「既存の製品よりも明らかに進化した体験を約束できる」と信じたものだけを製品化する——。
テント作りに始まり、常に独自の道で最高の製品を追求し続ける、東海岸を代表するアウトドア・メーカー、NEMO(ニーモ)が創業から守り続けているこのデザイン哲学は、初めて手掛けた製品のエアチューブ式テントやサイドスリーパーに嬉しいスプーン型寝袋、リクライニング&ロッキングチェアといった数々の革新的な製品によって裏付けられ、それらと共にニーモは北米のトップブランドにまで駆け上がっていきました。
より良い製品づくりのために決して常識をうのみにせず、トレンドに逆らうことも恐れず、ただひたすらに自分たちが良いと思うものを追求し続ける彼らの姿は、ただただリスペクトしかなく、個人的に最も新作を楽しみにしているブランドのひとつです。
そのニーモがついに本格マウンテンアクティビティ向けのバックパックを開発しました。それが今回紹介する「Persist™ Endless Promise®(以下、パーシスト)」です。
一見すると従来のバックパックと変わらない外観ながら、いざ蓋を開けてみると、素材から背面システム、そして細かなパーツに至るまで、これまでとはまったく異なるアプローチからの斬新で合理的な創意工夫が次から次へと出てきます。
この春夏さまざまなシチュエーションで使用した数カ月間は、こうしたこれまでなかったユニークな着眼点に触れるのが楽しくてしょうがありませんでした。さっそくレビューをお届けします。
目次
NEMO「Persist™ Mens 45L Endless Promise®」バックパックの主な特徴
NEMO「Persist™ Mens 45L Endless Promise®」は、過酷な自然環境でのハードな山岳アクティビティにも対応する、丈夫で快適、実用性に富んだ山岳用バックパック。優れた耐水性と強度、耐久性に優れ、しかも100%リサイクル可能な「CERO™ファブリック」や、通気速乾性とクッション性に優れた「CCubed™ クッション」など、革新的な独自素材を採用したことで、競合と比較して抜きんでた強さと快適さを実現。収納面では縦走登山用バックパックに求められる基本的なポケットやアタッチメント類をはじめ、荷物の出し入れを容易にするダイレクトアクセスジッパーや、必要に応じてマルチに活用できる多目的ストラップシステムなど、より使いやすさに配慮した収納類を多数備えています。これらの基本品質の高さと汎用性・拡張性に優れた収納類によって、年間を通じた一般的な登山やハイキングだけでなく、沢登り、ロッククライミングのアプローチ、スキー登山など、積雪期を含めた幅広いアクティビティをカバーしています。
お気に入りポイント
- フカフカのクッション性と抜群の通気速乾性を備えた背面パッド
- サポート力の高い内部フレームを中心とした安定感の高いサスペンションシステム
- 耐水性と耐久性に優れた丈夫な生地
- 背面調節機能による幅広い体型への確かなフィッティング
- 全体にちりばめられたポケット・アタッチメント類、メイン収納へのダイレクトアクセス、いざというときの多目的ストラップシステムなど隙のない収納性の高さ
- 万が一破損しても応急処置が可能で、フィールドで生じるさまざまなケースが想定されたバックル類
- ハイキングから縦走、アルパイン、沢登りや藪漕ぎ、BCスキーまで、タフなアクティビティなら何でもこなせる汎用性の高さ
- 100%リサイクル可能な素材を使用するなど持続可能性に配慮した素材使い
気になるポイント
- スピードを求めるハイカーや、穏やかなトレイルを歩くだけのカジュアルなハイカーには重量と丈夫さがやや過剰
- 価格
※レビューでは45リットルモデルを試用しました。
主なスペックと評価
アイテム名 | NEMO「Persist™ Mens 45L Endless Promise®」 |
---|---|
容量 | 約45 / 30 リットル |
実測重量 | 1680 g (45L) / 1450 g (30L) |
素材 | 300D / 900D CERO™リップストップ(100%リサイクルPET) |
カラー | ブラック / スモーキーオリーブ |
女性モデル | あり |
背面長調節 | ◯ |
背面パネル/ショルダーストラップ |
|
ハイドレーションスリーブ | ◯ |
メインアクセス | トップローダー式(雨蓋式) |
レインカバー | ×(きわめて防水性に優れた素材のため実質的には防水仕様。ただジッパーや縫い目などは防水ではない) |
ポケット・アタッチメント・パーツ類 |
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Outdoor Gearzine評価 | |
快適性 | ★★★★☆ |
安定性 | ★★★★★ |
収納性 | ★★★★☆ |
機能性(使いやすさ) | ★★★★★ |
耐久性・耐候性 | ★★★★★ |
重量 | ★★★☆☆ |
汎用性 | ★★★★★ |
適したアクティビティ | 年間を通じたハイキング・縦走登山・岩稜などのバリエーションルート・沢登り(藪漕ぎ)・スノーアクティビティなど、軽量スタイルを除く幅広いタフなアウトドア・アクティビティ |
詳細レビュー
丈夫さ・耐久性:「日本の過酷な山岳環境に応える耐久性と耐候性」を備えた独自開発ファブリック
高い品質と実用性への徹底したこだわりで知られるNEMOの「初」本格山岳向けバックパックにおいて、まず着目すべきはその哲学が存分に反映された、NEMOの”本気度”がうかがえる独自開発の生地にあります。
そのひとつ、パック本体メインに採用されているのは、100%リサイクルPET素材を原料とする「300 × 900デニールリップストップ織りのCERO™ファブリック」です。その特筆すべき特徴は「最も厳しい要求に応える耐久性と耐候性」であり、このコンセプトを具体化するにあたって想定されていたエリアのは何を隠そうここ、多様でときに過酷な日本の山岳環境だといいます。道理でぼくが欲しかった特徴があれもこれも揃っているわけだ。
確かに言われてみれば、日本の山岳は穏やかな樹林帯から急峻な岩稜帯、密集した木々の藪漕ぎ、川の渡渉といった多様な地形に加え、高温多湿に梅雨や台風、大雪など、変化に富んだ気象条件など、地域や四季を通じて世界でも類を見ないほど多様で厳しい条件にさらされています。つまり裏を返せば、この日本のタフな山岳を想定して作られたパーシストが、ぼくらにマッチしない訳がないということです。
優れた引裂強度・耐摩耗性
CERO™ファブリックの強さの特徴その一は、優れた引裂強度・耐摩耗性。軽くてしなやかながらハリとコシを備え、触っただけで生地の只者ではないほどの強靭が伝わってくるほど。実際のフィールドで鋭利な岩に擦ったり、木の枝など尖ったものに当たったりしてみましたが、見事に傷一つつきません。このため行動中はザックを荒っぽく地面に置いてその上に座ったり、沢の高巻きで藪の中を分け入っても擦れたりして傷つかないかと無駄な心配をする必要がなく、安心して歩みを進めることができました。
しかもこの生地はPETを主原料としているため、一般的なポリウレタン(PU)系の防水コーティングと比較して、本質的に加水分解しにくいという優れた特性を持っています。まだ何年も使っていないため実際に確認はできていませんが、この丈夫さと高い耐久性は製品寿命を延ばし、買い替え頻度を少なくすることで結果的に高コストパフォーマンスに繋がります。裏地が数年でボロボロと剥がれ落ちる経験を何度もしている人間としては、大いに楽しみなところ。
パックカバー無しでもおおむね安心の高耐水&高撥水
さらにCERO™ファブリックは傷に強いというだけでなく、予期せぬ雨や水濡れなどに対しても高いプロテクションを発揮してくれます。何やら標準的なバックパックと比べて「最大20倍」ともいわれるほど高い防水性能を備えており、一日中雨のハイキングでもためらいなく素のまま歩き続けることができるとか。
とはいえ「通常の20倍」という数字だけではいったいどんなレベルなのか分からないとは思いますので、試しにシャワーをある程度の時間(10~15分くらい)当て続けてみました。その結果、いつまでたっても水が染み込んで生地が色濃くなるような様子はほとんど見られず、おおむね生地は水を弾き続け、ボロボロと水滴を落としていきました(下写真)。ダイニーマなどではなくポリエステルの織物でここまでの防水性を発揮していることはシンプルに驚きます。
ただし、もちろん縫い目などがシームテーピングされているわけではないため完全防水ではありません。ただこれならばパックカバー無しでもほとんどの山行は問題ないと思える程度のパフォーマンスはありますので、防水・撥水性に関しても大満足です。※どうしても心配な人はカバーをつけたりインナードライバッグなどを使いましょう。
背負い心地(快適性・安定性):抜群の通気性とフィット感を両立した目から鱗の背面システム
これまでNEMOの手掛けてきたアイテムのなかで、「快適さ」に妥協した製品はこれまで一度たりも見たことがありません。このパーシストも例外ではなく、これまでのバックパックの常識を覆す新しいアプローチで快適な背負い心地を実現していました。
フカフカのボリューム感と抜群の通気性を両立したCCubed™ クッションと、速乾性を爆上げするDryWing™バックパネルデザインの合わせ技による革新的な背面パッド
CERO™ファブリックがバックパックをダメージや風雨から守る一方で、背中や肩、腰といった背面パネル全体に配置された、これまた独自開発のクッション素材「CCubed™クッション」は、1年を通じた山での行動中に生じるさまざまな不快感を軽減するように働いてくれます。
CCubed™クッションは、その体積の97%が空気で構成されるというほど空気を多く含んだ構造の、多孔質立体メッシュパッド。指をあててみると非常に柔らかく弾力性があり、また従来のPUフォームやEVAフォームと比較しても抜群の通気性と吸湿発散性を備えているといいます。
荷物を入れて背負ってみると、確かに背中・肩・腰を贅沢なフカフカした感触で受け止めつつ、身体全体が包み込まれるように優しくフィットしてくれました。クッション性と反発性のバランスもいいので重みにも耐え、肩にショルダーハーネスが食い込む感じもまったく無し。長時間行動してもクッションがヘタることもありませんでした。
その上、長時間の歩行で汗をたっぷりと吸収しているはずのパッドは、ベタつくような感覚もまったくなく、汗は肌から吸い上げて外部へと拡散してくれていました。立体構造のメッシュは汗を素早く肌から遠ざける吸湿速乾効果を発揮し、気化熱による冷却効果も生み出し、ドライで快適な状態を維持してくれるのです。
この抜群の通気速乾性をさらに加速させているのが、背面パネルの両サイドに翼のようにはみ出した「DryWing™バックパネル」(下写真)です。
背面のクッションがなぜかサイドに少しはみ出したようなデザインは一見少し奇抜な見た目ですが、理由を知るとこれが実に巧妙。
DryWing™バックパネルは、CCubed™クッションによって吸い上げられた水分が自然な毛細管現象によって両サイドのより乾燥したこのウィング部分へと広がっていくことで、ここから水分が絶えずスムーズに蒸発していくという仕組みです。
実際にこの暑い夏のトレッキングで背負い続けてみたところ、当然のように歩き始めてすぐに汗をかき始めてきたものの、背面パネルは継続的に汗を吸い上げ、肌面の汗を身体から引き離すように作用し、背中の蒸れの不快感やオーバーヒートを回避しつつ、最大限のドライ効果を発揮してくれました。その持続的なドライ感はちょっと今までにない快感。
これがどれだけ革新的なことかというと、これまでであれば、背面の通気速乾性が高いバックパックとしては背面に隙間のある、いわゆる「背面ベンチレーション構造」のバックパックが主流でしたが、その場合は重心安定性やパッキングしやすさなどのトレードオフがどうしても避けられませんでした。一方背面密着型は当然安定性こそ増しますが、背面の通気性は諦めなければならない。
その二律背反を乗り越えたのがこのパーシスト。「CCubed™クッション+DryWing™バックパネル」は、いわば背面ベンチレーション構造と背面密着型の良いところ取りをしているようなもの。さすが日本の過酷な環境をターゲットにデザインされただけあります。快適な背面を保ち、それが結果として汗による不快感や汗冷えのリスクを軽減し、より一層楽しくそして安全にアクティビティを楽しめるようにサポートしてくれたパーシストは、高温多湿な日本の夏山登山にこそふさわしいと確信しました。
荷重を効果的に分散し、長時間の行動でも疲れにくい安定した背面フレーム構造
柔軟性と剛性を両立した軽量スチール製の外周フレームを備えた内部フレーム構造の背面は、荷物を目一杯詰め込んでもヘタることなく、しっかりと腰に荷重を伝え、安心感の高い快適な背負い心地が感じられました。
ヒップベルトは、厚すぎず薄すぎない適度なパッドが腰骨をしっかりと包み込みます。パーシストのような中容量のパックでは比較的柔軟なヒップベルトの方がフィット感が高く荷重分散が向上するため、この厚みは絶妙です。
ユニークなのはバックルの構造で、一般的なヒップベルトのように中央ではなく、左側に配置されたプラスチック製のレシーバーに金属製のバックルを通して固定し、引き締めます(スノーパックやアルパインバックパックを彷彿とさせます)。
始めてみる人にとっては慣れるまで少し時間がかかりますが、他のバックルに比べて軽量で壊れにくいという利点があります。締めにくいとか緩みやすいといったデメリットもまったく無いため、一度慣れてしまえばまったく問題はありません。
さらに幅広い長さに調節可能な背面長調節システムは、体型に合わせた適正なフィッティングを可能にします。調節は難しくなく、ベルクロで固定されたショルダーヨークを引き上げると胴体部が長くなり、下げると短くなります。
幅広で適度な柔らかさを備えたショルダーストラップは荷重を面積いっぱいに分散させ、さらに表面には表面積を大きくして(想像ですが)水分の発散効率を高めるメッシュ生地も搭載されています。肩口にはロードリフターがしっかりと付いており、重荷でもバックパックがブレたりするような心配もありません。
安定した背面フレームとヒップベルト、ロードリフターが連動したサスペンションシステムのおかげで、45リットルの容量いっぱいに荷物を積めたとしても十分なサポート力を発揮しました。
収納と使い勝手:流行に流されず、使いやすさと汎用性にフォーカスしたスマートな収納類
一度でもNEMOのテントを使ってその細部まで行き届いた使いやすさを体験したことがある人ならば、このパックの収納面でも同じように優れた実用性を期待するはず。その期待は間違ってはいません。
メイン収納
雨蓋式のメイン収納は、開口部にワンアクションで開け閉め可能なドローストリングと、取り外し可能な圧縮ストラップを備えています。圧縮ストラップは荷物を圧縮したり、ここにロープやマットを挟みたい時などには便利ですが、常に必ずしも必要というわけではないので、個人的には通常の登山では省いてしまうことも多いです。この「必要に応じて省いていい」っていう仕様は地味に嬉しい。
雨蓋を締めた状態でも、右サイドに縦に配置されたダイレクトアクセスサイドジッパーによって中の荷物にすぐアクセスできます。軽量バックパックなどでは省略されてしまうことも多いジッパーですが、個人的には譲れない重要パーツ。パーシストにはしっかりと搭載されていました。
メイン収納内部にはハイドレーションリザーバーを収納するためのスリーブが設けられ、チューブを正面に通すための左右ポートも備えていました。
トップリッド(雨蓋)収納
トップリッド(雨蓋)は本体に縫い付けられていない、いわゆるフローティングタイプで、かなりの範囲で上下に動かすことができます。荷物が非常に多くなっても雨蓋位置を調節できるし、雨蓋とボディの間にロープやマットなど、バックパックに収まらないかさばるアイテムを運ぶのにも便利です。
雨蓋ポケットは標準的なゆったりとしたサイズで、貴重品や行動食、帽子や手袋などその他すぐに出し入れしたいアイテムを収納できます。
雨蓋の裏側に配置されたジップポケットは、中にキークリップが付いています。鍵や貴重品、トイレ・救急用品などを入れるのにいいでしょう。
外側収納
メイン収納と雨蓋の他に、外部には合計7つのポケットが備わっています。それらはフロントに1つ、サイドに2つ、ヒップベルトに2つ、そしてショルダーストラップに2つと、およそ考えられるほぼすべての部位にまんべんなく配置され、配置的に足りないと感じることはまったくありませんでした。
まずパック正面に配置された、縦に長いジッパーが付いたフロントポケット。軽くマチが付いており、かさばる荷物も意外と入ります。
用途がハイキングオンリーであれば、ここは軽量なメッシュのストレッチポケットが主流かもしれませんが、このパックがカバーしているアクティビティは、四季を通してのオールラウンドなアドベンチャー。従ってポケットは多少の重さを犠牲にしても耐久性のあるCERO™ファブリックとしっかり閉まるジッパーで守られています。こうすることで、一般的な雨具や防寒着、帽子や手袋、行動食だけでなく、雪山登山や山岳スキーで即座に出し入れが必要なクランポンやエマージェンシーキット(スコップ・プローブ)のためのスペースとしても利用することができます(下写真)。
次にサイドには、左右それぞれにマチ付きでストレッチの効いた丈夫な生地のポケットが配置されています。
ナルゲンボトル(1L)が入るのに十分な深さと幅を備え、上部には取り外し可能で位置の調節も可能なコンプレッションストラップが設けられているので、長物を固定することもできます。
ジッパー付きのヒップベルトポケットは左側に地図や大きめサイズのスマートフォンも難なく入る非常に大きなメッシュポケット。反対右側には、まさに「ありそうでなかった」拡張可能なメッシュ地の隠しボトルホルダーが搭載されていました(下写真)。先述のサイドポケットではボトルの出し入れがしにくかったので心配しましたが、なるほどこう来たかと。500mlのペットボトルからナルゲンボトルまで入り、行動中パックを下ろさずに水分を補給できるのでに非常に重宝しています。
最後にショルダーストラップには同じ形のマチ付きジップ収納が左右それぞれに配置されており、スマートフォンやサングラス、汗拭きやジェルなどの小物を入れておくことができます。ポケットのマチ部分は耐久性のあるメッシュ素材で、通気性を損なわない作りになっています。若干クセのある形でランニングベストのようにソフトフラスクを入れるには適していない形状です。
どんなギアでも持ち運び方を工夫できる「多目的ストラップシステム」が秀逸
ここまででもほぼ文句なしの収納類ですが、ここからさらに個人的にもお気に入りだったのが、さまざまなアクティビティを想定した、自由度の高い秀逸なアタッチメントシステム「多目的ストラップシステム」です。
このパックには標準で3本の取り外し可能なコンプレッションストラップと、2本のフック付きユニバーサルストラップ(オレンジ色)が付属しています。それらをパック正面左右に配置された2本のデイジーチェーンや、その他の各所に細かく散りばめられたループに連結することで、用途や必要に合わせてさまざまなギアを固定することができるのです。これが使ってみると非常に良くできている。
最も感心したのは、これによって「使わないのにただ付いているだけのアタッチメント」というのが無くなるということ。不要であれば外せばいいわけなので。一方で逆に荷物が多いとなれば、これを最大限上手く使うことでパックの収納力以上に多くの荷物を運搬も可能であることが分かりました。無駄をなくしつつ、必要であれば拡張も可能と、まさにいうことなしです。
たとえばパックの底部にはスキーストラップの他、コンプレッションストラップによってテント本体やマットレスを固定することができます。これはまぁ、基本です。
底部にはピッケルやトレッキングポールを運ぶためのデュアルピッケルループが付いており、サイドストラップと一緒に使うことでポールの持ち運びも可能。
あるいはトップリッドの四隅にあるループにユニバーサルストラップを引っ掛けてシュラフやテント、マットレスなどを括り付けたり。これ以外でも好きなものを好きな場所に固定することができ、もちろん自分でストラップを追加してもいいですし、想像力次第で使い方は無限に広がります。
壊れた時のことも考えられたバックルなどのパーツ類
最後に触れておきたい点として、パーシストのパーツ類はすべて「修理のしやすさを考慮したパターン設計」が採用されているところもまたニクイ。
例えばバックル類などは万が一破損した場合でも簡単に破損箇所を何らかの代用によって応急処置をすることが可能です。通常のバックパックではプラスチックのバックル類はたいていの場合ストラップに「縫い付けられて」いることがほとんどですが、パーシストの場合、これらのバックル類はことごとくストラップに縫い付けられているのではなく、ストラップループに通されて固定されているのです。
こうすることで、例えばバックルを踏んだり強く当たったりした拍子に万が一割れてしまったとしても、ストラップループを代用することによって応急処置が可能です。
しかも交換用パーツもザックごとメーカーに送って縫い付けてもらう必要がなく、パーツだけ取り寄せて、自分でパーツをループに通し直せば交換完了。何とユーザーフレンドリーなことか。ちなみにパーツ類は容易にリサイクルできる素材のみを使用し、サステナビリティにも配慮された設計……どこまでいっても抜かりが無い。
まとめ:ここ最近で一番の驚きと感動。高いレベルで1年中どんなアクティビティでも実用に足る汎用性の高さは素晴らしいの一言
NEMO パーシスト 45Lは、登山用バックパックとして必要な耐久性と荷重安定性といった安全面での高いパフォーマンスを備えながら、十分に軽量で、さらに他モデルにはない優れた快適さと使い勝手の良さを備えた、ここ最近で一番の驚きと感動を覚えたバックパックでした。
何よりも独創的でありながら合理的な機能の数々と、その細部まで配慮が行き届いた抜かりのない完成度の高さは、これが山岳バックパック第一作とはとても思えないほどであり、数ある登山向けバックパックの最先端といっても言い過ぎではないと断言できます。それくらい、ここで採用された生地のプロテクションや背面システムの快適さ、収納システムのスマートさといった水準は、どれもがこれからのバックパックのスタンダードとなって欲しいクオリティでした。
あえて難点、というよりも注意点を挙げるとすれば、今主流のロングトレイルや緩めのハイキングといったアクティビティだけしかやらないよという人にとってこのバックパックは、耐久性や機能的にオーバースペックであり、より削ぎ落とされた軽くてモデルの方が適しているという点でしょうか。
ただ、たいていの場合、最初からそこまで割り切れている人なんてそうはいないでしょう。仮に最初は短めのハイキングから始めようと考えていたとしても、いずれはアルプスの山に登りたいという気が1ミリでもあれば、このパックはお釣りがくるくらい十分におすすめです。
「これ1つで何でもできる」という点もこのモデルの魅力。1つであらゆる用途に対応できるパックを探しているなら、今はこれ一択です。
ハイキングから縦走登山、沢登り、バリエーションルート、冬山登山やバックカントリーなど、四季を通じたあらゆるアドベンチャーで活躍できる性能と機能を備えたパーシストを、これから秋冬に向けてどこに連れて行こうか考えるのが楽しみです。まったく新しい景色を見せてくれる相棒とともに、これからどこに行きましょうか。