今シーズン最も注目すべき行動保温着「Rab Evolute Hoody」は、アクティブインサレーションを次のステージに押し上げる【実践レビュー】
人気のアクティブインサレーション、でも今本当に「使える」のは?
「止まっている時には暖かさを保ち、動いている時には熱や蒸れを放出しやすく」するといった特徴を備えた行動用の防寒着「アクティブインサレーション」はここ数年で一気に定着しました。今ではグローバルな大手のアウトドアブランドはもちろん、ローカルなコテージブランドまでこぞって秋冬ウェアの主力防寒着として「OCTA」や「Polartec Alpha」などの素材を使った新作を次々と、トップス・ボトムス限らずリリースしています。
ただ、そうした大量のアクティブインサレーションは見た目こそ違ってそうに見えますが、実際のところ機能的にはほとんど似たり寄ったりなものが多いなぁというのが正直なところ。ぶっちゃけ機能というよりも「映え」を意識しただけのものも少なくありません。外見の良し悪しでより山が登りやすくなれば世話ないが、何よりも大切なのは機能であり、機能に基づくデザインこそが正義だと、Outdoor Gearzineは一貫してそう思っています。
その意味で、ここ数年氾濫するアクティブインサレーション製品の中でも「これは間違いなくスゴい」と思えた一着が、このサイトではおなじみの英国発アウトドアブランド、Rabが今シーズン新たに開発した行動保温着「Rab Evolute Hoody」です。その特徴を端的に言うならば、アクティブインサレーションの特性を最大限活かしながら、その弱点もしっかりとカバーし、機能性と実用性をさらに高みへと引き上げた、まさに「新・定番」ミッドレイヤー。
発売と同時に早速この秋の登山で着用してみましたので、早速レビューしていきます。
Rab Evolute Hoodyの主な特徴
Rab Evolute Hoodyは秋冬を中心とした気温の低い環境で、運動量に応じて衣服内の温度を適切なレベルに調節するように機能するアクティブインサレーションジャケット。裏地に配置された「PRIMALOFT®EVOLVE」の複雑な起毛構造が優れた断熱性(嵩高性)と通気性を両立し、行動中の寒さを防ぎつつ身体のオーバーヒートも抑えて快適さをキープします。さらに表地にマッピングされたシングルジャージーのニット生地「Motiv™ Aero」は優れた吸汗速乾性を備え、裏地で吸い上げられた水分をさらに素早く外側へと発散させ、体表面を常にドライに保ちます。フードも含めて身体のラインにしっかりとフィットする立体裁断や、レイヤリングのしやすい無駄のないシルエットと高いストレッチ性による抜群の動きやすさによって、上半身の激しい動きにも衣服がずれることがありません。秋冬の厳しいコンディションでの多様なアクティビティにおいて、快適なレイヤリング・システムの要となる一着。
お気に入りポイント
- 高い断熱性と通気性を両立した軽量アクティブインサレーション「PRIMALOFT®EVOLVE」
- 優れた吸汗速乾性とソフトで快適な着心地を備えた表地「Motiv™ Aero」
- 身体のラインにフィットしつつ、運動時のストレスを最小限に抑える立体裁断とストレッチ性
- 快適なフィット感と冷気の侵入を防ぐバラクラバ型フード
- ベンチレーションにもなる2 つのメッシュハンドポケット
- フロントジッパー裏のフラップなど目立たない細部に施されたこだわり
気になったポイント
- 胸ポケットがあれば最高
- 生地がやや繊細で耐久性には注意が必要
主なスペックと評価
項目 | Rab Evolute Hoody |
---|---|
重量 | 321g(Sサイズ実測) |
カラー(メンズ) | Tuscan Red, Beluga, Tempest Blue |
サイズ | S / M / L |
レディースモデル | ◯ |
表地 | Motiv™ Aeroシングルジャージー 防臭加工(85gsm)ポリエステル100%(リサイクル56%) |
裏地(インサレーション) | PrimaLofte® Evolve(75gsm)ポリエステル100%(リサイクル58%) |
ポケット | 左右に裏地メッシュのジッパーハンドポケット |
Outdoor Gearzine 評価 | |
快適性 | ★★★★★ |
保温性 | ★★★★☆ |
ムレにくさ | ★★★★☆ |
動きやすさ | ★★★★★ |
速乾性 | ★★★★★ |
耐久性 | ★★★☆☆ |
重量 | ★★★★☆ |
フィールドでの実用性 | ★★★★★ |
詳細レビュー
暖かいのに通気性も抜群で蒸れにくい、おまけに素肌に直接着ても機能する「PRIMALOFT®EVOLVE」の優秀さ
Evolute Hoodyの裏地に採用された「 PRIMALOFT®EVOLVE」は、メッシュの基布に長さと厚さの異なる起毛が絡み合うことでロフト内に自然な高低を生み出した独特の中綿構造になっています。ご存じの読者も多いかもしれませんが、これは数年前からPRIMALOFTがNextだったりActiveだったりと、いろんな名前で呼んでリリースしてきたアクティブインサレーションと基本的には同種の生地。「 PRIMALOFT®EVOLVE」はこのシリーズの最新版というわけです。
動物の毛皮からインスパイアされたというこの起毛構造は、粗く太い繊維が空気を閉じ込めて断熱性と弾力性を高めると同時に、高密度の細い繊維が保温性、吸湿発散性、保護性、肌触り、収納性を高める仕組みになっています。さらに長さに差(高低)をつけることで空気の通りもスムーズにし、かさばりを抑えつつ熱や湿気のこもりを最小限に抑えることができています。
さらにこの生地自体には、地肌に直接着て「ベースレイヤー」としての役割も果たすことができるほどの吸汗速乾性が備わっているのも特筆すべき点です。これまで複数のレイヤーで分担していた機能をこの1着だけである程度カバーしてしまうほどの器用さ(万能さ)によって、例えば暖かい秋のハイキングにはメッシュアンダーやタンクトップの上に直で着るといった、季節に合わせてさまざまなレイヤリングの組み合わせが可能です。
その細部まで計算された裏地によるパフォーマンスの高さは、実際に着てみてもはっきりと実感できました。かなりの軽量・コンパクトさにもかかわらず十分にきめ細かい起毛が肌にとても心地よく、さらに地肌にじんわりと感じられてくる暖かさも想像した以上。この着た瞬間のフワッとした着心地と温もりはとても化繊100%とは思えません。
そして歩き始めて体温が上昇してきたときも(テストでは半袖ベースレイヤーの上にEvolute Hoodyのみを着ていました)、その暖かさが「蒸し暑さ」のレベルにまでいくことはなく、また逆に通気性が良すぎて肌寒く感じられる程に風で冷やされるといったこともなく、常に肌面を「ちょうどいい塩梅」に保ってくれ、その体温調節力の高さには驚かされました。
優れた吸汗速乾性をさらにブーストしつつ、ダイレクトな冷気を防いで快適さを保つ「Motiv™ Aero」との絶妙な組み合わせ
その「ちょうどいい塩梅」を保ってくれるのに大いに役立っているのが、表地に配置された柔らかく薄手軽量のオリジナルファブリック「Motiv™ Aero」の存在。まさにこの表地との組み合わせこそが、Evolute Hoodyを「現時点でアクティブインサレーションNo.1」と評価したくなる最大の理由のひとつです。
いわゆるアクティブインサレーション素材を使用したトップスには、表地にシェル生地を配置せずにむき出しのまま仕立てた、フリースに似たジャケット・カットソーが数多くありますが、その多くはずば抜けた軽さと断熱性・通気性の両立がウリではあるものの、激しい動きを止めた瞬間、その良すぎる通気性で(スースーしすぎて)寒くなったりして結局シェルを羽織るといったことが個人的にはよくあり、実際には案外使える場面を選ぶなぁという気がしていました。
ただ、かといってこの上に1枚ウィンドシェルなどを着るというのはかさばるし面倒だし、何よりそうした表地にシェル生地を配置したり、表地と一体化したモデルはどうしても蒸れを逃しにくくしてしまい、(厳冬期はちょうどいいとはいえ)寒さが本格化するまでは暑さで不快になるケースも増えてきてしまいます。
そんな悩みを一撃で解消したのが「PRIMALOFT®EVOLVE+Motiv™ Aero」の絶妙な組み合わせです。
この薄くて繊細なシングルジャージーのニット生地は、裏地の「 PRIMALOFT®EVOLVE」から吸い上げられた水分をさらに効率的に吸収し、外側に拡散する役割を担っています。つまり「 PRIMALOFT®EVOLVE」が元々持っていた吸湿発散性をさらにブーストすることができ、それが行動時に感じられた「発汗時のオーバーヒートを抑える能力の高さ=体温調節力の高さ」につながっているようです。
さらに、いわゆるむき出し系のアクティブインサレーションと違い、この薄手生地が1枚でも挟まっていることで、通気性は保ちつつ適度に風や冷気をブロックしてくれるので、かなりの寒さになるまではこれをアウターとして歩いていられます。これでむき出し系での弱点であった「風スースーしすぎ」問題も解消。むき出しで風を通し過ぎることもなく、シェル生地で吸汗速乾性を阻害することもしない(むしろアップさせてる)、つまりこれまでの弱点を完全に乗り越えているという点で、アクティブインサレーションを次の段階に押し上げたといっても過言ではありません。
レイヤリングしやすさと動きやすさを考慮した立体裁断とストレッチ性の高さ
シルエットは無駄な弛みやバタつきを抑えたスリムフィットで、相変わらず巧みに仕立てられた立体裁断は身体のラインにしっくりと寄り添います。上半身の動きに対して抵抗感なく追従してくれるストレッチ性も十分に備えています。この絶妙なフィット感と柔軟性は(何度も書いていますが)どんな状況においても常に100%のパフォーマンスを目指すRabならではです。
さらに縫い目はバックパックなど圧力のかかる箇所を避けつつゴロつきを抑えたフラットロックシームなど、行動時の不快感を最小限になるように細部まで配慮されています。
伸縮性のある快適なフィット感と冷気の侵入を防ぐフード
衿は冷気の侵入を防ぐ高めのデザインですが、柔らかい生地とチンガードによってジッパーを上まで閉めても息苦しさやジッパーが冷たいといったこともありません。またフードは頭の形にフィットするバラクラバ型、周辺のストレッチ素材が冷気をしっかりとガードします。
ベンチレーションにもなる2 つのメッシュハンドポケット
左右のハンドウォーマーポケットは裏地がメッシュ仕様となっているため、ここを開けておくことでより衣服内の換気を促すことができます。
フィット感と快適さを実現した袖口と裾
袖口と裾には伸縮性のあるバインディングを施し、フィット感と快適さを提供します。
フロントジッパー裏のフラップまで中綿をマッピングするなど目立たない細部に施されたこだわり
例えばフロントジッパー裏のフラップ。Evolute Hoodyは徹底して断熱効果を高めるため、通常はここまで貼ることは少ないのですが、フロントジッパー裏にまで中綿生地を伸ばして配置されています。
まとめ:これまでのアクティブインサレーションをさらに機能的に、より快適に仕上げた万能ミッドレイヤー
「フリースの代替」として登場したアクティブインサレーションは、フリースより軽くて暖かい、フリースより通気性が高くて速乾性があるといった魅力を持っていたものの、一方でフリースの持っていた、幅広い環境に適応してくれる「バランスの良さ」に関しては、失われていたといえなくもありません。Evolute Hoodyはその点、断熱性と通気性いう相反する機能を兼ね備えるというアクティブインサレーションの魅力はそのままに、それらの機能を緩やかに繋げ、より幅広い状況で快適さを保ってくれることで、これまでなかった活用範囲の広さを備えています。その点では低温下でのハイテンポなアクティビティに着用するミッドレイヤーとして、これまで以上に誰もが手に取りやすいアクティブインサレーションと言えるでしょう。
この冬と言わず1年を通して、トレッキングからスキーツーリング、雪山縦走、そしてバリエーションルートまで、これまで以上に高い機能性と実用性を実現したRabの新しい定番アクティブインサレーションをぜひ試してみて欲しい。