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SALOMON THUNDERCROSS レビュー:タフネスと俊敏性のバランスが良すぎる。あらゆる地形・距離・スタイルをカバーするオールラウンダーの最新形

トレイルランニングシューズは「悪路」を「走る」という性格上、どうしても登山靴的な「耐久性(タフさ)」という側面とランニングシューズ的な「俊敏性(走りやすさ)」という側面の両方が求められる運命にあります。そのどちらの側面にも互いの専門シューズと同じくらいベストな機能が搭載できば話は早いのですが、現実はもちろん、そう簡単なものではありません。速い靴にすれば防御がおろそかになり、頑丈にすればアジリティがどうしても低下してしまう。トレイルランニングシューズの良し悪しは、ある意味これら両側面のパフォーマンスはもちろんですが、最終的には製品としてこれらがどのようにバランスよく融合しているかという巧みさで決まるという側面も持っているといえます。

そんななか今回紹介するSalomonの新しいトレイルランニングシリーズ、THUNDERCROSS(サンダークロス)は、タフなトレランシューズの代名詞である「クロス」ファミリーと、より【速く・長く】を重視した現代的なコンセプトの「センス」ファミリー(あるいは「グライド」ファミリー)それぞれの良いとこ取りをしたような、新コンセプトのオフロード向けランニングシューズです。どちらのシリーズのファンにとっても興味深いこと間違いなしのこのシューズ、今回はこの新しいトレイルランニングシューズのハイブリッドな魅力とパフォーマンスについてレビューしてみたいと思います。

SALOMON THUNDERCROSS の主な特徴

サロモンのトレイルランニングシューズラインナップの最新シリーズであるサンダークロスは、軽量でオールラウンダーな「センス ライド 5」とタフでアグレッシブな「スピードクロス 6」のマッシュアップと表現できるような、ハイブリッドな特徴を兼ね備えた新しいトレイルランシューズ。枝や岩などの障害物から足を守りつつ、ぬかるんだ路面や岩場からロードまでさまざまな地形でも安定したトラクションを提供するタフなボディとソールに、長距離でも安全かつ快適に履き続けられる高クッションEnergy Foam を十分な厚みで配置した低ドロップ(4 mm)のミッドソールを採用し、自然で快適な乗り心地を実現します。厳しいルートをアップテンポで長時間走り続けても疲れにくいよう、しなやかでアッパー素材Sensifit™と、Quicklace™システムの組み合わせによる優れたフィット感も健在。今回レビューモデルの他に、GORE-TEXモデル、ウィメンズモデルのバリエーションあり。

おすすめポイント

気になったポイント

主なスペックと評価

項目 SALOMON THUNDERCROSS
重量 290g 
スタックハイト 31mm/27.2mm
ドロップ 4mm
アッパー
  • SensiFit™
  • Quicklace™
  • リサイクル素材
ミッドソール EnergyFoam™
アウトソール All Terrain Contagrip®
Outdoor Gearzine 評価
快適性 ★★★★★
重量 ★★★★☆
グリップ ★★★★☆
プロテクション ★★★★☆
クッション ★★★★★
安定性 ★★★☆☆
汎用性 ★★★★☆

実際のフィールドで試した詳細レビュー

外観とアッパー(履き心地):絶妙なフィット感とクッションで、履いた瞬間から足に馴染む。それでいてプロテクションもしっかり

サンダークロスの機能的な側面に入る前に、このシューズのデザインとカラーリングの良さにやられたことを白状しておきます。ベースの落ち着いた色味に、アクセントとして蛍光色のいかずちライクなハイライトが組み合わさり、遊び心をのぞかせつつ垢ぬけたデザインは個人的にかなり好感触。全体的に上品な色使いだからアウトドアで映えるだけでなく、日常でも余裕でいける。

落ち着いたベースカラーとアクセントのデザイン性の高さはフィールドにも街にも違和感なし。

アッパー素材は全体としてスピードクロス6と同じような構成。前方は柔らかくしなやかな、伸縮性がある生地を採用しています(下写真)。細かいメッシュのようで通気性はある程度あるもののそれほど高いとはいえず、走っていて涼しい感じはしません(秋冬にはいいかも)。この生地がガセットなしのシュータンを覆うように甲の上まで延びているため、前方からの小石や枝の侵入を防いでくれます。

アッパーの前方にはしなやかなストレッチメッシュが甲の上まで。

つま先周りから側面を通ってかかとまで、360度がTPU素材の保護プレートによって覆われており、鋭い岩や枝、木の根などから足を守ります。その一方でこれらのプロテクションは決して靴の屈曲を妨げたり、不自然なシワによってストレスが生まれたりしないよう屈曲部分を低くしていたりと強弱が丁寧に計算されていることで、走っているときの窮屈さが感じられないようになっているから素晴らしい(下写真)。

つま先~側面~かかとを一周するTPUの保護フィルムはアウトドアでも安心。

トゥボックス(つま先部分)は余裕があって、圧迫感もなく足指も自由に動かす空間を確保されています。一方で土踏まずから甲にかけての中足部の両側はサロモンの SensiFit™ 構造によって包み込むようにしっかりとホールドされ、そして十分なパッドが入った柔らかいシュータンと履き口のパッドが組み合わせることでクイックレースを締めた場合でも、靴と足との接面全体が均一な圧力で分散され、かなり良好なフィット感が得られました。

お馴染みのSensifit™構造が、土踏まずから足の甲にかけて包み込むように足を優しくホールドしてくれる。

お馴染みのQuicklace™レーシングシステムによってランニング中に靴紐が緩むということもなく、シューレースガレージに余った部分と一緒に押し込めば、靴ひもが枝に引っかかるという心配もありません。

サロモンのランニングシューズと言えば、安定のQuicklace™システム。

かかとはを触った感じでは押しても潰れない程度の芯材以外、それほど手厚い補強もなく柔らかい作りなので安定性が心配でしたが、スピードクロス6と同じハリのあるリップストップ生地とTPUのオーバーレイ、そして十分なパッドによって構成されたヒールカップは思った以上にホールド性が優れており、走っていて安定感が足りないという気にはなりませんでした。

後方のアッパー生地には軽くて耐久性のあるリップストップ生地を配置。

全体として、相変わらず絶妙なフィット感とまろやかな肌当たり感をベースとしながら、センスライド5のようなパフォーマンス重視ではなく、プロテクションに重点を置いた構造によって、ハイキングやオフロードでのランニングでは問題なしの安心感が得られます。日常からトレイルラン、ハイキングなどで一日中履いていられる心地よさは、正直やみつきレベルの快適さです。

ミッドソールとアウトソール(走り心地):アグレッシブな走りと快適な乗り心地、どちらもバランスよく味わえる懐の深さがたまらん

センスライド5をベースとしたシャープでラグジュアリーなミッドソール

サンダークロスのミッドソールをまずスタックハイトだけ見てみると、ヒールが 31mm、前足部が 27.2mm(4mmドロップ)というサロモンとしては比較的珍しい構成になっていることに気がつきます。つまりかかとだけでなく前足部にもたっぷりと分厚いクッションが施されているということ。

実際に足を通して立ったときの感触はちょっとした驚きで、いつもに比べて特に前足部に高いクッション性が感じられ、そして土踏まず部分のアーチサポートの手厚さには感動すら覚えることでしょう。何せサロモンでも高クッションの部類にある「ULTRA GLIDE 2」でさえ前足部の高さは26mmですから、ここからもかなり思い切ったスタックハイトであることが分かります。

その手厚いミッドソールの正体はというと、「EnergyFoam™(エナジーフォーム)」と呼ばれるEVA ベースの素材にオレフィン[OBC]を配合した軽量素材です。

ミッドソールには近年サロモンのパフォーマンスシューズの多くに搭載されている高いクッションと反発を備えたエナジーフォームがたっぷり。

ソフトで高い衝撃吸収力と弾むような反応性を組み合わせたというこのミッドソールはセンスライド5で採用されているものとほぼ同じで(下写真)、スピーディなレースからタフなロングランまでシーンを選ばず威力を発揮できることを狙っています。

そこそこの軽さで4mmという低ドロップと、潤沢なエナジーフォームの組み合わせという新しいトレイルランニングシューズは、特に慣らし履きなどの必要はなく、箱から出して最初のランニングから素晴らしい乗り心地を発揮してくれました。

まず4mmの低ドロップはこれまで自分が履いてきたサロモンのトレランシューズのなかでも最も「自然な」ストライドを可能にするシューズであることが分かりました。適度な接地感があり、例えばドロップが10mmのスピードクロスなどよりも機敏で安定したな足さばきができるような印象で、凹凸のある路面での操作性の高さが気持ちよく感じられます。比較的厚底シューズであるのにもかかわらず高さや不安定さを感じることはなく、それでいて十分かつ耐久性に優れたクッションがオフロードでの長時間の走行でも疲れを溜めにくくしているように感じます。

何よりこのエナジーフォームの「ふかふかのクッションと安定した接地感のバランス」が素晴らしい。クッションとエネルギーリターンの驚くべき良バランスに感服です。エナジーフォームの適度な反発性は、走りの軽快さをサポートし、ある程度スピードを必要とするレース用シューズとしても十分考えられるパフォーマンスの高さです。

サンダークロスはこの分厚い前足部のおかげで、センスライドシリーズに搭載されているような「ProfFeel」ロックプレートが搭載されていなくても十分に地面の凸凹を吸収してくれます。硬い岩や砂利の多いトレイルでも思い切って足を置くことが可能です。ちなみにこれらに安定感や足裏の保護性はトレイルランニングでの話であり、荷物が重すぎるハイキングなどでの場合はこの限りではありませんのでご注意。

センスライドシリーズに採用されることでで磨かれた、かかとからつま先にかけて若干カーブさせることで前への推進力を高めるロッカージオメトリー形状も健在です。

船底のように前後がせり上がり、着地から踏み込みまでの動作をスムーズにするロッカージオメトリー形状のソール。

ぬかるみやガレ地形でもアグレッシブな走りを可能とするAll Terrain Contagrip®コンパウンドと深いラグパターン

サンダークロスのアウトソールは、5 mmという高さ、緩い路面でも確実にグリップする大きなシェブロンスタッドという点でスピードクロスのそれをベースとしていることはすぐに分かります。これはぬかるみや砂利の急坂などテクニカルな地形で威力を発揮することを示していますが、それでもまったく同じという分けではなく、細かな微調整を加えることでハイブリッドな魅力をさらに引き立たせています。

例えばあらゆるコンディションで高い耐久性と安定性を発揮するAll Terrain Contagrip®ラバーを採用し、ロードから悪路までより幅広い条件にフィットしたり、ラグの一つひとつを小さくしてポイントを増やすことでフラットな地形での走破性を高めている点など、ベースは悪路に強い構造ですが、印象としてはスピードクロスほどの極端さが控えめになり、より「普通の」トレイルや道路でも安定して気持ちよく走れるようになっていることが感じられます(下写真)。

この微妙なアジャストが施されたサンダークロスは、路面が乾いていようが濡れていようが、硬かろうが緩かろうがお構いなく、特に不安を感じさせないグリップ力を提供してくれました。唯一、濡れたツルツルの岩、アスファルトなどではさすがにちょっと気を遣う必要があった程度です。

丹沢の急なバカ尾根や、岩だらけの那須岳といったテクニカルなトレイルから緩いトレイルなど、一通りの地形で試してみましたが、深くても細かく多く取り付けられたラグは、ゆるい土やぬかるみの坂道でもよく食い込み、またロードに入ったとしても変な凸凹感はあまり気になりません。

ただこのコンパウンドと形状ではやはり一般的なアウトソールに比べて耐久性(すり減りやすさ)が低いことだけは覚悟しなくてはならないでしょう。

まとめ:サンダークロスとの出会いによってあらためて「山の中を走るのが楽しい」と思わせてくれた

オフロードでの絶対的な強さを誇る「スピードクロス」をベースに、「センス」や「グライド」シリーズのよりソフトでエネルギッシュなクッションをブレンドすることよって走りやすく、足に優しく仕上げたこの試みは大成功といえるのではないでしょうか。とにかく今自分はサンダークロスでトレイルを走るのが楽しい。

特に派手な最先端の​​特徴が搭載されているわけではなく、重量も290gと、飛び抜けた軽さであるわけでもありませんが、サロモンのこの新しいシリーズデビュー作は、何よりトレイルランの楽しさを誰もが体感できるさまざまな特徴を備えた、万人におすすめできるシューズであるということを強く感じました。

このシューズは地形を選ばずどこにでも行け、走るのが楽しく、長時間快適でいることができます。もしあなたがスピードクロスのファンで、より汎用的で足に優しいものを求めているとしたら、サンダークロスは間違いなく注目すべき選択肢です。不整地に自信をもってチャレンジでき、さらに一日中疲れ知らずの快適な足元を保ってくれるシューズをお探しなら、サンダークロスをぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

「SALOMON THUNDERCROSS」の詳細と購入について

最新モデルの入荷情報や製品の詳細については公式通販サイトをご確認ください。

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