登山用のマットレス、Outdoor Gearzineでは今シーズンもTHERM-A-REST「ネオロフト」やNEMO テンサー™ エリート、arata「ASP-R7」など多くの新作・注目モデルをレビューしてきました。
ただ、飛躍的な進化を遂げているのは上記のようなエアマットだけではありません。そこで今回はクローズドセル(発泡断熱素材)マットに注目してみました。
クローズドセルマットの魅力は、エアマットのように膨らませる必要がなくサッと出してサッと仕舞える点、さらにはパンクの心配がないなど、シンプルで安心なところ。さらに、最近は高くなってきたとはいえ1万円を切るコスパの良さから、初めてマットを購入する人には断然オススメ、そしてまだひとつも持っていないという人にも1つは持っておいて損はないアイテムだと思っています。
そんなクローズドセルタイプのマットレスは、ともすればどの製品も似たりよったりに見えがちで、どこに違いがあるのか一見難しいかもしれません。実は厚み、R値、寝心地、持ち運びやすさなどには微妙な違いが存在しています。
せっかく買うなら、自分の山行スタイルにマッチしたマットが欲しいと思いませんか?
ということで、2025年に販売されているクローズドセルマットから、人気や性能などの観点から最強と期待される選りすぐりの7点をピックアップ。重量、携帯性、寝心地、耐久性などのさまざまな視点からフィールドテストを行ってみましたので、さっそく比較レビューをお届けします。
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目次
- ベスト・クローズドセルマット候補7選
- テスト環境とフィールドテスト結果
- 評価まとめ&スペック比較表
- バックパックに取付けて大きさを比較
- 各モデルのインプレッション
- 【重量と寝心地を重視するULハイカーにオススメ!】新技術で体を包み込む柔らかマットが癖になる「EVERNEWのTraverse mat 180」
- 【初期投資を抑えたい初心者ハイカーにオススメ】ダークホース登場!異次元コスパとワイド幅、そしてコンパクトで 他にない魅力が何とも惹かれる「CAPTAIN STAG IXPE フォームマット」
- 【全ハイカーにオススメ!】寝心地も使い勝手も完璧な王者「THERM-A-REST Zライトソル&NEMO スイッチバック」
- 驚愕の38mm厚のマット「EXPED FlexMat Plus」
- 【冬も使いたいという人にオススメ】高いR値ながら軽量コンパクトさをキープした「mont-bell フォームパッド 25 180」
- まとめ:軽さ、寝心地、断熱性、コスパ、デザイン、、、重視するポイントで、自分に最適なモデルを選んでいこう
ベスト・クローズドセルマット候補7選
まずは2025年販売のクローズドセルマットから、厚み、R値(断熱性)、重量、携帯性をバランス良く備えつつそれぞれの個性が光る最強候補を7点に絞り込みました。それぞれの選出理由や期待感などとともに紹介します。
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山と道 UL Pad 15+
最軽量200gを実現しつつも、軽さ、暖かさ、耐久性のバランスに優れたULスリーピングマットのスタンダード。 -
EVERNEW Traverse mat 180
新技術による最軽量クラスの重量と新感覚の寝心地の良さ! -
CAPTAIN STAG IXPE フォームマット
コンパクトでワイド幅にも関わらず二度見する価格2,980円!果たしてそのパフォーマンスは? -
THERM-A-REST Zライトソル
王者THERM-A-RESTによる安定のロングセラーマット -
mont-bell フォームパッド 25 180
R値2.3、厚み25mmと、クローズドセルタイプとは思えない断熱性と厚み! -
NEMO スイッチバック
Zライトソルの好敵手、エアマットも好調なNEMOの快適でコンパクトな良バランスマットレス -
EXPED FlexMat Plus
クローズドセルながら38mmという断トツの厚みが作り出す寝心地は果たして?
テスト環境とフィールドテスト結果
寝心地・重量・携帯性のバランスが良いクローズドセルマットはどれでしょうか?テストは7月の屋外、25℃〜35℃の気温下で、砂利敷の上や自宅で広げてフィールドテストをして検証してみました。
テスト環境
評価指標
今回の比較テストにおける評価指標は以下の6つ。なぜこの指標が大切かについてはこちらの「スリーピングパッドの選び方」を参照ください。また評価の★は今回の比較候補のなかでの相対評価です。
- 快適性:クッション性や肌当たりによる寝心地・座り心地の良さ、岩や枝の突き上げ等を防いでくれるかなど
- 断熱性:地面からの冷気をどれだけ遮断してくれるか。
- 重量:単位当たりの重さ
- 携帯性:畳んだときの大きさ。畳やすさ・嵩張りにくさ。
- 使い勝手:セッティングのしやすさや畳みやすさ、パッドの上で寝る以外の作業しやすさや、パッド自体を他の用途にも応用できるかなど
- 耐久性:単純な破れにくさもですが、使い物にならなくなるリスクがどれだけ少ないか
なお、テスト結果の評価数値はあくまでもテストを行った評価者の判断によるものです。できる限り納得性の高い、客観的な評価を目指してはいますが、それでも快適さ断熱性など主観による評価をゼロにすることは不可能であり、その点については考慮の上で参考にしてみてください。
評価まとめ&スペック比較表
※ASTM(米国試験材料協会) R-valueに基づいた値
バックパックに取付けて大きさを比較
ザックに取り付けた状態を比べてみました。最も厚みが薄かったのは CAPTAIN STAG IXPE フォームマットです。ただ幅が56cmと他に比べて広いため、今回は縦付けにしているのであまり気になりませんが、横付けにすると身体の幅をはみ出てしまうので注意。
その一方で、最も嵩張ったのはエバニュー Traverse mat 180でした。この辺はロールマットの弱点といえば弱点。ザックの上に縛り付けるのが一番邪魔にならない設置方法かもしれません。
各モデルのインプレッション
【重量と寝心地を重視するULハイカーにオススメ!】新技術で体を包み込む柔らかマットが癖になる「EVERNEWのTraverse mat 180」
軽量ロールマット界の王者「山と道 UL pad15+」。そこに真っ向から勝負を挑んできたのが、「EVERNEW Traverse mat 180」です。
Traverse mat 180は、従来の薬品発泡ではなく、臨界流体化した樹脂にガスを注入することで微細で均一な気泡を形成しており、発泡倍率は2倍以上、沈み込みを抑えつつ快適な寝心地を実現したマットです。
Traverse mat 180とUL pad15+の厚みの違いは、わずか2mmですが、Traverse mat 180は、あきらかに地面の凹凸を感じにくく、寝心地もgoodです!
気になる点としては、表面処理がされていないため傷つきやすく、耐久性が心配なこと、厚みがあるので嵩張ること等です。だた、嵩張る点については、半身用にカットするなど工夫して使うのもありだと思います。
UL pad15+は、私の現在のメインマットであり、風雨の北アルプスから雪がチラつく里山まで多くの夜を共にしてきました。寝心地はラグジュアリーとは言えませんが、必要十分であり、耐久性も高く、なにより最軽量な完成度の高いマットです。その意味でもちろんUL pad15+のパフォーマンスの高さは疑いようがありません。ただ、今回 Traverse mat 180を体験してみて、この寝心地の良さにはかなりグラつきました。どちらを選ぶかはその人次第ですが、嵩張りは何とか我慢できる、そして寝心地の良さを重視したいという人は Traverse mat 180 も全然アリだと思います!
【初期投資を抑えたい初心者ハイカーにオススメ】ダークホース登場!異次元コスパとワイド幅、そしてコンパクトで 他にない魅力が何とも惹かれる「CAPTAIN STAG IXPE フォームマット」
キャンプ界からの刺客、CAPTAIN STAGの登場です!
「オートキャンプ用では?」などと侮るなかれ、登山でも十分に使えるスペックで、想定を上回る完成度に胸が高鳴り、嬉しくなりました。
独自の特徴が3つもあります。
ひとつめの特徴は、幅56cmとワイド幅な点です。折りたたみタイプ5品中、最も横幅が広いです。寝ている途中に腕がマットからはみ出して寒い思いをした人もいるのではないでしょうか?ワイド幅マットはそんな悩みに有効です。
2つめの特徴は、7点中トップクラスのコンパクトさ(薄さ)です。幅は広いとはいえ、この薄さは意外とアリ。実質的には携帯性に優れているといえます。
そして、3つめの特徴は、物価高の昨今において驚愕の2,980円というコスパの高さです。
肝心の寝心地は少し硬め、薄くした分断熱性は確かに劣るかもしれませんが、暖かい季節に使うのであれば及第点の寝心地と断熱性です。R値は不明ですが、メーカーに問い合わせたところ、「春から秋先までの期間なら快適に使用可能」とのことでした。
Zライトソルと似たデザインが気にならなくもないですが、初めてマットを購入するハイカー、特に初期投資を抑えたいハイカーには間違いなくオススメできるマットです。
【全ハイカーにオススメ!】寝心地も使い勝手も完璧な王者「THERM-A-REST Zライトソル&NEMO スイッチバック」
絶妙なマットの柔らかさは寝心地が本当に良くて、寝た時の心地よさは7点中トップクラスです(個人的に重視している点です)。
また、断熱性、重量、携帯性、使い勝手も良く、バランスも取れています。
さすが伝統的マットレスメーカーTHERM-A-REST。売れているのには理由があります。
軽量コンパクト、地面の凹凸も感じにくく、柔らかいフォームは寝心地もよく、断熱性もしっかりとある。すべてにおいてクローズドセルマットとしてバランスに優れており、はっきり言って弱点がありません。どんなハイカーにもオススメのマットです。
これとほぼ同じ特徴で、わずかな部分で差別化を図られているのが、NEMO スイッチバックです。価格は1万円をわずかに超えていますが、微妙にこちらの方がコンパクトにたためたり銀の部分が内側に折られるのでデザイン性に優れていたりと、Zライトソルに引けを取らないバランスに優れたマットで全てのハイカーにオススメできます。どちらを選んでも長く使えて後悔はしないでしょう。
ちなみに銀のアルミ面は上(身体)側にすると断熱性が向上するので、冬はアルミ面を上に、夏はアルミ面を下にするのが良いそうですよ。
驚愕の38mm厚のマット「EXPED FlexMat Plus」
カタログでスペックを見た時から、「厚み38mmのマットってどんな寝心地?!」と興味津々だったマットです。
厚み38mmは、Zライトソルの約2倍の厚みとなります。
異次元の厚みで期待した寝心地ですが、思った以上に突起が硬く感じられ、残念ながら期待したような「厚みに比例して快適」という感じはありませんでした。ここは好みが別れるところです。
その一方で、厚みの恩恵により地面の凹凸はほとんど感じません。また、R値2.2と他マットと比べ1割ほど高く、メーカー想定は0℃使用も示しており、雪がチラつく場面でも幅広く使える点が良いです。デザイン性も高く、ブルーカラーの色合いの美しさやザックに取り付けた時のカッコ良さも気に入っている点です。
懸念点としては、今回の7つの中で最も重量が重い点ですが、半身用にカットして使うなど工夫して使うことで解消できるかと思います。
【冬も使いたいという人にオススメ】高いR値ながら軽量コンパクトさをキープした「mont-bell フォームパッド 25 180」
「mont-bell フォームパッド 25 180」は地面の凹凸を感じにくい十分な厚みによって、R値は2.3と初冬でも使えそうな断熱性を備えています。その割に重量と携帯性も良い。この汎用性の高さは他にない魅力です。
寝心地はサーマレストなどと比べると若干硬めなところはありましたが、それ以外のパフォーマンスとしては7点中トップクラスであり、1年のうち長い季節に効果的で寒がりのハイカーにオススメのマットです。
まとめ:軽さ、寝心地、断熱性、コスパ、デザイン、、、重視するポイントで、自分に最適なモデルを選んでいこう
7製品をフィールドテストしてみましたが、各モデルそれぞれに優秀ながら見事に得意なポイントが微妙に分かれていて、どれがベストかを決めるのは非常に悩ましかったです。
ただあえて言うならば、今回私が最も「買い」だと思ったのは、驚きも含めて「CAPTAIN STAG IXPE フォームマット」でした。決め手は他にはない「横幅の広さ(56cm)」「収納時のコンパクトさ」「価格にしては必要十分な寝心地」の3点です。特にワイド幅は秀逸で、寝返り時に腕がマットから落ちるストレスがありません。横幅55cm以上のマットは珍しく、この点が大きな魅力でした。価格は驚きの2,980円(税込)。登山用品としては破格ですが、クオリティは(長期間の耐久テストはしていませんが)しっかりしていて、妥協は感じません。最近の登山ギアは価格が年々高騰していますが、そんな時代にこの品質で出してくるCAPTAIN STAGの企業姿勢に、ちょっと感動してしまいました。加えて、「登山用ではないジャンルから実用的で優れたプロダクトに出会えた」というギア好きならではのサプライズ感も、選定の後押しになりました。
とはいえ、他の6製品も非常にキャラが立っていて、山行スタイルや季節に応じて使い分けたい魅力があります。
例えば、「EXPED FlexMat Plus」や「mont-bell フォームパッド 25 180」は、厚みや断熱性が秀逸で、地面の凹凸を感じたくない、初冬にも使いたいといったハイカーにピッタリです。
「THERM-A-REST Zライトソル」や「NEMO スイッチバック」は、バランスに優れていて完成度も高く、幅広いハイカーに対応可能。「山と道 UL Pad15+」や「EVERNEW Travers mat180」は、軽量性やUL志向を追求するハイカーにこそフィットします。
つまり、「ベストなマット」はハイカーによって違います。
- どんな季節に使うのか?
- どんな荷物量で歩くのか?
- 地面の硬さが気になるタイプか?
- UL装備を突き詰めたいのか?
こうした視点から、この記事の比較レビューが、あなたの山行スタイルに合ったマット選びのヒントになれば幸いです。