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macpac ウェカ40&フィヨルド40 レビュー シンプル・タフ・ユーティリティなバックパックは自然への誠実さでできている

macpac のバックパックを約20年ぶりにしっかりと背負わせてもらいました。1つはブランドの代名詞である堅牢性と耐久性を備え、素朴でクリーンな見た目が印象的なウェカ40。もうひとつは軽量なうえに多才な、アドベンチャーレース大国としての意地がいかんなく発揮されたフィヨルド40

「剛と柔」といえるほど、まったく別の顔をもつ両者ですが、そのどちらにも貫かれているのは、ニュージーランドという過酷で恵み豊かな自然と向き合ってはじめて生まれるひとつの共通した哲学でした。それは欧米、そして日本のそれとも微妙に異なり、アウトドアカルチャーの多様性の奥深さを堪能させてくれます。今回はそんなmacpac のものづくりを貫く哲学を見ていきながら、それを具現化した2つのバックパックについてレビューします。

目次

macpac を貫く哲学、またはmacpac との出会い

とにかく丈夫なバックパックが欲しかった

その昔、ぼくにはとにかく丈夫で防水性の高いバックパックが欲しかった時期がありました。それは沢登りにのめり込んでいた90年代後半、大学1年で先輩に言われるがまま購入した初代のザックに一旦の別れを告げ、次の相棒を募集していた頃。

当時ぼくはいわゆる「沢屋」というやつで、雪のない時期は沢登りばかりしていました。バックパックが藪や岩角に引っ掛けることは日常茶飯事、水の中に沈めるのも当たり前、泥や岩の壁をズルズルと引きずり上げることもあるし、どうしようもないときには滝上からぶん投げることも。バックパックは軽くて薄い方がいいなんてことを考える脳みそはみじんもなかった時代でした。

水道橋にあるいつもの登山専門店でぼーっと物色していると、ふと見たこともない、かわいらしいブランド名と、ゴテゴテせずシュッとした顔立ち、そして味のある青色をしたバックパックがぼくの目に飛び込んできたのです。

その個性的な顔立ちに何か引き寄せられ詳細を聞いてみると、なんと完全防水生地(後に防水ではなく耐水とわかるが)のバックパックというふれこみ。そして触ってみてすぐにわかる、帆布のように丈夫そうな生地。これこそまさに探し求めていた特徴にビッタシ。気がつけば数日後、そのバックパックはぼくの家にありました。それこそが今回紹介するmacpac とぼくの出会い。

そこからmacpac とぼくの長い付き合いがはじまるはず、でした。しかし、残酷なことに、当時のモデルは欧米のガタイに合わせて作られていたからか、ショルダーストラップの肩幅が合わず、どうしても丸一日背負うと肩擦れしてしまうという相性の悪さから、長く使い続けることはできず。モノとしてはたいそう気に入っていただけに、なんともほろ苦い思い出として強烈に印象に残っていました。

ニュージーランドの自然が作り上げた、強さとシンプルさから生まれるユーティリティ性

macpac が生まれ育ったのは、1973年のニュージーランド。ここは標高3000メートルを越える山々と氷河、それに広大な原生林や渓流・湿原・湖・フィヨルドなど、自然豊かな国であることをご存知の方も多いのではないでしょうか。この多様な自然が織りなす壮大な光景は、今でも世界中の人々を魅了し続けています。

一方でその複雑な自然環境に加え「1日の中に四季がある」ほど複雑な天候は、私たちをそう簡単には受け入れてくれません。ニュージーランドの大自然に深く分け入るためには天候・季節・地形といったあらゆる状況への対応力が求められます。

そんなヨーロッパ大陸ともアメリカ大陸とも違う、過酷で多様なニュージーランドの自然に向き合い続け、たどり着いた結論が、「シンプルでタフ」というコンセプトでした。「簡潔であることは複雑であることに勝る」という、彼らが40年間ものづくりを通じて確立された答えからは、ブランドの自然に対する敬意と誠実さがにじみ出ています。そしてこのシンプルなコンセプトが、一見回り道であったとしても結果として世界中の冒険心を満たしてくれるということは、日本で沢登りをしていた僕のような人へと想いが繋がったことで証明されています。

丈夫であることは長く使えることでもあり、必然的に資源の節約へとつながります。自然に対するまっすぐな誠実さが、結局のところ、いつの時代にも変わらない、普遍的な価値として残る、そんなことを伝えているかのようです。

シンプル・タフを体現した独自素材「AZTEC®」

macpac の哲学を最もよく体現しているのが、彼らのコンセプトにしたがってより品質の高いパックを追及した結果開発された素材である「AZTEC®」です。摩耗に強いコットンと、腐食に強いポリエステルの混紡糸を専用織機で高密度に織り合わせ、防水液を浸透させることで、「堅牢・耐水・ロングライフ」という唯一無二の強靭な生地を実現しました。

一般的なナイロン地のバックパックは裏地にPUコーティング加工を施すことで耐水性を高めていますが、3年程度でボロボロと剥がれ落ちていくのを経験したことがある人は多いでしょう。その点、AZTEC®を使ったバックパックは丈夫で、なおかつ年月を経ても耐水機能が劣化せず、長く相棒として連れ添ってくれるのです。

詳細レビュー:ウェカ40

前置きが長くなりましたが、ここからはmacpac の代表的な中型バックパック、ウェカ40をレビューしていきます。

生地・素材・外観

ベースの生地には先ほどのAZTEC®素材のラインナップなかでもより軽量で柔らかいECO AZTEC®を採用しています。AZTEC®はどうしても重くなりがちな生地ですが、このモデルでは他の細かい部分で重量を削減する工夫を凝らし、耐久・耐水性という伝統的な特徴を備えつつも現代的な軽量化ニーズにも対応しようとしています。このため従来のmacpac のパックほど重さはさほど気になりません。

AZTEC®生地に水をかけてみます。軽い小雨なら瞬く間にこぼれ落ちていく程度の高い撥水性、そして豪雨などで染み込んだとしてもコットンの膨張によってより生地の密度が上がり、縫い穴を塞がれることによって内部への水の浸入がより防がれるという仕組みです(下写真)。

ところでこの素材、機能的な特徴もさることながら、個人的にはコットン混紡による柔らかで味のある風合いがたまらなく好きです。この生地ならどんな鮮やかなカラーリングでも落ち着いて見せてしまう、不思議な魅力。

ポケットやストラップなどの外部アタッチメントも必要最低限、切り替えを極力少なくして縫い目を減らしたというクリーンな表面も合わせて、ユニークで洗練された外観はこれだけでも一つ持っていたくなります。

背面システム・背負い心地

硬質な背面はぴったりと背中に寄り添ってくれ、ウェストハーネスの両脇にはパックを引き寄せるストラップがついており、荷重はしっかりと腰に乗ってくれます。

ただ背面パッドは荷重の当たる部分に最小限配置され、背中、そしてウェストハーネスのクッションはやや少なめでちょっと硬め。昔はみんなこんなものでしたが、最近のラグジュアリーなパックと比較すると多少ゴツめな印象です。通常の週末ハイキング程度なら問題ありませんが、十数kgを超えるような荷物で長時間の歩行には覚悟が要ります。

収納性(ポケット・アタッチメント)

ウェカの最も大きな収納の特徴といえるのがフロントのジッパーポケット付き大型スタッシュポケット。何がユニークかって、このポケット、サイドのストレッチメッシュポケットと繋がっているんです。おかげでサイド・フロントそれぞれに通常の使い方(下写真)に加えて、

大き目の荷物や複数の小物をごそっと入れたりすることが可能(下写真。分かりにくい?)。必要に応じて何も考えずに放り込める。つくりはシンプルですが、意外なほど実用性があります。

メイン収納の口は指一本で開くことができる使いやすい仕様(下写真)。

天蓋にはヘッドポケットと、裏側にキーチェーン付きのジッパーポケットが付属(下写真)。ここはいたってシンプル。

ポールのアタッチメントは左側に1カ所ですが、ちゃんと2本収納できるようになっています(下写真)。その他ハイドレーションの収納・アタッチメントもしっかり備わっています。

ここが気になる

これまでもっていた「タフでシンプル」という良さを守りながら、多くの部分で現代的な軽快・スマートさを加えていこうという意識が伝わってきますが、そのバランスのせめぎあいには成功している部分とそうでない部分があると感じられました。

例えばウェストハーネス。ストラップの幅やバックル自体の大きさが小さすぎて、安定感と操作性にやや欠ける気がしました。個人的にこの部分は削らずにもっと大きくて安定感が欲しかった。

その他、天蓋とボディをつなぐ2つのフロントバックルは、開け閉めの度にスタッシュポケットの内側に入り込んでしまうため、かなりもどかしさがありました。こうした細部にはまだまだ進化の余地があるでしょう。

まとめ:こんな人におすすめ

作り自体はシンプルでタフというmacpac らしさが全開で、幅広い時期の山旅全般に対応できる汎用性の高いモデルです。加えてmacpac の難点であった重量についても気になるほどではないため、背中を合わせてみて硬さが気にならなければベテランだけでなく初心者も十分満足できると思います。バックパックに必要な機能の本質部分をしっかりと備えたこのモデル、何より他にはないこの外観にやられた人であれば、十分検討してよいモデルでしょう。

なお公式情報と購入はこちらの公式通販サイトから。

詳細レビュー:フィヨルド40

次にレビューするのは、最近のmacpac が見せるもう一つの顔、アドベンチャーレース大国のブランドとして、過酷な自然と向き合った結果生まれた、軽量・多用途タイプのバックパック、フィヨルド40です。

生地・素材・外観

ボディには100デニールのナイロン素材で極力軽量化を意識しながら、ボトムには500デニールのコーデュラナイロンで十分な耐久性を保っています。フォルムはスリムで汎用性の高い素直な寸胴型です。

背面システム・背負い心地

波打ったウレタンフォームパネルにメッシュ素材を合わせた背面パネルは、通気性とクッション性を備えており、ショルダー・ウェスト部分と合わせて蒸れにくい設計(下写真)。活動量が多いときや蒸し暑い時期でも快適です。

軽量化に重点をおいたモデルだけに、背面フレームは入っていません。荷物を入れない状態だとバックパックはふにゃふにゃです。

ただし、よくある軽量バックパックから想像すると安定性は諦めなければいけないのかと思いがちですが、そのハンデをボディの前後・左右縦方向に通った4本の硬めのウレタンフォーム、背面のウレタンフォームパネルが支え、さらに幅広のウェストハーネスと両脇に備わったストラップによって十分な安定感と快適さをもたらしてくれます。

ちなみにこのウレタンフォームパッドは寝るときのマットにもなり、さらに軽量化したいという必要が生じた場合には取り外すことも可能です(下写真)。

軽量化のためウェストハーネスも取り外し可能(下写真)。

軽量化や荷物が少ないときには天蓋も取り外せてしまいます(下写真)。ニーズに合わせて快適性・安定性・収納性・軽量性を自由自在に調整できる。これだけ複雑な要素を盛り込みながら、作りのシンプルさは保たれているところはさすがです。

収納性(ポケット・アタッチメント)

メイン収納はロールトップ型で浸水を防ぐ構造。中はフォームパッドが収納された内袋に、ハイドレーションを収納するフックが入っています(下写真)。

天蓋のジッパーポケットは裏側にキーチェーン付きのメッシュジッパーポケットは大きさ十分(下写真)。

小物が収納できるジッパーポケットはウェストハーネスの左右に配置されています(下写真)。

フロントにはストレッチの大型ポケットに加え、自由な使い方ができるバンジーコードを配置(下写真)。

サイドにも伸縮の効いたポケット、そして長物を固定したり、荷物量に合わせて圧縮したりするサイドコンプレッションストラップもしっかりとついています(下写真)。

このサイドコンプレッションストラップは「ZigZagサイドコンプレッション」と名付けられ、丸紐で極限まで軽量化しているだけでなく、背負いながらワンアクションで全体を締めあげることが可能(下写真)と、非常にスマート。

胸のストラップにはハイドレーションチューブを固定するアタッチメントが配置(下写真)。

ポールを固定するストラップは両側に(下写真)。サイドストラップと連動しており、軽量化と使い勝手を両立させた賢い作りです。

ここが気になる

ウェカ40でも同様の指摘になってしまうのですが、天蓋とボディをつなぐ2つのフロントバックルが開け閉めの際にいつも隠れてしまい、もやもや感がします。また荷物が少ない時にはこのストラップと前面のフラップが干渉してしまい、締めにくさは否めません。

まとめ:こんな人におすすめ

レースにも耐えうる軽量仕様ながら、基本的な収納・アタッチメントをしっかりと備え、なおかつ軽量パックにあるまじき背負い心地の良さ、快適性を兼ね備えたフィヨルド40は、ファストパッキングなどの軽快なアクティビティはもちろんのこと、一般的なハイキングでも十分に使い勝手がよさそう。ウェカと違って現代的なニーズにここまで寄り添いながら、macpacの目指す地球上のほとんどのアウトドア環境で幅広く通用するという汎用性の高さを備えた、別の意味でmacpacらしさを体現した、スマートなモデルといえます。

なお公式情報と購入はこちらの公式通販サイトから。

主なスペックと評価まとめ

項目 ウェカ40 フィヨルド40
公式容量(L) 40 40
公式重量(g) S2=1130、S3=1160 S2=1040、S3=1090
生地 ECO AZTEC®Canvas、840D Nylon 100D Nylon Titan Grid、500D Cordura Nylon
収納
  • フロントに大型スタッシュポケット
  • フロントジッパーポケット
  • ハイドレーションパック対応
  • トップリッドポケット×2
  • ポケット付きヒップベルト
  • サイドストレッチボトルポケット
  • ポールループ
  • 取り外し可能なトップリッドとトップリッドポケット×2
  • ハイドレーションパック対応
  • ロールトップオープニング
  • 取り外し可能なヒップベルト(ポケットつき)
  • フロントポケット
  • バンジーコード
  • ポールループ
重量 ★★★☆☆ ★★★★☆
快適性 ★★★★☆ ★★★★☆
安定性 ★★★★★
機動性 ★★★★★
収納性 ★★★★☆ ★★★★☆
機能性 ★★★☆☆ ★★★★★
耐久性 ★★★★★ ★★★☆☆
総合評価 ★★★★☆ ★★★★☆
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