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ある意味ダウンよりも快適!? ドイツが生んだ「ダウン+ウール」の最先端寝袋(スリーピングバッグ)Gruezi Biopod DownWool がついに日本上陸【Makuakeへ急げ】

山で使う快適な寝袋(スリーピングバッグ/シュラフ)といえば、真っ先に思い浮かべるのがダウン(羽毛)。

確かに重量あたりの断熱性の高さ(要するに軽さと保温性)だけを考えれば、ダウンに勝る中綿素材なんて、地球上ではまず見当たりません。ただ、ここでちょっと立ち止まって考えてみてください。ある一定の「理想的な環境」でだけ「軽くて暖かい」ことが、シュラフの快適さを決める要素なのだろうか、と。

今回紹介するドイツの新鋭スリーピング・ギア・ブランド、Grüezi bag(グリュエッツィ)が「発明」したのは、そんなダウンの見落としがちな弱点を克服し、ある意味で「ダウンよりも信頼のおける快適な寝心地」を実現しようとした、新しくエコな中綿素材「DownWool」を用いたスリーピングバッグです。

数年前にドイツ ミュンヘンでのアウトドア展示会「ISPO」でその存在を知り、日本に来ないか地道にウォッチしていたところついに今シーズン、エバニューから輸入販売されることに。さらになんと現在(2021年7月1日)、クラウドファディグサイト「Makuake.com」にて先行割引販売を行ってくれているではないですか。

そこで早速エバニューからサンプルをお借りして、何度かこのシュラフで寝させてもらい、その快適さを文字通り体感してみました。そこで分かったこの寝袋の実力、これまで体験したことのないまったく新しい快適さについて、早速書いてみたいと思います。

Gruezi Biopod DownWoolの特徴

今回サンプルでお借りしたのはMakuakeプロジェクトで取り扱っているアイテム(DownWool Subzero / DownWool Summer / Feater)ですが、重複を避けるため特に断りがない場合には基本的に「DownWool Subzero」についてレビューしています。

おすすめポイント

  • 厳しい環境でも暑すぎず、寒すぎず。常に健やかな寝心地を実現した実用的な快適さ
  • 寝袋内の蒸れを抑えてくれるウールの湿気への強さ
  • 足が出しやすいカーブしたジッパーライン
  • 小物が入るポケット
  • 化繊素材の使用を少なく環境を意識した仕様

気になったポイント

  • ダウンに比べるとやや重くかさばる
  • 現時点で日本国内では175cmサイズのみの販売
  • 高価

主なスペックと評価

項目Biopod DownWool subzero 175Biopod DownWool Summer 175
サイズ全長=200x77x50cm(適応身長=~175㎝)全長=200x77x50cm(適応身長=~175㎝)
収納サイズ圧縮時のボリューム=径19x20 5.5L圧縮時のボリューム=径19x17 5L
公式重量850g (+収納袋80g)700g (+収納袋74g)
中綿重量345g242g
素材(表面/裏地)380Tナイロン / 20D ナイロン100% Breathable Water-repellent380Tナイロン / 20D ナイロン100% Breathable Water-repellent
中綿素材DownWool Down70%(ダックダウン650+FP・90/10)Wool30%DownWool Down70%(ダックダウン650+FP・90/10)Wool30%
メーカー記載温度域(℃)
  • T-COMF = 2℃
  • T-LIMIT = -4℃
  • T-EXTR = -20℃

※EN23537に基づく使用温度域のテストを行い各製品に表示。T-EXTREME温度帯は凍傷になる可能性があります。使用するには危険な温度域です。

  • T-COMF = 8℃
  • T-LIMIT = 3℃
  • T-EXTR = -11℃

※EN23537に基づく使用温度域のテストを行い各製品に表示。T-EXTREME温度帯は凍傷になる可能性があります。使用するには危険な温度域です。

付属品コンプレッション機能付きスタッフバッグコンプレッション機能付きスタッフバッグ
保温性★★★★☆
重量★★★☆☆
携帯性★★★☆☆
快適性★★★★★
機能性★★★★★
汎用性★★★★★
総合評価★★★★☆

ダウンの隠れた弱点の克服から生まれた、革新的な合成中綿「DownWool」

グリュエッツィが独自に開発したハイエンド中綿素材「DownWool」とは、70%のダックダウンと30%のウールという、いずれも自然由来の素材同士をブレンドした合成中綿です。

なぜこのようなブレンドなのか?この新しいフィル誕生の背景には、一般的に最も快適な寝袋とされている「ダウン100%」の寝袋が抱えている「湿気」の問題を根本的に解決するという、野心的な目論見がありました。

ダウンは非常に優れた断熱性と軽量性を兼ね備えています。しかし一方でダウンは湿気の処理が上手ではなく、残念なことにその実力は湿度の低い、乾燥した状況でないと発揮されません。濡れたジメジメした環境や、テント内の結露、人から発せられる汗や水蒸気など、さまざまな要因によって湿度が高くなった環境下では、ダウンの保温効果は著しく低下してしまいます。

そこで濡れや湿気に強い中綿として現在、化繊の中綿や、撥水加工を施したダウン(撥水ダウン)などが現実的な代替手段として存在しています。ただ化繊はダウンに比べて格段に重くかさばりますし、また撥水ダウンは撥水効果の持続性などを考えた場合、現時点で恒久的な解決方法とは言い切れません。

ダウンとウール、お互いの弱点を補い長所を活かし合ったDownWoolの仕組み

ダウンの弱点を克服しつつ、ダウンの長所を潰さない、しかもそれを「環境に配慮した持続可能な手段で」解決する。ドイツの小さなアウトドア寝具ブランドがたどり着いた結論が「ダウン+ウール」という組み合わせでした。

ウールだけがもつ数多くの特徴のひとつに、断熱性を発揮するとともに「繊維内部に水分を溜め込むことができる」という性質があります。ダウンとウールが共存する中綿では、バッフル内に湿気が充満してくると、ウールはある種の天然除湿機のようにそれらを吸収し、湿度を低く保つように働きます。つまりダウンが苦手な湿気の処理をウールが肩代わりすることで、ダウンは乾燥した状態を保つことができ、常に100%の断熱性能を維持することができるという仕組みです。

言葉にすると簡単ですが、ダウンとウールの繊維同士を分離せず結合させる技術も、ダウンとウールのベストな配合を知ることも決して一筋縄ではいきません。「ダウン:ウール=7:3」という割合も、数多くフィールドテストと実験を繰り返した結果導き出された、断熱性と湿度処理、重量のベストなバランスだとか。

実際のところ、何がどう「快適」なのよ?

試行錯誤を重ねた末グリュエッツィはこのDownWoolのユニークな組み合わせを考案し、最適な断熱性と完璧に乾燥した睡眠環境をそこまで重量を増すことなく実現しました。言うまでもなく睡眠環境は睡眠の質に大きく影響します。そこで実際の寝心地はどのように違うのか確かめるべく、サンプルを借りてからテントで一晩、その他寝室内を冷房ガンガンにしたり、逆に冷房を切ったりしてさまざまな温度・湿度環境で寝てみました。

そして分かったのは、Biopod DownWool subzero 175での快適さを一言でいうならば、

「これまでのダウンで感じていた極端な場面での暑い・寒い・寝苦しいといった不快感を和らげてくれる」という不思議な感覚です。言い換えると、

「ダウンよりも幅広く、どんな状況でも安定して快適な寝心地を提供してくれる」とでもいうべきか。

ここからはあくまでも感想ですが、温度域の真ん中あたり(湿度低め)の気温で、寝始めぐらいの状況ではダウン100%と特に寝心地が違うということはありません。この製品に使われているダウン自体はフィルパワー650以上と、とびきり高い「かさ高さ」でないところが残念ではありますが※、それでも良質なダウンの暖かく包み込んでくれるような温もりと質感は、ウールが混紡されたからといってまったく変わりませんでした。きめ細かいナイロンの肌触りも心地よく、ダウン100%のシュラフで寝ている感覚とほぼ同じです。

※メーカーが最も重視しているのはスペックの高さよりも「環境負荷と技術的な性能の両立」です。再生可能な天然素材であることはもちろん、ミュールシングフリーの羊毛や、RDS 認定ダウンなど、厳しい動物保護基準に従って飼育された動物から適切な方法で生産された原料のみを使用するというポリシーは、このことと無関係ではない気がします。

ところが、シュラフの中が温まってきてちょうど身体が少し汗ばんできたなと感じたところで、自分の経験ではダウンの場合そこからどんどん汗が引かず内部が蒸れて寝苦しくなっていくのですが、このDownWoolの場合、そこから寝苦しくなる手前で粘ってくれる。シュラフ内部での快適な状態がより長く続いてくれる印象です。

ダウンはどんな環境でも常に断熱のことしか考えられない、愛すべき猪突猛進タイプなのですが、その無鉄砲さをウールが優しくサポートして、寝苦しさの原因となっている蒸れを軽減させ、寝袋内をマイルドな暖かさで満たしてくれる。そんな絶妙なコンビネーションがとても印象的です。

また、極端に低温な状況では使えていないのですが、寒さを感じる状況で寝たときでも、その快適さは十分に満足のいくものでした。結局気温の高い・低いに関わらずウールが湿度をコントロールしてくれるため、極端な状況でもない限り常にダウンが実力通りに働くことができ、温度域内全体で安定して快適さを発揮してくれます。少ない隔壁でもロフトの偏りが起きにくく、コールドスポットができにくいチャンバー構造(subzeroのみ)の確かさも見事。

こうした総合的な快適さを生み出す機能性の高さが、環境によっては断熱性能が不安定にならざるを得ないダウンに比べて、環境に左右されず断熱性能を発揮できるという意味で、実質的にダウンよりも快適さを感じられるのではないかと思ったわけです。

ちなみに今回日本には175cmモデルしか輸入されないようなのですが、176cmの自分にとってはぴったりサイズで使うことができました。ただもっと大柄な人にとっては惜しい部分と言わざるを得ません。

気になる重量・コンパクトさは?

付属の収納袋除けば重さが約850gのBiopod DownWool subzero 175は、同レベルの暖かさを備えたダウン100%シュラフと比べて特に軽いということは決してありませんが、格段に重いというものでもありません。

身長や温度域などが各社違うため簡単に比べられるものではありませんが、例えばNANGAの撥水ダウンモデルUDD BAG 450DX(快適1℃~下限-4℃、178cm)の重量は約825gですが、NEMOの化繊シュラフFORTE™35(下限-1℃、183cm)は960g。もちろん少しでも重量を気にする人にとっては無視できない差だとは思いますが、各社のスタンダードモデルの中でみれば、気になる差というほどではありません。

収納時の体積(コンパクトさ)についても同様に、最もコンパクトなダウン<DownWool<化繊といった感じ。ドローコードとコンプレッションストラップが付いた付属のスタッフサックのおかげで、かなりコンパクトに圧縮することができます。

左からナルゲンボトル(1L)、インナーシーツFeater、Biopod DownWool Summer 175、Biopod DownWool Subzero 175

平均的な3シーズン化繊寝袋よりも確実に小さく、冬用羽毛寝袋とほぼ同じサイズくらい、といっていいでしょう。

快適な睡眠にとって大切な細部のパーツもしっかりと配慮

単に素材やギミックに頼ることなくほんとうの意味での快適性にこだわる姿勢は、細部にもしっかりと現れています。

メインジッパーは寝袋の側面に沿いながら、足元につれてのカーブしていく独特のラインを描きます(下写真)。ちなみに、ジッパーの白さは暗闇のテントの中で少しでも見やすくなるようにとのこと。

少し暑いと感じたら、上半身を締めたまま、下端のダブルジッパーを開き、足だけ出すことができるという仕組みです(下写真)。

ジッパーは多くの高品質なスリーピングバッグに採用されている、生地を噛み込みにくいYKK製の大型ジッパー。しかも驚くほど軽くてスムーズでした(下写真)。

寒気を感じやすい足元は、余分な隙間が生まれないように立体的なシェイプ(下写真① subzeroのみ)。フードと首周りは頭部のサイズに合わせてドローコードで隙間を埋めフィットさせることができ、とことん寒気を感じにくくしてくれています(下写真②)。またヒートロスが起こりやすい顔周りとジッパーの裏側にはフェイスバッフル・ネックバッフル(subzeroのみ)・ジッパーバッフルがしっかりと配置され(下写真③④)、冷気を遮断し温もりを肌に密着してくれます。

頭の後ろ部分には、ちょうどフリースジャケットなどを詰めて枕として使うことができるピローポケットまで(下写真)。普段は衣類を詰めたスタッフサックなどで代用していましたが、こちらの方が常にズレずに頭の後ろに位置してくれるのでありがたい。

外側胸元にはジッパーポケット、内側にはベルクロポケットが配置され、ヘッドランプやスマートフォンを収納しておくことができます(下写真)。

オプションで展開されている電熱式インナーシーツ「Feater」をズレずにセッティングできるアタッチメントも(下写真)。

まとめ:見せかけではない快適性・実用性・持続可能性は、今最も未来にいる寝袋

世界的にみてもあまり頻繁なアップデートが行われないスリーピングバッグにあって、ここ数年出会った中で最も印象的な寝袋の1つでした。近いうちに同コンセプトでの寝袋が大手のメーカーからリリースされたとしてもまったく驚かないでしょう。それくらい、決して出落ちではなく確固としたビジョンと技術に基づいて作られた、総合的な高い品質を実感させてくれる寝袋でした。欧州で最も権威あるアウトドア・アワードのひとつであるOutDoor INDUSTRY AWARD 2017を受賞していることからも、その注目度・完成度の高さは折り紙つきです。

日本ではエバニューを通じてこれから輸入・販売される予定。2021年07月11日まで(もうすぐ終了!)行われているMakuakeでの先行割引販売では、下限-4℃まで対応のSubzero、そして下限3℃まで対応のSummer、さらに両モデルに取り付けられ単体でも使用できる、モバイルバッテリー発熱式ブースターのFeaterが選べるようになっています(このインナーシーツもなかなか便利そう)。価格はこの製品のネックのひとつではあるので、少しでも安く手に入れることができるこの機会にぜひ検討してみてはいかがでしょう。

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