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ここ最近ライト&ファストな山岳アクティビティ向けのラインナップを続々拡充しているRabから、今シーズンもヤバいとしか言いようのない軽量バックパックが登場。今回はこの軽い、快適、安心、便利と、軽量バックパックとは思えないほどの高い充実度を実現したRab Muon 50(まはたRab Muon 40)を春の登山やハイキングで歩いてみたので、さっそくレビューをお届けします。
目次
Rab Muon 50 バックパックの主な特徴
Rab Muon 50 はバックパッキングに必要な耐久性と快適な背負い心地は損なわず最小限まで重量抑えた、軽量大型バックパック(ラインナップに40Lサイズもあり)。軽量かつ高耐久、紫外線耐性を備えたSpectra® リップストップ生地を採用。アルミフレーム内蔵で通気性・クッション性を備えたRab独自の背面システム「TRI-FLEX™ キャリーシステム」は快適な背負い心地と優れた安定性を提供。大きなフロントスタッシュポケットや荷物を下さずアクセス可能なサイドスタッシュポケットをはじめ多彩なアタッチメント類を備え、軽量ながら便利な収納を多数備えています。長距離の高速移動を想定してデザインされたMuon 50は、ファストパッキングをはじめ長距離のスルーハイキング、一泊旅行、週末の山登りなど軽量さを優先するハイカーに必要なあらゆる要素を高い次元で備え、これまでの軽量バックパックの常識を覆す快適な使い心地を実現しています。
お気に入りポイント
- クッション性と通気性、フィット感、荷重耐性、安定感、すべてにおいてハイクラスな背負い心地
- 背負い心地のプレミアムさからは考えられない軽さ
- 軽量かつ強靭な生地素材
- アクセス容易で収納力も抜群のサイドスタッシュポケット
- ハイドレーションやトレッキングポール、テントやマット、小物などあらゆる物を取り出しやすく便利にパッキングできる機能的な収納
- 決して高すぎない価格
気になるポイント
- 外側のフロント・サイドスタッシュポケットの口が緩くてぴったりと閉められない
- メイン収納へのダイレクトアクセスが無い
- 背面長のサイズ調節ができない
主なスペックと評価
アイテム名 | Rab Muon50 バックパック |
---|---|
容量 | 約50リットル |
実測重量 | 995 g |
素材 |
|
女性(小柄体型)向けモデル | あり(Muon 50 ND) |
サイズ/背面長 | 48 cm |
背面パネル | TRI-FLEX™キャリーシステム |
推奨最大耐荷重 | ― |
ハイドレーションスリーブ | ◯ |
メインアクセス | 雨蓋式 |
レインカバー | × |
ポケット・アタッチメント・パーツ類 |
|
Outdoor Gearzine評価 | |
快適性 | ★★★★★ |
安定性 | ★★★★★ |
収納性 | ★★★★☆ |
機能性(使いやすさ) | ★★★★★ |
耐久性 | ★★★★☆ |
重量 | ★★★☆☆ |
拡張性(カスタマイズ性) | ★★★★☆ |
詳細レビュー
素材と重量・耐久性:軍事用途にも採用される超軽量高耐久繊維「Spectra®ファイバー」を含んだ軽くて強靭な生地
Muon 50のボディに採用されている生地は、一見ごく普通のナイロンやポリエステルのようですが、この薄くてしなやかな生地、実は高い強度で実績のあるコーデュラナイロン(100D)に超軽量高耐久繊維「Spectra®ファイバー」が格子状(リップストップ)に織り込んであるハイテクファブリックとなっています。
この生地のポイントは言うまでもなくHoneywell (ハネウェル)社の開発したSpectra®(スペクトラ)ファイバーです。「世界で最も強力かつ軽量な素材のひとつ」と言われ、重量比で「鋼鉄の15倍の強度」を備えた高強度繊維。また「強力な繊維で有名なアラミド繊維よりも40%強い」とのことですが、正直あまりピンとこないという方も多いでしょう。でも、米国で軍事用途の防弾チョッキやヘルメット、あるいは装甲車などにも使用されていると聞けば、この新素材のとてつもなさい強度がより理解できるはず。
実際にこのバックパック、滑らかな表面に爪を立てようが岩にこすりつけようが、表面が毛羽立つ気配は皆無で、擦り傷ひとつ付かず、通常の登山で使う範囲ならビクともしません。そして汚れも付着しにくく、紫外線にも強い。下の公式動画にその辺の映像がありますので参考までに。
水に浮くほど軽いのに優れた耐摩耗性、屈曲性、疲労耐性、紫外線耐性、耐切断性を備え、温度変化にも強いこのハイブリッド生地によって、Muonは過酷なフィールドで破損を気にせず使える丈夫さと、軽快な移動を妨げない薄さ・軽さを両立させています。
ちなみに50リットルサイズで公称995 gという重量については、実際のところ本格的なウルトラライトという文脈でいえばそれほど軽い分けではありませんので、そこにとことんストイックな軽さを求める場合には物足りないといえるかも知れません。Rabにとってもそこは最初から織り込み済みであり、つまり「ファストパッキング用のバックパックといってもちろん軽さは欠かせない要素だが、重要なのはすべてを犠牲にした極限までの軽さではなく、強さ、快適さ、使いやすさを含めた総合的な実用的な軽さである」というのがこのパックにおけるRabの主張というわけです。
背負い心地(快適性・安定性):身体に吸いつくようなフィット感と抜群の安定感が約束されたハーネス構造
軽さを前面に押し出したバックパックでありがちなのは、極端にそぎ落とした結果確かに軽くはなっているけど、そもそも重い荷物を想定していないため荷重をしかるべき場所で受け止める構造がなっていない(あるいは重さをできる限り感じなくするような特別なコツや経験が必要な)ケース。ここ最近は少なくなってきているとはいえ、そうしたバックパックでは多くの人が軽さと引き換えに背負い心地を犠牲にしなければならいのが実際だったりします。
そんな(見た目は良さそうなのに)背負ってみてがっかりしたパックはこれまでたくさんあったけど、Muonは違いました。軽量バックパックにもかかわらず、しっかりした背面構造と適度なクッション・通気背によって快適で疲れにくく、重い荷物でも安定してブレにくい。軽いからといって決して「背負い心地は我慢して」ということはまったくありませんでした。この圧倒的な信頼感の背負い心地の秘密は言うまでもなく独自の背面構造「TRI-FLEX™ キャリーシステム」にあります。
U字型アルミフレームと水平フレームが融合し、垂直・水平方向に剛性の効いた構造
バックパックの内部には、肩口がターンして幅広になりつつ底部でU字型につながった、取り外し可能なチューブ状アルミフレームが搭載されています(下写真)。このフレームがパックの支柱となって荷重を適切にヒップベルトへと伝達し、肩への負担を減らすとともに重心を身体に近づけてくれます。
しかもこれに加えて取り外し不可能な水平方向のフレームが背面パネルの中央部に内蔵されています(ここが他のパックと違うRabだけの推しポイント)。この水平方向のフレームによって荷重耐性がより補強されるとともに、背面が荷物で丸まって背負い心地を損ねることがありません(下写真)。
背中は身体のラインに沿ったカーブを描いた速乾性の高いパッドが配置され、いつもフラットで背中に吸い付くような背負い心地をキープしてくれます(下写真)。
肩周りの肌面の汗をかきやすい部分には通気性と速乾性の高い3Dメッシュ、中身は重荷にも耐えられる弾力性の高いパッド入っているショルダーハーネスは、軽量バックパックを感じさせないほどコシがありしっかりとして快適です(下写真)。
またショルダーハーネスは左右のストラップがヨークで繋がっている構造のためより荷重分散性能に優れ、ストラップ付け根の耐久性も高めています。また肩口には当然のようにロードリフターが付いているので重心を身体に近づけつつ上部でのブレを防いでくれます(下写真)。
便利なだけでなく荷重の分散もよく考えられているベスト型ショルダーストラップ
ショルダーストラップは幅広でメッシュポケットが付いている、トレイルランニングからインスパイアされたいわゆる「ベスト型」を採用(下写真)。ここ最近ではファストパッキング系の大容量モデルでも珍しくなくなりつつありますが、経験上、下手をするとストラップの貧弱さによって肩への食い込みによって快適さを損ないかねず、よく考えてやらないと諸刃の剣にもなり得ます。しかしその点、Muon 50は荷重を適切に腰に伝えるしっかりとした背面構造とフィット感の高い快適便利な胸部の作りによって、ベスト型であってもまったくそのデメリットを感じさせない理想的なマリアージュを奏でていました。
骨盤を包み込むようにフィットする安定感抜群のウェストハーネスと逆引き式ヒップベルト
ここまででも十分驚嘆に値する出来の良さですが、極めつけは、惚れ惚れするほど安定感と快適さを両立したウェストハーネス&ヒップベルト。
フレームとダイレクトに連結されたウェストハーネスはパックの重みを逃さず腰に伝達し、さらに立体的なメッシュのクッションは薄手ながら最低限のクッションを備え、重みが集中する臀部にはパッドはしっかりと入っています(下写真)。
そしてそのウェストハーネスを締めるヒップベルトは、両サイドにあるスタッシュポケットと連結された構造になっていることで、パックをグッと骨盤を側面から包み込むようにしっかりと締め付けてくれます(下写真)。
快適な締め心地であるだけでなく、パックがねじれたり横にブレたりすることがなく、その安定感の高さは背負ってみれば一目瞭然です。ちなみにヒップベルトの引手の方向も外側に引くタイプ(引きにくい)ではなく、前に引く(引きやすい)逆引きタイプなので、調節も楽です。
収納性と使いやすさ:「必要最低限」では決してない。不便さをまったく感じさせない豊富な収納と便利パーツ
Muon 50にはアクセスしやすさと効率性を考慮して戦略的に配置された多数のポケットやアタッチメントがあります。
その豊富さは決して「どうせ軽量バックパックだから」と侮れるようなものでは決してなく、むしろ普通のハイキング用バックパックと比べてもほとんど遜色ないほど充実。
しかも単に収納が豊富なだけでなく、それらは行動中必要なときにさっとアクセスできるようにスマートに配置されているなど、ファストパッキングでの利用を考えた実用性がしっかりと配慮されています。
メイン収納
Muon 50のメイン収納は一般的な登山用パックと同じように巾着方式で開け閉めも簡単な出入り口に一本締めのストラップと取り外し可能な雨蓋(容量約10リットル)を被せる方式でクセのない作り。
雨蓋を開けずとも中身にアクセスできるダイレクトアクセスジッパーがあればなお良かったと思いますが、外部収納は豊富なのでさすがにそれは欲しがり過ぎでしょうか。
また一方で、より軽量化を目指すのであればロールトップ型でも良かった気もします。ただ大容量パックでは雨蓋収納の汎用性も捨てがたいので、ここは人によって判断が分かれるところかもしれません。なお1サイズ小さなMuon 40の方はこの雨蓋がきっぱりと省略され、出入口がロールトップ型と軽量ザックらしい作りになっています。
なお容量の違いによる仕様の差はほぼこの部分のみ(ボディの大きさ・作りは大体同じ)なので、ロールトップ型にこだわらないのであれば50リットルモデルの方が幅広い荷物の量に対応できて便利といえます(その意味で自分は50リットルをチョイスしました)。
雨蓋の表裏ポケット
前述しましたがこのパック上部には大きめのジッパーポケット付きの雨蓋が付いています。このポケットは入口も大きく出し入れがしやすいので使いやすく、さまざまな小物を大きさ気にせずまとめて入れておくことができます(下写真)。
さらに雨蓋の裏側に配置されたキークリップ付きセキュリティポケットは生地がメッシュとなっているため中身が見やすく、財布やキーホルダーだけでなくすぐ取り出したい医療・エマージェンシー的なものも入れやすいかも。普段はあまり利用価値が少ないと思っていたこのポケットもこれで俄然使いやすくなっています(下写真)。
この雨蓋と雨蓋用のストラップは取り外しが可能。また最終的には背面アルミフレームも取り外すことができます。荷物量に合わせてパックの重量もある程度カスタマイズ可能です(下写真)。
大きなフロントスタッシュポケットとサイドスタッシュポケット
フロントの大型スタッシュポケットはストレッチ性がありながら前面が耐久性の高いSpectra®(スペクトラ)ファイバーで補強されているのでしっかりと伸びる割に破れにくく安心な作りになっています。レインジャケットから行動食、サンダル、ウォーターボトルやフィルター、ゴミ袋など大きな荷物が何でもたくさん入ります(下写真)。
そして個人的に特に気に入っているのが左右のサイドスタッシュポケット。こちらもストレッチ性のあるメッシュとSpectra®(スペクトラ)ファイバーのハイブリッド構造で擦れにも強い作り。
またサイズも十分な大きさで、ナルゲンボトルと500mlのペットボトルを入れてもまだ余裕がありました。さらに出入口が斜めにカットされているので立ったままボトルにアクセスすることもできるし、サイドストラップで長物アイテムも固定できると、サイドポケットに求めていることがたいていクリアされている優等生ポケットです。(下写真)。
ただ1点、便利なだけにどうしても気になってしまったのは、フロント・サイドスタッシュポケットどちらも入口の締まりが緩く作られているため(あえて?)、荷物が入っているときは気にならないものの、荷物が入っていない(少ない)ときにはややだらしなく開いてしまっている点です(下写真)。特にサイドポケットは緩く開きっぱなしなので、雪などはいつの間にかたくさん入ってきてしまうでしょう。
ただ救いとしてはポケットの内側にコンプレッションドローコードが通っているため、ある程度そのコードによって中身を固定しておくことができます。中の物がこぼれてしまうということにはなっていないのは不幸中の幸いです。とはいえ(全体的にほぼ理想に近い作りだっただけに)最初からもう少し口がしっかり締まるようにゴムをきつめにするか、ドローコードを通してあれば完璧だったなぁとちょっぴり残念に思っています。
ショルダーストラップポケット
ベストタイプのショルダーストラップの良さは、何といってもこの最もアクセスしやすい部分に広くて便利なポケットを配置することができる点。Muon 50のショルダーには左右にジッパー付きのメッシュストレッチポケットが配置されています(下写真)。
ソフトフラスクやスマートフォン、ジェルやスナック、地図やコンパス、日焼け止めなど、形状と容量がかなり幅広く、ジッパーがついているので安全に収納することができ、もちろん素早くアクセスすることもできます。
ペットボトルは厳しいですが、代わりに大きな左右のサイドスタッシュポケットがあるので、ペットボトルはここではなくサイドに入れておけば問題ありません。
トレッキングポールアタッチメント
トレッキングポール用の外部アタッチメントは、まずフロントに伸縮式の長めのトレッキングポールに適した取り外し可能なコードロックがひとつ(下写真)。
さらにこの他、左右のショルダーストラップ下部に折り畳み式も含めてトレッキングポールをサムライの刀のように仕舞えるコードロックが付いており、行動中に素早く出し入れが可能です(下写真)。
ハイドレーション対応
ハイドレーション用スリーブとクリップ、そしてハイドレーションホース用の出入り口もしっかりとメイン収納内部に配置されています(下写真)。
バンジーコード用ループ
サイドからボトムにかけて(下写真)と雨蓋の上部には、カラビナやバンジーコードなどを通すことができるウェビングラダーループが目立たないように付けられています。必要に応じてアタッチメントを追加したり、ちょっと濡れたものを乾かしながら歩きたい時にカラビナにぶら下げたりといった柔軟な対応が可能です。
荷物の量に合わせて調節可能なコンプレッションストラップも豊富
底部には超軽量のコンプレッションストラップ(ドローコード)が配置されており、少ない荷物の際にはここを引き締めることでパックのブレを防ぐことができます(しかもこのドローコードは背負いながら調節が可能)。またこの圧縮ストラップは収納としても機能し、マットレスやテントなどを固定するのに最適です(下写真)。
荷物が少ない場合のコンプレッションストラップはもちろんサイドにも配置されています。またこのストラップがよくできており、2方向に幅広く圧縮できるようになっているのに加えてその2方向を1つのバックルによって締めることができるというスマートなバックルを採用しています(下写真)。
まとめ:軽さと強さ、快適さ、使いやすさ、何一つ妥協が見られないファストパッキング向けバックパックの傑作
ここ数カ月いろいろと背負わせてもらって、軽いだけではなく十分な耐久性に極上の背負い心地と機能的な収納性などを漏れなく備えたRab Muon 50は、ここ数年のファストパッキング人気の高まりによって雨後の筍のように現れた軽量バックパックの中でも突出した完成度と洗練さを備えた傑作といっていいのではないかと感じました。本文にあるような気になるところももちろんありましたが、ほとんどが些細なことで我慢できないことではありません。ただ背面調節ができないという点は注意が必要で、きちんと自分に合ったサイズを選ばなければ理想の快適さは得られません。176cmの自分には通常モデルで問題なくフィットしましたが、背の低い男性や女性は「ND」のモデルを検討するとよいでしょう。
重量やデザインの観点からいうと、極限までの軽量化を目指すストイックなULハイカーやULのスタイルを楽しみたいハイカーには響かないかも知れませんが、登山やハイキングの延長線上としてのロングトレイルを楽しみたいファストパッキング初心者や実用性・快適性重視の幅広いライトい&ファスト好きハイカーには十二分に受け入れられるポテンシャルを秘めているように思います。ちなみに価格もこの手のザックにしてはかなり入手しやすいときています。
いずれにせよ軽量バックパックでここまですべての機能的な要素で高いレベルに到達しているバックパックはなかなか見当たりません。あらゆる面で頼りになるこいつがいてくれれば、ロングトレイルの何日にもわたる厳しい旅路も快適に乗り越えていけそうな気がします。