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SALOMON XA PRO 3D V9 GORE-TEX レビュー:アウトドアから街歩きまで何でもこなす、クロスオーバーシューズの原点にして頂点が第9世代へと進化

街とフィールドの間を行き来しながら歩くことの多い仕事柄か、Salomon XA PRO 3D GORE-TEXは現在まで5年以上ぼくが長らく愛用してきた仕事靴です。この1足があれば天気に関わらず、日常での街歩きからそのまま現場へと移動してアクティビティの同行やイベント取材まで、歩くのも走るのもすべてこの1足で済んでしまいます。これまでもさまざまなメーカーで似たようなシューズを試してみたりはしましたが、結局最後には、誕生から20年以上世界中で愛されてきたこのロングセラーシューズに帰ってきてしまいます。それほどに自分はこの靴の完成度の高さに魅了され続けてきました。

そんな街と自然をシームレスに繋いでくれる万能クロスオーバーシューズが、今シーズン第9世代へとアップデートされました。個人的にもちょうど前モデルを靴底がツルツルになるまで履きつぶし新作を今か今かと待ちわびていた頃だったので、何とも願ってもないタイミング。

そこで今回は、サロモンのアウトドアシューズのルーツとして不動の地位を確立するこのSalomon XA PRO 3D GORE-TEXの最新モデルを、前作からどのような進化を遂げたのか、そしてXA PRO 3Dシリーズの魅力とは何なのかという点などを中心にレビューしていこうと思います。

XA PROがレギュラー仕事靴となってかれこれ5年ほど。V7から三世代を履き継いでいる(左からV7、V8、V9)

SALOMON XA PRO 3D V9 GORE-TEX の主な特徴

決められたルートのない長く険しい地形をチーム自ら道を切り開きながら、数日間にわたってゴールまで駆け抜ける、いわゆるアドベンチャー レースの元祖ともいえる大会『レイド・ゴロワーズ』を制覇するために2002年に生まれた、トレイルランニングシューズの先駆けであるXA Pro。その後も「多様な山岳地帯での素早い動きを基本として、ランニングからハイキング、スクランブル、サイクリングなどあらゆるアクティビティでも快適な行動を可能にするシューズ」という基本的なコンセプトはそのままに、アスリートとデザイナーとの緊密な協力によって20年以上にわたり進化を積み重ねた第9世代目が、XA PRO 3D V9 GORE-TEX(以下XA PRO)です。

サロモンシューズの代名詞である「Sensifit™」と「Quicklace™」による比類のないフィット感をはじめ、衝撃やねじれ、ブレを適切にコントロールする「3D Advanced Chassis™」をベースとした安定感抜群のミッドソール、柔軟性と反発力を増した「EnergyCell™+」、タフでグリップ力の向上したアウトソール、相変わらず頼もしいプロテクションと、アクティビティを選ばずあらゆるアウトドアシーンに対応するバランスのとれた高い機能性はより磨きがかかり、これまで同様、世界中の山岳アスリートやプロフェッショナル、愛好家たちに応えることができます。さらに洗練されたアシンメトリーなデザインによってアウトドアから街歩きまでシーンを選ばず、日常から旅、レジャー、アウトドア、ワークアウトにと、場所と季節を選ばずあらゆるアクティブシーンにフィット。今回のレビューではメンズのGORE-TEXモデルをピックアップしていますが、この他に非GORE-TEXモデル、ウィメンズモデル、ワイドモデルなど、多様な選択肢のなかから合わせることができるのも魅力です。

おすすめポイント

  • SensiFit™とQuicklace™による足全体を包み込むような快適な履き心地
  • 横方向の高い安定性とサポート性を提供する3D Advanced Chassis™
  • 優れた衝撃吸収に加えて反発力を兼ね備えたEnergyCell™+ミッドソール
  • 高い保護性とGORE-TEXによる防水性
  • 様々な路面で高いグリップ力を発揮するAll Terrain Contagrip®アウトソール
  • トレイルランからハイキング、ロードから岩場や入り組んだ地形まであらゆるシーンに対応する抜群の汎用性

気になったポイント

  • やや控えめになったクッション性
  • 専門性(トレイルランシューズとしても、ハイキングシューズとしても、街履き用スニーカーとしても、それぞれに特化したモデルとの比較では分が悪い)

主なスペックと評価(前モデルとの比較)

項目SALOMON XA PRO 3D V9 GORE-TEXSALOMON XA PRO 3D V8 GORE-TEX
重量360g 370g 
スタックハイト28.7mm/17.3mm35.7mm/24.7mm
ドロップ11mm11mm
アッパー
  • Quicklace™
  • SensiFit™
  • 3D Advanced Chassis™
  • GORE-TEX
  • リサイクル素材
  • Quicklace™
  • SensiFit™
  • 3D Advanced Chassis™
  • GORE-TEX
ミッドソールEnergyCell™+EnergyCell™
アウトソールAll Terrain Contagrip®All Terrain Contagrip®
Outdoor Gearzine 評価
快適性★★★★☆★★★★☆
重量★★★☆☆★★★☆☆
グリップ★★★★★★★★★☆
プロテクション★★★★★★★★★★
クッション★★★☆☆★★★★☆
安定性★★★★★★★★★★
汎用性★★★★★★★★★★

実際のフィールドで試した詳細レビュー(前モデルとの比較を中心に)

外観と快適性:前作から引き続き絶妙なフィット感とホールド感、ゆとりの共存する心地よい履き心地

見た目はもちろんのこと、靴を履いた時の肌の当たり具合や窮屈感を感じないかどうか、靴の中で足がズレやすくないか、適度に足指が動くかといった靴のフィット感や履き心地の良さは、どんなシューズでも重要なことは言うまでもありません。長く世界中のアウトドアズマンから愛されてきたXA PROでも当然この点に関しては抜かりなく、前作から引き続いて丁寧に作りこまれています。

落ち着いたカラーリングとアシンメトリーなデザインは、どんなスタイル・シーンにも合いそう。

まずは何をおいてもサロモンシューズの快適なフィット感の核であり、本モデルにも当然採用されている「Sensifit™」のアッパー構造です。足裏から甲までを手の平で包み込むように絶妙な密着感を可能にし、足の形に関わらず何とも心地よいフィット感を与えてくれます(下写真)。これまで何度も味わってきましたが、あらためてやはり外せません。今ではこの心地よさに包まれたとき、まるで実家に帰ってきたかのような気持ちに満たされる自分がいます。

足裏から均等に締め上げてくれるsensifit™テクノロジーによって、足全体を偏りのないフィット感で満たされる。

さらにXA PROではシューレース先端が親指付け根部分から始まっている特徴的なシューレースパターンによって、足指部分を含めた全体的なフィット感が高まっています(下写真)。XA PROのトゥボックス自体はあまりタイトに作られていないので、シューレースを締めたとしても決してつま先部分が窮屈になるということはなく、しっかり締めあげたとしても適度に足指は動かせます。通常のシューズからよりひと手間製造工程を増やしてまでフィット感にこだわるのがXA PROだということが分かります。

なおXA PROのラスト(足型)はより幅広い足型に合うようやや平均的な広さになってはいますが、万が一それでも狭いという人のためにワイドサイズも用意されているため、自分に合う足型がないということはないでしょう。

親指付け根部分まで伸びたシューレースとQuicklace™によって、よりつま先近くから均等に締めることができる。

そしてもちろんこのシューズにもサロモンのもう一つのシンボルであるシューレース・システム「Quicklace™」が搭載されており、この並外れたフィット感と使い勝手の良さを支えています(下写真)。余った紐はシューレースボックスにサクッと収納できるので、走っているときにぶらついたりすることもありません。

Quicklace™はスピーディなセッティングを可能にし、締め直しも容易。不要部分はポケットに入れれば邪魔にもならない。

足の甲部分にもストレッチ素材が配置され(下半分はGORE-TEXメンブレンで伸びないが)、ここでもよりきめ細かなフィット感が配慮されています。ちなみにこの素材によってシュータンの隙間から異物が侵入することを防いでもいます。

甲部分のストレッチ素材はフィットを高めるとともに異物の侵入を防ぐ。

しっかりとした硬さと十分な深さを備えたヒールカップは、後述する硬質な3Dシャーシと相まって良好なホールド感と安定感を感じます(下写真)。足首の周りには適度なクッションを備えたパッドが当てられ、柔らかい肌触りとサポート感も気に入ってます。

贅沢なクッションの入った足首回りは快適な履き心地を提供。

クッション性・反発力・安定性:新たなテクノロジーが搭載されたミッドソールは、より軽快な走り心地を実現

安定感抜群のシャーシにクッション性と反発力を備えたミッドソールによって、歩けば疲れにくく、走れば軽快。

靴としてのシンプルな履きやすさを提供するアッパーに加えXA PROは、長い進化によって磨かれた独自のソール構造によってハイカーとトレイルランナーの両方の特徴を組み合わせたとでもいうべき絶妙なバランスとハイパフォーマンスを実現しています。

ソールそれを構成しているパーツのひとつ「3D Advanced Chassis™」は、ミッドソールとアウトソールの間、土踏まずからかかとにかけての位置に立体的に成形され、ファイバーガラスで強化されたプラスチック製フレーム。これが着地したときの衝撃を吸収しつつねじれや左右へのブレをしっかりと防ぐことで、XA PROの顔ともいえる高い安定性を生み出しています(下写真)。

3D Advanced Chassis™はヒール部分だけでなく土踏まずの下あたりまで伸びて、足のねじれやブレを押さえてくれる。

基本的には前作と変わりませんが、見た目的にはより高さが増しており、相変わらず安定感は抜群。しかもこのプレートは地面の凸凹からもランナーを確実に守るロックプレート的な役割も果たしてくれます。

リデザインされた3D Advanced Chassis™はやや高くなり、その分より安定性が増していると考えられる。

そしてもうひとつ、よりはっきりとした変化が見られたのは「EnergyCell™」から「EnergyCell™+」へと変更されたミッドソール。

これまで搭載されてきたミッドソールのクッション素材「EnergyCell™」は、サロモンのランニングシューズに採用されているクッション素材のなかでも強力な衝撃吸収を特徴としています。一方で今回初採用された「EnergyCell™+」は、それに加えてより優れたエネルギーリターン(反発力)を備えています(「EnergyCell™+」を採用した他モデルには「SPEEDCROSS 6」や「S/LAB ULTRA 3」などがある)。つまりストライドごとにより多くの反発力が得られるため足が前へと出やすくなり、それが軽快な歩行に繋がります。必然的にゆっくり歩くよりもハイペースな活動にとってより有利といえるでしょう。

EnergyCell™+ミッドソールはより反発力の高い素材がブレンドされており、より多くのエネルギーリターンが得られる。

新しいミッドソールによってソール厚もやや薄くなり、柔軟性は高まった印象。

この違いで歩き心地や走り心地がどう変わったのかというと、まず前作に増して感じたのは足裏のクッションがよりソフトに、柔軟な感触になったこと。さらに一歩一歩の蹴り出しはスムーズに感じられます。またソールの厚みが若干薄くなったからか足裏の感度が非常に良くなり、スピードに乗った繊細な足さばきが可能に。野山を駆け下りる感覚が気持ちよく、前作よりもトレイルランニングシューズ味を増していました。もちろん着地時の安定感の高さは相変わらずです。

ただ一方でたくさんの荷物を背負った場合などややクッション不足を感じないこともなく、重荷での足裏の疲れやすさは少し増したという印象(少ない荷物であればそれほどの違いは感じられませんが)。総じて登山靴的な剛性が控えめになり、ランニングシューズ的な軽快さが強めになったという感じでしょうか。

グリップ力:ラグパターンとコンパウンドの改善により耐久性・グリップが向上

もうひとつの大きなアップデートポイントがアウトソールです。一見すると、従来のモデルと大きな変化はないように感じられますが、コンパウンドはより耐久性の向上した「All Terrain Contagrip®」となり、すり減りにくくなりました(下写真)。

またラグ形状とパターンを前までのモデルと比較すると(すり減って見難くなってしまっているのですが)、下写真の点線部分のように前作「V8」までと比べてセンターのポイントはより鋭角に、そしてサイドもより複雑なくさび形に変更されています。

従来モデルと比較してよく見てみると、センターとサイド部分のラグ形状がより複雑なくさび状に変更されている。

ラグ形状拡大。鋭角に切れ込んだ新しいポイントがトラクションと泥抜けを加速。

このラグ形状はハイキングシューズの定番である「X ULTRA」シリーズに近く、このポイントがミックスされたことでより濡れた柔らかい路面でも適切なグリップ力を得られるようになっている印象でした。コンパウンドは極端に柔らかかったりするわけでもなく、またラグが高すぎるわけでもないため、オフロード、舗装路、どちらでもスムーズに歩くことができます。その意味でもまさに地形を選ばずオールラウンドに対応してくれるのが何とも絶妙。

耐久性:前作から引き続きハードな障害物や水に対する十分なプロテクション

このシューズがどんなアクティビティでも安心して使えるのは、このシューズに備わっている十分な強さも大きな理由のひとつです。耐久性・通気性に優れたハリのあるリップストップメッシュ生地に、熱圧着されたTPU素材、そしてさらに堅牢な補強材が当てられたトゥキャップや踵周りなど、重量を最小限に抑えつつ、ランニングシューズとしては最高レベルのプロテクションを有しています(下写真)。ここまでの耐久性があれば、鋭利な石や枝の突き刺さりも、岩場での擦れも気になりません。

つま先とかかと、そして靴の周囲には、トレッキングにも耐え得る(トレランシューズとしてはかなり贅沢な)プロテクション。

さらに今回取り上げているのはGORE-TEXの防水モデルですので、朝露に濡れたトレイルも、ぬかるんだ道の水たまりや小川の渡渉も、寒い日や雨天時のランニングでも心配無用。ちなみに防水生地のスニーカーは日常使いでも地味に便利なことはもっと知られていいと思います。

非防水のスニーカーの場合、朝草むらを走ればすぐに靴はびしょびしょになってしまうが、GORE-TEXなど防水モデルならばその心配は無い。

足の甲中間くらいの高さまで完全防水で、つま先くらいならば水没してもまったくぬれずに安心。

まとめ:9代目モデルは、ファストパッキングのような軽量・スピード重視のハイキングでより使いやすく

Salomon XA PRO 3D GORE-TEXは、「3D Advanced Chassis™」の安定感、「EnergyCell™+」の衝撃吸収・反発性、「All Terrain Contagrip®」のグリップ力、「Sensifit™」と「Quicklace™」による極上のフィット感といった、ハイクとランに求められるさまざまな要素をいい所取りしつつ、見事に融和させた絶妙のバランスが他にない魅力。ただそれは、基本的にテクニカルなトレイルランニング用に作られているとはいえ、トレイルランニングの専門シューズとしては最近の流行であるハイスピード・高クッションなモデルたちに比べるとやや作りがゴツすぎであり、ハイキング専門シューズとしては少し剛性が物足りないということでもあります。それぞれに特化したい場合には別の選択肢を検討すべきです。

それならばこのシューズが最も活きるシチュエーションは? それはおそらく、ずっとランニングするわけではないけどもスピード重視で軽量な荷物を長距離運ぶ、つまりファストパッキングやスピードハイキング的なアクティビティです。より軽快になったハイキングシューズとして考えると、その傾向は本モデルでより強まった気がします。もちろん頑丈で安定感とサポート力のあるソール構造は、たとえ走らなくても普通のハイキング シューズとして十分機能しますので、ライトなアウトドアシューズを探している、あるいはビギナーでも履きやすい入門的なシューズを探しているという人にとっても十分満足のいく一足であることは間違いありません。気温が落ち着いてきて山遊びが気持ちいいこれからの季節、アウトドア好きならば誰もが一足持っておいて損はないでしょう。

「XA PRO 3D V9 GORE-TEX」の詳細と購入について

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