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Review:SALOMON XA 25 / 35 もっと身軽に、もっと遠くへ。驚くほど「走れる」ファストパッキング向けバックパック

軽量で高機能がウリのファストパッキング向けバックパックといえば、ここ最近さまざまなブランドから、バラエティに富んだモデルが目白押しの分野です。

そもそもファストパッキングとは「ラン」と「ハイク」のエッセンスを融合させたようなアクティビティ。それだけに、本格アルパインブランドからランニング・レース志向、ウルトラライト・ハイキング系ブランドなど、性格の異なる多様なメーカーから個性的なモデルが続々登場し、それぞれ考えるファストパッキング・スタイルが数多く提案されています。その意味で今一番おもしろい分野といっても過言ではありません。

今回紹介するのは、そんなファストパッキング向け製品の開拓に近年最も意欲的なメーカーのひとつであり、トレイルランニングのトップブランド SALOMON が今夏新しくリリースしたファストパッキング向けバックパックの最新モデル、XAシリーズです。

SALOMONは昨シーズンもこのカテゴリで OUTシリーズ という画期的なモデルを発表していますが、今回のXAシリーズは、同じく俊敏にロングハイクを楽しむ人向けでありながら、細かい部分で異なるスタイル、異なるタイプのニーズに応えてくれるというべき、兄弟のような存在です。どんなバックパックなのか、早速実際に試用してみてのインプレッションとともに紹介します。

SALOMON XA バックパックの主な特徴

XAシリーズは昨年リリースしたOUTシリーズでの快適な背負心地と多機能性をそのままに、ランニング用ベスト型バックパック由来の機動性の高さとランナーに優しい使い勝手を融合した、より「走れる」軽量ファストパッキング向けバックパックです。ベスト型で身体にぴったりとフィットするコンプレッション&ストラップ構造は、重荷の激しい動きのなかでも安定して快適な背負い心地を実現。ショルダーストラップをはじめ機能的に配置された多数の外部ポケットや、工夫を凝らした各種アタッチメントなどによって行動中にほとんどのギアをパックを降ろさず出し入れでき、走り続けたいすべてのスピードハイカーたちにとって必要とされる特徴を備えています。容量に応じてXA 15、XA25、XA35をラインナップ。(試用は主に25Lモデルで行っています)

ここが◎

  • (超軽量にも関わらず)激しい行動時にこそ実感する高いフィット感・安定感
  • (超軽量にも関わらず)ショルダーストラップの多様なポケット類
  • 荷室の開け締めやのコンプレッション操作の簡単さ

ここが気になる

  • 構造の割に思ったほど背面の通気性は高くない
  • 張り巡らされたドローコードが多すぎてやや煩雑

アイテム外観

SALOMON XA 25 の主なスペックと評価

項目スペック・評価
容量25L (21〜30L)
公式重量443g (509g ソフトフラスク×2含む)
実測重量432g(S/Mサイズ本体415g+背面パッド17g) + ソフトフラスク37g×2
サイズS/M, M/L
生地Body:82% ナイロン・18% ポリエチレン
Front insert:86% ナイロン・14% ポリウレタン
Back insert: 100% ポリエステル 
Lining:100% ポリエステル
Back body:100% ポリエステル
Pockets:88% ナイロン・12% ポリウレタン
Foam: 100% エチレン酢酸ビニル(EVAフォーム)
ポケット
  • メインコンパートメント
  • ジッパー付きポケット(メインコンパーメント内)
  • ストレッチフロントポケット
  • ハイドレーション用コンパーメント
  • 小型メッシュポケット×2(ショルダーストラップ上部)
  • フラスクポケット×2(ショルダーストラップ正面)
  • ジッパーメッシュポケット×2(ショルダーストラップ正面)
  • 大型メッシュポケット×2(ショルダーストラップ正面)
付属品ソフトフラスク(500ml)×2
快適性★★★★★
重量★★★★★
機動性★★★★★
機能性★★★★☆
収納性★★★★☆
汎用性★★★☆☆

詳細レビュー

速乾性と背負心地の良さを兼ね備えた背面システム

まずは外観や背負い心地全般を見ていきます。

ショルダーストラップにはハニカム状の立体的なメッシュ地である 3D Airmesh が全面に採用されています。ポケット生地もほぼメッシュなので、どこからでも風が通り抜けやすい構造になっており、ゆえに速乾性も高い設計です(下写真)。

ショルダーストラップ裏は、通気性の良い 3D Airmeshを採用

背面もショルダーストラップと同様 3D Airmeshを採用し、かなり通気性を配慮した作りになっています(下写真)。

ただ、完璧なまでに高い背面のフィット感(後述)が、逆に湿気の逃げ道をも狭めてしまい、大量の発汗時にはどうしても通気性抜群とまではいかないのも悩ましいところです。背中とパックの間に大きめの空気の抜けるラインがあるとよいのかも。

背面はショルダーストラップと同様の3D Airmeshで通気性をある程度は確保

背面には波状のEVAフォームパッドがメッシュの裏に配置されているため、適度なクッション性と背面パネルの形状維持に一役買っています(下写真)。さらにこのパッドはハイドレーションポケットから取り外しが可能。取り外すことで軽量化だけでなく、通気性の向上にも影響しそうです。

背面パッドは取り外し可能

重量は実測で432g(S/Mサイズ本体)でした。ちなみに取り外し可能な背面フォームパッドは17gだったので、取り外せば最小重量415gにまで軽量化可能です。最大で30Lくらい入りポケットも多い、しかもシームテーピングも施したバックパックでこの重量はかなり軽量な分類といえます。

背負っていることを忘れさせるほどの優れたフィット感・安定感

このバックパックは登山向けのバックパックのように硬いフレームやサスペンションで荷重を腰に近づけるのではもちろんなく、ショルダーストラップと背面によって胸板を挟んで上半身全体で重力を支えるベスト型の構造です。SALOMONが得意としてきたタイプだけに、このモデルもハイキングパックとは思えないほど身体にしっかりフィットし、なおかつかつ動きに合わせて柔軟に対応してくれ、背負ってる最中ずっと快適に動き続けられます。この快適性を実現しているのが、SALOMONの真骨頂とも言える独自のフィッティング技術、Motion FitとSensifitです。

ショルダーストラップは幅広でボリュームがあり、その広い面積で優しく包み込むようににフィットします。それもそのはず、ただ平たいのではなく、肩から正面にむかってしっかりフィットするよう立体的な形状になっています。

その左右のショルダーストラップを固定するのは伸縮性のあるコード(下写真)。これは1ヶ所を引っ張ると胸の広い範囲全体にテンションが掛かり、非常にスムーズ。あとはコードロックで止めればすぐに調整完了です。このコードロック、まさしくSALOMONシューズに使用されているあの「クイックレース」と同じ。締めたら緩みにくく、緩めるときは自然な操作でワンタッチです。

正面のコードは、一箇所を引っ張れば全体にテンションが掛かり調整できます

ショルダーストラップと本体の接合部は、OUTシリーズから引き継いだ二股仕様。このおかげで締め上げる力も少なくすみ、荷重が分散されるだけでなく、左右の揺れに対してもサスペンションの役割を果たし、ブレを防いでくれます。その下からはシンプルながらウエストハーネスも伸びており、バッグ底部の揺れをしっかりと防いでくれます。

ショルダーストラップと本体の接続部分は二股にわかれ、荷重を分散

二股の一方にはストレッチ素材を使用することにより、体の動きに追随しフィット感を高めてくれています。

ストレッチの効いた生地で動きへの追随性を高めています

ボディ形状にも背中上部に重心をもっていきやすい工夫が

フィット感の高さは、バッグの形状にもあります。空の状態で平置きしてみると、台形、極端にいうとV字型です。これは底の方には荷物を少なく、上にいくにつれ荷物を多くすることで重心を上に持ってくるためです。この高い重心のおかげで荷重を腰ではなく胴体上部に置くことができるため、荷物は安定し、肩への負担もなくなります。入り口が大きいので、荷物の出し入れもより楽です。

平置きすると、下にいくにつれ小さくなっていくのがわかります

立ったまま一発でパックの密着性を高めブレを劇的に抑えるコンプレッション機能

個人的にOUTシリーズで気に入っていたコンプレッション機能。これはXAシリーズでも健在です。というより、より一層簡便化・機能的になっています。MAX容量に対して内容物が少ないときには、バックパック内で荷物が暴れてしまい、バックパックがブレてしまうことは多々あります。しかしこのバッグはバックパック全体に張り巡らされたドローコードによってパックを均等に圧縮し、フィット感を高めてブレにくくすることができます。しかもコンプレッションをかけるやり方もごく簡単、背負った状態で、サイド(両脇腹のあたり)にあるコードを引っ張るだけ。

バッグは内容量によってコンプレッションをかけ、安定性を向上させられます

左右にあるこのコードを引っ張るだけで、一瞬でバッグ中部〜下部が圧縮され、内容物の揺れを防いでくれます。

コンプレッションをかけると、紐を引っ張っただけなのに一瞬で圧縮されます。

このコードの場所さえわかっていれば、バッグを下に降ろさずともあるきながコンプレッションの程度を調整可能です。このコンプレッションを利かすだけで、安定性・フィット感はより向上し、行動中のストレスはほとんどありません。

ただ1点不満があるとすれば、圧縮した結果外部に伸びた、リング状になったドローコードの処理。ぶらぶらと外に出ないよう、上手くどこかに留めておかないと、樹林帯などでは引っ掛けやすいでしょうし、慣れるまでは煩雑です。

降ろさずともここを引っ張るだけで均一にコンプレッションをかけられます

出し入れラクラク、進化型ロールトップ式メイン収納

ここからは収納システムやその他の機能について見ていきます。

メインコンパートメントの入り口は、シンプル&軽量なロールトップ式です。入り口が大きく開き、スピーディーに出し入れできるのが特徴ですが、クルクル巻いた入り口のバックルを「留めて・締める」操作は不可避でした。しかしXAシリーズでは、入り口をクルクル巻くところまでは同じなのですが、なんとそこからバックルを「留める」操作をすっ飛ばして、ワンアクションで締めることができます。

メインコンパートメント入り口はロールトップ式

口を丸めたら、目の前にある中央のドローコードを引っぱるだけ(下写真)。入り口の両端が引っ張られて、簡単に、しっかり口が閉まります。

ドローコードを引っ張ると、一気にコンプレッションがかかり入り口が締まります。

開ける時はコードロックと入り口片側をもって開けばいい。普通に開ける動作と同じです。これまでのロールトップ式バックパックの開閉時にあったストレスをかなり低減させてくれます。

ロールトップ式の入り口は、一瞬で開閉できストレスがかなり低減。

豊富な外部ポケットで使い勝手抜群の収納

メインコンパートメントの入り口は大きめで、荷物の出し入れは非常にしやすく、上からも中を見渡しやすいです。しかし仕切り等はなく1気室のみなので、とにかくなんでも放り込むという使い方だと、全部取り出して整理しないといけません。しかし基本的にショルダーストラップに行動中に必要なものはほとんど仕舞えるので、その必要はないのかもしれませんが。

ポケットはもう一つ、フロントに大きめのポケットが備わっています。伸縮性がある生地を採用しているので、たとえば上下のレインウェアといったすぐに取り出したい大きめの物を入れておくのに便利です。

フロントポケットは大きめで、ストレッチ性のある生地なので、かさばるものも入れられます。

メインコンパートメント内には、鍵や貴重品などの小物が入れられるジッパーポケットがついています。この、削ぎ落としつつ、最低限の利便性は確保してくれているところのバランス感覚はさすがです。

メインコンパートメント内には、ジッパー式の貴重品入れも

もちろんハイドレーションを入れるポケットはバッチリ。メインコンパートメントと背面パッドの間に備え付けられているので出し入れは独立して行うことができるし、体温で温まってしまうこともありません。

ハイドレーションバッグはメインコンパートメントと背面パッドの間にあります

ランニングバックパックの利便性を惜しみなく盛り込んだショルダーストラップ

ショルダーストラップには左右対象に同じポケットが4つずつ付いています。1つめ、上部にある小さなメッシュポケットはゴミなどをいれるのに重宝しそうです。左のメッシュポケット内にはホイッスルが格納されています(下写真)。

ショルダーストラップの上部のポケットは、ゴミや小物を入れておくのに便利

残りの3つのポケットは、上から順にソフトフラスク用ポケット大型メッシュポケットジッパー式ポケットがあります。ソフトフラスク用ポケットは細めかつ深さがあるため、標準で付属している純正の500mlフラスクがぴったり。大型メッシュポケットはペットボトルや行動食などの他、手袋など多少かさばるものも収納可能。そして最後のジッパー付きポケットには、スマートフォンなど落としたくないものを入れておくのに便利です(下写真)。

上部のポケットをあわせると、両側に4つづつ、合計8つのポケットがあり収納力・利便性は高い

どんな状況でも止まらずに走り続けられる機能の数々

雨が入りにくいロールトップ型、生地は耐候性・耐久性の高いリップストップナイロン、縫い目にもシームシーリングを施し、ジッパーなどを極力省略しているため、非常に高いプロテクション性能を備えています。多少の雨や雪であれば中身が濡れることはなさそうです(もちろんメインコンパートメント以外のフロントポケットやショルダーストラップのメッシュ地は普通に濡れてしまいます)。ハイドレーション用のポケットは閉じられず、雨が降ると中に水がたまりますが、底に水を抜くためのドレインホールがついています。

ある程度の雨であれば、撥水生地により濡れずに使い続けることができる

ただし完全防水ではないので、大雨などで使用するときには防水スタッフサックやレインカバーなどが必要になってきます。何事もそうですが過信は禁物です。

裏の縫い目にはシームテープで補強し、防水性を高めています

ショルダーストラップには、ドローコードが2本ついており、トレッキングポールを左右1本づつ固定できます。パックを降ろさなくても作業できるため、行動中のタイムロスやストレスは極力軽減されます。

ショルダーストラップに折りたたんだトレッキングポールを固定可能

さらにアプローチなどの長く使わない時には両サイドにポール取り付け用のドローコードがあるので、下部のコンプレッション用コードに挟めばここにも固定しておけます。

まとめ:どんな活動におすすめ?

胸と背中全体で背負い、必需品を荷物を降ろさず出し入れできるトレランベストをベースに、ハイキング・トレッキングに必要な荷物まで増やしてもフィット感や安定性を高く保ってくれる。昨年のOUTシリーズもファストパッキング向けではあるのですが、ショルダーストラップの収納では圧倒的にこちらの方が便利。そうした点からもXA バックパックは、SALOMONが得意とするベスト型トレイルラン向けバックパックと、昨年リリースされたファストパッキング向けバックパックOUTシリーズの中間のような位置づけのバックパックです。ファストパッキングといっても、厳選した軽量の荷物でよりスピード重視で長時間快適に行動し続けたい!という人におすすめです。XA 25で無理すれば30Lくらいまでは荷物を入れられるのですが、泊まりを考えるのであれば35Lサイズを選択するのがベターでしょう。逆に15Lサイズはファストパッキングというよりも、日帰りのトレイルランがメインの使い方になりそうです。

自粛自粛で息が詰まりがち。そんな時は新しいギアを手にして、実際に使うことを想像したり、計画してワクワクしながらその時を待ちましょう。

SALOMON XA バックパックシリーズそれぞれの詳細と購入について

XAバックパックシリーズそれぞれの詳細についてはXA 15 SETXA 25 SETXA 35 SETそれぞれの公式通販サイトをご確認ください。