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今シーズン見逃せない中型バックパック 2018【ハイキングやファストパッキングに】

30~40L(リットル)サイズのバックパックといえば日帰りハイキングから小屋泊まりの1泊山行まで用途は幅広く、はじめての登山向けとしてはちょうどよいサイズ感。もっている人もかなり多いのではないでしょうか。それだけに本格登山ブランドから新しいスピードハイク系のブランドまで、バリエーション豊富なモデルがひしめき合って、見ていて楽しいギアのひとつです。

このサイトでの注目・おすすめモデル紹介は気が付けば前回から2年経ってしまっていました。そこまでモデルチェンジのサイクルが早くないとはいえ、そろそろここらであらためて最近の大きなトレンドを振り返り、注目バックパックをチェックしてみたいと思います。ここで並べたモデルの一部については今年も比較レビューを絶賛実施中です。今後近いうちにアップしていきますので、そちらもご期待ください。

目次

トピック1:あのメーカーからもついに!ハイキング向けバックパックの新作に注目

Patagonia ナイン・トレイルズ・パック 36L

パタゴニアからついに、ハイキング・トレッキングど真ん中のバックパックが登場しましたよー。これまでクライミングやバックカントリー向けから日常・レジャー向けのデイパックまで、幅広いモデルが揃っていたのになぜかここだけ空白だったものだから、個人的にはやっとか、という気持ちです。でもそんな長い沈黙を破って出てきただけあって、完成度は高い。全体的には伝統的な縦走用ザックというよりも、トレンドを意識した軽量タイプ。水分を含まず通気性の高いモノメッシュのバックパネルと有孔フォームのパッド入りショルダー・ウェストハーネスなど可能な限り軽量に作られていますが、背負い心地は決して犠牲になっていないのはさすがです。とはいえ14・20・28・36L(一部ウィメンズモデルもあり)と小さめのサイズ展開が多いことから、ハードなアクティビティよりもやはり軽快なハイキング向けの気がしますが、相変わらずカラーリングやデザインの良さを含めてやっぱり無視できないです。

Thule オールトレイル35

老舗が多いバックパックメーカーの中にあって比較的新しいブランドにもかかわらず、完成度の高い新作を次々リリースしてメキメキと存在感を増しているスーリー。これまでこのクラスでは背面がテンションメッシュのタイプファストパッキング向けモデルなどがありましたが、今回登場したのはよりオールラウンドな季節・アクティビティに対応した中型ハイキングパック。何よりも特筆すべきは背面長が調節可能なバックパネルで、自分の背中のサイズにぴったりとフィットさせることができます。これはどんなパックであっても付いていて欲しい機能。外側のアタッチメント類はスッキリとして最小限ながら、内外からアクセスできるShove-it Pocket™など利便性は損なわない工夫がうれしい。ウェストベルトにはポールホルダーやドリンクボトルホルダーにカスタマイズ可能なVersaClickを有し、拡張性もあります。軽さと通気性も忘れていません。35Lで天蓋ではなくジッパー方式の入口を採用したことで、容量によっても型崩れしにくいデザインも他には見られない特徴です。

トピック2:定番モデルの大幅モデルチェンジに注目

mont-bell グラナイト パック 40

メジャーなブランドにはそのブランドを象徴するような息の長い定番モデルがあるものです。モンベルのグラナイトパック(アルパインパック・エクスペディションパック)といえば、かつては「ZERO POINT」ブランドを冠し、必要十分な機能性と誰もが手に届く価格帯で伝統的な本格登山向けバックパックの代表的な存在でしたが、今シーズンそれらはびっくりするくらい斬新な進化を遂げました。縫製箇所の少ない独自のパターン設計によって1.17kgとかなりの軽量化(かつ高強度)を実現しつつ、オプションの天蓋やギアホルダーを装着することで自在に収納を拡張可能なカスタマイズ性の高さは自分のようなフリークにはたまらない機能。背面やウェストベルトはかなり簡素なつくりですが、実際に背負っても思ったほど貧相には感じませんでした。高い防水性をもったライナー「アクアバリアサック」をつければ沢登りや冬山にも最適、そして外せばさらなる軽量化が可能と、使う人の数だけ使い勝手が広がる、シンプルであるがゆえに逆に汎用性の高いバックパックといえそうです。

deuter フューチュラプロ36

今では当たり前となってしまっていますが、背面に通気のための空間を取り入れたバックパックの先駆者として名高いドイターフューチュラシリーズは長らくマイナーチェンジを重ねていましたが、今シーズン満を持して大幅にモデルチェンジ。まずは何といってもこの統一感のある落ち着いた色合いに洗練されたデザイン。基本的な背面メッシュ構造は引き継ぎつつ、素材を見直すことでさらに通気性・快適性が向上。一方ショルダーストラップはこれまでのようにメッシュパネルではなくフレームに繋がっていることでフィット感と肌当たりが向上。さらにヒップベルトもクッション性と安定感が向上と、とにかく背負い心地がこれでもかというくらいに進化していました。外側前面に新たに大型ポケットも配置され、収納性・利便性もアップ。オーソドックスなバックパックだってまだまだ全然イケてるぞということを感じさせてくれる、素晴らしい完成度です。

MILLET サースフェー40+5

こちらも負けず劣らずヨーロッパのアルピニズムに数々の金字塔を打ち立ててきた歴史を誇る老舗ブランド、ミレーの定番バックパック。毎年地味にですが細かいアップデートを着実に重ねてきていますが、今シーズンの改定は細かい部分も含めて個人的に当たりが多く、好感触でした。例えばポケット類。サイドポケットは伸縮性のあるメッシュ、サイズも大きくなりしかも入口も縦・横方式に。ヒップベルトポケットはミレーの大型パックに採用されていたような折り畳み式の大型可変ポケットに、といった具合で収納性に関しては劇的に向上しました。レインカバーはこれまでサイドポケットに収納されていたのがヘッドの中に収納となり、バランスも良くなりました。背負い心地も実際に背負った感じでは背面のクッションがよりリッチになった印象です。スリムなフォルムは相変わらず、今シーズンの隠れた目玉モデルといえそうです。

THE NORTH FACE テルス 35

ノースフェイスのトレッキング向けバックパックとして長らく定番モデルのテルスも、今シーズン大きくモデルチェンジしています。おなじみだった前面の大型ジッパーポケットが「ついになくなった?」かと思いきや、隠れジッパー&バックルによる大型ポケットになり利便性とデザイン性が向上。これに限らず最近はスタイリッシュになり、売れている理由も何げにうなずけます。他にもヒップベルトや背面のフィット感が向上したり、ウェストベルトの締め方が前に引いて締めるタイプになったりと、微妙ながら確実に使い心地が良くなっていて、選べるモデルになっていると感じました。基本的にオーソドックスで安定感のある作りとクセのないフォルムが、どことなくかつて好きだった頃のGregory スタウト35みたいで好感もてる。

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トピック3:ビッグブランドが本気で手掛けた軽量モデルにも注目

Osprey エクソス38

圧倒的な背負い心地の良さと、かゆい所に手が届く合理的な機能の数々で毎年目が離せないオスプレーのなかで、オールラウンドな軽量パックとして定番であったエクソスが今シーズンアップデート。まず大きく変わったのはそのフォルム。新しいエクソスは背面フレームの横幅が大きく広がり、さらに底部が持ち上げられ重心が上部に移動したことで、腰への荷重の安定性が増しているように思われます。もうひとつ、背面・ショルダー・ヒップベルト全体をシームレスに覆う最新のメッシュ背面パネルが肌当たり・背負い心地・通気性ともに向上しています。ただ外側についていた細かいポケット類は省略されてしまったものが多く、そこは残念ですが基本的な使いやすさは変わりません。圧倒的な軽さの中でより快適性・安定性を増した新しいエクソスは、ライトユーザーにも受け入れやすくなり、もはやウルトラライトと特別視する必要もないくらいに完成度が高まってきました。女性モデルはエイジャ。

Osprey レヴィティ 45

今シーズンオスプレーにとって一番のサプライズは何といってもこのモデル。オスプレーが満を持して発表した、ウルトラライトハイカーのための超軽量バックパックは45Lにして800gという、U.L.ガレージブランドもびっくりの軽さ。だからといって、そこはもちろんマスプロダクトメーカーだけに、なりふり構わず軽量化したわけではありません。軽量性と耐摩耗性に優れた最新素材NanoFly™によって軽量ながら耐久性は確保され、アルミフレームとシームレスなメッシュ地のトランポリン構造によって快適性・通気性・クッション性も抜群。外側前面・両サイドには大型のメッシュポケットが配置され、収納性十分。登攀系のテクニカルなトレッキングではなく、アップダウンを繰り返しながらとにかく長距離・長期間スルーハイクするスタイルには間違いなくフィットするでしょう。女性モデルはルミナ。

GREGORY オプティック 48

あのグレゴリーまでもが、今シーズンの新作としてウルトラライトモデルを発表しています。重量はそこまで軽いとは言えないかもしれませんが、それでも同社の中では最軽量の1.2kg。独自のフィット哲学で圧倒的な背負い心地に定評のあるグレゴリーだけに、軽量モデルにもかかわらず、相変わらずクッション性の高いショルダー・ヒップベルト、フィット感と通気性抜群の背面パネルといったラグジュアリーな背負い心地は見事です。サングラス収納用ストウや伸縮性と耐久性抜群のメッシュポケット、操作性の高いジッパーやバックルなど、グレゴリーではおなじみのきめ細かいパーツ類の品質の高さも健在で、安心して軽量バックパックでのスルーハイクを楽しむことができます。

THE NORTH FACE エフピーハイブリッド40

ノースフェイスのファストパッキング向けモデル、エフピーハイブリッド40は、今回紹介した中では唯一、トレイルランニング向けモデルをルーツとしており、その意味では背負い心地から使い勝手までが一味違います。さしあたって大きく違うのは幅広いベスト型のショルダーハーネスを採用し、背中上部で背負うタイプであること。とはいっても40Lの容量であれば重量もそれなりにかさんでくるため、ヒップベルトについてもある程度安定性・クッション性の高いものとなっています。背面パネルがトランポリン式のメッシュになっているのは大量の発汗を伴うスピードハイクにとってかなりありがたい仕様。ただこの場合どうしても重心が身体の中心から離れてしまい、動きに対してブレやすくなる懸念がありますが、胸と腰でのフィット感が高く、お店で背負った限りではなかなかの安定感を感じました。フロント・サイドのストレッチメッシュポケットやボトルも収納可能なショルダーメッシュポケットなど収納に関しても問題なし。快適性を手に入れた「走れる軽量バックパック」は、トレイルランナーがちょっと長めのトレイルを歩いてみたいと思ったときに、おもしろい存在となるのではないでしょうか。

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