軽くて薄いレインウェアが大流行しています。ただこのタイプは穏やかな季節の通り雨を防ぐ程度ならば取りあえず安心できる一方、晩秋~残雪期などの肌寒い季節や長雨・豪雨に対しては間違いなく物足りません。登山やハイキングを長くやっていくならば超軽量タイプだけでは不十分。やはりどんな状況でも安心できるレインウェアを1枚は持っておきたいものです。
今回紹介するのは、そうした本格的なトレッキングやクライミングにしっかりと対応し、なおかつ最先端の軽量・快適性を備えた万能で完成度の高いレインウェアMAMMUT GORE-TEX Quantum Ultra-Light Jacketです。以前、こちらの記事でちらっと紹介させていただきましたが、今回は実際にフィールドで使用してみてより詳細までレビューしていきます。
目次
大まかな特徴
ゴアテックスの次世代素材である従来よりも透湿性に優れた、わずか12デニールのGORE C-Knitバッカ―テクノロジー素材を使用。サラサラと心地よい着心地、高い透湿性、それでいて十分な防水性と耐久性など、現代のアウトドアで必要とされる要素が高いレベルで統合されています。
機能においても、換気性を高める脇下のベンチレーションや、開閉調節がしやすい前面ダブルジッパー、マチがついてゆとりのあるハンドウォーマーポケット、インナーポケットなど、快適性に十分な配慮がされています。他にもアルパインクライミングでの使用を想定し調整が容易なヘルメット対応のフード、安定の洗練されたデザイン・シルエットと、隅々まで良くできた汎用性の非常に高い本格派レインウェアです。
MAMMUTについて
MAMMUT(マムート)とえいばマンモスのロゴで有名な、いわずとしれた人気アウトドア・ブランドですが、実は今から遡ることなんと150年以上前にスイスで農業用ロープの取り扱いからスタートした老舗メーカー。1970年代からウェアやザックといった幅広いカテゴリをカバーするようになり、数年前にはスイス老舗登山靴ブランド・ライケルを傘下に収め、益々トータルブランドとしての価値を高めています。
過酷なシーンでのハードな使用を前提としたプロダクトは、常に最新技術が考慮され丁寧かつ精巧なつくりが行き届き、完成度の高い仕事にプロ・アマ問わず多くの熱心な支持者を集めています。細身のデザインが多い欧州の中でも特にスリムでスタイリッシュなフォルムも特徴の一つです。山中でマムートのウェアを着こなしているとなんだか一つ上の雰囲気が出てくると感じるのは私だけではないはず。
おすすめポイント
- 柔らかい着心地で肌触りも良く快適、着替えやすい
- 3方向に調整可能なヘルメット対応フードが便利
- 豊富で使いやすいポケット類
- 袖口など細かい部分で防水性への高い配慮
- 軽くしなやかながら、堅牢な作りで使用環境を選ぶことがない
気になったポイント
- 高い性能だが、価格の面で敷居が高い
- 調整してもフードが深く大きいので、視界が狭くなりがち(ヘルメットなど帽子をかぶること推奨)
アイテム外観(身長174cm EU規格Sサイズ着用)
主なスペックと評価
スペック | |
---|---|
項目 | MAMMUT GORE-TEX Quantum Ultra-Light Jacket |
生地 |
|
サイズ | XS, S, M, L, XL |
カラーバリエーション | black/dark atlantic/Dark Orange |
重量(実測) | 330g(EU-Mサイズ(日本Lサイズ)) |
ポケット |
|
フード | 3方向に調整可能なヘルメット対応フード |
耐水性 | 非公開 |
透湿性 | 非公開 |
付属品 | ― |
評価 | |
防水性 | ★★★★★ |
透湿性 | ★★★★☆ |
快適性 | ★★★★★ |
機動性 | ★★★☆☆ |
重量 | ★★★☆☆ |
機能性 | ★★★★★ |
耐久性 | ★★★★☆ |
総合 | ★★★★★ |
詳細レビュー
こんなハイエンドモデルを着る機会がそうそうないので少し舞い上がっていた中で、雨の中の岩稜帯で使用してみました。
防水性・機能性すべての面において高い総合力
シンボリックな長所があるわけではありませんが。トータルで高い水準であるという点でそのオールラウンド性が高い点に尽きます。
軽い着心地で動きに干渉することなく、暑くなったら脇下のベンチレータを開けての体温調節、手の上げ下げもスムーズ、全体もスッキリしたシルエットで風にあおられない設計と環境への対応力も高く、こんなイイやつ沢山持っていられたらな・・と感傷的になってしまうくらいにまずこれといった弱点の見当たらない完全防水ジャケットという印象です。
着心地も柔らかく脱ぎ着もスムーズでした。また収納していても大きく形が崩れてないので急な天候変化でも素早く羽織れるという事もポイント高いです。
腕の上げやすい立体裁断
立体裁断で動きやすく、羽織るのも楽。腕を上げても裾が上がらない「ハイ・リーチ」カッティングという機能。クライミングや手を頻繁に使う岩稜帯を歩くときに良さを実感できます。
創意工夫された高い防水性
袖口にも防水性を高めるための配慮がなされています。ベルクロも雨の中でも操作が大変しやすいです。マムートのウェアは冬のハードシェルの時に実感しましたが、袖の止めやすい作りが多い印象です。動きながらの操作することもあるパーツの操作性はとても重要です。
動きが快適な止水ファスナー
フロントを含めて止水ファスナーの動きも快適です。ポケットも深めでうれしい作りです。内側にも独立したメッシュポケットが採用されています。
ベンチレーター機能で体温調整が楽
ちなみにこのベンチレーターのファスナーは上から下へ動かしていくのがコツです。逆だと動かしづらいです。また脇下にあることから、ベンチレータから雨が侵入しずらいようにもなっています。それでも稜線など風も強い場所での使用はご注意を。
ヘルメット対応の深く大きいフード
ヘルメット対応フードなので深く大きめに作られています。調整も可能で深いのでつば付きの帽子やヘルメットをかぶったままでも十分快適に使用ができます。個人的見解ですが登攀などでヘルメットをかぶったままフードをスムーズにかぶせられるのはかなりの長所です。またフロントファスナーは最後まで閉めると、顔の口元部分まで収まりフェイスガードとして機能し悪天候への対応力をあげられます。
一方で使いずらい場合も
長所の裏返しになってしまいますが、フード部分です。コンセプトがヘルメット対応なので仕方ありませんが、深く大きいため使用しない場合で使うとフードが邪魔に感じます。
事前に大きさの調整をしておくべきですが、うっかりしてるとこんな感じで視界を妨げられます。登りで見上げる時などは特に顕著だったので気を付けたいです。
まとめ:どんな活動におすすめ?
従来の雨具として防水性・耐久性を十分に備えているだけでなく便利な収納・機能が隅々まで配置されていますので、あらゆる登山に問題なく使用できます。それでいてこれまでに比べて驚くほど軽いという、価格的な面を除けば近年見てきたなかでも非常に完成の度の高いレインウェアです。
ヘルメットとの相性、耐久性と軽量・快適性のバランスの良さからとりわけクライミング系に使用は非常にマッチしてきます。特に着るものが非常に悩ましい残雪期、雪にも雨にもなるような場合で存分に真価を発揮してくれるはずです。
その他分厚いハードシェルでは暑すぎ、天候が急変すれば危険性が高くなる残雪期のハイキング・登山でもこれを持っていけばまず間違いありません。またグリーンシーズンでの長期間の山行や活動においても高い総合力を誇るコイツは文句なし。
ちなみに冬山でも使用したいとした場合でも対応できるポテンシャルは充分あると思いますが、生地の薄さから防寒性は低いため使う場所は選ぶべきでしょう。
軽い・防水・使いやすいと3拍子揃ったオールラウンドモデル。自然の中では自分がその環境に合わせた装備を身に着けるべきですが、そうはいっても状況は千差万別。判断が難しいケースは多いと思いますし、皆さんにもそういった経験はあったかと思います。そんな時、このジャケットを持っていればもう迷うことはないでしょう。過去に海外の登山に出かけた際にもこれがあれば安心だったろうなと思い起こされました。それほどに信頼できる、万人におすすめの1着です。