冬の寒さを防ぎながら同時に暑さによる衣服内の蒸れも素早く解消してくれる、行動保温着、いわゆる「アクティブインサレーション」はここ数年急速に人気が広まりつつあるのはご存じの通り。ただ現在多くのブランドからさまざまなモデルが登場している一方、どうしても機能的には似たり寄ったりの製品が乱立してしまっているのも事実です。確かな実用性を備えた製品を見極めるのは簡単ではありません。
そんななか、この冬 SALOMON(サロモン)から新たにリリースされたアクティブインサレーションジャケット「MOUNTAIN FLEX HOODED」は、独自の工夫を施して高いパフォーマンスを実現した中綿素材や、フィールドと街をクロスオーバーするデザイン性の高さなど、サロモンらしく機能とデザインの両面で「違いを見せ」た一着。他モデルと何がどう違うのか。早速レビューしていきます。
目次
SALOMON MOUNTAIN FLEX HOODEDの主な特徴
SALOMON MOUNTAIN FLEX HOODED は、急な登りからハイペースな下りまで、低温下でのあらゆるアクティブなシーンで快適さと動きやすさを提供する行動保温ジャケット。軽量で適度なストレッチ性を備えた防風・撥水性の高い表生地と、吸汗速乾性と通気性の高いストレッチ ニットライナーを備え、動きの自由を確保しながら常に肌面をドライに保ちます。適度な保温性と通気性を備えたPrimaLoft中綿には「ClimateSync テクノロジー」による3点星型のレーザーカットが施され、活動量に合わせて通気性と断熱性を自然に調節します。冬のトレイルランニングから雪のバックカントリースキーまで、ハイテンポなアクティビティで寒さを防ぎながらの快適さを求める人に最適のミッドレイヤーです。
おすすめポイント
- 「暖かすぎず寒すぎず」の行動保温着として適したPrimaLoft中綿
- 活動量に合わせて衣服内の湿気と熱を調節するClimateSync テクノロジー
- 山での動きやすさを妨げない適度な伸縮性
- 適度に風と水滴を防ぎつつ、空気の流れを妨げないアウターファブリック
- 吸汗速乾性と伸縮性抜群の裏地ニット
- 頭の形にフィットする調節可能なフード
- スマホも十分入る大きめのインナージップポケット
気になったポイント
- 重量とコンパクトさ
主なスペックと評価
項目 | SALOMON MOUNTAIN FLEX HOODED |
---|---|
重量 | 455g |
カラー | Surf The Web/DEEP BLACK/SHITAKE |
サイズ | S / M / L / XL |
表地 | アクティブ・リップストップ・シェル(86% ナイロン, 14% ポリウレタン) |
裏地 | ストレッチ・ニット(100% ポリエステル) |
中綿 | ClimateSync テクノロジーを搭載したPrimaLoft Active Vent |
ポケット | ・左右ハンドジップポケット ・インナーチェストジップポケット |
参考価格(税込) | 37,400円 |
Outdoor Gearzine評価 | |
快適性 | ★★★★☆ |
保温性 | ★★★★★ |
ムレにくさ | ★★★★☆ |
動きやすさ | ★★★★☆ |
速乾性 | ★★★★☆ |
耐久性 | ★★★★☆ |
重量 | ★★★☆☆ |
汎用性 | ★★★★★ |
詳細レビュー
通気性と断熱性を両立したPrimaLoft Active中綿 × 独自のClimateSync テクノロジーによる「温・湿度調整力」の高さ
早朝にはようやく霜も降りはじめた11月の丹沢の低山に伸びるトレイルを、長袖薄手ベースレイヤーの上からこのジャケットを着て歩いてみました。
歩いてみてすぐに感じるのは確かな保温力の高さ。一見するとそこまでモコモコとしているわけではないのに、身体の熱は思ったよりも閉じ込めてくれています。
その暖かさの理由はもちろん、このミッドレイヤーに採用されている断熱素材のPrimaLoft。言わずと知れた化繊中綿の世界トップブランドのひとつで、その豊富なラインナップのなかでも特に通気性の高さにフォーカスした「Active Vent」というシリーズが採用されています。中綿自体は薄手ながら、氷点下近くのトレイル歩きでもちょうどよく感じられました。
しかし、このインサレーションジャケットのユニークさとパフォーマンスの高さが光るのはここから。山登りあるある的には、歩きはじめこそ寒かったとしても、上り坂をしばらく歩けばすぐに暑くなって着ている上着を脱ぎたくなるもの。それがこの日は(ジッパーを開けて換気はしましたが)ピークまで脱ぐ必要はまったくありませんでした。つまり「蒸れにくさ」が半端ないのです。
PrimaLoft Active Ventの中綿自体の通気性が優れているのはもちろんなのですが、このモデルはそれだけで終わりません。背中部分の中綿自体に3点星型の精密なレーザーカットが施された独自の「ClimateSync テクノロジー」によって、身体が大きく動けば動くほど、ペースを上げれば上げるほどこのスリットが開き、衣服内部の湿気がより放出しやすくなるという仕組みです。外側から見ることはできませんが、試しに光に透かしてみたところその様子がくっきりと分かります(下写真)。
しかもこのスリットは逆に動きが止まれば衣服内の通気を抑える働きをするため、熱を閉じ込めやすくなるため、見事に「動けば湿気を放出し、止まれば熱を閉じ込める」という絶妙にスマートな機能を実現しています。
吸汗速乾性と伸縮性抜群の裏地ニット × 適度に風と水滴を防ぎつつ、空気の流れを妨げないアウターファブリック
このようにMOUNTAIN FLEX HOODEDの中綿は素材・構造の両面で断熱性と通気性を高いレベルで両立しているのが分かりますが、それをさらにサポートしているのが裏地と表地の計算された組み合わせです。
まず裏地はソフトな肌触りと伸縮性を備え、非常に高い吸水性と速乾性、そして通気性を備えたポリエステル・ニット・メッシュ。かいた汗はすぐにこの面が吸収し、即座に外側レイヤーに受け渡されるため、汗が残って汗冷えとなることがありません。
そして表地にはストレッチ性と防風・撥水性を備えたリップストップ生地を配置。アウターとしてのプロテクションと耐久性を備えつつ、空気の流れは妨げていません(下写真)。防風性を備えた通気中綿なので、気温が高めの秋口では蒸れが抑えきれずに少し暑いかも知れませんが、逆に風が冷たくなってくる初冬からは通気しすぎず程よい快適さで便利な防寒アウターとして大活躍してくれそうです。
これらの組み合わせによって、適度に体温を閉じ込め、冷たい風から身を守りつつ、吸汗速乾の裏地がかいた汗をどんどん外に放出してくれるという好循環が生まれます。この日は汗をかいて「暑いな」と感じた時にフロントジッパーを開けて少し空気の通りを高めただけでしたが、それだけでも気が付けば汗による服の濡れが引いていて、1日を通して快適に行動することができていました。もちろんこれは外気温や汗のかきやすさなどによっても限度はあると思いますが、個人的な印象では日中5~10℃前後の11月くらいから3月辺りまでの冬にはちょうどいい気がしました。
山での動きやすさを妨げない適度な伸縮性
優れた温度調節に加えて着心地の良さという面からも、MOUNTAIN FLEX HOODEDはアクティブなシーンで素晴らしい快適さを提供しています。
ジャケットのサイズ感ですが、176cm・64kg瘦せ型の自分がMサイズを着用したところ、シルエットはややゆったり目のスタンダードなフィット感で、袖の長さもちょうどよい。ミッドレイヤーとしてピッタリ着たい場合にはSサイズでも良いと思いましたが、個人的にはアウターとしても着たいし、普段着としても使いたいので、このサイズ感がベストでしょう。ちなみに背面の裾はお尻が隠れるように長めになっており、かがんだり動いたりしても裾が捲れず、冷気の侵入を抑える丁寧な作りです。
裏地・表地・中綿共に適度なストレッチ性を備えています。そして当然のことながら動きを考慮して巧みな立体裁断が施されていますので、行動時の大きな動きに対してもストレスなく、生地自体もしなやか・柔らかですこぶる快適な着心地が続きました。スムーズな表地は擦れによるシャカシャカ音もなし。
頭の形にフィットする調節可能なフード
もうひとつ気に入ったのはフードの作りです。頭の大きさに合わせた小ぶりの中綿入りフードはヘルメットの下に被るバラクラバタイプ。しかもコードロックでサイズ調節が可能。稜線の風が厳しい時などにこのフードを被ればそれだけでもかなり寒さは和らぐので、このようなタイプはありがたい。
スマホも十分入る大きめのインナージップポケット
ポケットは左右のハンドウォーマージップポケットと、内側には左胸にインナージップポケットが付いています。思った以上に大きなサイズなので、大きめのスマホはもちろん、グローブなども入れることができました(下写真)。
まとめ:薄手なのにしっかりとした防寒・防風性と程よい通気性、そして驚くべき速乾性が備わった、冬の行動着に最適な万能アウター
フットウェアやスノーギアでのトップブランドとして知られるサロモンですが、この一着で、実はウェアの分野でも決して侮れません。既製の素材にひと工夫を加えてより高度な機能性を実現するというさすがの技術力の高さがいかんなく発揮された今作は、トレイルランニングやファストパッキング、そしてスキーツアーといった寒い冬の激しいアクティビティで着る行動着として必要な保温性・防風性・通気速乾性を高い次元で取り揃えた、サロモンらしいバランスのよいアクティブインサレーションでした。
季節や活動量に合わせて、ベースレイヤーの上に着るアウターとして、また厳しい寒さの中でハードシェルの下に着るミッドレイヤーとして、そして気軽に洗濯できる普段使いのジャケットとして幅広く活用できる汎用性の高い一着は、新作ラッシュでにぎわうこのジャンルでも実力的にはまったく競合に引けを取らず、今シーズン一番のダークホース的な存在と言えそうです。
「SALOMON MOUNTAIN FLEX HOODED」の詳細と購入について
製品の詳細については公式通販サイト等をご確認ください。