」を使ったユニークなスリーピングバッグがあるのをご存知でしょうか。上質なウールは「天然のエアコン」とも称されるほどの調湿・保温性能を備えています。天然素材であるダウンとウールを中綿に採用したユニークなGrüezi bag(グリュエッツィバッグ)のシュラフをフィールドで試す機会を得たのでレビューします。
2015年にドイツで生まれたグリュエッツィバッグのラインナップの中から、シーズン最盛期であるサマーシーズンに使うのにもっともふさわしい「Biopod DownWool Extreme Light175」を試した様子をお伝えします。
Biopod DownWool Extreme Light175の主な特徴
Grüezi bagの「Biopod DownWool Extreme Light175」は、ダウンとウールをブレンドした独自の中綿素材「ダウンウール」を採用したシュラフです。高い保温性を持つダックダウン(70%)と、優れた吸湿・調湿性を持つウール(30%)を組み合わせた革新的な構造で、ウールが内部の湿気を吸い取って外へ逃がすため、汗ばむ夏場や湿度が高い環境でも蒸れにくく、常にサラッとした快適な寝心地を保ちます。
本体重量は約450gと非常に軽量で、圧縮すれば直径約13×17cm(容量2.5L)というコンパクトなサイズに収まり、快適使用温度は12℃、下限温度は8℃で3シーズンの使用に適したシュラフです。
お気に入りポイント
- しなやかで体を包み込むようなフィット感
- ウールがブレンドされていることによる驚くほどの蒸れにくさ
- サマーシーズンに使うのにぴったりな保温性
- カーブを描くジッパーによる足の出しやすさ。温度調整のしやすさ
- コンパクトさ
気になったポイント
- 薄手のため、使用時期が限られる
- ウールの快適さと引き換えに競合製品と比べるとやや重い
主なスペックと評価
| 名前 | Biopod DownWool Extreme Light175 |
|---|---|
| 適応身長 | 175cm(ロングモデルあり) |
| 収納サイズ | 径130 x 170mm / 2.5L |
| 質量 | 450g |
| フィリング重量 | 180g |
| 使用温度域 | ・コンフォート:12℃ ・リミット:8℃ |
| 寸法 | 長さ2,000mm × 幅:770mm × 奥行:500mm |
| 付属品 | コンプレッション機能付きスタッフバック |
| Outdoor Gearzine評価 | |
| 快適性 | ★★★★★ |
| 保温性 | ★★★☆☆ |
| 重量 | ★★★★☆ |
| 収納性 | ★★★★★ |
| 使い勝手 | ★★★★☆ |
| 耐久性 | ★★★☆☆ |
| 多用途性 | ★★★★★ |
詳細レビュー「Biopod DownWool Extreme Light175」
快適性:しなやかで体を包み込むようなフィット感とウールがブレンドによる驚くほどの蒸れにくさ
まず驚かされるのはそのしなやかな肌触りです。実際にシュラフの中に入ってみると表面生地と中綿のやわらかな風合いが相まって、まるで体に寄り添うように包み込んでくれます。
フィールドで一夜を過ごしてみて感じたのがウールによる蒸れにくさです。Biopod DownWool Extreme Light175にはダウンウールというGruezi独自のフィリングを使用しています。ダウンボール一つ一つに対してウール繊維を物理的に結合させた独自素材で寝袋内の空気中に含まれる水分を効率的に吸収、発散させます。天然のエアコンと称される優れた素材であるウール。数多くあるシュラフメーカーの中でもウールを中綿に封入しているのはGrüezi bagのみです。このウールがブレンドされていることによるアドバンテージは保温力よりも「蒸れにくさ」だと感じました。
ウールと同様に天然素材であるダウンも通気性に優れますが、「蒸れにくさ」に関してはウールがブレンドされたBiopod DownWool Extreme Light175が非常に快適でした。状況によりシュラフカバーを使う時など特に蒸れやすい環境においてウールはその特徴を発揮してくれます。さらにウールがダウンの水分も吸収してくれることによりダウンの持つ「保温性」を維持することにも一役買ってくれており、濡れによる断熱力の低下を最小限にしてくれる効果も備えています。
夏山では寒さの対策と同時に暑さへの対策が必要になるケースも少なくありません。下界に比べ高所では気温が下がるとはいえ、暑さを感じることはあります。気温が10℃くらいで寒さを感じるような時でも、テントに入ってみると意外と暑さを感じることは何度も体験していますし、そんな時にシュラフに入るのは抵抗があります。結局シュラフに入らずに寝てしまい、朝方に寒くなって起きることもしばしばですが、そんな環境でもBiopod DownWool Extreme Light175は暑さによる不快感を感じることなく快適に眠り続けることができました。
暑くて足を出したい時に嬉しいカーブを描いたジッパー
暑さを感じた時の対策として有効なのがジッパーの開閉による温度調節ですが、Biopod DownWool Extreme Light175は足元にかけてカーブを描くようにジッパーが配置されているため、シュラフから足を容易に出せる形状になっています。ダブルジッパーになっているため、足元だけを解放すればシュラフが体からずれることもなく、足を張り出して手軽に温度調節ができて快適です。
保温性:快適使用温度12℃でサマーシーズンに使うのにぴったりな薄手のシュラフ
Biopod DownWool Extreme Light175は、快適使用温度が12℃、下限温度が8℃に設定されています。この温度帯は、夏の日本のアルプスなどで標高2500mを超えるような場所で使うにはギリギリの断熱性能です。
しかし、実際に使ってみて感じたのは、数値以上の断熱性能でした。体感温度には個人差があるものの、自分が使用した際は朝方の気温が手元の温度計で6℃と下限温度を下回る環境だったにもかかわらず、全く寒さを感じませんでした。
外気温が10℃を下回る環境であっても、テント内やシェルター内には温度差が生じます。さらに、呼気などによって湿度が上がることで、テント内部は気温以上に温かく保たれます。そうした状況において、このシュラフはまさにドンピシャで快適なシュラフでした。実際に試した感覚としては、5℃前後までを想定する環境であれば、ウェアの調整やカバーとの併用で十分に快適な睡眠が得られると感じることができました。
携帯性:重量450g。ULやファストパッキングを目指すのにふさわしいコンパクトさ
Biopod DownWool Extreme Light175の本体重量は約450g。手に取った瞬間にその軽さを実感できます。夏用シュラフで使用温度域が同等のモデルを調べてみると、だいたい平均値は450g前後。フードレスやキルトタイプのより軽量なモデルになると300〜350gほどで、Biopod DownWool Extreme Light175が特別軽量であるとはいえません。
ですが、先述した通り、ウールとダウンのハイブリッドによる極上の快適さを加味した上で450gという重量であることは、自分としては夏用のシュラフとして手に取るのはBiopod DownWool Extreme Light175になりそうです。快適さに対しての重量は許容範囲どころか、軽いと思えるほどの性能の高さでした。
付属の収納時のサイズは直径約13cm×長さ17cm(容量約2.5L)で、手のひらに載せられるほどの小ささ。収納袋が小さいため収納時にやや力を必要としますが、ここまで小さくなることで容量の限られた小型バックパックにもすんなり収まり、パッキングの自由度が飛躍的に向上します。1gでも荷物を削りたいULスタイルや、移動速度と機動性を追求するファストパッキングにおいて、この圧倒的な軽さと省スペース性は心強い武器になってくれます。
Biopod DownWool Extreme Light175夏にぴったりな仕様ですが、気になったのは薄手すぎて使用時期が限られるということ。下界であれば初夏〜秋まで使える3シーズン用シュラフと言えますが、アルプスなどの標高の高い山岳地帯で使うとなるとサマーシーズンが限界でしょう(そのシーズン中は抜群の快適性ですが)。夏用、春秋用、冬用と数種類のシュラフを所有し、使い分ければ年間を通して快適に過ごせますが、経済的にもそんなにたくさんのシュラフを所有できない人にとって、Biopod DownWool Extreme Light175よりももうワンランク上のBiopod DownWool Summer 175の方が適しているかもしれません。
まとめ:夏山で「蒸れずに」「快眠」したい人にとっての最適解はGrüezi bagのBiopod DownWool Extreme Light175かもしれない
夜にしか使うことがないスリーピングアイテムですが長く歩いた疲れを癒すには睡眠は欠かせません。夏の山で快適な睡眠をとるために必要なのは適度な寒さ対策と、蒸れにくさです。睡眠中に暑さによる蒸れ、不快感を感じるひとにとってGrüezi bagのウールブレンドのシュラフはまさに最適解と言えるでしょう。Biopod DownWool Extreme Light175は夏の山で快眠するためのシュラフとしておすすめの一枚でした。
ソロ登山やロングトレイル・ハイキングが学べる『トレイルの学校』やプレミアムコンテンツが楽しめる「Outdoor Gearzine メンバーシップ」やってます
執筆:Yosuke.C(ヨウスケ)
不便にならない程度に「できるだけ軽く」をモットーにバックパックひとつで行動する人。
春から秋にかけては山奥のイワナを追いかけて渓流へ釣りに。 地上からは見ることのできない絶景を求めて山を歩き。 焚火に癒されたくてキャンプ。 白銀の山で浮遊感を味わいにスノーボード。
20年以上アウトドアを嗜み、一年中アウトドアを自分流に楽しむフリーランスのライター。数十以上のアウトドア系WEB媒体での記事執筆経験をもとに、自身の経験や使ってみて良かった道具を発信していきます。


