距離をかせぎたい、荷物を軽くしたいアクティビティでは、万が一の雨風を防ぐレインウェアをどこまで切り詰めるかという問題が出てきます。軽さを求めすぎても防水・快適性が失われ、着続けることがストレスになってしまいます。かといって十分な性能・機能を望めば重さが気になる。そんなジレンマにを抱えるみなさんに朗報。今回は独創的なアイデアで、軽さを維持しながら機能も備えてしまおうという、そんなレインウェア、Marmot(マーモット)ZERO Penetrate Jacket(ゼロ ペネトレイト ジャケット)を紹介します。
目次
大まかな特徴
これまで高い人気を誇ってきた同社軽量レインウェアのフラッグシップモデル「ZERO INTEGRITYシリーズ」の防水透湿素材として採用されているMemBrain® Strata™をこれまでと同様に使用しています。ストレスのない着心地やフィット感抜群のフード、丁寧なシームリングに加え、フロントには止水ファスナーを使いながら、重量は138gとトップクラスの軽さと携帯性を実現しています。機能面では、放熱効果抜群のベンチレーションとして活用できる左右のフロントポケットなど独創的なつくり。ファストパッキングを中心とした高負荷アクティビティにとって頼れる味方になってくれるレインウェアです。
おすすめポイント
- 2.5レイヤーにしては肌触りよく着心地がいい。
- 軽くてしなやか、ストレスの少ない裁断で動きやすい。
- 独自のベンチレーション構造で換気性が高い。
- 専用の収納袋付きで気軽に持ち運べる。
気になったポイント
- ベンチレーションが常に空いたままになっているので強い雨風が吹くと水の侵入を許してしまう。
- ザックによるがウエストハーネスがフロントポケットに干渉して使いずらくなる。
アイテム外観(身長174cm EU規格Sサイズ着用)
主なスペックと評価
スペック | |
---|---|
項目 | Marmot ZERO Penetrate Jacket |
生地 |
|
サイズ | M, L, XL |
カラーバリエーション | SCDS スカーレット/ディープスカイ、DSKY ディープスカイ、MNG マンゴー、DCHC ダークチャコール |
重量 | 平均重量138g |
ポケット | フロントポケットx2 |
フード | ショックコード内蔵フード |
耐水性 | 20,000mm |
透湿性 | 20,000g(B1) |
付属品 | 収納用スタッフバック |
評価 | |
防水性 | ★★☆☆☆ |
透湿性 | ★★★★☆ |
快適性 | ★★★★☆ |
機動性 | ★★★★☆ |
重量 | ★★★★☆ |
機能性 | ★★★☆☆ |
耐久性 | ★★☆☆☆ |
総合 | ★★★☆☆ |
詳細レビュー
独創的なベンチレーション
フロントポケットのちょうど裏側にすき間が空いており、それがベンチレーションとして行動中の体温調整を積極的に行ってくれるという仕組み。
最近、攀じ登ってばかりなので久しぶりにとトレランにも使用してみましたが、天候が良い時にはベンチレーションから風が通っていく感覚が非常に心地よかったです。
また、細かく調べてみると脇の下にも小さな通気口が。体温調整という視点では非常に優秀なレインウェアといえます。
クセのあるポケットについては便利な反面注意も必要
空いたままになってしまうフロントポケット
左右2つのフロントポケットは出し入れしやすい位置にあって大変便利なのですが、下の写真のようにザックのヒップベルトハーネスが干渉してしまうことがあります。どのようにこの収納を活かすかは工夫が必要でしょう。ULハイカーが利用するようなヒップベルトの無いタイプのザックであれば相性は良さそうです。
中身の脱落にも注意したい
フロントポケットもベンチレーションと同じく空いたままなので、脱いだ後、無意識に地面に置いた時には中身が出てきてしまいました。そして激しく動くと中身がやや暴れてしまいます。色々と試してみましたが、収納自体は積極的に使用するというよりは本当にすぐに使いたいのもだけ入れておくような割り切った使い方にするべきでしょう。
また、個人的には無くなりそうな備え付けの収納袋もシェルと一緒にしておきたかったので胸の内側にでも小さいファスナー付き確実に脱落しない収納が欲しかったです。あるいは収納袋がウェアと一体になっている構造であれば文句なしでした。
防水性と透湿性
激しく雨にうたれ続けると不安
独自の防水透湿素材「MemBrain® Strata™」を使い、フルシームリング加工で高い防水構造になっています。表生地には12dの極細糸を使いながら耐水圧20,000mmという高い防水性に加え、透湿性も20,000gと、スペックの上では登山向けアウターウェアとして十分高い性能を誇っています。また2.5レイヤーにしては裏地の着心地がよく快適に使い続けられます。
では実際に使用してみると。
雨天の山中で、小雨だと問題なく快適だったのですが、雨が強くなっていく中で、だんだんと表地に水の膜ができてしまい、わりとあっという間に撥水がなくなってしまいました。透湿性が落ちた為か裏地を見ると汗でかなり濡れてしまいました。
フードのフィット感など基本的に丁寧な作りなことは確かなのですが、空いたままのベンチレーションなど実用的な防水という視点では、雨天でも万全とは言い難い部分がありますのでその辺は注意が必要です。
まとめ:どんな活動におすすめ?
開放ベンチレーション機能付きフロントポケットなど超軽量を保ちながら最大限備えられる機能を盛り込んだ独創的な一着。ある意味ツウ好みなギアといえなくもないのは確かでが、用途がマッチすればいくつかの懸念は解消できるはず。その意味でロングトレイルハイカーやウルトラライトハイキングにはうってつけ、非常におすすめなアイテムです。独特なベンチレーション機能もうまく活用すればこれまでにない快適性を得られるでしょう。例えば風が吹き荒れない樹林帯の雨ではベンチレーションによる侵入の心配はなく、そういった場所は総じて蒸し暑い訳ですから、その体温調節機能の良さを実感できます。
一方で空いたままのベンチレーションやフロントポケットなど明らかに万人受けしやすいとは言えない側面ももっているため、幾つかのレインウェアを持っている方の選択肢の1つとして、あるいはこの手の機能をはじめから求めているような方向けの「玄人」のウェアとして考えるのがよいかと思います。「この性能を求めていた」という人にとってはまさに唯一無二の一着になることは間違いなし。これを着て満足できる使い方ができるあなたは相当なこだわり人でしょう。