冬山登山に欠かせないアウターであるハードシェル。かつてはとにかく冬山の厳しさに耐えられる堅牢なモデルが主流でしたが、現在では多くの素材メーカーやブランドによって、用途や目的に合わせた様々なモデルが登場し、手に届きにくい価格もあって悩ましいとの声をよく聞きます。
昨シーズンはさまざまな素材・特徴を備えたハードシェルを横並びで一通り試してみました(「比較レビュー:雪山アウトドアの心強い味方、ハードシェルジャケットを着比べてみた」)が、その比較レビューでも分かるとおり、すべての項目において完璧なハードシェルはなく、モデルの特徴や一長一短を理解し、使用目的によって使い分けることが重要です。
そちらのレビューで紹介しているモデルは2019年の1月現在でも現役ばかりなので、もし興味のある方は参考にしてみてください。
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今シーズンのハードシェル、気になったのは「軽量・高透湿・快適」モデル
2018-19シーズンに新登場あるいはモデルチェンジしたハードシェルのなかでは、ギリギリまで軽量化に取り組み、さらに透湿性、生地のしなやかさをアップさせた、主に快適性の部分で進化した軽快なバックカントリー向けモデルが特に気になりました。そこで今回はそこから注目モデル3つをピックアップして比較レビューしてみます。
はじめに断っておくと、いずれも本格登山をカバーする専門ブランドの開発だけあって、3モデルともスキーブランドのハードシェル等と比較すると基本的なつくりからハイレベルで、そのなかでの悩ましい比較となりました。
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今回比較したハードシェルについて
今回比較した3モデル。※()内は透湿素材
- Teton Bros. TB Jacket (Polartec NeoShell )
- Norrona lofoten Gore-tex Active jacket(Gore-tex Active )
- Mountain Hardwear クラウドシーカージャケット(Dry Qエリート)
テスト環境
11月~12月にかけて北海道の冬山。ゲレンデ、バックカントリー(スノーボード)はもちろん、発汗時チェックのため雪山ハイキングでも着用。天候は晴・曇・雪・吹雪など一通り体験。中にはベースレイヤー、フリースを着用。透湿性能に関しては最低1時間のハイクアップをし、汗を大量にかいた状態で評価。汗っかきの筆者にとってはうってつけでした。また、透湿性を徹底的に検証するため、汗をかき始めてから最低1時間は各ベンチレーションを開放せずに生地からの抜けの良さを検証しました。その後、各ベンチレーションを開放し、換気性や快適性、その他の細かい部分の項目もチェックしてみました。
評価項目については、以下の5点を指標に設定しレビューしました。
- 対候性・・・雨・雪・風・冷気を遮断する性能としての対候性は、あらゆる気象変化のなかでハードな活動を行う上で第一に求められます。
- 快適性・機動性・・・スキーのストックワーク、登攀時アックスの打ち込み、ラッセル時の雪かきなど、冬のアウトドアは意外とアクティブに動くため、激しい動きにも十分対応できる形・着心地が求められます。
- 透湿性・換気性・・・どれだけ寒い時期であっても、激しい動きに発汗はつきもの。全身から発せられる汗を水蒸気として排出し、身体の濡れを防ぐための仕組みがあるかどうか。
- 重量・・・分厚い素材であればあるほど、外気を防ぎやすいのは確かですが、技術の進歩によって、耐候性を維持しながらさらに薄く、軽くなってきています。
- 機能性・・・フードの形・調整し易さやポケットの数・位置・大きさといた機能・使いやすさに関わる部分は、それが想定するアクティビティに特化していたり、汎用的なつくりになっていたりと、各モデルのコンセプトや個性が出てくる大事な要素でもあります。単純に機能の数が多ければ良いわけではありませんが、あまりに少なすぎても使い勝手は悪くなります。
テスト結果&スペック比較表
各モデルのインプレッション
Mountain Hardwear クラウドシーカージャケット
ここが◎
- 抜群の透湿性能と換気性能
- ベンチレーション兼用の大きなポケットをはじめ豊富な収納
- ストレッチ性に富んだ動きやすい生地
- RECCO
ここが△
- フードの調節ストラップが襟の中にあり分かりにくい
袖を通してみるとここでも感心。軽量でストレッチ性に富んでおり非常に動きやすい生地はまったくストレスを感じさせることがありませんでした。標準装備されているスノースカートにはフックがついており、パンツとの連続性が絶たれることなく雪の侵入を防ぐことができます。しかも同メーカーのパンツでなくてもどこかしらに引っ掛けて使うことができたので、地味に便利です。
ハーネスの装着も想定されており、ファスナーは全て高い位置に配置されています。アルパイン、ゲレンデ、バックカントリーとまさにオールラウンドに活躍してくれること間違いないでしょう。
NORRONA lofoten Gore-Tex Active Jacket
ここが◎
- 驚くほど軽量
- 快適な着心地
- 片手で調整可能なフード
- 気の利いた装備
ここが△
- ポケット類の少なさ
その異次元の軽さに加え、完璧な立体裁断とわずかな伸縮性によるストレスのなさは、着用していることを感じさせないぐらいの動きやすさを実感できます。さらにこの最新Gore-tex Activeの特徴である、ニットによる裏地の肌触りも素晴らしいものがあります。バリバリと固いハードシェルとは雲泥の差があると言ってもいいでしょう。
Teton Bros. TB Jacket
ここが◎
- 操作性の高いベンチレーション
- 快適な着心地
- スタイリッシュなデザイン
- グローブのまま操作しやすい各種パーツ
ここが△
- スノースカートが付属していない
- ジッパーの滑り
ブレない哲学で良質なプロダクトを追求し続ける、日本が誇るアウトドアブランドTeton Bros.。同ブランドの代表作の一つであるTB Jacketはやはり期待を裏切りませんでした。しなやかで肌触りの良い生地、立体裁断、若干のストレッチ性による着心地の良さ、動きやすさはさすがの一言。
こうした実際に使う人のことをよくよく考えて作られたと思える、目に見えにくい部分の数々がTB Jacketの隠れた魅力であり、この総合力の高さは、バックカントリーに最適なハードシェルとして文句なしです。
まとめ
基本的に今回の3モデルはどれもハードシェルとしてのベーシックな性能は申し分なく、今回のテストのような軽いバックカントリーでは大きな差が出ることはありませんでした。
透湿性能に関していえば満足のいかなかったものはありませんでした。3モデルともとても素晴らしく、期待通りの快適さを見せてくれました。熱を逃すスピードに関してはDry Qエリート > Gore-tex Active > Polatec NeoShellとなっていますが、あくまでも透湿し始める速さという印象で、一度長時間を経過しての蒸れの少なさについては優劣つけがたいものがありました。
一方、ベンチレーションの仕組みや位置、ポケット類といった、細かい使い勝手的な部分では若干の差がみられたといえます。基本スペックは高いため、どれを選らんでも致命的なミスにはならないと思いますが、このレビューを参考に、好みの機能が備わっているモデルを選ぶといいでしょう。
以上、様々な視点での評価があると思いますが、ハイクを絡めたバックカントリーで使用する視点で選んでみた、ハードシェル比較レビューでした。よかったらぜひ参考にしてみてください。
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