当サイトのレビュー記事はアフィリエイトリンクを通して製品を購入いただくことで少額の収益を得ています。

Rab Generator Alpine Jacketレビュー:「最先端の断熱素材」×「達人のノウハウと技術」= 軽量コンパクトでぬっくぬく、濡れにも強い無敵のインサレーションジャケット

「最悪の条件下」での「最高のパフォーマンスを」目指して開発された、冬山用防寒ジャケットの会心作

前回のレビューでは最先端のダウンジャケットを紹介しましたが、今回はよりタフで過酷な冬山に挑むのための「強い」防寒着の話です。

ダウンジャケットは確かに軽さと断熱性だけを考えれば最良の選択肢であることは間違いないとは思います。ただそう言うためには「ある条件」を前提とする必要であって、ダウンジャケットが最強の防寒着でいられるのは「乾いた(濡れていない)状況」に限られるということは忘れてはいけません。確かに最近では濡れに強い撥水加工が施されたダウンや、防水透湿素材を表生地に採用したダウンジャケットがいくつかのメーカーから発売されています。ただそれらは「湿ったり濡れたりしたダウンは暖かくない(断熱性が失われる)」という根本的な問題を解消してくれているわけではありません。

雪山では、決して少なくない頻度でどうしても衣服が濡れてしまう状況に見舞われます。例えば気温や湿度が高めの雪山や、湿雪・雨が降るなかでの行動、あるいは大量の発汗を伴う行動など。いずれもひと言でいえば「厳しい環境を耐えなければならない」シーン。そんなできれば避けたい凹むタイミングに、頼みのダウンジャケットは復元力を失ってしまいがちで、安心して使い倒すことができません。いやどちらかというと使いにくいまであります。

そんなときでも安定して防寒ジャケットとしてしっかりと機能してくれるのが化繊中綿の防寒ジャケットです。化繊の中綿は軽さとコンパクトさではダウンに適わないものの、「濡れても暖かい・丈夫で気兼ねなく洗濯できる」という点で過酷なアウトドアと非常に相性が良い性質も持っています。さらに近年ではその「軽さ・コンパクトさ」という弱みも最先端のテクノロジーによってかなり解消されつつあることも追い風です。

こうした化繊インサレーションジャケットの中でも特に保温性と耐久性にフォーカスし、主にアルパインクライミングでのビレイ(確保)中に羽織るために作られたのが「ビレイジャケット」であり、その中で昨シーズンから発売されている注目モデルが今回紹介する「Rab Generator Alpine Jacket」です。例えるならば一流の料理人が最高級の食材を料理するように、マスターオブインサレーション(中綿の達人)が最先端の断熱素材を仕上げたといえるハイエンド化繊インサレーションジャケットは、何がどうすごくて実際にどうだったのか、早速レビューしていきます。

Rab Generator Alpine Jacketの主な特徴

Rab Generator Alpine Jacketは冬季登山をはじめとした低温かつ過酷な環境で行うアクティビティ向けにデザインされたタフで信頼性の高い化繊インサレーションフーディ。超軽量で高断熱のエアロゲルが注入された「Primaloft® Gold Insulation with Cross Core™」中綿素材を2種類のウェイトに分けて戦略的にマッピングすることで、現在入手可能なビレイジャケットの中でトップクラスの暖かさ、軽さ、収納しやすさを実現。表地には「Pertex® Quantum Pro Diamond Fuse」を採用し、ダイヤモンド型のフィラメントで作られたひっかかりにくい滑らかな表面が、軽量ながら高い耐摩耗性や耐候性を提供します。シェルの上から羽織れるレギュラーフィットに人間工学的に計算された立体裁断を駆使した巧みなパターンが、大きな動きでもツッパリやたるみを防ぎ、行動中のストレスから解放。グローブ装着時でもスムーズなジッパーや硬いツバを備えた調節可能なヘルメット対応フード、ベルクロ調節かのうな広口の袖、グローブも収納できる大きなハンドポケット&インナーポケットなど冬山でのアクティビティに特化した実用的な機能を備えています。

お気に入りポイント

  • 2種類の「Primaloft® Gold Insulation with Cross Core™」を使い分けて暖かさと軽量コンパクトさを両立
  • 化繊インサレーションならではの、濡れへの強さと手入れの簡単さ
  • 軽量ながら防風性・耐久性・撥水性に優れた表生地「Pertex® Quantum Pro DIAMOND FUSE」
  • Rabにしかできない「動きやすさ、着心地、シルエットの良さ」を兼ね備えた抜群の立体裁断
  • フード・ポケット・ジッパー・袖口・裾・コードロックなどあらゆる部分が細部にわたって冬山アクティビティに最適化された実用性の高さ

気になるポイント

  • (強いて挙げるとすれば)極端な軽量コンパクトさや、通気・透湿性の高さなどは目指していないため、ハイテンポなファスト&ライトな行動には向かない
  • 2023モデルではスタッフサックがなくなってしまった

主なスペックと評価

項目Rab Generator Alpine Jacket
重量547g(Mサイズ実測)
カラーAnthracite, Marmalade
サイズS / M / L XL
レディースモデル×
表地Pertex® Quantum Pro DIAMOND FUSE 20デニール
裏地Atomos™15デニールナイロン
インサレーションPrimaloft® Gold Insulation with Cross Core™(133gsm ボディ/80gsm フード)
ポケット
  • 左右ジッパー付きハンドポケット
  • チェストジップポケット
  • 左右インナーポケット
その他機能
  • ヘルメット対応、ピーク部を強化し、2WAY調整が可能なフード
  • すべてのジッパーにグローブ着用時でも操作がしやすい大きなジッププラー付き
  • フロントにYKK製2WAYビスロンジッパー(内部にバッフル付き)
  • グローブに対応したオーバーサイズでベルクロ調節可能な袖口
Outdoor Gearzine 評価
快適性★★★★★
保温性★★★★★
ムレにくさ★★★☆☆
動きやすさ★★★★★
多機能性★★★★☆
重量★★★★☆
収納性★★★☆☆
フィールドでの実用性★★★★☆

詳細レビュー

メーカー曰く、Generator Alpine Jacketは、スコットランドにある「世界でも最悪」といわれるほど過酷なコンディションのゲレンデ(岩場)の厳しい冬場で最高のパフォーマンスを得るために設計された、Rab史上最も暖かく、軽く、機能的な化繊インサレーション・ビレイジャケットであるといいます。

この辺の開発経緯や概要については当サイトのYoutubeチャンネル内の動画「Rabのすべて Part1」で中の人によって語られていますのでよかったら見てみてください。

スコットランドの冬は北米の一部や高所登山のような超低温で乾燥した冬と違って非常に湿気が多いという特徴があり、そこでの悪天というと、寒いだけでなくみぞれや雨まじり、トレイルや岩は常に湿っていて衣服もぐしょぐしょになります(ちょうど日本の冬~春山の風景ともよく似てる)。そんなシーンでの防寒ジャケットはやはりダウンよりも化繊中綿が適しています。

この防寒ジャケットはそんな低温で厳しい悪天候時において、最高に威力を発揮するジャケットであると。もちろんここにはそう言えるだけの理由があるわけで、ここからその説明を紐解きながら実際のところどうだったのかを述べていきます。

ちなみに、まず大前提としてこのジャケットは「ビレイジャケット」であり、マルチピッチクライミングでクライマーを確保するとき(主に止まっている)にビレイヤーの寒さを防ぐ目的で設計されています。逆にいえば、汗をかきながら行動するようなアクティブな状況を想定しているわけではなく、その意味ではハイキングなどの行動中に羽織るにはあまり適していない可能性があるということ。もちろん行動中に着用できないというわけではありませんが、移動中の通気性の高さやムレにくさが主な目的の防寒ジャケットを求めている場合は、フリースやアクティブインサレーションといった他の選択肢の方が適している可能性が高いことは理解しておく必要があります。

断熱性と重さ:これまでの化繊中綿では考えられなかった、重くない、かさばらない、ふんわり、爆暖かい!

このジャケット、一見すると他の一般的なモデルと見た目がそれほど変わらないように思うかもしれません。しかしその中身はまるで違う。Generator Alpine Jacketを他の断熱ジャケットと分け隔てているのは中綿素材のチョイスとその料理の仕方であり、突き詰めればそれはプリマロフトの最先端断熱素材「Primaloft® Gold Insulation with Cross Core™」と厚みの異なる2種類を使い分けた計算されたマッピングに行き着きます。

「Primaloft® Gold Insulation with Cross Core™」はもともとNASAによってスペースシャトルを断熱するために設計された、95%が空気で構成される超低密度素材「エアロゲル」を独自技術によって内蔵した断熱材。このエアロゲルの「ほとんど空気」という稀有な特性によってこれまでになかった圧倒的な軽さと断熱性を実現したといいます。これだけでも断然「軽くて暖かい」のですが、Generator Alpine Jacketはこの中綿素材を厚みの違う2種類で使い分け、厚手の「133gsm」ウェイトをボディに、中厚手の「80gsm」ウェイトをフードに使用することで軽さに関しても突き詰められています。その結果、重量当たりの「clo値(クロー値。衣類の保温性能を測定する基準)」では非公表ながらも他社競合製品と比べて抜きんでたパフォーマンスだとか。

実際に着てみると、まず袖を通した瞬間のロフト感(フワフワ感)は化繊の中綿という基準で考えた場合本当に素晴らしく、ダウンとまではいかなくても、未来を感じさせてくれる確かな心地よさが印象的です。これは中綿自体の性能が優れていることはもちろんなのですが、他にもしなやかで肌触りの良い裏地(Atomos™15デニール)、全体としての軽さなどいくつかの要因が積み重なって実現されていることは間違いありません。

12月の谷川岳を登った際、ガスと風に巻かれたマイナス5度前後の(実際には風の影響で体感はもっと低い)なか、山頂から肩ノ小屋に下りてきて軽食をとりながらずっと着ていました。シェルの上からGenerator Alpineを羽織るとすぐに体は温もりを感じはじめ、風や外気の影響もまったく受けず、このままずっと居ても快適に過ごせそうでした。後ほど言及しますが外からの冷気をシャットアウトし、身体に心地よくフィットするフードやあご・袖口・裾の作りの良さも完璧です(下のは風が強すぎて三脚が倒れてしまうため、下の写真は肩ノ小屋からもう少し下りてきた稜線で撮影した写真)。

次にジャケットが濡れたときの暖かさについても試してみました。あえて(ダウンだったらほとんど保温性を失ってしまうほど)びしょ濡れにした状態でウールの半袖Tシャツ1枚の上に着用してみましたが、濡れていてもロフトは潰れることもなく、依然としてしっかりと仕事をこなしてくれました。その後の中綿の乾きも思ったより早く、想像以上の濡れに対する強さに感心しました。

収納性(コンパクトさ)については、残念ながらスタッフサックは2023シーズン省略されてしまいましたので別のスタッフサックにパッキングしてチェックしてみました。圧縮すればもう少し小さくなると思いますが、1Lのナルゲンボトル2本分くらい?でしょうか。

手に持ってみます。暖かさとボリュームを考えるとそこまでかさばるほどではなく、むしろここまでよく圧縮できるものだと感心します。

着心地とフィット感:本当のことだから何度でも言う。Rabのパターンの良さは鉄板

このサイトにいつも足を運んで下さる方々にとってはもうすぐ耳にタコができるかもしれませんが、本当のことなので何度でも言わせてください。ジャケットにしろトップスにしろ、パンツにしろグローブにしろ、Rabのウェアどれ一つとして着心地が悪かったことがない。しかもスタイリッシュで色気がある。こればかりはいつも鉄板で言わせていただきます。そのパターンの素晴らしさは、単に止まっている時のシルエットが良いというのではもちろんなく、特にアクティブなシーンで着用したときに分かります。

このGenerator Alpineですが、基本的にサイズの割にゆったり目のフォルムで、ウェストもそこまで絞られていません(下写真)。裾はウエストよりもかなり下にあり、背面はさらに着丈が長く、ヒップを完全にカバーしてくれます。

この緩めのカッティングはビレイジャケットとして期待される要件には適っています。シェルの上から着ても締め付けを感じることなく、ゆとりがありながらそれでいてどこかに余分な弛みができることもなく、絶妙なゆったりフィット感に満足しています。

176cm、64kgでMサイズを着用したところ、しっかり着込んだ冬山アウターの上から簡単に着脱でき、締め付け感も皆無。

いつもの巧みな立体裁断は腕の上げ下げなど大きな動きに対しても、決して生地が波打ったり、ずり上がったり、突っ張ったりすることもなく、着用でのストレスはまったくと言っていいほどありません。もちろんその快適さはテント内などのくつろぎ空間でも変わらず、一度着たらずっと着ていたくなる心地よさです。

耐久性・耐候性:軽さと強さを両立した防風表生地

ジャケットの表生地には極薄軽量で耐候性・耐久性の高い「Pertex® Quantum Pro」を、こちらも2種類使い分けてマッピングしています。特に摩耗しやすい前面・腕・肩・フード周りなどに配置された「Diamond Fuse」は、ダイヤモンド型のフィラメントを備えた糸を使用することで従来の円形の糸よりもフラットな布地表面になる特徴を備えた最先端ファブリック。その結果、硬い岩肌に対しても摩耗や引っ掛かけにより耐えられる堅牢さを実現しました。かなり薄いにもかかわらず、明らかに滑らかな表面で擦れに強い素材であることが手触りからも分かります。一方で背面や脇下部分に配置されているのは、より薄い手触りの軽量リサイクルPertex® Quantum Proリップストップ生地が使われています。

これらの表生地に防水性はなく、DWR(いわゆる耐久撥水)処理も施されていませんので、ある程度の耐水性はあるもののちょっと長めに雨に当たっているとすぐにジャケットは濡れてしまいます。といっても前述した通り、仮に中綿が濡れてしまったとしても断熱性能は高い水準で維持されますのでそこは安心です。いずれにしてもいったん濡れればジャケットが重くなってしまうので、そうした事態を避けるためにはなるべくDIYで撥水処理等をしておくことをおすすめします。

通常のプレーンな生地に比べればある程度耐水性はあるものの、防水性があるわけではない。

機能性・使い勝手:冬山に特化した至れり尽くせりの使いやすさに言うことなし

Generator Alpineには冬山をはじめタフなシチュエーションでストレスなく過ごすための豊富な収納、そして便利なパーツ、使いやすさを考えた仕様が細部にわたって散りばめられていました。

まずは冷気をしっかりとシャットアウトし、ヘルメットの上からでも直接頭から被っても完璧にフィットするように調節可能なフード。顔を左右に振っても無理なく追従し、さらにツバ部分は硬質ワイヤーによって前方をしっかりと保護してくれます。

フロントジッパーはハーネスの上から着ても邪魔にならないダブルジッパー仕様。もちろん凍結に強いYKKビスロンジッパーで、動きもめちゃくちゃスムーズ。ちなみにこのジャケットについているジッパーはどれもグローブをはめた状態でも掴みやすい大型のジッププラー(引手)を備えています。

ポケットは全部で3カ所。まずは基本のハンドウォーマーポケット。

バックパックのウェストベルトやハーネスをしている時でも使いやすいチェストポケットもちゃんとついてます。6.7インチの大型スマホも余裕で入るサイズです。

内側にはグローブがすっぽり入るくらい大きなインナースタッフポケットが左右に。

開け閉めしやすい袖口はベルクロで調節できるのはもちろん、広げるとグローブをしている状態でもスムーズに袖が通るほど大きくなります。

フードや裾のサイズ調節のために搭載されたコードロックもグローブに優しい作りで、ストレスフリーの確実な操作を可能にしています。

まとめ:厳しい場面であればあるほど頼りになる、冬山用防寒ジャケットの会心作

これまでPatagonia DAS ParkaNORRONA trollveggen Primaloft100 Zip Hoodなど、「Primaloft® Gold Insulation with Cross Core™」を採用したハイエンド・ビレイジャケットをいくつも試してきましたが、今回のGenerator Alpine Jacketは現状考えられる限り最も細部まで突き詰められた、優れた化繊インサレーションジャケットであると感じました。

飛び抜けた断熱性能と、その割に優れた軽量コンパクトさが何をおいても魅力ですが、それだけでなく垢ぬけたデザインや動きやすく心地よいフィットのカッティング、十分な収納、使い勝手の良いパーツ類と、ほぼすべての点で不満なく使えるところが見事という他ありません。結果として、ビレイジャケットというニッチな用途だけでなく、冬のさまざまなアクティビティに適した防寒着のオールラウンダーとしても十分評価できるといえます。

最後に日本に限っての話ですが、ここまでハイエンドなモデルにしては手ごろな価格というところも見逃せません。日本のRabはトップクラスの性能を備えながら、コストパフォーマンスも非常に高いのです。そういう状態がここから先も長く続くかは分かりませんので、その意味でも今、冬山を目指す登山家が手に取るべき一着といっても過言ではないでしょう。